IS─OVER THE SKY─   作:くらんもち

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前回言い忘れましたが、シャルロットちゃんの愛称については完全捏造です。

話は変わりますが、ダンボール戦機が思いつかんのじゃあ!!だからこうしてISに逃げてるというわけですね。弱い私を許してくれ……!

追記
最後らへん書いててすっごい楽しかった


2026/2/3
一部加筆修正


CODE9 憧れのムコウ

 

「はぁっ!」

 

「くっ……!」

 

蒼月の薙刀が、シュヴァルツェア・レーゲンを掠める。碧は大砲を警戒し、機動戦を仕掛けていた。ラウラも負けじとスピードを出すが、メインウェポンが大砲である都合上、近接格闘型である蒼月には1歩劣っていた。

 

(視界に収めればAICが使えるものを………!)

 

碧の一撃離脱により、ラウラの視界に留まらない。それは大砲の狙いをつけさせないためであったが、結果として、集中する必要があるAICへの対策となっていた。

 

「うろちょろ、するなッ!」

 

ラウラがブレードワイヤーを振り回す。一撃離脱をされてしまうのなら全方位に攻撃してしまえばいいという力技。しかし、その効果は覿面で、碧の動きが止まった。

 

「捉えた……!」

 

眼帯を取り外し、その金色の瞳を露わにした、その瞬間。

 

「ッ、機体が………!」

 

アクティブ・イナーシャル・キャンセラー、AICによって慣性を強制的に停止。それによって蒼月の動きが止まった。

 

「これで、終わりだ!」

 

シュヴァルツェア・レーゲンのレール砲が蒼月へと向けられた。

 

「させないッ……!」

 

しかし、簪がそれを許さない。箒を足止めしながら、碧天の装備しているミサイルユニット、『山嵐』に搭載されたミサイルの一部をラウラへと発射。それによって集中力が削がれ、碧が離脱。

 

「すまない、助かった!」

 

「気にしないで。スイッチしよう。」

 

「分かった、よろしく。」

 

碧の声とともに、2人の位置が入れ替わる。碧は箒へ、簪はラウラへ。

 

「今度はお前か、百目木!」

 

「同じ近接機同士、仲良くやろうか!」

 

「くっ……!」

 

打鉄の刀と、蒼月の薙刀がぶつかり合う。しかし、蒼月は第3世代。故に出力差のゴリ押しで打鉄を弾き飛ばす。その衝撃で箒は苦悶の声を漏らし、アサルトライフルでの追撃が入った。

 

 

 

 

「行って、『春雷』!」

 

碧天の荷電粒子砲、『春雷』が放たれる。AICが効果を発揮できるのは、実体のある兵装のみ。一部の粒子の動きを止めてある程度は軽減できないこともないが、回避するほうが得策。しかし、掠めた粒子砲が僅かにシールドエナジーを削る。ブレードワイヤーを放つも、高周波ブレードがついた薙刀『夢現』によって弾かれた。

 

「ちっ………!」

 

AICを使おうにも、相手もまた中距離機である都合上効果範囲外。レール砲は回避され、ブレードワイヤーも効果はなく。ラウラには苛立ちのみが募っていた。

 

 

 

後退する打鉄へ向けてチャージしていないヴァリスを打ち込む。チャージ時の破壊力は筆舌に尽くし難いが、エナジー消費が激しく、おいそれとは使えない。とはいえ、ノンチャージでも威力は十分。事実、箒は戦闘が始まってからずっと劣勢を強いられている。打鉄のシールドエナジーも残りわずか。しかし、一瞬の隙を見て鍔迫り合いへと持ち込んだ。

 

「簪!」

 

「分かってる!」

 

薙刀で受けた彼は、敢えて力を緩め吹き飛ばされる勢いを利用して後退。同じく春雷の反動で後退した簪と背中合わせになり、勢いそのままに180度回転。

 

「なにっ…………!?」

 

流れるようなスイッチを見せた彼らは再び最初の敵と相見える。ブレードワイヤーをいなしながら、ラウラへと肉薄。当然、彼女はAICを発動しようとするが……。

 

「二度同じ手は食わないさ!」

 

クイックブーストによって蒼月が視界から消え、集中が出来ない。そして──。

 

「超電、雷撃!!」

 

ゼロ距離からの電撃によりシールドエナジーも残りわずかとなり、衝撃でラウラは地面へと落下。

 

「く、ぅっ………!」

 

地面に倒れ伏しながら、彼女の脳裏には走馬灯のように1年前の思い出が蘇った。

 

 

 

あれは、そう。敬愛する教官に、なぜそれほどまでに強いのかと純粋な興味で問いかけた時。

 

『…どうして強いのか、だと?──私には弟がいる。あいつを見ていると、強さとは何か、その先に何があるか、分かる気がするんだ。』

 

その時のあの人は、とても柔らかく、優しい顔をしていた──。

 

違う。違う違う違う。私が憧れているのは、強く、凛々しく、堂々としている貴女だ。だからこそ、そんな表情を、そんな感情をいだかせる奴が許せなかった!認めるものか、認めてなるものか!奴を、奴を守る者どもを!!

