あと数時間で夜が空ける頃、それは突然の知らせだった
「カァァァ!岬 海斗、上弦ノ鬼 壱ト遭遇!瀕死ノ重体!治療セヨ!」
一瞬、鎹鴉の報告が理解できなかった。瀕死…?海斗くんが…?
目の前が暗くなり何も考えられない
「カナエさん!呆然としてる場合ではありません!」
隣で作業していたアオイの言葉に我に返り指示を出す
「今すぐ準備をします!どんな状態でも海斗くんを死なせる訳には行きません」
しばらくすると彼は運び込まれてきた
最初見た時、死んでいるのかと思った全身に大小様々に斬られた深い傷、隊服は血によって重くなっていた
「止血と輸血を急いで!深く斬られているところは清潔にして消毒してから縫ってください」
「はいっ!」
アオイや他の看護師に指示を出しながらも手術を終えたのは朝方になってからだった
急に容態が変化する場合もあるし、まだ油断はできない…他の看護師と交代で様子を見ながら包帯を変えたりと処置をして、それから1週間たった
浅い傷は消え、深い傷も塞がりつつあるのに海斗くんは目を覚まさなかった…こればかりは彼の目覚めを祈るほかなかった
…………………………………
目を開けるどそこは真っ白な何も無い空間だった
そして目の前には黒死牟によく似た人物…いや、彼は継国縁壱か
話しかけようとしたけど言葉が出ず彼も何も喋らない、ただ日輪刀を構えたまま立っていた…目線が僕の腰にある日輪刀へ向いていた刀を抜けということなんだろうか
柄を触れた瞬間、視界が回転した…そう頸を刎ねられたのだ
意味がわからない…また死ぬのか…そう目を閉じた瞬間には元に戻っていた
目の前に先程と同じく彼が立ち、日輪刀を構える姿、同じように柄を握ろうとしたがさすがに先程と同じことになってしまう
透き通る世界と痣を使って、柄を握る瞬間には彼は刀を振っていた
受けようと刀を交わしたけど僕は日輪刀ごと斬られていた
何度も何度も何度も…途中から数えることを止めた
ただ少しづつ歩みを進める…交わせるようになり…打ち合い、斬られ永遠と思えるような時間を繰り返し続けた
やっと彼に一太刀浴びせられるようになった時、不意に動きが止まった
何事かと彼を見ると微かに口元が動いたけど相変わらず何も聞こえなかった
眠くなり静かに目を閉じた…少しだけ誰かが手に触れてる気がした
次に目を開けると木目の天井が写った、いつもの消毒液の香り…戻ってこれたのか…
身体を起こし自分の姿を確認する…身体が痛くない…あんなに酷かった傷が治ってる
あの日からどのくらい時間がたった?
廊下を歩きカナエがいつも作業している部屋に着く、扉が開いていて中を覗くと何か書物を読んでいるようだ
トントンと扉を叩くとカナエがこちらを振り向いた
「誰かしら?…海斗…くん…」
淡い紫色の瞳が大きく目を見開かれた
「おはよう…なのかな」
「っ!ばか!起きるのが遅すぎるのよ!」
椅子から立ち上がり僕に抱きついてきた…どれだけ心配かけたのだろうか…肩を震わせ泣いていた
「ごめんね。あの日からどれくらい?」
「1ヶ月よ。1ヶ月も目を覚まさないで死んじゃったのかと思ったんだから良かった…目を覚ましてくれて」
そうか、1ヶ月も…炭治郎の家族を助けられなかったのか。炭治郎、禰豆子…つらい思いをさせてしまった
許されることじゃない。これは僕の罪だから、背負うよ。この命に誓って
その日からちょっと大変だった
しのぶには怒られ、カナヲの言葉を聞き出すのに時間を掛け、アオイと三人娘には泣かれた
義勇にはものすごい無言の圧をかけられた、多分心配とお怒りの半々だったんだろうな…謝り倒したら渋々と帰っていったけど
もちろんお館様からの呼び出しもです。これ1年前くらい前にやったんだけどな…
「よく来たね、海斗。身体の調子はどうだい」
「はい、お陰様で。今のところ問題ありません」
「上弦の壱はどうだった?勝てそうかい?」
「そうですね。…あれは、鬼であり鬼以上の化け物です。上弦の弐を遥かに超えた強さかと。例え柱であっても今の状態でしたら何もできず死にます」
「…そうか。策はあるかな」
「残念ながら厳しいかと…純粋に柱には強くなってもらうしかないです」
デバフ…実弥の稀血すら久しぶりにちょっと酔ったくらいの効果だったのであってないようなものである
かといって即効性の薬を使ったところで効く前にこっちがやられそうだし
「まぁ、多分託されてしまったのでなんとかします」
「託された?誰にかな?」
「正直夢の中でして、覚えてないんです」
「そうか、でもそうした方がいいと思うなら海斗の好きにしなさい」
「ありがとうございます」
童磨といい黒死牟といい、やること多くて大変そうだな…自分で背負っておいてなんなんだけど
え?猗窩座?それは義勇と炭治郎におまかせします
お館様お話してから数日後、まだ冬の寒さが残り積もった雪をサクサクと踏みしめながら山の奥へとやってきた
目の前には平屋の一軒家、手前には炭焼小屋があり最近まで使ってあったであろう、僅かに炭の匂い、そして家に染み付いた血の匂い
炭焼小屋の反対側には5つのお墓には雪が積もっていた、雪を退かし持ってきた花を添えた
助けられなくてごめんなさい…炭治郎や禰豆子を必ず守ります
うーん、竈門家救済プランもなくはなかったのですがif版とかで書いてみたいようなみたくないような…