二人はショッピングカートを押して進む。
2Bの日本人ばなれした容姿を除けば、大学の部活帰りに見えなくもない。あるいは、陳列された食品を物珍しげに見る2Bの姿は、東欧系女性にも見えただろう。
彼女は丁寧にパック詰めされた肉や、色とりどりの果物を興味深げに見ていた。彼女の知る『食べ物』は、人類を真似た者達が狩猟・採取によって得たものがほとんどで、規格に基づいて整理された農産物ではなかった。
圭一郎が選んだ献立は、カレーだった。あまり好き嫌いが分かれない、国民食とも言うべきものだ。作り置きが効くこと、材料が安く上がることは、大学生にとっては重要だ。それでもルゥだけは奮発して、ハウス・ザ・カリーだ。
帰宅すると、圭一郎は早速カレーを作り始める。
「夜羽さんはそっちでテレビでも見ててよ。僕が作るから」
「私にも『作る』過程を見せてください」
「そうか、食べたことが無いってことは、料理も見たこと無い?」
「無い」
一瞬『テレビ』という言葉に引っかかりを覚えた2Bだが、圭一郎の行動により興味を引かれていた。
まずは米を研ぎ、炊き始める。そしてジャガイモの皮を剥いて一口大に切ると、ボウルに張った水につける。
ニンジン、タマネギを切り、電子レンジで加熱する。
「これは?」
「電子レンジ。マイクロ波で水分子を振動させることで加熱する機械。野菜を短い時間で加熱できて便利なんだ」
肉を切っている間に、電子レンジから電子音がする。それが合図だったかのように、フライパンの加熱を始めた。
肉を炒め、うっすらと焦げ目がつき始めたところで、レンジの野菜を加えて炒める。ジャガイモの水を切り、改めてレンジに入れる。
「なぜ、鍋の加熱を止めたのですか?」
「本当は止めたくないんだけど、ブレーカーが落ちるんだ」
そう言いながら、レンジのタイマーを入れ加熱を始める。
「炊飯器と電子レンジと電磁調理器とポットを同時に使うと、三〇アンペアを超えるかも知れないんだ。
出る前にポットを加熱しとけばよかったよ」
「パワーソースが不足すると、安全装置が働くのですね」
「そういうこと」
程なく電子レンジが加熱を終了すると、再びフライパンを加熱し始め、ジャガイモを投入した。
軽く炒めてポットのお湯を注ぐ。
「ここからは少し待ちになる」
フライパンに蓋をすると、電磁調理器のタイマーをかけた。
部屋に戻ると、改めて二人は向かい合った。
「ケイイチロウはどのような立場なのですか?」
「僕は大学生」
圭一郎は自身の立場と日本の教育行政や社会システムについて話し始めた。