どうやらうちの学園はレベルが高い〜異能至上主義の0.001%の天才の達が集まる学園で異世界帰りの俺は物理で渡り合う〜   作:畑山

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第3話 "異変"

——ゴゥと激しい音を立て、ホーネットの一太刀が受験者三、四人の身体を同時に切り裂く。

 バリアが盾となり受験者の身体には傷はついていないが、不合格の烙印として結界外へとワープされる。

 

「——では……制限時間"20分"……生存試験を開始します。」

 

 まさしく試験開始の瞬間だった。

 

 まず、三人の“異彩組”が、真っ先にホーネットへと距離を取りながら各自防衛と戦闘へ転じられるようにと準備と牽制を行う。

 

 黒髪の剣士は三本の刀を同時に抜き、目に映らぬ速さで斬撃を重ねる。

 白銀の少女は赤い瞳を輝かせ、身体よりも大きな炎球を無数に作り出す。

 緑髪にメッシュの少年は異能装置を展開し、光の奔流を撃ち出した。

 

 ——だが、氷刃がわずかに傾いただけで全部受け流された。

 

 金属の音すら鳴らない。

 摩擦のない水面のように、三人の攻撃は流されていく。

 

 それに続き他の受験生も攻撃を開始する。約三百対一の構図、しかしながらホーネットへの攻撃は一切当たっていなかった。

 

 

——とそんな息をもさせぬ攻防戦の際……。

 

 

 

「——マジか、絶対ダリィことが起こるだろ……」

 

 

 俺はと言うと試験中心部から離れ、思案をめぐらせていた。

 その一抹の不安はこの"第一次試験"のことではない。

 俺は感じていた。この結界内には妙な“揺らぎ”と"悪意"が空気のどこかに混じっている。

 

 不吉、と言うより“歪んだ気配”。

 

「……久しぶりに感じたぜ。このぐらいの歪みは」

 

 こっちの世界じゃあんま感じなかったんだけどなぁと一言付け加える。

 

 俺は"第十界"の最弱異能者である。……表向きは。

 

 ここで『基山 佑』、俺の経歴について少し語ろう。と言ってもそんな凄いものでもない、多少"異世界"で暮らしていた。まぁ強制的にだが、いわゆる異世界転移というやつだったのだろう。

 そこでは約5年間過ごした。ある日突然、また元の世界に元の年齢のまま戻っていたというなんともご都合主義な転移だった。

 俺はそこで勇者として大活躍!とかそうゆうのでもなく、中位の冒険者としてある程度の暮らしをしていた。

 その時には色々と経験したが今感じている予感は明らかにこれから嫌なことが起こることを告げている。

 

(……あの生徒会長さんが全部片付けてくれればいいんだけどな。)

 

 軽く頭を掻く。

 期待感の言葉を考えはするが同時に無理だろうと諦めの感想も抱く。

 

 今ここの試験会場には異能の頂上に近しい人々が集まっている。それでもこの感想を俺が抱くのはその異変に薄々と勘づいていたからだった。

 

 俺の両肩には、試験の喧騒とその異変の足跡が聞こえていた。

 

 そして。

 

 

「——はぁ、やっぱ来るか……」

 

 

 

 結界空間が静止したように俺の思考力は引き延ばされる。

 

 恐怖ではない。

 絶望でもない。

 ただ不安に“胃はキリキリ”と痛んだ。

 

 ——その刹那。

 

 空間全体のひずみが、急激に跳ね上がった。

 

(……だよなぁ)

 

 耳の奥を撫でるように、低い“声”が流れ込んでくる。

 

≪──■■■……アガツウタミノ……■■■……シャレコウベ……■■■……≫

 

 冷たい空気でも、熱でもない。

 “理”そのものが捻じれる、異様な波。

 

 次の瞬間、会場の一角で結界が破裂した。

 

 暴走した光束が乱れ、空間が削られるように崩落していく。

 受験者たちの悲鳴が飛び交う。

 

「えっ——!」「これも試験の一部……??」「でも結界が……!?」

 

 ホーネットに関しては大きく眼を剥いて、

 

「……皆様!試験は一時中断ですッ!!すぐに退避してッッ——。」

 

 静止、逃走を促す絶叫を大きく放つ。

 しかしながら、波の速度は超高速で降りてくる。その叫びに反応し即座に対応することは困難。

 

 そして、その崩落の中心にいたのは、"異彩組"三人のうちの一人——

 白銀の少女だった。

 

 崩落の波が彼女に向かって迫る。

 逃げようにも逃げ切れない速度だった。

 

(……仕方ねぇ……覚悟決めるか)

 

 俺はひとつだけ、短く息を吐いた。

 

 足元を、軽く踏む。

 

 大地は大きく揺れ、煙塵が舞い上がった。

 

 周囲の視界が一面、砂煙で覆われる。

 

 ——たったそれだけで、他の受験者の視界は完全に潰れる。

 

 時間はゆっくりに流れていく。

 

 俺の"第十界"の異能力は"少し早くなること"だった。

 異世界を生きる術として学んだ身体術、《覇駆伝習術(はくでんしゅうじゅつ)》はその能力を爆発的に強化した。

 そして決定的な異世界とこの世界の相違点。

 

 ——それは"レベル"がないということだった。

 

 俺には異世界での名残として"レベル"を見ることができる。この世界の住人の"レベル"は例外なく"0"。

 どう頑張っても"レベル"が1でもあるやつには勝てない。

 

 そうこの異変は間違いなく、異世界の由来のものだった。

 

(呪いの一撃か……完全私怨の設置型の呪いだな)

 

 

 崩れ落ちる時間がゆっくりに流れていくようだった。

 

 崩れ落ちる結界片が光を散らし、少女の頬をかすめ鮮血が滲む。

 視界の中で、彼女の瞳が恐怖に揺れ……そして俺を捉えた。

 

 俺は音もなく飛び込み、腕を伸ばした。

 

「えっ……」

 

 少女の体を引き寄せる。

 形上お姫様抱っこの形になってしまう。

 耳鳴りが世界を覆う中、俺は彼女の肩に触れたまま、小さく言葉を落とす。

 

 

「……舌、噛むなよ……。」

 

 そして……、

 物凄い勢いで落ちてきた呪いを"蹴り飛ばした"。

 

 呪いは光の粒子状として消える。

 

 ほんの数刻、事実としてそれは刹那の一瞬よりも短い僅かな間。

 視界の中で、少女の瞳は驚きに揺れ……そして俺を捉えた。

 

 次の瞬間、俺は煙幕の中に紛れて姿を消す。

 ただ見つめ合った白銀の少女だけが、俺を見た。

 

「やっちまったなぁ……」




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