天才ロリ(合法)と一般JKの百合   作:( 눈_눈)

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天才ロリ(合法)と一般JKの百合

白百合優里は、そのチャイムを二回鳴らした。

 

一回目は、常識として。

二回目は、逃げ出したい気持ちをごまかすためだった。

 

高級マンションの最上階。

ホテルみたいに静かな廊下に、インターホンの電子音がふわりと溶けていく。

 

(時給、ほんとにこれで合ってるんだよね……? ゼロ一個間違ってるとかじゃないよね?)

 

不安を誤魔化すように取り出したスマホのメモには、求人サイトの画面をスクショした画像が残っている。

 

――家事代行アルバイト募集。

――料理・洗濯・掃除ができればOK。

――時給1万円。交通費全額支給。

――勤務時間は応相談。

――勤務場所:個人宅。

 

(やっぱり怪しい……。怪しいけど、お金は欲しい……)

 

優里は制服のスカートの裾をぎゅっと摘まんで深呼吸した。

もう一度チャイムを押そうか迷った時――

 

「……開いてる」

 

ドア越しに、少しだけくぐもった女の声がした。

 

「えっ、あ、はい! 失礼します!」

 

自動ドアみたいになめらかに開いた扉の向こうを覗き込んで、たまらず優里は息を飲んだ。

 

銀色の髪――というより、光の加減で淡く透けて見える、柔らかな灰色。

切りそろえられた前髪の下から覗く瞳は、硝子のように澄んだ青空を映している。

 

背丈は、優里の胸元くらい。

大きめのパーカーにすっぽりと包まれて、しかし華奢なのがひと目でわかる身体。

その顔立ちは、ひどく端正で、まるで人形のようで――

 

(……やば。ほんとに、こんな人いるんだ)

 

思わず見惚れて黙り込んだ優里に、少女は瞬きも少なく首をかしげた。

 

「あなたが、白百合優里?」

 

「は、はいっ! 白百合優里です! あの、本日、面接ということで……」

 

「うん。入って」

 

それだけ言って、くるりと背を向ける。

そのまますたすたと奥へ歩いていってしまい、ドアを押さえているこちらを見ることもない。

 

(え、そっけない。...でも、声すごく綺麗……)

 

置いていかれないようにと慌てて靴を脱いで中へ上がると、まず鼻をくすぐったのは、微かな甘い匂いと、電子機器特有の熱の匂いだった。

 

リビングに入ると、優里は「わぁ」と小さく声をあげた。

 

壁一面の棚に並ぶ、ケース入りのCDやレコード。

別の壁には、ギター、ベース、ヴァイオリン、サックス、果ては見たこともない弦楽器まで、所狭しとぎゅうぎゅうに掛けられている。

 

床には、コードと機材と譜面が散らかり放題で、ソファにはくしゃくしゃの毛布と、飲みかけの栄養ドリンクの缶が三本。

 

(……生活能力低いって、こういうことかぁ)

 

「そこ座って」

 

少女――名雪紫音は、散らかった譜面を足で器用にどけながら、ソファの端をぽんぽんと叩く。

 

「は、はい。失礼します」

 

緊張の隠せない声で、恐る恐る腰を下ろす。

すると、向かい合って座るのかと思ったら、紫音は優里の隣、ほんのすぐ横に腰を下ろしてきた。

肩が触れるか触れないかの距離。パーカーの袖が、優里の腕にかすかに触れる。

 

(ち、近っ……!?)

 

心臓が、唐突に仕事を始めた。

 

ドクン、ドクン、と、耳の裏まで血がのぼっていくのがわかる。

 

紫音はそんな優里を気にも留めず、じっと顔を見上げてきた。

至近距離で見る瞳は、本当に、光を溶かしたみたいに綺麗だった。

 

「家事代行のバイト。応募した理由は?」

 

「あ、えっと……料理が、得意で。あと、時給が、その……魅力的で……」

 

言いながら、自分でも情けないと思う。

もっと気の利いたことを言えたらいいのに。

でも、紫音は首を小さく縦に振っただけだった。

 

「ふぅん。料理、どれくらいできる?」

 

「ふだんは、家族のご飯は全部わたしが作ってます。和食も洋食も一通りは……あ、でもプロとかじゃ全然なくて、ほんとに普通の家庭料理ですけど」

 

「普通の家庭料理が、今いちばん不足してる」

 

紫音は、ほんの少しだけ眉を下げる。

 

「最近、お菓子と栄養ドリンクとコーヒーしか摂ってない」

 

「えっ」

 

「……あと、たまにピザ」

 

「それは、死にますよ!?」

 

学校でのノリで思わず突っ込んだ優里を、紫音はじっと見た。

数秒の沈黙。

それから、ほんの、ほんの少しだけ、口元を緩める。

 

「...決めた」

 

「へ?」

 

