水柱の継子(自称)   作:ポケットピスケット

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月は遠く

 

「よっと」

 

はー、地面近くて良かった。また高いところから落とされるなんて勘弁だよね

そして、目の前にはボロボロの時透兄弟と周りに見える何かに斬られ倒壊している柱、後ろからの凄まじい威圧感…把握しました

なんでここに飛ばされたか分からないけど、手間は省けたよね… 指先が震えるのを、柄に食い込ませて押さえつけ、ゆっくりと振り返る

 

「…お前は…」

 

「2年ぶり?まぁ、鬼にとっては久しぶりではないのかな。黒死牟」

 

「確か…岬 海斗だったか…あの時は印象的だった…覚えているぞ」

 

「それは、光栄だね。僕も貴方に会えることを楽しみに待ってたよ」

 

その言葉とは裏腹に、心臓は嫌になるほど正直だった。あの日以来、

もっと強ければという後悔は、悪夢に飛び起きる夜もあった。

誰かに責められる声が、実際には存在しないはずなのに、確かに耳元で囁いた

せめて、今日だけは誰にも負けず、目の前にいる大切な人たちが明日も笑って生きられるように

 

「…生きているとは…驚きだ…あの日…命果てたと思ったが」

 

「はぁ?何言って…」

 

黒死牟の言葉に、後ろにいた有一郎が困惑している

 

「あぁ、やっぱり。ずっと不思議だったんだ」

 

「…海斗?」

 

無一郎の呼びかけに、肩がわずかに揺れた

 

「正直言って、なんで生きてるのか分からなかったんだよね。僕としても途中から記憶なかったし、死ぬ覚悟でいたのに」

 

「そうだ…戦いの最中に…心臓が止まり…立ち尽くした」

 

「そっかそっか。なんで生き返ったかは知らないけど、あの時トドメを刺さないでくれて助かったよ」

 

「何を呑気に喋ってるんだよ!死んだって…そんな…」

 

有一郎が怒り、無一郎は驚きのあまり言葉を失っていた

 

「生きてるんだから結果万歳でしょ。いま、気にしてもしょうがないし」

 

「恐らくだが…無意識的に…自己防衛したのかもしれぬ」

 

「自分で心臓止めたってこと?んー、宇髄さんもできるし有り得ない話ではないか」

 

「可能性の話だがな…実際は知らぬが…今度こそ…息の根を止めてやろう…」

 

「できるものならやってみなよ。僕だってあの日のままじゃないんだ」

 

黒死牟は静かに刀へと手を伸ばした、その所作一つで空気が変わる

 

「二年前とは違う、と言ったな」

 

六つの瞳が、確かにこちらを射抜く

 

「…ならば見せよ。その“違い”を」

 

一歩、踏み出す

地面を踏みしめた感触が、やけに鮮明だった互いに刀を構え、重苦しい沈黙が落ちる。柱の一部が崩れ落ちた、その瞬間

 

水の呼吸 参ノ型 流流舞

 

三日月状の斬撃を受け流しながらも黒死牟へ斬り込むが僅かに後ろに引かれてしまう、これじゃ届かない…いや、まだ行ける

柄を握る手を僅かに緩め、持ち手の部分をずらして頭の部分を親指、人差し指、薬指で握り刀身を無理やり伸ばす

 

「っ!」

 

刀が頸に触れ、僅かに食い込むが黒死牟の刀で止められてしまった

 

「ほぅ…器用なことを…」

 

刀を引いて、急いで間合いの距離を取るが斬撃が飛んできた

迎撃するために刀を握り直そうとした時、真上から斬撃が降り注ぎ、黒死牟の方に鎖斧と棘鉄球が飛んでいった

 

「風の呼吸 伍ノ型 木枯らし颪」

 

「岩の呼吸 壱ノ型蛇紋岩・双極」

 

「実弥!悲鳴嶼さん!」

 

「よォ、海斗。おもしれェ奴、相手にしてるじゃねぇかァ」

 

「南無…無事で何より」

 

助かったけど、ここからが勝負所…

 

「次々と…降って湧く…」

 

「我ら鬼殺隊は百世不磨。鬼をこの世から屠り去るまで…」

 

悲鳴嶼さんと実弥が、一歩前に出て黒死牟の前に立つ

 

「時透兄弟、怪我の手当を。その間は、私達が引き受ける」

 

「ありがとうございます」

 

2人は後ろに下がって、手当をし始めた

 

「以前に話した通りだから気を付けてね」

 

「わかってらァ」「承知した」

 

合図もなく、3人が同時に動く。悲鳴嶼さんが牽制の棘鉄球を投げ放ち、黒死牟がそれを避けた瞬間、実弥と僕が左右から追撃をかけた

 

風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風

 

水の呼吸 肆ノ型 打ち潮

 

実弥の攻撃を回避した先に鎖斧が飛んでいく、それを回避しようとするのを先回りして斬りつけるが腕を掠めるだけになってしまった

 

「チッ、どんだけ避けるんだよォ」

 

「文句言ってないで、次行くよ」

 

「わかってらァ」

 

水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦

 

飛んできた斬撃をねじれ渦で掻き消すと2人が前に出た

 

風の呼吸 漆ノ型 勁風・天狗風

岩の呼吸 壱ノ型 蛇紋岩・双極

 

2人の呼吸が合わさり、黒死牟の衣服を切り裂いた

あっ、この展開はまずいのでは…

 

「まだだっ!畳み掛けろ!頸を!」

 

「そうだ。その通りだ」

 

黒死牟が振り向き、三本の枝分かれした刃を持つ大太刀が見えた

 

「2人共、待って!」

 

月の呼吸 漆ノ型 厄鏡・月映え

 

地を這う高速の斬撃が五本、扇状に走る。さらにその隙間を縫うように、三日月型のうねる斬撃が迫り来た

 

霞の呼吸 伍ノ型 霞雲の海

 

無数の斬撃が放たれ、攻撃を相殺する

 

「無一郎、有一郎。助かった」

 

「僕達もみんなの役に立ちたいから」

 

「出鱈目な鬼の頸なんて、さっさと落として無惨を倒すぞ」

 

「ふふっ、それは頼もしい」

 




前回の黒死牟戦は生き残ったのではなく、死んでたからある意味助かったってお話でした
切り刻まれなかったのは運
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