2Bが選んだものは、三枚セットの下着とスポーツブラを二枚だった。それらを包んでもらい、店を後にする。
「買えた?」
「はい」
圭一郎の問いに簡潔な返事をした2Bだが、顔の表面が熱い。これまで覚えたことのない感情を受け止めきれない。
喜び、誇らしさ、気恥ずかしさ……、それらが入り交じった、複合的な感情だ。しかしそれは圭一郎の笑顔と同じく、好ましいもののように思われた。
「じゃ、次は服だ。夜羽さんはどんな服がいい?」
2Bは数瞬眉根を寄せる。
どんな服と言われても……、これまで、ヨルハの制服以外について考えたこともなかった。まして自身が制服以外を着用するなど……。そこまで考えたとき、ふと頭に浮かんだ言葉を発した。
「……Tシャツ」
「Tシャツ?」
2Bは無言で頷く。
それしか思い浮かばなかった。もっとも、外部記憶を参照できない今、彼女のファッションに関する語彙は乏しい。
「なら、下はジーンズあたりが無難かな?」
圭一郎に連れられて入った店は、若者向けのカジュアルな店だ。しかし、ショッピングセンターのテナントでは、Tシャツにそれほどの選択肢はないが、それでも2Bは迷った。
最終的な候補は、白・黒・紺の三色だった。
「どれがいいだろうか?」
圭一郎に意見を求めたが、彼自身もファッションに関する感覚に恵まれてはいない。
「同系の紺だと、却ってジーンズの色と合わせにくいし、白か黒が無難かな? 黒の方が、君の髪や肌が映えると思う。
とりあえずそれを着て、明日はブティックに行こう。
そう言いながらも、今月のバイト代に思いを巡らせる。上は安く上がったが、下はスカートでもパンツでもそれなりにかかるだろう。
裾あわせが要らないスカートの方がいいのか? そう考えたところで、スリットから覗いた白い脚を思い出した。やはりパンツにしとこう。
買い物を終えた二人は店を出た。
2Bが買ったのは、ジーンズではなくストレッチ素材のパンツだった。これであれば裾あわせが不要だった。本来は裾上げが前提だったが彼女のスタイルがそれを不要にした。夕刻も近づく今、その場で持ち帰れるのは大きい。
二人は一階に降りると、食品売り場へ向かう。
「何を食べたい?」
「……ごめんなさい。私はどう答えればよいか分からない。食事の経験が無いから」
「こっちも、ごめん。
無理って分かってるの、サバだっけ? アジだっけ? とにかく青魚じゃなければいけるんだよね」
「分かっているのはアジです」
「まぁ、経験は追々ということで、適当にいこう」
二人はショッピングカートを押して、売り場へ向かった。