「で、なんであんなところに居たの?」
圭一郎は、階段で倒れかかる2Bを抱き止め、そのまま放置するわけにもいかず、部屋に連れてきたことを話した。
本来なら警察なりに連絡するところだろう。
しかし、その硬質な美貌と、それに反して抱き止めたときの温かな感触。それらは彼の行動を変えるには十分だった。
「不明です。電磁パルス攻撃に巻き込まれてシステムが一時停止、再起動したのがあの階段でした」
圭一郎は訝しげに2Bを見た。
『電磁パルス』『攻撃』、意味がわからない。そういう設定で話すアブナイ、というよりイッちゃってるお姉さんだろうか?
「電磁パルス? 太陽フレアなんて話は聞いてないし、核爆発、はあり得ないか……。
第一、そんなことがあったら、ここら一帯の電気が停まってるはず」
「私が意識を失っていた時間が長かったのかも知れません。電磁パルスは我々アンドロイドには致命的です」
「……アンドロイド?」
「私は、ヨルハ二号B型、汎用戦闘アンドロイドです」
「人間にしか見えないけど。それ以前に、戦闘って、何と?」
「私たちは創造主たる人類を模して造られました。あなたは人類なのですか?」
「『人類』だと……思うよ。そんなこと訊かれたのは初めてだ。
君は人間にしか見えないし、仮にアンドロイドだとして、立って歩いて会話できるアンドロイドなんて、見たことがない。
一応、夜羽さんと『人類』の関係とか、何と戦っているとか、説明してくれる?」
2Bは彼女の知る歴史を話した。
西暦五〇一二年、地球が異星人の侵略を受けた。彼らの兵器『機械生命体』によって人類は地上を追われ、月への退避を余儀なくされた。自分たちアンドロイドは最終決戦兵器として造られ、地上に派遣された。
「私たちは地上奪還の任を負っています」
「解った。オーケー。とりあえず、君の『設定』は理解したよ。
で、こっちの認識だが、ここは地球。現在は西暦一九九一年四月二六日。僕は人間、君の言う『人類』、だと思う」
「つまり、私は過去にいるということ?」
「君の認識が正しいならね。でも、僕には君がアンドロイドだとは思えない。君をここに連れてきたときも……、あ、いや、君が倒れてきたから……」
圭一郎は失言に口を噤む。客観的には、意識を失った女性を抱きかかえて自室に連れ込んだのだ。
改めて2Bを見る。作りもののような美貌だが、人工物とは思えなかった。スカートのスリットからのぞく白い脚は艶めかしく……、即座に視線を外した。
「その点については感謝します。
しかし、あなたが『人類』でここが地上だとして、私の重量を運ぶことは容易ではなかったはずです」
「気を失った人が重いってのはあるが、せいぜい五〇キロ足らずだろ」
一応、女性の体重は少なめに言っておく圭一郎だったが、2Bは記憶との齟齬に動揺していた。
おかしい。ヨルハ二号B型の義体重量はおよそ一四八キロ。人間並みの重量は考えられない。
私の身体に何が――?