「怖がって、何も言わない人より。ちゃんと怒ってくれる人の方が、信頼できる」

 

さらりとした声でそう言ってから、紫音は立ち上がった。

そして、隣の部屋のドアを開けて見せる。

 

そこは、一面が防音材で覆われた、スタジオだった。

 

「ここで、仕事してる。動画サイトに曲を上げてるのは知ってる?」

 

「す、すみません、あまり音楽に詳しくなくて……」

 

「別にいい。寧ろ知らない方がやりやすい」

 

紫音は振り向き、淡々と告げる。

 

「わたしは、音楽は全部できる。作るのも、歌うのも、弾くのも。ただ、それ以外は、ほとんど壊滅的」

 

「……はい」

 

「だから、あなたに頼みたいのは、生活の全部」

 

「ぜ、全部」

 

「起きないといけない時間に起こす。ちゃんと食べさせる。洗濯して、掃除して。締め切り前でも倒れないように管理する。――それができるなら、採用」

 

あまりにもあっさりとした条件提示だった。

 

「え、えっと、でも面接とか、その……履歴書とかは……」

 

「見ても、わからない」

 

紫音はきっぱりと言う。

 

「人は、文字より、声と目を見て判断した方が、まだマシ」

 

そう言って、すっと優里の手を取った。

 

細くて、冷たい指。

その手が、当たり前のように、ぎゅっと握ってくる。

 

「白百合優里。あなたの声は嘘つく声じゃない。だから、信じる」

 

「…………」

 

「今日から来て」

 

「……はい…ん?え、きょ、今日から!?」

 

「今日、夕飯、ちゃんとしたの食べたい」

 

見上げてくる瞳に、悪気も駆け引きも、何もない。

ただ、まっすぐな欲求だけが光っている。

 

上機嫌に紡がれる鼻歌は、大聖堂を荘厳に震わす聖歌のように美しくて、華奢な身体付きがとてとてと可愛らしく歩む姿は、王者の行進のように自信と威厳に満ちていた。

 

(ああ、この人、本当に自分の才能を疑ってないんだ……)

 

圧倒的な自信と、圧倒的な生活能力のなさ。

そのギャップが、どこか可笑しくて、愛おしい。

 

優里は、気づけば笑っていた。

 

「……わかりました。じゃあ、最初の仕事は、紫音さんにちゃんとした夕飯を食べさせることですね」

 

「うん。よろしく、優里」

 

今度は、はっきりと笑った。

 

その微笑みは、神さまの彫像に、ふっと命が宿ったみたいに綺麗で。

 

その瞬間、優里の胸に、まだ名前のつかない感情が確かに、静かに落ちていた。

 

―――

 

それから、優里の放課後は、ほとんど名雪紫音の部屋で過ごすようになった。

 

「ただいま戻りましたー。今日の夕飯、何が食べたいですか?」

 

「……甘くないもの」

 

「ざっくりしてる……」

 

「魚以外」

 

「余計ざっくりしましたね!?」

 

そんなやりとりをしながら、優里はエプロンを結び、キッチンに立つ。

 

紫音の家のキッチンは、設備だけは一流だった。

オーブンもコンロも、プロ仕様みたいに立派だ。

ただ、使われている形跡はほとんどない。

 

冷蔵庫を開ければ、栄養ドリンクとエナジーバーと、謎の輸入チーズ。

あと、インスタント食品。

 

「……今日から、冷蔵庫改革だなぁ」

 

スーパーの特売チラシを思い浮かべながら、優里はため息をついた。

 

この日作ったのは、野菜たっぷりのポトフと、鶏肉のソテー、それに簡単なサラダ。

コンソメの匂いが部屋に広がると、紫音は楽譜を抱えたまま、気まぐれな子供のようにふらふらとキッチンに現れた。

 

「美味しい」

 

「まだ味見もしてないのに」

 

「美味しくない要素がない」

 

「それはちょっと褒めすぎです」

 

湯気に釣られるように紫音が鍋を覗き込む。

小さな顔がさらに近づいて、優里の肩にふわりと額が触れた。

 

「っ――」

 

温度にしては、ほんの少し高いくらいの熱。

それだけなのに、優里の背筋に電流が走る。

 

(ちょ、近い近い近い近い!!)

