AFOの攻撃で左耳が抉られる。
ホークスの羽根で辛うじて軌道はずらせたが、全盛期であれば守れていた攻撃だった。
持ち前の速さは失われ、サポートアイテム込みでも補いきれない弱体化。
間違っても子供が居てはいけない戦場で、個性の元である耳を削られて。
耳郎響香が吼える。
恐怖に怯え、苦痛に竦み、弱者と
「あんたのせいで友達が、泣いてたんだよ!!!」
そんなものは知らないと吼える。
残った耳のアンプに繋いだスピーカーから音波を放ち、AFOの動きを止めにかかる。
威力が足りないと嘲笑いながら反撃に移るAFOを止めたのは、彼の中にある個性の意志だった。
一度は取り込んだ新秩序でも表れなかった事象。
(当てられたとでも言うのか、弱者の弱さに)
「ホークス!!」
(音波振動 付与!)
3撃。
寸分違わず同じ場所に打ち込まれた斬撃は、高硬度の装置に確かな傷をつけていた。
「ちり積もっすわ」
高周波振動により斬れ味を上げた太刀でまた同じ場所に斬り掛かる。
刃と共に、仮面の一部が砕ける。
「ツクヨミ!
自分の上着を黒影に被せ、ツクヨミは自前のマントを腕に巻き付け、跳ぶ。
「じゃ、また後で!」
(今のホークスのパワーでは、致命の一撃には届いていない。ならば!)
纏ったマントの下から、影を取り込んで肥大した黒影の腕が伸びる。
AFOが僅かに危機を感じる威力。
しかし、避けられない。
「
その一撃で、AFOが被っていた仮面は砕けた。
そのまま落ちてきたイヤホンジャックを抱えて、再び上空へ。
「時間稼ぎだと思ってたんでしょ、羽虫って実際...」
ホークスが残った太刀を構えて追撃に疾る。
「結構煩わしいっすよね!!」
(今のは避けなければならない攻撃だ。なのに、認識が遅れる)
その身に有する個性たちの反逆によって、回避行動も迎撃も一手遅れる。
数多の感知個性を奪い、人よりも感覚が優れているにも関わらず。
落下するAFOに、ホークスが迫る。
満足に身体が動いていない今なら。
(今なら一閃。殺せる!)
全身から触手が伸びる。
イヤホンジャックとツクヨミに迫り。
それを庇ったホークスの背に突き刺さる。
「そのしつこさが」
前に
「君を歪めたのだろうに」
庇ったエンデヴァーの右腕が、跳ね飛ばされる。
「エンデヴァあああああ!!!」
「ウォオオアアアアアア!!!」
無くした腕を、炎で象る。
張られたバリアの上から振り下ろされた拳は、欠片構成されていた仮面を再び吹き飛ばした。
貫かれた脇腹を焼いて止血して、No.1は宙に立つ。
自身の卑屈を、努力と
己を慰めることなく、ひたすらに心を灼き続ける。
「この先 生涯、”よくやった”と、自分を慰めることは無い
ㅤこの戦いを終わらせるのが、俺の使命だ」
(まさか
構えた姿がオールマイトと重なる。
吐く息に炎が乗り、右の炎腕が渦巻く。
(...手負いのヒーローが最も恐ろしい)
目の前に炎の拳があった。
「は?」
「遅いんすよ」
炎の推進力に剛翼を合わせて、意識の隙間に割り込んで迫る。
「バニシング ︎︎ジェットバーン!!」
「プランと違うぞ!上で仕留めるんじゃなかったのか!?」
「今のはプロミネンス撃つとこでしょ!」
「そう何度も撃てる技じゃない、防御を崩さなければ...」
AFOが防御したのを見て、技を切り替えていた。
大きく息を吐いて熱を逃がす。
心を灼いても、冷静さは欠いていなかった
「冷静じゃないっすか」
「いいや怒りが収まらん!!」
そのまま地に落ちたAFOに突っ込み、張られたバリアを掴み、剥がす。
地を引きずり、荒地を越えて森へ入り、なおも炎を吹き上げて直進する。
(あの羽虫どものせいでマスクが...身体が思うように動かない。