 

 

 

(だから、だからこそ……こんな、ところで、負けるわけには………!)

 

──力が、欲しいか?

 

ふと、頭の中に声が響く。

 

当たり前だ。目に映るもの、すべてを灰に……!

 

響く声に、無我夢中になって手を伸ばす。伸ばした気がした。

 

 

Damage Level………C

 

Mind Condition ……Clear

 

Certification ………Clear

 

―――――――――

 

 Valkyrie

 

 Trace

 

 System

 

     STANDING BY

 

─── ─── ───

 

 

瞬間、シュヴァルツェア・レーゲンが漆黒に染まった。表層は泥のようなもので覆われ、まるで粘土が捏ねられるように形を変えていく。正確な造形こそ曖昧だが、それは間違いなくISだった。全身装甲のようで、右手には刀。それは間違いなく………。

 

「暮桜………!?」

 

観客席にいた一夏は呻いた。なぜなら、あれは自身の姉の、姉だけの力。

 

『非常事態発生、非常事態発生!トーナメントの全試合を中止し、鎮圧部隊は出動せよ!繰り返す──』

 

「この野郎ーーーッ!!!」

 

絶叫。それは、今まで聞いたことのないほど憤怒と憎悪に塗れた声。身体を打ち震わせる怒りのままに、通信機を手に取った。

 

「……千冬姉、俺も出る。」

 

『織斑先生だ。馬鹿を言うな、あれは──』

 

「そんなの知るか!!」

 

通信の向こうで彼女は悟ったことだろう。彼は本気で()()を倒すつもりなのだと。

 

『…馬鹿者。まだお前に負けるつもりはないぞ。』

 

「でも!!」

 

『駄々をこねるな!!』

 

……しかし。彼女はふと思い至る。ラウラを助けるには、白式が必要だと。零落白夜なら、ラウラを助けられると。

 

『……必ず生きて戻ってこい。』

 

「……あぁ、わかってる。」

 

 

 

 

 

「っく、キツイな……。」

 

振るわれた刀を、蒼月は地面を転がって回避する。

 

「碧!」

 

「…一夏!?なんでここに!?早く避難を……!」

 

一夏は驚いた声をあげる彼の隣に並び立ち、雪片弐型を構えた。

 

「あれは、千冬姉の力だ。千冬姉だけのものなんだ。…参考にするんならまだいい。でも、()()だけは許せない!!」

 

「……となると、一筋縄じゃいかなそうだね。簪、残りのシールドエナジーは?」

 

「…ごめん、もう余裕ない。」

 

碧天は荷電粒子砲を搭載しているため、通常のISより消耗は激しい。シュヴァルツェア・レーゲン、そして暮桜擬きとの射撃戦を演じた彼女のエナジーは底を尽きかけていた。

 

「なら、箒を連れてピットに。アレは、僕達で食い止める。」

 

「でも……。」

 

「……大丈夫だ。一夏、いけるな?」

 

「………あぁ!!」

 

蒼月と白式が、瞬間加速にて飛び出す。薙刀と刀が振るわれるが、そこに敵はおらず、逆に弾き飛ばされ壁へと激突。

 

「がふっ……!」

 

「ぐぁっ!!」

 

2人の口から呻き声が漏れ、泰然と構える黒い暮桜は刀を構える。まるで、待っているかのように。

 

「……このぉぉぉっ!!」

 

「待て、一夏!」

 

碧の制止を振り払い、一夏が吶喊。力いっぱい雪片弐型を叩きつけるが、ことごとくを受け流される。その動きは、完璧に千冬を模倣していて。

 

「クソっ……!」

 

立ち上がった一夏に、碧が駆け寄る。

 

「…いけるか、一夏。」

 

「勿論だ!!」

 

落ち着いた言葉に、激昂していた一夏の頭が冷えていく。

 

「僕が隙を作る。鍵は一夏だ。」

 

「……そうか、零落白夜…!」

 

「……よし、いくぞ!!」

 