 

心の中で叫びながら、なんとか平静を装う。

 

「し、紫音さん、あぶないですよ。鍋、熱いから」

 

上擦った声を気にもとめず、寧ろ寄りかかるように私の肩に頭を預けてくる。

言葉は相変わらず淡々としているのに、距離感だけはどう考えても近すぎる。

自身のうるさい心臓が吐き出す吐息が、小さく美しい耳にかかってしまいそうな位置で、それに気づくこともなく紫音はじっと鍋を見つめる。

 

(心臓、ほんとに壊れるからやめてほしい……)

 

けれど、「やめてください」と言えないのは、自分でもわかっている。

 

だって、その距離感の中に、自分が特別に選ばれている感覚があって。

そのことが、どうしようもなく嬉しいから。

 

―――

 

ある日曜日。学校が休みの日。

 

朝から紫音の部屋に行くと、リビングのソファで、紫音がうつ伏せに倒れていた。

 

「紫音さん!?」

 

慌てて駆け寄ると、顔の横に置かれたタブレットの画面には、よく分からぬアルファベットや記号がずらりと並んでいて、きっと彼女には眺めるだけで音楽が聞こえるのだろう設計図が、丁寧に描かれている途中だった。

 

「……徹夜ですか?」

 

「ちょっとだけ」

 

「ちょっとの徹夜で、ここまで干からびる人がいますか」

 

紫音はもぞもぞと動き、仰向けになった。

薄いパーカーの裾が少しめくれて、白いお腹が覗く。

 

優里は全力で視線を逸らした。

 

「朝ごはん、何か食べました?」

 

「コーヒー」

 

「それは飲み物です」

 

「栄養ドリンクも」

 

「それも飲み物です」

 

「あと、クッキー」

 

「それは……飲み物に近い固形物ですね」

 

自分でも何を言っているのかわからなくなりながら、優里は額に手を当てる。

 

「熱は……ないけど、完全に栄養不足ですね。とりあえず、まずはご飯とお水です」

 

「……動きたくない」

 

紫音は、膝を抱えて丸くなった。

猫みたいにくるんと身体を丸めるその姿に、優里の胸がきゅっとなる。

 

(この人、ほんとに、守られて生きてきたんだろうな……)

 

「じゃあ、ここで待っててください。すぐお粥とお味噌汁作ってきますから」

 

立ち上がろうとした瞬間、袖がくいっと引っ張られた。

 

振り向くと、紫音が、眠たげな目でこちらを見上げている。

 

「……優里」

 

「はい?」

 

「だっこ」

 

「…………はい?」

 

聞き間違いかと思った。

でも、紫音は真顔だった。真顔で、両手を伸ばしている。

 

「立ち上がるの、だるい」

 

「え、だからって、なんでわたしが抱っこする前提なんですか」

 

「優里、背、高い」

 

「身長差は抱っこの理由じゃありません!」

 

「優里、運ぶの得意そう」

 

「いやいやいや、女子高生に抱っこされる成人女性ってどんなシチュエーションなんですか!?」

 

ツッコミながらも、袖を掴まれたままでは動きづらい。

紫音の指は、思っていたよりずっと細くて、力も弱い。

 

(……しょうがないなぁ)

 

自分にそう言い訳して、優里はしゃがみこんだ。

 

「じゃあ……立つの手伝いますから。ほら、腕、こっち」

 

「ん」

 

紫音は素直に腕を回してくる――そのまま、するりと優里の首に両腕を絡めた。

 

「ちょっ、これはもう完全に――」

 

「……だっこ」

 

耳元で、囁き声。

髪が頬に触れて、微かなシャンプーの匂いがした。

 

優里の心臓は、今日一番うるさく鳴った。

 

(近い近い近い……! っていうか軽い!)

 

体重は驚くほど軽かった。

抱き上げるというより、腕の中で支えるだけで済んでしまう。

それでも、まるで抱きしめている腕の中に確かな体温と音を感じて、この美しく小さな生命体を運んでいることに、これ以上ないくらいに満たされている自分が分かってしまい、優里は何も言えなくなった。

 

「……重くない?」

 

「ぜ、全然……!」

 

声が裏返る。

紫音は、くすりと笑った気配を見せると、優里の肩口に額を預けた。

 

「優里、あったかい」

 

「そ、そうですか」

 

「いい匂いする。明るい匂い」

 

「どんな表現ですか、それ」

 

でも、その言葉が、妙に嬉しかった。

 

自分がちゃんと生きていることを、この人が匂いで確かめてくれているみたいで。

 

ーーー

 

その日も、夕飯の片づけを終えたところだった。

 

シンクを拭いてリビングに戻ると、紫音はソファの背にもたれかかり、天井をぼんやりと見上げていた。足元には、未整理のコードと譜面の山。タブレットの画面だけが、無音のまま青白く光っている。

 

「……優里」

 

「はい?」

 

呼ばれてソファの横に立つと、紫音は視線だけこちらに向けた。

 

「ちょっと、ここ座って」

 

「え、あ、はい」

 

促されるまま、紫音の隣に腰を下ろす。

いつも通り、肩が触れそうで触れない距離。

パーカーの布がかすかに擦れる音が、やけに耳に残る。

 

紫音はしばらく黙ったまま、目を閉じた。

 

「……まだ、何も形になってないんだけど」

 

「はい」

 

