2B or not 2B   作:転々々

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17 別離

「少女よ、戦う力を望むか?」

 

 これまでと全く違う口調だった。

 

「人類を守る力を!」

 

 2Bの脳裏に直接、戦う力の意味が伝わってきた。

 ゆっくりと圭一郎の方を向く。

 

「ありがとう、ケイイチロウ。お礼だけは言っておきたかった。

 ……あなたの夜羽でいられるうちに」

 

 2Bは圭一郎を抱きしめ、唇を重ねた。

 

 それは数秒か、あるいは数十秒か。圭一郎からゆっくりと離れると、ポッドを見上げた。

 

「……ポッド、お願い」

 

「承知した。気高き少女よ」

 

 淡い光が2Bを包む。

 

 私は生涯に足る恋をした。

 あとは、人類にこの身を捧げるのみ。

 私は、ヨルハ二号B型 2B!

 

 淡い光がまばゆい輝きとなり、それが収まった後に居たのは、圭一郎が初めて出会ったときの2Bだった。しかし顔の半ばを黒い布らしきものが覆っている。

 

 上空から、先ほどと同じ形の円盤――機械生命体が、やはり赤いエネルギー弾を吐き出しながら降りてきた。

 2Bがそれらを自身の背丈ほどもある長剣で切り払うと、円盤は警戒したのか上昇に転じようとする。

 その瞬間、2Bは五メートルほども跳躍し、袈裟懸けに長剣を振るった。

 2Bが地面に降り立ち、本来不要な血振りをすると、二つに分かれた機械生命体が爆発する。

 

「ケイイチロウ、この姿を、あなたには見られたくなかった。

 ……さよならだ」

 

「夜羽……」

 

「人類に、栄光あれ!」

 

 2Bはヨルハの敬礼をした。そのまま胸に手を当てるが、そこにはもう生命の鼓動はない。

 2Bは踵を返し、走り出す。五歩目には時速で五〇キロに達した。

 

 この想いは、この感情は、失われつつある。

 いずれ感じることもできなくなる。

 それでも思い出すことはできる。

 私は本当の恋を知った。

 最も幸福なヨルハだ。

 

 

 

 脳裏に浮かぶHUDで、機械生命体の位置は把握できている。

 車道では警察車両をバリケードにしているが、機械生命体にはさしたる効果がない。発砲音もするが、擦過痕を作るのが精一杯だ。

 

 警官の一人が誰何するが、2Bは足を止めない。

 別の警官に飛びかかろうとする機械生命体を下段から一閃。返す刀で斬りおろし、横蹴りで車両に叩きつける。機械生命体は数メートル転がり車両もろとも爆発した。

 炎上する警察車両を跳び越えると、鎧袖一触、更に四体を屠る。

 

 やや大型の盾を構えた個体が突進してきたが、盾を切り飛ばし、宙返りしながら腕を切り飛ばす。投げた長剣が止めを差すと、回転の勢いをバレリーナが舞うように殺した。

 残心を終えた2Bの脳裏に敵性反応は無い。

 

 

 

「戻ろう」

 

「よいのか? 今の身体でも、彼とともに在ることは可能だ」

 

「いい。

 ここは、今の私が居るべき場所ではない」

 

「承知した。気高きものよ」

 

 光の後には何も残ってはいなかった。

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