水柱の継子(自称)   作:ポケットピスケット

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夜は明けた

 

炭治郎と共に前線へ戻ると、そこはもはや戦場というより、立っている者だけが残った地獄のようだった

 

誰も欠けてはいない。だが、無事な者もいない

全員が血に塗れ、呼吸を荒くし、それでも刀を手放していなかった

善逸たちも紙眼を使い、限界ぎりぎりで戦闘に混じっているようだ

 

視線を交わすと、言葉は要らなかった。炭治郎は一瞬だけ頷き、次の瞬間には無惨へと飛び込んでいた

 

日の呼吸 玖ノ型 輝輝恩光

 

左腕を斬り飛ばし、無惨と向き合った。その姿に縁壱さんのことを思い浮かべたのだろう、眉間に皺を寄せ不愉快そうに無惨は吐き捨てた

 

「…虫酸が走る」

 

「終わりにしよう、無惨」

 

炭治郎は呼吸を繋ぐ。だけど、完全ではない。わずかな間が生まれ、その隙を無惨が狙う

だが、その全てを、僕と柱たちが叩き落とした。無惨の動きが、ほんの僅かだが…確実に鈍っていく。本人すら、最初は気の所為だと思っただろう

 

無惨の動きが気の所為と思えるレベルだが遅くなってきた

いくら頭が無惨でも、僕たちを殺せないことに疑問を抱き始めたのか、表情を曇らせ、何かを考え始めた

吸収した珠世さんの細胞の記憶を微かに読み取ったのだろう

九千年の老化を悟った瞬間、表情が歪む

 

「今頃、薬の効果に気が付いたの?老いって怖いねぇ、自分の変化に気が付けないなんて」

 

睨みつけてきた視線が、すぐに炭治郎へと戻る。他を見る余裕すらない

 

「ちょこまかと跳ね回るな!」

 

焦り始めた無惨が必死な表情で叫び始めた

 

「悲鳴嶼さん!赫灼を」

 

「承知した!」

 

柱同士が刀を合わせ、刃が赤く染まる。これも、事前に積み重ねてきた準備の一つ

 

次々と無惨に斬りかかっては、躱し防ぎ、大きな怪我を負えば一時的に撤退して治療を受けて直ぐに戻る

これは全員が揃っているからこそ、できる芸当であって本来なら死ぬほどの致命傷を負いながらも気合いで体を動かすという地獄絵図の有り様だったんだ

 

やがて、無惨の体に異変が起きた。古傷だった、縁壱さんがつけた傷

 

「みんな古傷を狙って!そこが急所だ」

 

一斉に襲いかかるが、人のいない方向へと逃げはじめた

無惨が逃げるのも想定済みだし、その道はわざと空けておいたんだよね

 

「っ!?」

 

日輪刀で使われる素材を糸にし、網状に組み黒く染めた物を退路に張ってある。見事に引っかかってくれてありがとうございます!

僅かに動きが止まればそれで充分、宇髄さんと実弥が前に立ちはだかり、後ろから獪岳と善逸が壱ノ型を使って斬り込む

 

「夜明ケマデ、三十五分!」

 

鎹鴉の声と同時に、無惨の体が膨れ…分裂しかけて、止まった。次の瞬間、吐血する

 

衝撃波が来るっ!

 

「義勇!無一郎!有一郎!」

 

水の呼吸 拾壱の型 凪

霞の呼吸 伍ノ型 霞雲の海

 

4人の呼吸で衝撃波をできる限り削ぎ、動ける人が日輪刀を刺して血鬼術を解除させた

 

「攻撃を止めるな!無惨が逃げる!」

 

それぞれが呼吸を使って足止めしていると炭治郎の一撃が無惨の胸を貫き、家の壁へと押し付けた

義勇が背後から支え、炭治郎を助ける、2人を引き剥がそうと触手が暴れ始めた

 

蜜璃ちゃんが腕を引き千切り、それを狙う触手を小芭内が断つ

反対からも実弥と粂野さんが呼吸を使って腕と触手を斬り刻む

 

無惨の顔面が縦に割れ、大きな口となって炭治郎を噛みちぎろうとするが悲鳴嶼さんの鉄球鎖が直撃する

 

「夜明けだ!このまま踏ん張れェェェ!」

 