「頭の中だけで、ぐるぐるしてるのがあって。――変じゃなかったら、どうしようかな……」

 

「変じゃなかったら、ですか?」

 

「うん。変だったら、全部、忘れる」

 

何を言っているのか、半分も分からない。

でも「忘れる」という言葉に、なぜか勿体なさを感じて、優里はぎゅっと膝の上で手を握りしめた。

 

「じゃあ……聞いてて」

 

そう言った次の瞬間。

 

紫音の喉から、ふ、と空気がこぼれた。

 

最初の一音は、本当にただの鼻歌だった。

言葉にならない、柔らかいハミング。

けれど、その二音目、三音目が重なった途端、優里の背筋をぞくりと震えが走った。

 

(――なに、これ)

 

知っている「音楽」のどれにも当てはまらなかった。

 

行進曲でもない。

合唱コンクールで歌わされたどこかの先生の好きな曲でもない。

カラオケでクラスメイトが歌う流行りのバンドとも違う。

ネット上に溢れる電子音楽とも違う。

 

その鼻歌は、まるで空間に別の重力を流し込んでいるみたいだった。

 

一筋の旋律がふわりと浮かんだと思ったら、そのすぐ下に、まだ鳴っていない和音の影がかすかに揺れている。

それが、次の一音でぱちり、と弾けて、「ああ、こう繋がるんだ」と理解するより早く、もう次の色に変わっていく。

 

耳で聞いているはずなのに、脳の中で視界が塗り替えられていくような感覚だった。共感覚すら幻視させる音の舞踏だった。

 

古い音楽理論の五線譜なんて、最初から存在しなかったかのように。

紫音の鼻歌は、それらのずっと上の星空で、ひとりで星座を組み替えていた。

 

(追いつけない……)

 

音が、一音ごとに「ここに来て」「でもやっぱりこっち」と、手を引いてくるのに、

こちらの足が全然追いつかない。

 

なのに、耳だけは、その軌跡を全部覚えてしまう。

 

ありえない角度で折れ曲がったメロディが、次の瞬間には自然な呼吸みたいに解決して、

「変」だと思う前に、「気持ちいい」と身体が先に納得してしまう。

 

まるで、初めて見る言語なのに、意味だけは理解できてしまう――そんな、理不尽な外国語を無理やり読まされているよう。

 

紫音は、ほんの少し眉を寄せながら、淡々と歌い続ける。

 

言葉も伴奏もないのに、そこにはもう、曲の「全体」があった。

イントロの気配も、サビの天井の高さも、そのあとに来る静かな落下さえも、ぜんぶ一緒くたに詰め込まれて、鼻歌ひとつ分の世界になっている。

 

優里は、息をするのを忘れていたことに気づく。

 

(これ、今……作ってる途中なんだよね?)

 

どこかで聞いたことがあるヒット曲とも、既存のクラシックとも似つかなくて、

でも、「完成された何か」を聴かされている感覚だけは、揺らがなかった。

 

それは、夕焼けとか星空とか、そういうわかりやすい綺麗さじゃない。

 

宇宙が最初に膨張を始めた瞬間を、再生ボタンひとつで見せられているみたいな――

聞いている側の器が足りないのに、それでもどうにか全体像を掴ませようとしてくる、傲慢なまでの完全さだった。

 

やがて、鼻歌は唐突にふっと途切れた。

 

紫音が目を開ける。

世界が思い出したかのように時間を刻んで、

青い瞳が、ゆっくりと優里を捉えた。

 

「……変?」

 

いつもの平坦な声。

なのに、ほんの少しだけ、睫毛の影が不安げに揺れているような気がした。

 

優里は、自分の心臓がとんでもない速さで鳴っていることに、そこでようやく気づいた。

 

言葉が、なかなか出てこない。

 

「……っ、すご……」

 

情けないくらい薄っぺらい言葉しか出てこない自分が、悔しかった。

 

(もっと、ちゃんと伝えたいのに)

 

「すごい」とか「綺麗」とか、そんなありふれた言葉で片づけるのは、冒涜に近いとさえ思った。

 

だって今の鼻歌は、

この部屋の空気を丸ごと組み替えてしまうくらいの力を持っていたのに。

 

自分の生きてきた世界の解像度が、勝手に一段階上げられてしまったみたいで。

今まで聞いてきた音楽が、全部「イントロ前のチューニング」みたいに思えてしまうくらい、異次元だったのに。

 

「……ごめんなさい、上手く言えないんですけど」

 

ようやく絞り出した声は、震えていた。

 

「すごすぎて、言葉が足りない感じです。

 なんか、その……今まで聴いたどの曲よりも、“これから”が詰まってる感じで……」

 

紫音は、瞬きをひとつだけした。

 

「これから?」

 