︎︎だがこうも密着すれば)
触れようとした手が視線で焼かれる。
「お前の手は、人の未来を壊す手だ!」
「君も壊したろう!」
「あぁそうだ」
(俺の過ちが燈矢の姿となり、多くの人の未来を奪った)
長距離の助走をつけて、エンデヴァーは上空へと上がる。
「怒りも恨みも罰も!俺が受け続ける!!」
「っぐお!」
特大のプレッシャーがAFOを襲う。
羽交い締めにされて、防御も回避もままならない。
全身から漏れる熱が、噴き上がる炎が、焦がされた大気が。
エンデヴァーの全てがAFOを灼く。
「やめ...」
「プロミネンスバァアアン!!!」
紅炎が広がり、辺り一帯を紅く照らす。
熱が引くと共に光も落ち着いてくる。
エンデヴァーが抱えていた物は、真っ黒に炭化して、傍から見ても生きてはいないと分かるほどのものだった。
「離せ!エンデヴァーさん!!」
「この総決算に、僕が何の仕込みもなくのこのこ現れたと思ったか?」
炭化して、人などと言えない黒い固まりから、人の部位が再生される。
「
「前回は防戦一辺倒で何もさせてもらえなかったと聞く」
黒焦げた肌が剥がれていき、口だけが残っていた頭部には目と耳と、髪も
までも生え揃ってゆく。
「ヒーローとは
肉体は筋肉が付き、とても歳経た者とは思えない身体つきをしている。
「僕らは夢に向かって、突き進む」
死穢八斎會から奪った個性破壊弾を分析し、取り出した壊理の個性因子。
効果は巻き戻し。
それを肉体に打ち込んだAFOは、その身体を緩やかに退化させながら目的地へと向かう。
戦況は目まぐるしく変わる。
AFOが肉体の全盛期を取り戻したと同時、黒霧が目覚め
解き放たれる。
トガヒミコがトゥワイスをコピーし分裂。
ワープゲートを通って、大量のコピートゥワイスが各戦場に送られる。
合わせて、ショートと戦っていた荼毘がエンデヴァーの元に出現。
エンデヴァーは荼毘に応対することになった。
AFOはホークスの個性を奪いそのまま飛翔。
死柄木弔の元へ。
その道中。
「行かせるかっ!!!」
「なにっ!?」
オールマイトが急襲する。
黒いボディ、各所に武装、頭部は触覚を思わせる黄色いツノがあしらわれたメット。
AFOを取り押さえながら、
「オールマイト!貴様が生きていたことは分かっていたさ!!」
「だろうな!お前はアジトを割らせなかったもんなぁ!」
元はAFOの暗躍を防ぐための嘘の報道だったオールマイトの死。
しかし、その情報に踊らされることなく水面下にて死柄木の完成を待った。
「なにより、サーチ持ちだったもんなぁ!!」
オールマイトを弾き飛ばし、レーザーで追撃。
反動でAFOの腕が焼き切れる。
ブラックウィップで拘束、チャージズマで電撃を送る。
「電撃で、再生がっ!」
「セロファン!ビルドアップ!」
ブラックウィップを巻き取って高速で接近し。
「シュガーマン!!」
脚部追加装甲で威力を底上げしブーストも乗せた蹴りを見舞う。
「シュートスタイル ︎︎スマッシュ!!」
そのままラッシュをかける。
「...
掌から放たれる莫大なエネルギーを持つ衝撃を。
「ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ︎︎」
不可視のフィールドで掻き消した。
「は?」
「大振りで距離取ろうとするとこも変わってないなぁ!えぇ!?」
消し切れなかった分は、オートガード”ツクヨミ”が流した。
ここまで、アーマーの損壊は
ツクヨミは70%ほどの耐久力を残している。
「どうだよAFO、私のこれは。私が考え、友人たちが仕上げてくれた物だ。このスーツは、頼りになる友から贈られたものだ!」
「無個性が...OFA前提の戦い方しやがってっ!