まず蒼月が飛び出し、白式がそれに続いた。暮桜擬きの刀が振るわれるが、それを散開して回避。蒼月の飛翔滑走翼から大量のマイクロミサイルが発射された。当然のごとくそれは斬り払われたが、真っ二つになったミサイルからは煙が。

 

「煙幕弾か、ナイス!」

 

「ジャミングミサイルだよ。僕のセンサー情報を共有する、決めろ一夏!!」

 

コアネットワークを介して、情報が白式へと送られる。

 

「─受け取った、いくぜ!!」

 

ジャミングの残る煙幕を突っ切り、零落白夜の金色の光を纏った剣が、振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

あるのは、深い闇だった。右も左も、上か下かすらも分からない、深く昏い闇。それが自身の心の闇だということを、彼女は理解していた。確かに力は欲しかった。けれど、欲しいのはこんな空虚な力じゃない。その時、遠くに白い光が見えた気がして。我知らず、それに手を伸ばしていた。

 

『戻ってこい、ラウラ!』

 

次の瞬間、その光が視界いっぱいに広がったのだった。

 

 

 

 

 

暮桜の胴体が切開され、中からは気を失ったラウラがまろび出る。一夏がそれを受け止め、シールドエナジーの切れた白式は待機状態へと戻ってしまう。が、しかし。彼の表情には、笑みが浮かんでいた。

 

「……上手くいったね。」

 

蒼月が降り立ち、碧もまたISを収納。蒼月はイヤーカフスとなって碧の耳へ。

 

「……あぁ。」

 

暮桜擬きは元の泥と化し、その場に溶け落ちていく。かくして、トーナメントにて起こった事件は、終わりを告げた。

 

───────────────

 

その日の夜。

 

『てことで〜、シャルロットちゃんは女の子として学校に通えるよぉ〜!』

 

「ほ、ほんとですか………!?」

 

碧はロイドとの通信を取り、シャルロットと一緒に聞いていた。彼女は目に涙を浮かべ、微笑みを浮かべている。

 

『ホントホント。ついでに、ウチとデュノア社の共同開発も決定〜!!』

 

「それは思い切ったことを……。」

 

『まぁ、正直犯罪だからねぇ〜。経歴詐称だよ。』

 

『そんなわけで、こちらが秘密にする代わりに、デュノア社の一部開発データの買収と共同開発が決定したの。』

 

「セシルさん!」

 

画面に映りこんだのは、セシル・クルーミー。ロイドと並び蒼月の開発者にして、飛翔滑走翼の考案者。

 

『こんばんは、碧君。蒼月の調子はどう?』

 

「お陰様で、絶好調です。」

 

「碧、大活躍だもんね。」

 

『ふふ、良かったわ。デュノアさん、貴女は安心して学校に通ってね。』

 

「はい!ありがとうございます!」

 

その時、コンコンとノックが響く。

 

『あら、お客さんみたいね。じゃあ、また今度。』

 

「はい。じゃあ切りますね。シャーリー、出てくれる?」

 

「うん、分かった。」

 

彼女がドアを開けると、居たのは一夏。心做しか髪が濡れている。

 

「あれ、碧は?」

 

「中にいるよ。どうしたの?」

 

「あっそうそう!実は、風呂が使えるようになったんだってさ!!」

 

「お、お風呂……?」

 

「…一夏は無類の風呂好きだからね。」

 

「そうそう!」

 

碧が苦笑しながら補足すれば、シャルロットは意外そうな目で一夏を見た。

 

「俺はもう入ったからさ、お前らも入ってこいよ!」

 

「…分かった、ありがとう一夏。シャワーばかりで、僕も辟易してたから。」

 

「おう!じゃあまたな!」

 

手を振りながら、一夏は自室へと戻っていった。

 

「……先入るかい?」

 

「ううん、疲れてるでしょ?先入って早めに寝なよ。」

 

「……すまない、ありがとう。」

 

シャルロットの気遣いに感謝しながら、碧も浴場へ。身体を流し、湯に浸かる。

 

「やっぱり風呂は落ち着くな……。」

 

独り言が、反響して消えていく。こんな広い湯船に自分1人。特別感もあるが、やはりどこか寂しいものがある。

 

「……へー、結構広いんだね。」

 

「ッ!!?!?し、シャーリー!?」

 

「…怪しまれちゃうしね。」

 

反射で振り返りかけたが、寸前で逆を見て背を向けた。ちゃぷん、と音がした。声が近づいてくる。

 

「さ、さすがに混浴(コレ)は……!」

 