「はい。まだ何も始まってないのに、全部始まってる、みたいな……

 わたし、音楽のこと全然詳しくないのに、こんなこと言うの失礼かもですけど」

 

そこまで言って、優里は思いきって紫音の横顔を見つめた。

 

「わたしは、……絶対続き作って欲しいです」

 

意外そうに紫音は頬を緩め、再び目を瞑り深い思索の中に戻って行った。

天才と呼ばれている者達のそれですら、児戯と同等にしてしまうほどの、本物の天才。

彼女が音楽を作るその思索の中を、凡人たるわたしが知る方法はまったくない。

でも、今この瞬間、紫音が頭の中で何かを組み立て始めたことだけは、はっきりと分かった。

 

優里は、膝の上で握りしめた手を、そっと緩める。

 

(ああ、この人はやっぱり、どこか違う世界の人なんだ)

 

さっきまで自分がいたはずの「普通の音楽」の世界が、

ふと足元を見れば、とんでもなく小さな足場だったことに気づかされた気分だった。

 

天井だと思っていたものは、ただの低い梁で。

そのずっと上に、本当の空が広がっていたのだと、今さら思い知らされる。

 

その空を、まるで当たり前みたいな顔で鼻歌にしている少女が、すぐ隣に座っている。

 

優里は、自分の胸の高鳴りを押さえ込みながら、静かに息をついた。

 

――この人の生活を支える、なんて簡単に口にしていい役割じゃなかったのかもしれない。

 

それでも、もう後には引けない。

 

だってさっき、世界が組み替わる音を、確かに聞いてしまったのだから。

 

ーーー

 

その日は、紫音の部屋の空気が、いつもと少し違っていた。

 

「……ただいま戻りましたー。今日の夕飯、何が食べたいですか?」

 

エコバッグを提げて玄関から声をかけると、リビングのソファから、間の抜けたような返事が返ってくる。

 

「……優里」

 

「はい?」

 

「今日は、お祝い」

 

とてとてと近づいてきた紫音は、いつも以上に足取りが危うかった。

薄いパーカーの袖口から覗く指先が、空中でふらふらと揺れている。

 

 そして、何より――

 

(……顔、赤っ)

 

白磁みたいな肌が、頬のところだけじんわりと桜色に染まっている。

さっきまでソファに座っていたらしいテーブルの上には、空になりかけのワイングラスと、栓を抜かれたばかりのボトル。

 

「紫音さん、それ……」

 

「年に、三回だけ」

 

紫音は、ソファの背にもたれかかるように座り直すと、空になったグラスを少しだけ持ち上げた。

 

「デビューした日と、初めて再生数が一位になった日と……今日」

 

「今日?」

 

「今日、総再生10億回、超えた」

 

「あ、えっ、それって……すごっ!」

 

思わずエコバッグを床に置いて、優里は駆け寄る。

 

「それは、お祝いですね。というか、なんで連絡くれなかったんですか」

 

「……忘れてた」

 

「お祝いの瞬間を共有するっていう発想がないんですか、この人は」

 

口ではそう言いながら、胸の奥にじんわりと温かいものが広がっていく。

あの、防音室の中で生まれ続けている音たちが、10億回も世界に届いたのだと思うと、他人事とは到底思えなかった。

 

「それで、お酒を?」

 

「うん。成人してから、毎年、決めてる。特別な日だけ、一杯だけ」

 

「一杯“だけ”……」

 

グラスの中身をちらりと見る。

どう考えても、一杯では終わっていない。

 

「……紫音さん、何杯飲みました?」

 

「……なんでも数にするの、良くない」

 

「悪い予感しかしない答え方やめてもらえます?」

 

ため息をひとつついて、優里は紫音の隣に腰を下ろした。

途端に、甘いアルコールの匂いがふわりと香る。ワインの香りと、紫音のシャンプーの匂いが混ざり合って、妙にくらくらした。

 

「優里」

 

「はい」

 

名前を呼ばれた瞬間、ぐい、と肩口に重みがかかる。

 

「ちょっ……!」

 

気づけば、紫音の頭が優里の肩に預けられていた。

いつもの距離感より、さらに近い。身体の重さが、はっきりと伝わってくる。

 

「……お疲れさまって、言って」

 

半分閉じたまぶたの奥で、青い瞳がとろんと揺れている。

普段なら真っ直ぐな光を湛えているその目が、今日は、溶けかけた飴玉みたいに柔らかかった。

 

「えっと……その……総再生10億回、おめでとうございます。お疲れさまでした」

 

「ん」

 

小さく喉が鳴って、紫音の口元が緩む。

 

それだけで、胸がぎゅっとなる。

 

(なにこれ……酔ってるから? それとも、もともとこんなに可愛い?)