実弥の叫びに反応して無惨が暴れそうとするのを杏寿郎と錆兎が左右からさらに斬り込む

日が差し始め、無惨の体を焼き始めると声にならない叫びを上げ肉の鎧を作り出した

このままだと炭治郎が飲み込まれてしまうっ!考えるより早く、体が動いた

炭治郎と無惨の間に入り込み、二人まとめて、後方へ蹴り飛ばす

 

「岬さん!」「海斗!」

 

肉の塊に飲み込まれた。何これ最悪すぎるんですけど、潰されそうだし、関節が圧迫され、臭いし、息できないし、意識飛びそう…力を振り絞って日輪刀を強く握り締めた

近くで何が叫んげるはずなのに厚い壁に阻まれてよく聞こえない

 

どのくらい時間が経ったのだろうか…僕は何をしていたんだっけ?

暗闇だった。音も、匂いも、痛みもない。ああ、死んだのな

 

そう思った瞬間、妙に落ち着いている自分に気付く。恐怖も、後悔も、驚きすらない

ただ、深い底に沈んでいくような感覚だけがあった。背後に気配を感じ、振り返る。そこに立っていたのは、鬼舞辻無惨だった。

 

「あれ、不様に負けた無惨じゃないか」

 

口をついて出た言葉は、思ったよりも軽かった

 

「黙れ、お前は私の意志を継ぐ者になれ」

 

「は?それが人に物を頼む態度なの?」

 

無惨は苛立ったように眉をひそめる

 

「…鬼でなくなれば、数年の内に死ぬのだぞ。痣の代償を払わねばならぬ」

 

「へー、知ってるけど何か?」

 

「自分のことだけを考えろ。目の前にある、無限の命を掴み取れ」

 

「そんなのいらないし、もうやる事やったし満足してるんだよね」

 

「…命がいらないだと?」

 

「僕の両親が鬼に殺されなければ、僕は俺の記憶を取り戻さずに平和に生きて寿命で死んでたはずなのに。まぁ、僕がいなかったところでお前の死は確定してたんだよ」

 

「いったいなんの話しだ」

 

「さぁ?地獄で一生、悩んどけば?もう疲れたし、お前ごと身連れにして大人しく死ぬよ」

 

「何勝手に死のうとしてる」

 

僕でもない、無惨でもない、でもこの声は知っている

 

「なんだお前は!」

 

「煩い黙れ」

 

無惨が俺に掴みかかろうとすると、いつの間にか手に持っていたハリセンで頭をぶっ叩いて消滅させた

えっ?強ない?

 

「あのなぁ、ここは無意識領域みたいなもんなんだ。やろうと思えばなんでもできる」

 

「便利すぎる」

 

「ほら、さっさと帰れ。みんな待ってるんだから」

 

「…生きる資格なんてないよ。大勢の人たちを殺した…一般市民も隊士も炭治郎の家族だって…僕が過去の選択の延長線で死んだ」

 

腰を下ろし両膝を抱え、顔を埋める。上から聞こえたのは、ため息だった

 

「……ほんと、面倒くさいな。生きる資格があるかどうかなんて、死にかけてる奴が決めることじゃない」

 

「……」

 

「罪悪感があるなら、生きて償え。背負いきれないなら、仲間に分けろ」

 

「……」

 

「死ぬのは簡単だ。だが“生き続ける”のは、覚悟が要る」

 

しばらく間を開けてから頭に衝撃が走った

 

「痛ぁぁぁぁ」

 

まだ持っていたハリセンで叩いてきた

 

「まったく手間がかかるな」

 

「酷くない!?てか、ここ僕の無意識領域なのに、なんでそっちが主導権握ってるの!?」

 

「そんなの知るか!」

 

襟足を掴まれて、引っ張り上げられた。身長差はないはずなのに足が地面に着かず宙に浮いている

 

「ちょっと何するのさ」

 

「いつまでも子供みたいに我儘言う奴は、放り投げるに限る」

 

「えぇ、僕ってこんな性格だったっけ?」

 

乱暴すぎない?

 

「じゃあな、短くても痣の寿命までは生きろ」

 

その言葉と同時に上の方へと投げられた

 




えっ?無惨の縋るシーン?長生きしてるんだからもういいでしょ

次が最終回です
炭治郎の視点から入って、途中で主人公くんの視点に切り替わります
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