「ボク、感謝してるんだよ?碧のおかげで、ボクは自由になれたんだ。ありがと、碧。」

 

「それは…………僕が、やりたくてやったことだから。」

 

「…んふふ。碧ならそういうって、分かってた。」

 

「……先、上がる!」

 

「あっちょ、碧!?…………朴念仁。」

 

珍しく焦っていた碧を追いかけ、彼女も浴場を後にした。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

翌朝。

 

「──と、いうことで、デュノア君はデュノアさんでした〜……。」

 

教室が静まり返り、碧を除く全員が目を瞬かせる。

 

「「「「!!!?!!!?!?」」」」

 

「……事情は私が説明しよう。」

 

ため息をつきながら、千冬が前に出る。

 

「彼女には、織斑と百目木、両名の護衛を頼んでいた。」

 

「護衛、ですか?」

 

「あぁ。実は6月頃、『百目木碧並びに織斑一夏を殺害する』といった旨の予告が届いた。イタズラという可能性もあったが、織斑がISを動かしたことによって女性権利団体などという奴らが騒ぎ立てていることはお前らもよく知っているはずだ。」

 

あぁ………、といった様子でクラス中が頷いた。奴らの掲げる理想において、彼らの存在は邪魔でしかない。仮に殺害を企てたとしても、何ら不思議はない。

 

「だが、先日その犯人を逮捕した。事が事だから公にはしていないがな。よって、護衛の必要が無くなったことにより女子生徒として再編入することになった、というわけだ。……百目木はデュノアの性別を見抜いたようだがな。」

 

「そういうことかぁ…………。」

 

「道理でなんか可愛すぎるなって思ったもん。」

 

「……改めて。これからよろしくね、碧♪」

 

ちゅっ、と軽いリップ音。気付けば、シャルロットが碧の頬唇を落としていた。

 

「「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」

 

教室中から黄色い声が巻き起こる。

 

──尚、碧の鼓膜はしばらく機能停止した。

 

「──ふぅ。それで、なんでボーデヴィッヒさんがここに?」

 

「耳が…………!」

 

と、耳を押さえて悶絶する碧とわたわたしているシャルロットをよそに。

 

「…ボーデヴィッヒ。」

 

「………はい。」

 

千冬に背を押され、ラウラが前に。

 

「……その。今回のトーナメントでみんなに迷惑をかけてしまった。……申し訳ない。」

 

初対面の時とは見違えるほどしおらしくなった彼女の様子に、クラスの女子達も微笑みを浮かべて……

 

「いいよいいよ。ちょっと驚いたけどね。」

 

「ボーデヴィッヒさんも辛そうだったし。」

 

「…ありがとう。……そ、それと、お、織斑一夏!」

 

「は、はいっ!」

 

ラウラから放たれる気迫に、思わず居住まいを正し、立ち上がってしまう。彼女は一夏の襟を掴み、自身の顔を近づけ…………

 

ズキュゥゥゥン!

 

「なっ………!」

 

「お、お前は私の嫁にする!決定事項だ!」

 

「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」

 

再び歓声。そして誰かさんの鼓膜に再びダメージ!

 

ウッミミガ………!

ア、アオダイジョウブ!?

 

「さ、さすが無垢なボーデヴィッヒさん!」

 

「私達ができないことを平然とやってのけるッ!」

 

「そこにシビれるあこがれるゥ!」

 

「………あれ?そういえばなんだけどさ。」

 

「どったの?」

 

「昨日の夜百目木くんとデュノアさんと一緒に浴場から出てきてたなぁって。」

 

「えそうなの?……まぁ、確かに同室だもんね。」

 

「しかも百目木くんデュノアさんが女の子だって予め知ってたってことは………。」

 

「「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」

 

三度歓声があがり、どんどんHPが削られていく耳!!

 

バァン!!!

 

轟音を立てて開かれる扉!その先には碧天を纏った簪が!!

 

「ねぇ…、碧くん?混浴したって、ホント?」

 

「か、簪!?そ、それには深い事情が──」

 

「問答無用ォ!!」

 

碧に向けて山嵐フルバースト。碧はキボウノハナ-した!

 





6100字ってマ?こんな文字数いったのフォーウルムさんとコラボした時くらいだわ。自分の計画性のNASAを再確認しました。あと最後らへんは深夜テンションで書きなぐった。楽しかった!

次回予告!

1.碧、シャルロットちゃんとショッピング!

2.一夏、箒とデートする!

3.碧、恋愛相談を受ける!

次回、IS─OVER THE SKY─
第10話『波乱の前の平穏』お楽しみに!
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