名もなき盾 作:金切
カテジナは、ゴトラタンのメインカメラを通して、デブリに打ち付けられ、もはや抵抗の意志さえ失ったガンブラスターを確認した。
彼女の心には、容赦も、かつての優しさの記憶もない。
彼女はトリガーに指をかけ、メガビーム・キャノンに収束されたエネルギーを放つ。
その致死の光が発射される、まさにそのコンマ数秒の間隙を、アルフォード中尉は狙っていた。
「今だ!デブリ・ホロー・ゼロ、発動!」
アルフォードの叫びは、悲壮感ではなく、純粋な命令だった。
まず、シドニー軍曹のジェムズガンがデブリの影から躍り出た。
彼は、自機のフラッシュの搭載された広域電磁波撹乱弾をゴトラタンに向けて一斉に放射する。
強烈な光とノイズがカテジナの外部センサーと火器管制システムを強制的に麻痺させた。
「何よ、このノイズ!」
カテジナは一瞬、照準が定まらず、撃発のタイミングが僅かに狂った。
ニール軍曹が、そのわずかな「時間」を増幅させるために動いた。
彼は、オデロ機とゴトラタンを結ぶ直線上、ビームの予測経路の寸前で、カモフラージュ・バルーンを破裂させ、大量のチャフを噴霧する。
それは、ビームの直撃を防ぐ壁ではなく。
ただ、ビームのエネルギーをわずかに減衰させ、着弾時間をさらに稼ぐための、絶望的な時間稼ぎだった。
そして、アルフォード中尉のジェムズガンが、その命運を賭した空間へと突入する。
ビームの熱がチャフを焼き切り始める直前、彼は強化型レスキュー用マニピュレーターをオデロ機のコックピットハッチへ猛然と接着させた。
「オデロ!生きるんだ!」
アルフォードは、自機の全出力をマニピュレーターに集中させた。
金属が引き裂かれる悲鳴が響き渡り、オデロのコックピットブロックはガンブラスターの胴体から強引に引き剥がされた。
アルフォードは、そのままの勢いで、コックピットを手動で正確に、ニールが偽装したデブリ帯の回収ポッドのあるスポットへと射出した。
ズドォォン!
カテジナが放ったメガビーム・キャノンは、シールド隊の偽装を貫き、コックピットを失ったガンブラスターの胴体を完全に蒸発させた。
大爆発が、オデロの「戦死」を確定させるには十分な光景を演出した。
アルフォード中尉のジェムズガンは、コックピットの退避経路を隠すため、爆炎の直前、ゴトラタンのビームの残熱と追撃の衝撃波をその身に受けた。
彼は、任務遂行の安堵と、一人の少年の生を確信しながら、機体ごと光の粒と化した。彼の命は、オデロの盾となり、未来を勝ち取ったのだった。
「雑魚の抵抗なぞ無意味よ!」
カテジナは邪魔者を排除したことに満足し、戦場を離れた。
シドニー軍曹とニール軍曹は、大破したコックピットの中で、涙を流しながらも、任務の完了を静かに確認した。
彼らは、オデロを乗せた極秘の回収ポッドが、戦場のノイズへと完全に溶け込んでいくのを見届け、自らもデブリ帯深くに潜伏し、生還を期した。
オデロのコックピットは、回収ポッドに静かに収められていた。
彼は全身に激しい火傷と打撲を負い、意識を失っていたが、その命の炎は、確かに燃え続けていた。