個性:ドラえもん   作:心身新

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幕間:公安所属のヴィジランテ

公安がその存在を認知したのは、オールマイトとAFOの最初の決戦だった。

 

被害状況の確認とオールマイトの居場所を探っていたその最中に、ピンクの扉が現れて、そこからオールマイト:八木俊典が現れた。

扉を閉めるその直前に、俊典が名前を聞いたおかげで、そのヴィジランテがドラえもんと名乗っていることが分かった。

 

彼の行動範囲は日本全土にわたり、活動時間は基本的に16時〜深夜2時。

接触を図ろうにも基本上空からのパトロールで、あと一歩まで迫ろうとも(くだん)のピンクのドアで逃げられる。

そんな事を繰り返していた。

 

 

捕まえられる可能性は、とある青年。

 

 

 

その青年の個性は剛翼。

高速で空を飛び、落ちた羽根は自在に動かせその羽根で振動を感知して音までも拾える。

 

育て上げ、訓練し、ヒーローとしても名が売れた彼の活動圏内に、とうとうドラえもんが出現した。

 

ドラえもんは、チャート上位のヒーローがいる街には滅多に顔を出さない。

この、千載一遇のチャンスを逃す訳にはいかなかった。

 

元々彼の家は特定してあったが、1度踏み込み、確保に失敗すれば住む家を変えられてしまうかもしれない。

 

ピンクのドアで逃げた先と、逃げる前にいた場所。

そのふたつに人がいる状況を作り出せるのは、この時しかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「目標を発見、接触します」

 

「うわわわわわっ!早いなアイツ!!」

 

慌ててビルの屋上に降りて、腹部のポケットをまさぐる。

 

「えーっとえーっと、これじゃないこれでもない...あった!!どこでもドア〜!!」

 

少しもたつきながらズルりと出たピンクのドアを置き開く。

青年の方を向きながらだったので体がまるまる扉に隠れてしまった。

 

こちら側にせり出した扉を、剛翼から羽根2枚を飛ばし無理矢理閉じる。

バタン!!!と、大きな音がした。

 

「ぎゃあ!!」

 

「そんな必死になって逃げないでくださいよ、別に取って食おうってわけじゃないんだから」

 

「ごごごごごめんなさい!?」

 

「...傷つくなぁ、俺ってそんな怖い?」

 

 

 

 

 

 

「自宅にも人がいたんじゃ詰みじゃないか!!!!」

 

「ごめんなさいね、逃がすわけには行かなかったのよ」

 

白々しく言う女性は、公安委員会の会長。

ドラえもん捕獲作戦決行にあたり、彼の住まいと実名、活動時間の割り出しなど。

 

 

を、指示した偉い人。

 

「それでは、実りのあるお話をしましょう。路傍 猫潟(ろぼう ねこがた) さん?」

 

「名前まで割れてる…いや、家を知られてるなら当然か…」

 

 

 

 

 

 

両者擦り合わせを行い、落とし所を探る。

共通している部分は秩序の安定、維持。

 

公安が求めるのは、いわゆる子飼い。

こちらの指示に従い、言われた事を忠実に実行する狗。

 

対してドラえもん:猫潟が求めるのは柔軟性。

西で困る人あれば行って手助けし、東で泣く者あれば行って慰める。

 

首輪を付けて飼い慣らしたい公安と自由に助けに行くことを望む猫潟。

 

折れたのは公安の方だった。

畢竟(ひっきょう)、ワープ能力がある以上留め置くことは出来ないと判断したのだ。

 

 

「では、こちらが大規模作戦を実行する際は招集に応じる。という事で」

 

「うん。それ以外は自由に動かせてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私に、何か用かな?」

 

「ええ。神野区への襲撃にあたり、貴方に協力して欲しいことがあるのです」

 

「協力と言うと?」

 

「それは僕から言うよ」

 

「え、ドラえもん!?」

 

「やぁ、久しぶりのび太くん」

 

時は神野区にある(ヴィラン)連合アジトへの襲撃作戦前。

オールマイトは公安に呼び出されていた。

 

「今度の襲撃で、君には1度死んでもらいたいんだ」

 

「what!?!?な、何故だ!?生き返る術なんて無いぞ私には!!アレか?ドラえもんがまた何かするのか!?だとしても1度死ねというのはあんまりじゃ...」

 

