殺す宣言されちゃったよ…
まぁ、もう用意してた罠全部使っちゃったんだよね
「さて、頑張りますか」
自分に言い聞かせるように呟く
深く息を吸おうとして、肺が途中で引っかかった。それでも無理やり空気を押し込み、日輪刀を強く握り直す
指の感覚が鈍く、柄の感触がやけに遠い
……来る
触手が、一斉に襲いかかってきた。とにかく避け、致命傷になる軌道だけを見極め、最低限を斬り落とす
だが回避に専念しても、傷は瞬く間に増えていく。痣の回復が、完全に追いついていない。血が止まらない
止血に意識を回す余裕すらなく、ただ動き続ける
……まだ、いける
そう思った矢先だった
肺が悲鳴を上げ、視界の端が暗く滲む。脚に力が入らず、着地の瞬間にわずかに体勢が崩れた。その一瞬、死角から伸びた触手が、容赦なく脇腹を裂いた
「っ……!」
声にならない息が漏れる
反射的に日輪刀を振るい、触手を斬り落とすが、もう遅い。血が温かく流れ落ち、指先が震えた
避け続けるだけでは、もう持たない。頭では分かっているのに、身体が言うことを聞かない
「……は」
自嘲気味な笑いが漏れた。日輪刀を強く握り直す、刃に映る自分の顔は酷い有様だ…血に塗れ、息も荒い。それでも、抗わなければ
「……ここで、終わるわけないでしょ」
言葉にした瞬間、不思議と足の感覚が戻った。錯覚かもしれない
それでも、今はそれで十分だった
日輪刀を杖代わりに、どうにか立ち上がる。身体が悲鳴を上げるのを無視して、構える。無惨がゆっくりと距離を詰めてくる
「お前の命運もここまでのようだな」
「……いや」
喉が焼ける。それでも、声を絞り出す
「僕は……死なないよ。だって……」
羽音が鮮明に聞こえた、一羽の鎹鴉が、上空を旋回する
「カアアア!夜明ケマデ、1時間!!」
凍てつくような冷たい強い突風が駆け抜ける
「時間稼ぎは終わったからね」
9本の日輪刀が無惨に襲いかかる
暴風が荒れ狂い
水が奔流となり
炎が包み
岩がそびえ立ち
蛇が牙を剥き
恋が舞い
蟲が戯れ
霞が視界を奪い
音が戦場を支配する
「俺達に盛るなんてよォ、いい度胸してるじゃねェかァ!」
相変わらず顔が凶悪だよ実弥
「私にも相談なしか…悲しい…南無」
涙を流しながらも手を合わせる悲鳴嶼さん
「まったく、お前の継子はどうなっている」
不機嫌そうに義勇に文句を言う小芭内
「…俺の手には負えない」
相変わらず無表情の義勇
「でも、私たちが来たからにはもう百人力よ!」
私に任せてと言わんばかりに笑顔な蜜璃ちゃん
「そうだな!海斗!少し休んでるといい!」
…どこ見て叫んでるの杏寿郎
「ド派手にやったな!だが、祭りの神は俺様だ」
罠の助言、助かりました宇髄さん
「あとで覚悟しといてよね」
無表情の無一郎…怖っ
「ほんとに仕方ない人ですね」
笑顔だけど目が笑ってないですしのぶさん
柱たちが無惨を削る激戦の最中、錆兎に引きずられるように後方へ下がり、脇腹の治療を受ける
「あとで説教だからな」
そう言いながら、手際よく包帯を巻く錆兎
「頑張ったんだからもっと優しく手当を…痛ぁ!?」
「ほら、もういいぞ」
……最後、わざと叩いたよね?ねぇ?
視線を向けるが、完全に無視された
「俺はもう行く、お前は炭治郎でも起こしてこい」
「え、炭治郎?ちょっと…」
意味が分からないまま、炭治郎を探す
少し離れた場所で、寝ている炭治郎と、オロオロしている村田と後藤さんを見つけた
「村田、後藤さん。炭治郎の様子は?」
「それが……血鬼止めを打った後、急に倒れて…」
炭治郎の避難を担当していた後藤さんが半泣きになりながらも答えた
「揺すっても耳元で叫んでも起きなくって、一体どうしたんだよ」
見たところ、外傷はない。呼吸も安定している
……夢、か。もしかして遺伝の記憶でも見ているのか――
そう考えた瞬間、叫び声が響いた。振り向くと、獪岳が飛んでくる
「オーライ!」
「えっ?おーらい?」
なんとか受け止める
「まじ、アイツやばいですね。音柱に引っ張られなかったら死んでました…」
「あれは、化け物だからね。無理しないで」
「はい、後方支援に回ります。いざって時は動けるように」
「ふふっ、頼んだよ」
「岬さんも気を付けて」
獪岳は、そのまま走り去っていった。……そろそろ戻らないと
ふと、炭治郎の眉がわずかに動いた。呼吸が、ほんの少しだけ深くなり、指が微かに震えた
「…あれ、岬さん?」
「おはよう、炭治郎」
炭治郎は勢いよく上体を起こし、周囲を見回す
戦場の空気を一瞬で吸い込み、状況を把握しようとしているのが分かった
「夢見てて、祖先の炭吉さんの記憶なんですけど、縁壱さんの日の呼吸の型を見て…」
炭治郎の両頬を摘んで、むにっと引き延ばした
「はーい、落ち着いて」
「みひゃきひゃん…やめへぇ…くだひゃい」
必死なのに、どこか間の抜けた声。張り詰めていた胸の奥が、ほんの一瞬だけ緩んだ
「炭治郎、大丈夫だよ。僕が手伝うから日の呼吸、繋げられそう?」
手を離し、赤くなった頬を撫でながら、真剣に聞く
炭治郎は一瞬だけ視線を落とし、息を整える。そして、迷いを振り切るように顔を上げ、強く頷いた
「やります!必ず、日の出まで鬼舞辻無惨を止めます!」
「よし、一緒に頑張ろ」
いよいよ決着ですかね
実際、ちゃんと30分、時間を稼げたかと言われると微妙ですけど許してください…