 

 どちらにしても、心臓には優しくない。

 

「でも、紫音さん。お酒、弱いならほどほどにしないと」

 

「強い」

 

「どこがですか。顔真っ赤ですよ」

 

「……気持ちは、強い」

 

「根性論でアルコールに勝とうとしないでください」

 

ツッコミを入れながら、そっと紫音の額に手を当てる。

熱はない。ただ、体温だけがじんわりと高くて、指先まで火照っているのがわかる。

 

「優里」

 

「はい」

 

「すき」

 

「っ!」

 

 心臓が、変な音を立てた。

 

「え、えっと、それは、その……」

 

「お酒、おいしい。音楽、楽しい。優里、落ち着く。――全部“すき”」

 

「あ、ああ、そういう……」

 

(今、一瞬だけ、違う“好き”だと思ってしまった自分が恥ずかしい……)

 

胸を撫で下ろしたのに、むしろ動悸は悪化している。

酔いどれ天才の口からぽろぽろ零れてくる「すき」が、全部こちらの神経を撫でていく。

 

「ねぇ優里」

 

「はい」

 

「ワイン、飲む?」

 

「飲みません。わたし未成年なんで」

 

「むぅ……」

 

紫音は不満そうに眉を寄せたあと、グラスをテーブルに置いて、今度は優里の膝の上にするりと頭を乗せてきた。

 

「えっ、ちょ、ちょっと!?」

 

「ここ、好き」

 

もう遅かった。

紫音は完全にリラックスした猫のように、膝の上で形を変える。髪がふわりと広がって、優里の太ももをくすぐる。

 

(これ、いつもより数倍ダメージでかい……!)

 

酔っているぶん、遠慮がない。

いつもの紫音は、距離感がおかしいとはいえ、どこかでギリギリの線を踏み越えないように止まっている気配がある。

でも、今の彼女には、そのブレーキが綺麗さっぱり消えている。

 

「優里」

 

「……はい」

 

膝の上で、紫音の指が、小さく布地を摘まむ。

それは、譜面をめくるときの癖とよく似ていて、優里はなぜか泣きたくなった。

 

「…今日一緒にいて」

 

「……いますよ。いますから」

 

喉の奥が少し熱くなるのをごまかすように、優里は紫音の髪をそっと撫でた。

細くて柔らかい髪が、指の間をするりと抜けていく。

 

「ほんとは、お酒、あんまり飲めない。頭、ぐるぐるする」

 

「それなら、なおさら控えめに……」

 

「でも、好き」

 

酔っているのか、素直になっているだけなのか。

どちらにしても、優里の心臓には猛毒だった。

 

「ねぇ、紫音さん。お水、飲みましょう」

 

「やだ」

 

「やだ、じゃないです。脱水になります」

 

「運んで」

 

問い終える前に、紫音は、またするりと優里の首に腕を回した。

 

「ちょっ……!」

 

「…だっこ」

 

「だから……!」

 

とは言いつつ、腕を解かせることができない。

紫音の手つきは、いつものように頼りなくて、簡単に振りほどけてしまいそうで。

 

(……あぁもう、断れないなぁ)

 

内心でいつもの言い訳を繰り返して、優里は慎重に身体を起こした。

膝の上の頭がずり落ちないようにそっと支えて、半分お姫さま抱っこのような格好に収める。

 

「……軽い」

 

「ん」

 

紫音は嬉しそうに喉を鳴らし、優里の胸のあたりに頬をすり寄せてきた。

 

「優里、あったかい」

 

「…酔ってないときもよく言ってますよね」

 

「何回でも言う。好きだから」

 

「…………」

 

本気で、今日という一日を忘れてくれないだろうかと一瞬願ってしまう。

こんなふうに「好き」を連射されたら、もう、後戻りなんてできない。

 

キッチンまでの数メートルが、やけに遠い。

心臓の音が、歩幅に合わせて大きくなっていく気がした。

 

「ほら、お水ですよ。ちゃんと飲んでください」

 

「優里、のませて」

 

「これ以上わたしの理性にダメージを与えないでください」

 

コップを持つ手を、紫音の口元へ慎重に運ぶ。

紫音は素直に一口、二口と水を飲んでから、またぐたりと優里の肩に体重を預けた。

腕の中の彼女は、いつも通り、壊れそうなほど軽くて、なのに抱きしめたときの重みだけは、どうしようもなく確かだった。

 

(……本当に全部、預けてくれるんだ)

 

自分で火を点けて、自分で世界を燃やし尽くしてしまいそうな天才が、今日もこうして、当たり前みたいな顔で優里の胸に額を押し付けている。

 

酔っているからかもしれない。

でも、酔っていないときの紫音も、きっとどこかで同じことを思っている。

 

――わたしは、この人の生活を支える、って。

 

そう決めたのは、他でもない自分自身だ。

 

アルコールの匂いに混ざって、コンソメやバターの、さっきまでキッチンに満ちていた香りがわずかに残っている。

 

