「やれるものならやってみろ!!」
売られた喧嘩は、買うしかないでしょ!
地上に出た時点で鎹鴉から支給される血鬼止めの薬は、柱と継子、そして炭治郎に事前共有済み。各自が打つ段取りも完了しているし、準備は万端
フード付きの羽織といくつかの道具を受け取り、瓦礫を足場に無惨へと向かう。
その途中、村田さんに背負われて避難させられている義勇が目に入った。身体が動かないことに戸惑っている様子で、視線が合う
僕は軽く笑って手を振った
…次の瞬間
何かを察したのか、義勇の表情が鬼の形相に変わる。その変化を目撃した他の隊士が、思わず悲鳴を上げていた
僕以外の血鬼止めを打った者には、例外なく「約三十分動けなくなる仕込み」を入れてある
無惨が老化現象に気づく頃には、全員動けるようになっている算段だ
懐から、遊郭編で世話になった笛を取り出す。短く吹いて合図を出すと、生き残った隊士と隠の面々が一斉に動き出した
その間も、無惨の触手を掻い潜りながら、わざと声を投げる
「自分の死まで、後1時間半の気分はどう?今のうちに精一杯、呼吸しといた方がいいんじゃない?」
「また、貴様か!他の柱が何処にいるか知らないがお前一人如きで何ができる…」
「何って足止めしに来たに決まってるじゃん」
「戯け!」
怒声と同時に、触手がこちらへ集中する
その瞬間、建物の陰から、野球ボールほどの黒い球体が左右から次々と投げ込まれた。無惨は触手を振るって弾こうとする
球体に触れた瞬間――煙幕が弾けた。同時に、地面を蹴って高く跳ぶ
間髪入れず、藤の毒を塗った苦無が四方八方から無惨へと飛来する
「こんな飛び道具で、私を傷つけられるとでも…」
「苦無を食らうのと、赫灼を食らうの。どっちがマシ?」
空中で刀を振り抜く
水の呼吸 捌ノ型 滝壷
数本が刺さるが、無惨は即座に日輪刀を回避して、触手を振り回し煙幕を晴らした。触手を避けながらも、距離を取ると何処からか笛の音が聞こえる
無惨の視線を確認してから、懐から筒状の物を取り出し、栓を抜く。目を閉じ、そのまま地面へ叩きつけた
瞬間、辺り一面が昼のように白く染まる。低音仕様のなんちゃって閃光弾を直視した無惨が、わずかに蹌踉めく
その隙に、近くの触手を切断するが、すぐに視力を取り戻していた
「小賢しい真似を!」
「まだまだ!」
次の筒を取り出し栓を抜く
「馬鹿め!同じ手に掛かると思うか!?」
「馬鹿は、お前だよ!」
今度は頭上へ放り投げる、既に目を瞑っていたが残念!
次の瞬間、耳をつんざく爆音が街に響き渡った。なんちゃって音爆弾、無惨が反射的に耳を塞ぐ
その直後、銃声にも似た爆発音と共に、上空からトリモチが降り注いだ
「ぐっ…ふざけているのか!」
「滑稽でとっても面白いよ」
張り付いている肉体の一部を捨てて、拘束を解いた
激怒している無惨に向かって、バスケットボールほどの球体が高所から放り投げられる
早急に処理すべきだと判断した無惨は、躊躇なく触手を伸ばした。次の瞬間、内部の可燃性液体が高速で切断され、霧のように空間へと広がり、独特の匂いが鼻を刺激した直後、炎が一瞬で走り抜けた
無惨だけじゃない。当然、僕も巻き込まれる
身体を焼く熱と衝撃に歯を食いしばるが、耐熱性のある羽織とフードのおかげで、被害はだいぶ抑えられていた
さて、周囲を火の海にしてしまった以上、後始末は必要だよね
合図と共に、土砂降りのように水が撒かれ、瞬く間に炎は勢いを失い、じゅう、と音を立てて消えていった
炎が消えたあとも、無惨は立っていた。衣服も、肉体も、すでに再生を終えている。焼け焦げた痕跡すら残っていない
水を撒いたのは、消火のためだけじゃないけどね
3つ目の筒を取り出す、無惨がもう何もさせないと言わんばかりに触手を向けてきた
瓦礫を蹴り、崩れかけた建物の壁を走り、窓枠に足を掛けて、筒を投げつける
即座に筒が破壊されるが中は空なので当然何も起きない
バチッ。水で濡れ切った地面が、一斉に光った。鋭い音と共に、電流が走る
「――っ!」
無惨の身体が明確に跳ねる。筋肉が強張り、触手の動きが止まった。ほんの一瞬だけど確実に、感電している…やがて電流が収まり、静寂が戻る
無惨の口が、ゆっくりと開いた
「……人間の浅知恵を寄せ集めたに過ぎん」
低い、怒声ではない。むしろ、奇妙なほど落ち着いている
「だが、実に不快だ」
次の瞬間、視界が反転する。建物ごと、地面ごと、叩き潰される感覚。触手が瓦礫を貫き、爆風のような衝撃が全身を襲った。避けたが、完全じゃない。肋が軋む、口の中に鉄の味がした
瓦礫の隙間から、夜空が見えた。まだ暗い、星も見えない
……でも、確実に時間は進んでいる
それでも、ここまで来た
「は…やっと本気?」
瓦礫の山から立ち上がると、無惨がこちらを見下ろしていた
「次は殺す」
柱なしで戦おうとしたらこんな結果に…
時代を先取りしたアイテムがいくつか有りますが深く気にしないでください