ブティックは土曜日とあってか、開店直後にも関わらず盛況だった。しかしここでも、2Bの姿は注目を集めこそすれ、距離をおかれる。本来なら商品も勧めるはずの店員すら、気後れしたのか近づいてこない。
東欧ないしロシア系の美女が日本の片田舎にいる。そして彼の国の食糧事情やマーケットの行列について、断片的ながら報道されてもいる。
周囲の視線は、そういったレンズやフィルターを通したものだった。
居心地の悪さから、二人は何も買わずにブティックを出た。
二人は公園のベンチに並んで座った。公園の反対側では保育園の散歩だろうか、二〇人ほどの園児が遊んでいる。
「やはり、私は怖がられているのでしょうか? 明らかに距離をおかれていました。
ずっと警戒されていたようです」
「別に、怖がられていたわけじゃないよ。君の天使か女神のような美しさに、近寄りがたかっただけじゃないかな。
僕だって、初めて見たならそうだったと思う」
「今は、平気?」
「君のことを、少し知ったから。
案外お茶目で、ちょっとさみしがり屋のかわいい女性だって、知ってるから」
2Bがその言葉にどう答えていいか分からないでいると、髪の色が物珍しいからか園児が数人寄ってくる。
「おねーちゃん、きれー」
「おひめさまみたーい」
圭一郎は、どうしていいか迷っている2Bを笑顔で見ている。
「ほら、怖がられてないだろ。子どもは、余計なものを見ないから。
一緒に遊んできたら?」
「遊ぶって?」
「追いかけっこでもいい。
がおー! つーかーまーえーるーぞー!」
圭一郎は、楽しそうな悲鳴を上げる園児達を追いかけ始めた。それを見た2Bも参加する。二人と園児達を保育士達が微笑ましそうに見ていた。
一頻り追いかけ回したところで、二人はベンチに戻ると、年配の保育士さんから、子ども達を邪険に扱わなかったことについてお礼をされる。
「楽しかった?」
「はい」
「これが人間だよ。
ムダなことに時間を使う。遊ぶことを知っている。
君も、今まで一番の笑顔だったよ」
2Bはその言葉に喜びを感じた。その喜びの理由をうまく言葉にすることはできなかったが、この時間がとても貴重なものだということは十二分に理解できる。
「子どもはかわいい?」
「はい。私もいずれは家族を持てればいいと思う。
もちろん、ケイイチロウも同じように思ってくれればですが」
そう言ってから、その言葉の意味に思いが至り、二人は赤面した。
その会話を漏れ聞いた年配の保育士が「あらあら、まぁまぁ」という視線を向けていたことに、二人は全く気づいていなかった。
そのとき、空気が大きく振動した。