艦隊これくしょん〜ゴップ閣下の優雅な引きこもり生活〜   作:rahotu

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尻切れとんぼ以前ですが、この話はこれで一旦閉じます。短い間でしたが、閲覧感想のほどありがとうございまし。


第8話

 

 

「…であるからして、実戦経験豊富な艦娘と新進気鋭の新造艦である諸君らが手と手を携える事によって、祖国防衛の礎と…」

 

空疎な伝文句と、空回りする熱気とが支配する議事堂で今新たな艦隊の結成式が行われていた。

 

今声高らかに艦隊に檄を飛ばす政府のお偉いさんも、整列する艦娘も等しく同じような思いでいる。

 

所属する艦娘は先の海戦の生き残りと新造艦と言う名の未成熟な艦娘との混合、有り体に言って、敗残兵と足手まといの寄せ集め集団。

 

それが今日昇進した楊文李中将が指揮する艦隊の全容であった。

 

生き残りの艦娘は今後の展望に暗澹たる思いを抱き、新造艦艦娘は本来誇らしげに張られている胸に大きな不安と戸惑いとを覚えつつも、式だけは滞りなく進んでいき、最後に艦隊司令官が壇上に上がりその姿に幾人かが失望のため息を漏らす。

 

見るからに歴戦の強者とは言い難い若過ぎる中将、軍人らしい容貌を目付け出すことが困難な姿であった。

 

これで祖国の為だとか、死ぬまで戦い続けろとお決まりの口上を述べて終わりだろう。

 

そう誰しもが思っていたが、

 

「…その、なんだつまり祖国の為だとか、命を掛けろとかじゃなくて…美味い紅茶を飲めるのは生きている間だけだから、皆んな死なないように戦いぬこう」

 

後に『楊の紅茶演説』と呼ばれる有名な演説は当人たちにとってはごく当たり前の事を当たり前に言っただけであり、楊にとっては当然でしかしながら受けた側の衝撃たるやある者は怒りで顔を赤らめ、ある者は感心したように次いで面白いものを見るような目つきになった。

 

これが後世に不沈艦隊、奇跡の演出者楊文李と幾多もの異名で呼ばれる艦隊が産声を上げた瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴップ大将改めゴップ元帥はその本拠地を本土に戻し、海軍軍令部の総司令官室の主人として君臨していた。

 

敗戦の後始末と草刈りを終えたゴップ大将は、鎮守府の解体を宣言、並びに臨時政府の立ち上げと軍令部の統帥権回復を述べ自らを元帥に任じ、本土に凱旋を果たした。

 

臨時政府のメンバーはゴップ家と近しい者達が占め、新たに組織された海軍は臨時政府に忠誠を誓う旨を高らかに宣言し事実上ゴップ元帥は軍民、文民のトップとなりおおせた。

 

新しい海軍は鎮守府の解体を推し進めると同時に解放した海域の放棄、戦線の縮小とドイツ以外の国々とも連携を取りつつ艦娘技術の提供など有りたいに言ってなりふり構わない状態であった。

 

楊文李中将の登用も以前では考えられない事であったが、前線を支える人材が払底した今人種、国籍、信条の差など考える贅沢など有り得なかった。

 

その中でゴップ元帥は驚異的な活躍で各国おの交渉を纏め、軍組織の改革と自身の保身を築き上げ名家ゴップ家の威光は極東全域にまで及んだ。

 

後世においてゴップ元帥の疑う事なき功績に、敗戦後の極東で一切の物資欠乏を起こさなかったばかりか、大陸側との強力にして堅固な貿易路は名将楊をして

 

「自身が艦隊の司令官であった間に食事に困る事はなかった」

 

と言わしめるほどであった。

 

戦線の縮小と経済の安定、周辺国との関係改善、新造艦艦娘の建造によって一定の安定期を作り出すことに成功したが、極東の平和はなお多くの時間と鉄と血を必要としていた。

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