(……明日は、二日酔いにならないメニューにしよ)

 

そう心の中で決めて、優里は紫音の背中を、ゆっくりと撫で続けた。

 

ワイングラスの中で、赤い液体が、もうほとんど底を尽きかけて静かに揺れている。

その残り少ない色が、リビングの間接照明に照らされて、紫音の頬の赤と、優里の胸の奥の熱を、優しい赤に滲ませていた。

 

ーーー

 

そんな日々の中で、優里は、いつのまにか気づいていた。

 

紫音が近くに寄ってきても、怒る人はいない。

誰も叱らないし、距離を測り直してくれる人もいなかったのだろう。

 

だから、紫音は知らないのだ。

人と人とのあいだに、どれくらいの距離を空けるのが「普通」なのか。

 

そして、優里は知ってしまったのだ。

紫音が、自分にだけ、その「知らなさ」を全開にしてくることを。

 

ソファで音源チェックをするときは、当たり前のように優里の膝に頭を乗せてくる。

新しい曲ができたときは、「意見がほしい」と言って、片耳ずつイヤホンをシェアしてくる。

ピアノのフレーズを作りたいときには、「指、重ねて」と言って、優里の手の上に自分の手を重ねて鍵盤を叩く。

 

その度に、優里の心臓は寿命を削られ続けている。

 

(こんな毎日、健康に悪い……)

 

でも、幸せで、苦しくて、甘くて、苦くて。

まるで、紫音の作る音楽みたいだ、と優里は思う。

 

―――

 

ある日の夕方。

夕飯の後片付けを終えてリビングに戻ると、紫音が床に譜面を広げていた。

 

「新しい曲ですか?」

 

「うん。歌詞はまだだけど」

 

「へぇ……」

 

譜面だらけの床に、紫音はぺたんと座っている。

その隣に、何となく距離を測りながら座ると、紫音は当たり前のように優里の肩に寄りかかってきた。

 

「……ねえ、優里」

 

「はい?」

 

「恋愛の曲、って、どうやって書くのが普通?」

 

「ど、どんな話題振ってくるんですか急に」

 

「視聴者から、『たまには恋愛っぽいのも聴きたい』ってコメントが多くて」

 

「それで、わたしに聞きます?」

 

「優里、恋愛、したことある?」

 

図星すぎて、咄嗟に言葉が出ない。

 

ない、わけじゃない。

中学のときに告白されたこともあるし、付き合った人もいた。

でも、あれは、きっと「恋愛」というより、「付き合ってみた経験」のひとつだっただけだ。

 

今、胸の奥で燃えているこの感情の方が、よほど本物に近い。

 

けれど、それを口に出せるはずもない。

 

「ま、まぁ……それなりに?」

 

ごまかすように答えると、紫音は「ふぅん」と相づちを打つ。

 

「好きって、どういう感じ?」

 

「ど、どういうって……」

 

「数字にできないから、わからない」

 

「ああ、らしい……」

 

思わず、苦笑が漏れた。

 

紫音にとって、世界はきっと「測れるもの」と「測れないもの」に分かれているのだろう。

音の高さも、長さも、音圧も、全部数値にできる。

だから、理解できる。

 

でも、「好き」は。

 

「そうですね……会いたくなったり、声が聞きたくなったり、その人のこと考える時間が増えたり……かな」

 

「それは、もうなってる」

 

「え?」

 

あまりにも自然に言われて、耳を疑った。

 

「優里の声、落ち着く。優里がいないとき、生活のリズムが崩れる。――これは、『好き』?」

 

「……っ!?」

 

頭の中で警報が鳴り響くのがわかる。

 

(ちょ、ちょっと待って。え、これ、どう受け取ればいいの?)

 

「生活が整うから、好き。これは、恋愛?」

 

「ち、違います! たぶん!」

 

「じゃあ、何?」

 

「えっと、その……ええと……」

 

必死で言葉を探して、優里はようやく口を開いた。

 

「それは、きっと……信頼、とか、安心感、とか……そういう、生活の基盤みたいなものです!」

 

「生活の、基盤」

 

「はい。恋愛っていうより、生活を支える柱みたいな……」

 

言いながら、自分で胸が痛くなる。

 

(わたし、何言ってるんだろう)

 

本当は、それを恋愛だと言い張りたい。

貴女は私の事が好きなんだと思い込ませてしまいたい。

 

それでも、

それと同じくらい、この人に嘘を吐きたくないんだ。

 

紫音はしばらく黙っていた。

譜面に視線を落とし、ペンをくるくると回す。

 

そして、ぽつりと呟く。

 

「じゃあ、わたしは、優里に、生活を預けてる」

 

「え?」

 

「ご飯も、睡眠も、締め切り前に倒れないことも。――ほとんど、優里に依存してる」

 

「い、依存って……」

 