「落ち着きなよ!何も本当に死ぬ訳じゃないさ」

 

そう言ってポケットをまさぐり、取り出したのは。

 

「コピーロボット〜」

 

鼻の赤い、片手サイズの人形だった。

 

「コピーロボット?」

 

「そう。さぁ、のび太くん。鼻の部分を押してみな」

 

「Hmm…では、失礼して」

 

ポチっと押す、と言うより触れてみると。

人形はみるみると姿形、大きさまで変えて。

 

「私だ!!」

 

「私だぁ!?」

 

オールマイトに変身した。

 

「コイツは鼻を押した本人そっくりに変身するロボットでね。見た目はもちろん、喋り方や性格なんかもそっくりそのままなんだ。力の強さなんかは再現できないけど」

 

「へぇ〜」

 

自分そっくりの人形をまじまじと見るオールマイトを横目に、ドラえもんが次にポケットから出したのは、オールマイトのヒーロースーツ。

 

「私のスーツ?」

 

「を模したただの服。いわゆるコスプレ衣装だね。コイツに、このグレードアップライトを当てる」

 

黄色い持ち手、青色のレンズの懐中電灯の光を当ててから、オールマイトに手渡し。

 

「一旦着てくれるかい?」

 

「あ、あぁ...」

 

訝しみながら、1度部屋を出て。

コスプレ衣装を纏って戻ってきた。

 

「着心地はどうだい?」

 

「良好だね。普段使っているものと遜色ないよ。」

 

「だろう?グレードアップライトは、どんな物でも本物に変えるライトでね、ただのコスプレ衣装だったヒーロースーツを本物に変えたんだ。さらにはグレードアップされた衣装を着ると、着た人の特技までグレードアップ出来るんだ」

 

「...つまり、私が着ると?」

 

「触れたもの全てを壊す超パワーが手に入る?」

 

「危ないじゃないか!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

「コピーロボットの特技は、模倣。オールマイトに変身したコピーロボットに、”本物”のヒーロースーツを着せれば、そのパワーさえも模倣出来る。正真正銘、2人目のオールマイトだ」

 

「なるほど、今回は私の代わりに私のコピーが出向くと」

 

「そ。そこで崩壊に触れて壊れてもらう」

 

「...ちょっと、可哀想じゃない?」

 

「気持ちは分かるけど、コピーロボットはあくまで模倣してるだけで、実際に感情がある訳じゃないよ。定められた指令を確実に遂行する、忠実なロボットだ」

 

「Umm...そもそも、何故死ぬ必要が?」

 

「AFOの復活が懸念されるからだね。彼が騒ぎを起こせば、必ず大きな被害が出る。しかし、君がいると良くも悪くも、慎重な行動になるだろう。そうなると、水面下での把握できない被害が広がることになる。」

 

「目に見える問題に注力出来るようにするため、か...」

 

「そうゆう事、さすがのび太くん。ちなみに、一部のヒーローには公表するから、よろしくね」

 

「それは、まぁ構わないが...その、のび太くんって呼ぶの。そろそろ止めてくれない?」

 

「ムリ、ぼくの中では君はもうのび太くんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、予定通りコピーオールマイトは死柄木に接敵。

しかし、その指に触れる前に予定外の強制転移。

 

AFOの復活、邂逅。

攫われた生徒を助ける為の戦闘が始まる。

コピーロボットは奮戦した。

 

(ヴィラン)連合の爆豪勝己への接触を防ぎ、AFOの攻撃を捌き、市民への被害を受け止めた。

 

救出が成ってから攻勢に出たが、その体は既に限界に達していた。

腕はヒビ入り、超パワーを維持するエネルギーも尽きかけていた。

 

それでも、模倣した先は平和の象徴だ。

無かったはずのエネルギーを右腕に宿して振り抜く。

 

 

 

絶望的な状況でも不敵に笑い、拳を掲げて自身の存在を示す。

 

悪は許さないとその指を突きつける。

 

 

 

 

しかし、機械仕掛けのその身体は、もはや動かなかった。

模倣された英雄は、正しく英雄として散った。

 

 

 

「お疲れ様、正直キミがここまで活躍するなんて思いもしなかったよ」

 

「ありがとう、もう1人の私。ゆっくり休んでくれ、次は私の番だ」

 

