艦隊これくしょん〜ゴップ閣下の優雅な引きこもり生活〜   作:rahotu

4 / 8
第4話

横須賀鎮守府海軍軍令部その防空壕地下深くに築かれた議事堂にて、現在各鎮守府の主要提督たちが集まっていた。

 

その傍らには、それぞれの第一艦隊旗艦が控えお互いに無言の牽制と戦力の誇示とを行っていた。

 

長方形に作られた議事堂の右の長辺に坐している横須賀鎮守府派は、金剛型戦艦金剛姉妹四隻が揃い踏みし、軍閥の象徴である長門、陸奥もその姿を見せ艤装の巨砲を威圧的に光らせていた。

 

その真向かいにの呉鎮守府は華の一航戦赤城、加賀、さらに最新の装甲空母大鳳を誇示するかのように立ち、鋭い海鷲の様な眼光が並み居る諸提督達を射すくめている。

 

両者の間の佐世保舞鶴鎮守府も虎の子の重雷装巡洋艦北上、大井、木曾を出しているが此方は木曾以外緊張感が抜けた様子で北上など机の上に両手を出してて突っ伏し暇そうにし、大井はそんな北上相手に他愛のない会話をし北上は「うん、うん」と適当に相槌を打っていた。

 

この議事堂の外ではここにいる以外の提督達とその艦娘が控室で待機していた。議事堂の中は正規のそれも極限られた将官クラスの提督かそれに準ずるもの、及び本部付きの参謀等しか入室を許可されておらず、実質民間人提督とその駆逐艦は蚊帳の外に置かれており、彼らの不満の種となっている。

 

そして我らが凡人にして俗物ゴップ大将はというと、議事堂の奥に坐し執務の時とは違い右目を眠たげに細め如何にも凡庸そうな様子であり、彼の一段上の席には横須賀鎮守府路簿巣大将が議長席についていた。

 

本来伝統的に海軍では連合艦隊の会議所を旗艦に置くべしとの考えがあるが、深海棲艦出現後主だった通常戦闘艦艇は海底に沈み、変わって艦娘が主力となると同時に陸へと移された経緯がある。

 

船の上では万が一深海棲艦に攻撃された場合逃げ場はなく、周囲を艦娘で護衛するとなるといったい何処がするかで揉め、陸に移しても今度は何処で開くのかで派閥同士の抗争が繰り広げられ、結果施設とスペース並びに名目上の本拠地という消極的な理由と議事堂には特別秘書官枠で艦娘を一提督一人同席を許可するという護衛というには過剰すぎる武装持込み許可により横須賀鎮守府で開かれるようになったのだ。

 

 

 

 

 

 

さて、今回の議題だがゴップ大将は正直やることはなかった、いや寧ろ積極的に関わることを避けていた。

 

何故なら議題が「深海棲艦の本拠地があると思わしきハワイ諸島を攻略するため、橋頭堡であるミッドウェー攻略とその支援作戦についての議論」なのであるが、正直ゴップ大将は表情はどうであれやってられない様子であった。

 

そもそも会議の内容自体のっけから横須賀と呉どちらが主導するかで揉め、互いに対する見栄から自分たちの主戦力を次々に参加させ気が付けば空前の規模の大作戦となっていた。

 

横須賀、呉は所属する戦艦、空母の大半が参加し佐世保、舞鶴は戦力バランスの関係から虎の子の重雷装巡洋艦に軽空母を出さざる得ずそこに駆逐艦も含めれば百隻近い艦娘が一度の作戦に投入されることとなる。

 

作戦期間中に消費される燃料弾薬ボーキサイトに鋼鉄、使用されるドックの確保に高速修復材から提督と艦娘との通信網の構築、それらを生み出すための天文学的な軍事費とが無尽蔵に積み重なる作戦。

 

正直言ってこの馬鹿げた作戦の為に主力の大半を投入し本土をほぼ空にする等軍事的冒険主義以前の分の悪い博打でしかない。

 

指揮系統もはっきりとしない中、相互の密な連携を必要とする二つの作戦がうまく進むのかどうか?敵戦力に対する見積もりの甘さ、敵の本拠地近くに攻め込む必要の為補給の大半は洋上補給となるが参加戦力の内主力の半数も洋上補給の経験がなく、またその訓練期間が三週間と短いこと、そもそもその補給艦隊を守るための戦力を唯でさえ少ない本土からどう都合するのか?

 

それら多くの解決すべき問題がありながら作戦の準備期間は僅か二カ月とされたことにゴップ大将は流石に心中穏やかではいられなかった。

 

この重要な作戦に対しこのあまりにお粗末な作戦内容にその準備、正直ゴップ大将はこの時点で軍閥組織の限界点を悟った。

 

それはすでに鎮守府というシステムがゴップ大将が築き上げた補給と輸送による後方からの間接的支配の統制下から離れつつあるという事実でもあった。

 

深海棲艦出現当初、神出鬼没な敵に対し一々上の指示を待っては被害が返って拡大するため鎮守府は独自の判断で対処しその迅速な判断は確かな成果を上げていた。

 

しかし、現場独自の判断で動くためかえって全体の協調性を欠き軍の人事権が及ばぬ鎮守府はその軍閥化を助長させてしまった。

 

そもそも、海軍の人事権とは組織全体の質の均質化と全体の活性化以前に軍閥化の抑制という目的でもってなされる。決まった期間ごとの異動は人間同士の馴れや癒着を防ぎ部隊間での腐敗防止にもなる、また憲兵組織が存在することで今まで海軍は規律と士気を保持し、強力な中央集権体制を確立していた。

 

中央の混乱が地方の軍閥化を招いた例は多々あるが、それでもゴップ大将が間接的にしろ中央の統制を辛うじて今まで保ってきたが、それぞれの軍閥が安定しある程度中央から独立して作戦行動を行えるまでに戦力が整った今、鎮守府の暴走が始まろうとしていたのだ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。