「優里がいなかったら、たぶんもう少し、再生回数は多かった。でも、そのうち壊れてた」

 

あっさりと言う。

 

「今の曲は、全部、優里のご飯食べながら作ったもの」

 

「……そんな大したことしてませんよ、わたし」

 

「してる」

 

紫音は、初めて少しだけ、強い声を出した。

そのまま、優里の手を握る。

小さな手にはいつもより、指先に力がこもっていた。

 

「だから、そこを、ちゃんと書きたい」

 

「え?」

 

「恋愛じゃなくても、誰かに預ける気持ち。依存して、信頼して、支えられてる感覚。――そういうのも、きっと『好き』の一部、でしょ?」

 

紫音は、まっすぐに優里を見上げる。

 

「優里が、どう感じてるか、教えて」

 

「わたしが、ですか……?」

 

「うん。わたしに、どうされると、嬉しい?」

 

(それはもう、この距離感全部なんですけど!!)

 

心の中では叫んでいるのに、口から出てくるのは、当たり障りのない言葉ばかりだ。

 

「えっと……一緒にご飯食べてくれるのが嬉しいです」

 

「他には?」

 

「曲を聴かせてくれるのも、すごく嬉しいです」

 

「他には?」

 

「……名前、呼んでくれるのも」

 

それは、ほんの少しだけ、勇気を出した言葉だった。

 

優里、と呼ばれるたびに、胸の奥に熱いものが広がる。神が作り上げたかの如き少女に必要とされているかのようで。彼女の世界に自分の色を塗っているかのように冒涜的で、しかし幸福に満ちた福音のよう。

 

それを、紫音自身は知らない。

 

「優里」

 

名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねる。

呼ばれるとわかっていたのに、それでも。

 

「今の、どう?」

 

「ど、どうって……」

 

「今の言い方。嬉しかった?」

 

「…………」

 

ずるい。

そうやって、試すみたいに聞かないでほしい。

 

「……嬉しいですけど」

 

絞り出すように言うと、紫音は満足げに頷いた。

 

「じゃあ、それ、メモする」

 

譜面の端に、小さく文字が書き込まれていく。

根拠の無い予感が、天才の頭を微かに汚していた。

この曲は、きっとすごい曲になる。

 

―――

 

その夜。

 

帰り道の電車の窓に映る自分の顔は、ひどく赤かった。

 

(……好きだなあ)

 

ようやく、心の中で言葉にしてみる。

 

この感情の名前を知っていたのに、ずっと目を逸らしていた。

だって、それを認めてしまったら、もっと苦しくなるってわかっていたから。

 

紫音は、わたしに依存してくれている。

生活を預けてくれている。

名前を呼んでくれる。

手を握ってくれる。

膝に頭を乗せてくれる。

 

でも、それはきっと、「恋愛」なんかじゃない。

 

紫音にとって「好き」は、まだ分解される途中で。

それを「恋」と呼ぶには、あと何拍か足りないのかもしれない。

 

(告白なんて、しないよ)

 

自分に言い聞かせる。

 

もしこの関係に、「好きです」とか「付き合ってください」とか、そんな言葉を投げ込んでしまったら――

紫音はきっと、困った顔をする。

 

「それって、どういう感情なの?」 なんて、首をかしげるのかもしれない。

 

そんなのは、嫌だ。

紫音に、わたしのこの感情の形を説明させたくない。

 

だから、これは、わたしの片想いのままでいい。

 

紫音の生活を整える「家事代行」でありながら、

紫音の音楽に栄養を与える「ご飯屋さん」でありながら、

紫音の隣で勝手にときめいて、勝手に赤面して、勝手に心臓を忙しくさせる――

 

世界でいちばん報われなくて、でも、世界でいちばん幸せな役割。

 

(……それにしても、これを自覚したまま、あの距離感で毎日過ごすの、ほんと心臓に悪い)

 

明日もきっと、紫音は当たり前みたいな顔をして、わたしに寄りかかってくる。

わたしの膝に頭を乗せて、天使がじゃれるみたいに「優里、あったかい」と笑う。

 

そのたびに、わたしは胸の奥でこっそり叫ぶのだ。

 

――そんなこと言われたら、もっと好きになっちゃうじゃないですか、って。

 

声には出さないまま。

告げないまま。

ただ、夕飯の献立だけを口に出して。

 

「明日は、紫音さんの好きそうな、オムライスにしようかな」

 

なんでもない窓の外の夜景が、穏やかに、静かに流れていく。

その向こうで、あの防音室の無機質なライトが、きっと今日もまた、遅くまで灯るのだろう。

 

その灯りが消えないように。

これからもずっと、わたしが、そばでご飯を作り続ける。

 

恋を秘めたまま、台所に立つ。

それが、白百合優里に与えられた、ささやかで、どうしようもなく甘い使命だった。

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