 

ただの人形に戻ったソレを、2人は壊れた道具とは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死穢八斎會襲撃。

その現場に呼ばれたドラえもんは、通り抜けフープを使ってルミリオンと共に先行していた。

 

 

治崎廻の元にたどり着き、壊理の保護に成功。

しかし、オーバーホールが辺り一帯をめちゃくちゃにしてしまった為に通り抜けフープでは離脱不可、どこでもドアも、開けて入って閉じる前に邪魔されてしまう。

 

 

 

「壊理ちゃんをお願い!治崎は俺が!!」

 

「わかった!絶対に守るから気にせずやっちゃえ!!」

 

 

 

激しい戦いの中、ドラえもんに向けられた銃口から個性を消す弾丸が放たれる。

ひらりマントを掴んではいるが、自分に飛んでくる弾丸に気付けていなかった。

ルミリオンは、自身を盾にして、ドラえもんの個性が消えるのを防いだ。

 

 

 

 

 

デク、ナイトアイが到着しルミリオンに代わり戦闘開始。

無個性となったルミリオンは壊理と共に戦線離脱を図り、その援護にドラえもんが付けられた。

 

戦闘の疲労で歩くこともままならないルミリオンに肩を貸し、崩壊しかけている廊下を通るが、途中で壊理が引き返してしまう。

ルミリオンはドラえもんに、壊理を追うようにと言い、その言葉に従ったドラえもんが戦場に戻ると。

 

崩壊した天井から、リューキュウとウラビティ、フロッピーが降りてきていて、ナイトアイが腹部を貫かれ倒れていた。

デクは壊理を背負って上空へ、異形化した治崎と戦っている。

 

 

程なく、治崎を打ち倒しデクが地上へ帰還。

暴走した壊理の個性は、救出されたイレイザーヘッドにより無力化された。

 

 

 

 

 

 

「ナイトアイ...」

 

「......オールマイト。最期で、ようやく会う気に?」

 

負い目、償いを求めるオールマイトに自分が好きでやった事だと返すナイトアイ。

これまでの変えられない未来を緑谷が変えてくれたと言う。

 

「未来は不確かで、貴方は考えを改めてくれた。私はそれで十分...

ただ、心残りは...」

 

「サー!!」

 

看護師を引き摺りながら、ミリオが入ってくる。

後に、ドラえもんが続く。

 

「ドラえもん、キミなら何とか出来ないかい?」

 

「出来るよ、それを聞きに来たんだ」

 

「ホントかい!サーを治せる!?」

 

「キミの消えた個性もね。ただ、どちらか一つだけだ」

 

「それなら、ミリオの個性を……」

 

「ダメだ!サーを治してくれ!!」

 

ミリオの個性を戻す事を願うナイトアイを遮って、叫ぶ。

 

「うん、君に助けられた身だ、君の意見を通そう。でも良いんだね?君は今後無個性で過ごすことになる」

 

「いけない、ミリオ……、お前は、最高のヒーローに」

 

「構わない。個性だけが、ヒーローの全てじゃない」

 

「わかった。猶予は無さそうだ、すぐにやろうか」

 

 

 

 

腹部の穴と欠損した左腕は、見事に元通りになった。

それこそ、時間でも巻き戻ったように。

 

「その力があれば、ミリオの個性も戻せるんじゃないのか?」

 

「出来るとも、でも燃費がすこぶる悪いんだ。1度使ったら暫くは使えない。再使用に5年かかったからね。」

 

「…1度、使った事があると?」

 

「オールマイトにね。今回の君と同じくらいの大怪我だったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

群訝山荘への襲撃前、ドラえもんは自宅でひみつ道具を並べて呟いた。

 

「……足りなくなっちゃったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回書かなかったこと。

コピーロボットが指さした先は正真正銘敵に対して。
事情を知らない緑谷くんが深読みしただけ。

公表先はエンデヴァー、ホークス、ベストジーニストと、親交のあったサーナイトアイ事務所。

実は壊理ちゃんの個性暴走で、デクは瀕死。
雄英入学時でOFA常時50%、死穢八斎會では70%まで上がったが、そのせいで自滅による相殺が間に合ってなかった。

ので、ナイトアイとオールマイトの会話には参加出来てない。
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