名もなき盾 作:金切
オデロの駆るガンブラスターは、リガ・ミリティアの主力部隊を追い越すようにして、エンジェル・ハイロゥ防衛ラインの深部へと切り込んでいった。
彼の闘志は純粋でありながら、それは同時に彼の冷静な判断力を奪っていた。
彼は、次々とザンスカールのMSを撃破していくが、その動きは次第に無謀なものとなっていく。
「エリシャ……みんな……俺は、ここで絶対に勝つんだ!」
その激戦の最中、彼のセンサーが、他のどの機体とも異なる圧倒的な威圧感を放つMSを捕捉した。
禍々しい暗色の機体、ゴトラタン。
そしてそのパイロットは、オデロにとって、友情と絶望が絡み合ったカテジナ・ルースだった。
オデロは一瞬、全身の血が凍るのを感じた。
「カテジナさん!どうしてまだそんなことを!もうやめろよ!」
オデロは悲痛な通信を試みる。
ゴトラタンからは、感情の欠片もない冷たい返答が返ってきた。
「うるさいわね、この甘ったれたパイロットは。あなたたちリガ・ミリティアの自己満足の友情など、この戦場では何の価値もないのよ!」
交戦は避けられなかった。
オデロは、カテジナの歪んだ狂気を打ち砕こうとビーム・サーベルを振るうが、ゴトラタンの性能と、カテジナの冷徹な戦闘技術は、彼の熱量を嘲笑うかのようだった。
ゴトラタンは流れるような動きでオデロ機を翻弄し、そのビーム・ライフルはガンブラスターの装甲を容赦なく削り取っていく。
ガキン!!!
強烈なビームの一撃がガンブラスターのジェネレーター付近を直撃し、機体は激しく火花を上げた。
メインセンサーはノイズで埋め尽くされ、コックピットに警報が鳴り響く。
「くそっ、動けない……!」
オデロはデブリ帯に叩きつけられ、機体の機能は限界を迎えた。
彼は、このままではカテジナに、仲間たちと同じように無意味に殺されてしまうという、真の絶望に直面した。
戦場から数百メートル離れたデブリの陰。
シールド隊のジェムズガン3機は、この運命の瞬間を見届けていた。
「隊長、オデロ機、致命的な損傷!敵機、距離をとります!これは致命的な照準です!」
ニールからの報告が、アルフォードのコックピットに響き渡る。
アルフォードは冷静だったが、その手はジェムズガンの操縦桿を強く握りしめていた。
彼のモニターには、ゴトラタンがオデロ機に向け、メガビーム・キャノンにエネルギーを収束させる様子が映し出されていた。
「間違いない。ヤツは今、オデロの命を完全に消すつもりだ。一瞬の油断もない」
アルフォードは深呼吸した。
「シドニー、ニール。作戦を実行する。我々は、この命で、この少年に未来を買い取るんだ」
彼らの任務は、敵機からのビームの直撃を阻止することではない。
それは不可能だ。
彼らの任務は、ビームが着弾するコンマ数秒の間に、オデロのコックピットだけを抜き取り、偽装されたポッドへ送り届けるという、極限の精度を要求されるものだった。
「全機、最終チェック!エネルギーは全てブースターとマニピュレーターに回せ!我々は、護るだけの盾ではない。時間を操作する者だ!」
アルフォードのジェムズガンが、静かに、しかし凄まじい決意を秘めて、デブリの陰から滑り出した。
運命の交差点へ向けて。