とある日、僕は薬を作っている珠世さんの元へと訪れた
「お疲れ様です。珠世さん」
「あら、海斗さん」
「研究の方はどうですか?」
「カナエさんやしのぶさんのお陰で順調ですよ。血鬼止めの効果を安定させようかと」
最初はどこか不安そうだった珠世さんも、すっかりこの場所に馴染んだように見える
さっき玄関で会った愈史郎は、相変わらず警戒心の塊だったけど…
「おー、ありがとうございます。ついでにお願いしたいことがありまして」
もう僕の無茶振りには慣れきっているのか、珠世さんは苦笑しながらも話を聞く姿勢を取ってくれた
「また、なんか企んでるんですか?」
「あはは、間違いなくみんなに怒られるんですけどね…」
話を聞き終えた珠世さんは、心苦しそうに視線を落とした
「…それは皆さん、怒りますよ。何より、海斗さんが一番大変ではありませんか」
「任せてくださいよ。鬼殺隊の中で、僕が1番強いんですから!」
これ以上、珠世さんを不安にさせないよう、意識して笑顔を作る
「困った人ですね…」
そう言いながらも、珠世さんの声はどこか柔らかかった。白衣の袖口を整え、作業台の上に視線を落とす
「でも……それでも、無惨を止められるのがあなたなんでしょう」
「よく分かってますね」
軽く肩をすくめると、薬草の匂いがふわりと鼻をかすめた
…………………………………
「海斗? 俺たちを呼び出してどうした? ていうか……どんな人選だよ」
水柱の継子、岬海斗
まあ、俺の同期だ。柱同士の稽古が始まって間もない頃、俺たちは揃って海斗の屋敷に呼び出された
水邸に住んでるんじゃなかったのかよ。まさか個人の屋敷まで持ってるとは……正直、驚いた
畳の部屋に通され、各々好きな場所に腰を下ろす。出された茶をすすり、茶菓子に手を伸ばしながら、自然と考え込んでしまう
そもそも、面子が謎すぎる。柱でもなく、継子でもない。一般隊士組(俺・竹内・長倉・吉岡・野口・島本・浦賀さん・尾崎)に、隠の後藤さんと田無さんの計10人
「ごめんね。どうしてもお願いしたいことがあって」
「いえ!岬様の頼みならなんなりと!」
田無さんが身を乗り出して即答した。……この人、やっぱりちょっと変わってるわ
隣の後藤さんが、露骨に引いてるぞ
「ありがとう。ただ、これから話すことは、一部の人には内緒にしてほしい」
その一言で、場の空気がざわついた
「この話はね。鬼舞辻無惨を倒すために必要なことなんだ」
一瞬で、空気が凍る
「少し……危険な目に遭うかもしれない。それでもいいなら、この場に残ってほしい。もちろん、無理強いはしないよ」
ざわめきが止み、部屋は静寂に包まれた
鬼舞辻無惨…それは絶対に倒すべき存在でそれに必要なこと?俺たちでも役に立てるのか?
沈黙を破ったのは、田無さんだった
「私は皆さんのように刀を持てませんでした。ですが、隠として、私個人としてできる限りの事はしたいのです」
その言葉に、自然と頷きが広がる。俺も腹を括り、口を開いた
「俺も上弦の鬼や鬼舞辻無惨に立ち向かえるほど強くない。できる限りの事は協力させてくれ」
「不死川や岬に救われた恩がある。返せる機会があるなら参加させて欲しい」
「私も岬さんに助けられました!同じく恩を返したいです!」
黙っていた浦賀さんも、覚悟を決めたように顔を上げ、尾崎も続く
「ふふっ、安心して。みんなに“死んでこい”なんて無茶は言わないから」
…ほっとしたのも束の間
「ただし、無惨と戦うその時まで、ちゃんと生き残るんだよ?」
いや、それのほうが難易度高くないか?
海斗は作戦の概要を説明し、念を押すように視線を巡らせたあと、部屋を後にした。残されたのは、重苦しい沈黙だけ
「……ヤバくないか」
思わず、ぽつりと漏れる
「いや……岬さんの目、本気だった。あの人、有言実行するだろうな」
後藤さんは天井を仰ぎ、完全に現実逃避モード。田無さんに至っては、座ったまま気絶してる
おい、ちゃんと話聞いてたのか
「俺たちを信用して、頼んできたんだ。やるしかないだろ」
竹内の言葉に、反論はできなかった。…好き勝手しやがって
全部終わったら、絶対に告げ口してやるからな
だから…死ぬんじゃないぞ、海斗
…………………………………
産屋敷へと訪れ、いつも柱合会議が行われる庭に面する部屋に通された
「お館様、例の準備順調です?」
「うん、大丈夫だよ。隠の子たちに頑張ってもらってるよ」
「ありがとうございます」
「きっと海斗のことだから上手くやってしまうんだろう。それでも私は心配だよ」
「絶対、大丈夫です。必ず、みんな生きて帰します」
そう言って、まっすぐに前を見る
「ですから…その時は、たくさん労ってあげてください。きっと、ものすごく喜びますよ」
少し間があって、お館様は穏やかに微笑んだ
「……そうだね。春先になったら、お花見でもしようか。美味しいものを、たくさん用意して」
一瞬、懐かしむように目を細める
「海斗の好きな…みたらし団子も」
「それは、なおさら頑張らないとですね」
何をしたかは次回のお楽しみ!
えぇ、作者による1話入れることによって時間稼ぎを…