胸部が発光。
光塵の衝撃がオールマイトを襲うが、再度ツクヨミが展開、コレを防ぐ。
その隙に遠くに停めてあった車体から弾丸が発射。
外角を剥がしながらAFOに突き刺し。
「!?」
「超酸注入”Pinky”!」
内部に注がれた劇毒を中心に、全身が腐食と再生を繰り返す。
もはや叫ぶことも怒鳴り散らすこともなく、左腕を倍加させそのまま殴り飛ばした。
殴り飛ばされてビルの屋上。
金網に辛うじて引っかかりアーマーの破損状況を確認する。
全体損耗率65%
左腕部、動作補助機構に異常。
右腕部、外装損傷、内部構造露出。
左脚部、追加装甲喪失、スラスター破損
右脚部、追加装甲破損。
戦闘行動に支障なし。
「動作補助起動。」
「...あぁ」
後からやってきたAFOは、少し幼くなっていた。
体内の毒を排出するため、自損する程の威力での個性使用。
ダメージを受けるほどに巻き戻しが進行する。
「エルクレス!全部盛りだぁ!!」
左右の手に
「なんだよ逃げ隠れか?さっきまでの余裕はどうした?」
(来た)
先回りしていたAFOが、ビルの壁に手を着ける。
赤黒い触手が壁を伝って、オールマイトに殺到した。
「省エネで
その攻撃の隙間を、
が。
2体の異形が待ち構えていた。
「嘘つきめ!」
「省エネさ」
追われながらも再び路地に入り、入り組んだ地形を複雑に曲がって振り切ろうとする。
その先で、壁を突き破ってAFOが拳を振り下ろしてきた。
「冷却砲!」
咄嗟に右の砲でAFOを凍らせる。
至近距離での放射。
余波はオールマイトにも及び、接触していた砲を起点にお互いを繋いでいた。
遥か上空で、
「負ける気がしないぜAFO!この名に焼かれなぁ!!」
ビルから引っ張り出し、射線上へと無理やり持ってくる。
砲台から
「
自分事撃たれたそれから、オールマイトは脱出する。
アーマーの表面にレーザー熱を軽減させる特殊光学樹脂、インビジブルガールを塗布して、自分を囮にした攻撃を可能にした。
過剰なエネルギーの放出に、エルクレスは機能の維持が不可であると報告してくるが、続行を指示。
自身も胸部装甲を展開し、
しかし、それでもAFOは動く。
触手でオールマイトを弾いて音波を止める。
アーマーの
両腕を地面に拘束するが。
「バッテリー残量ゼロ、各部コンデンサ オーバーロード。爆砕します。」
先に限界が来たのはエルクレスだった。
レーザーの照射が止まり、発光する子供が土煙の中から殴りかかってくる。
スラスターの制御が間に合わずそのまま壁に激突するオールマイト。
悠然と歩いて迫るAFOは、とどめを刺さんと身体を変化させるが、途中で動きが不自然に止まる。
そこにガントレットが投げつけられ、爆破。
飛行ベースに乗ったステインが。
赤いヒーロースーツを纏った男が。
AFOへと迫る。
「なんだ、ピンピンしてるじゃないかオールマイト」
「あぁ」
赤いタイトなスーツ。
メカメカしい見た目の、黄色いグローブとブーツ。
ロードバイクのヘルメットを思わせるシルエットの小麦色をした頭部装甲には、丸みを帯びたクリアレッドのバイザーが、その真ん中には真紅のノーズガードが。
背にマントを羽織り、胸にはオールマイトを思わせるニッコリ笑顔のシンボルマーク。
「元気、100倍だぜ」
『のび太くん、僕からのプレゼントだよ」
そう言ってドラえもんから渡されたのが、赤いヒーロースーツだった。
折り目正しく畳まれたその上に、裏返されたヘルメット。
その中にガントレットが押し込まれ、ブーツは地べたに置かれている。
ドラえもんが群訝山荘に行く1週間前のことだった。
「取り敢えず着てみなよ、サイズの調整もあるからさ」
「あ、あぁ...分かった」
他の人もいなかったためその場で着替える。
ズボンを履いて赤い上着に袖を通し、腰にベルト。
ブーツに足を入れガントレットを装着、マントを羽織り。
最後にメットを被ったら。
「うん、よく似合ってる。名付けて
「危なくないかな、それは」
「良いんだよ。丸パクリって訳でもなし、それになりきりは大切さ」
「なりきり?」
「だってキミの中の、最初のヒーローだろ?』
「僕、アン〇ンマンってね」
ブーツと背部には特殊推力機:
メットには2つのセンサーがAFOの動向を見張り、高性能AI、
バイザー右には放出系の個性を解析し、反エネルギーで相殺する
左のガントレットには硬質防盾、
右のガントレットには2つの電磁石を利用した拘束具、No.13と、遠距離での狙撃と牽制でのばら撒きを切り替えられる多機能銃撃システム、
胴体のスーツには、衝撃を吸収、循環させ各部にエネルギーに変換する、
ノーズガードには対象に指向性の音波を流し思考を阻害する
これら全ては取り敢えず形にしたまま倉庫の肥やしになっていたものだった。
ドラえもんがそれを引っ張り出して、グレードアップライトを当て本物に仕上げた。
背中のひらりマントは餞別だ。
ステインが着けているマスクはUMと共に戦うために作られた、
「来いよAFO、ラスボス戦に第2形態はつきものだろう?」
ぶっちゃけここが書きたかったから一旦殺したまである。