水柱の継子(自称)   作:ポケットピスケット

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最後の柱合会議

 

暴露大会が行われてから、暖かさも増し、桜が満開の季節

 

「来てくれてありがとう…今日が最後の柱合会議だ」

 

お館様の家族7人と柱と継子がいつも柱合会議が行われる庭に隣接している大広間に呼ばれた

お館様から柱と継子の名前が1人ずつ呼ばれる

 

「大勢の子供たちが亡くなってしまった。けれど、私たちは鬼を滅ぼすことができた」

 

お館様の言葉を聞き逃すまいと固唾を呑んで静かに聞く

 

「…鬼殺隊は、本日をもって解散する」

 

「御意」

 

全員の声が揃った瞬間、庭の桜がはらりと散った。それが、長い戦いの幕引きみたいに見えた

 

「長きに渡り、身命賭して、世の為、人の為に戦っていただき、尽くしていただいたことを産屋敷家一族一同、心より感謝申し上げます」

 

あまね様の言葉に続いて、産屋敷家の人たちが深く頭を下げる

 

「顔を上げてくださいませ!」

 

「礼など、必要御座いません!鬼殺隊が鬼殺隊で在れたのは、産屋敷家の尽力が第一」

 

「ありがとう。義勇、実弥」

 

嬉しそうにお館様が微笑んだ

 

「さて、今日は慰労会を兼ねて花見の席を用意したんだ。みんなの好きな食べ物やお酒も用意してある。…みたらし団子もね」

 

お館様の最後の言葉に思わず笑ってしまった

みんながいそいそと庭に出て行くのを最後まで部屋に残って眺める

 

なんというか無惨が消滅したのを実際に見ていたわけではないので、いままで、実感あんまりなかったんだけど…

炭治郎たちもお呼ばれしたようでさらに賑やかになっていく

 

僕が見たかった景色が目の前にある

失った命は戻ってこない…だけど、救えた命は確かに存在している

春の暖かい風が心地よく吹いている

 

「海斗!いつまでそこにいるんだ。産屋敷家特製の鮭大根が美味しいんだ。一緒に食べよう!」

 

「ははっ、本当に鮭大根が大好きなんだから…」

 

義勇が楽しそうに笑っている。胸が熱くなるのを抑えて、返事をする

 

「今、行くよ!僕の分も取っておいて」

 

庭の方へと足を向け、みんなと合流した

義勇と錆兎がいるテーブルへとお邪魔する

 

「ほら、海斗の分だ」

 

「うん、ありがとう」

 

錆兎から受け取り、早速食べる。鮭の旨味と醤油の風味がが大根に染み込んでいて、口の中でほろり崩れる。鮭も口の中に頬張るとふっくらとした食感と程よい脂身がのっていてバランスがいい

 

「義勇が絶賛するだけあって、美味しいね」

 

義勇が盛っては食べを永遠と繰り返している

 

「食べ過ぎてお腹壊さないでよね」

 

「大丈夫だ。容量は得てる」

 

「お前…どうしたら、こんな所に鮭が付くんだ」

 

錆兎が呆れながらも、頬に付いた鮭を取っている

 

「そういえば、2人とも今度どうするの?」

 

「故郷に帰って、家族に報告したら真菰と一緒に鱗滝さんのところに行くつもりだ。義勇は?」

 

「俺も姉さんに報告したら、やりたいことがあるから戻ってくる予定だ」

 

「そうなんだ。なんかあったら連絡してよ、遊びに行くし」

 

「あぁ、海斗も元気でな」

 

錆兎は少し寂しそうな顔をして笑った

 

「そんな寂しがることはない。定期検診とかもあるだろう。海斗、お互いに頑張ろう」

 

「うん?何を頑張るかわかんないけど…また、蝶屋敷でね」

 

この人たちと、同じ場所で肩を並べて戦うことは、もう二度とない。それでも、また会えると思える未来があるから寂しくないよ

 

…………………………………

 

「おーい、こっちだ」

 

粂野さんに呼ばれるとそこには不死川兄弟もいた

おはぎ片手に酒飲んでる…合うのかな

 

「飲めよ。さすがァ、お館様が用意してくれただけあって美味いぞォ」

 

実弥が、慣れた手つきで盃に酒を注いでくれた。戦いから離れたお陰か、表情が穏やかに見える

 

「ありがとう、実弥とお酒なんて久しぶりだね」

 

「そうだなァ、お互い忙しかったしな」

 

少しずつ酒を飲みながら、他愛もない話をしていると、玄弥が控えめに紙を差し出してきた

 

「故郷に帰って、しばらくゆっくりするので良ければ遊びに来てくだい」

 

「近所にいい和菓子屋があってなァ。海斗も気に入ると思うぜェ」

 

「ほんと!それは楽しみだなぁ。粂野さんは?」

 

「俺も故郷に帰るよ。鬼殺隊に入るって言って、家出同然に出てきちまったんだ…親孝行しないとな」

 

その言葉に、誰も茶化さなかった

 

「そっか。近くに来たら、家に遊びに来てよ。いいお酒用意して、待ってるから」

 

「おう、酒に合うつまみ用意していくよ」

 

それだけ言って、粂野さんは盃を傾けた。誰かが相槌を打つこともなく、ただ、穏やかな時間が流れていった

 

…………………………………

 

「酷いよ!兄貴!」

 

「まったく、お前はすぐ調子に乗る」

 

騒がしい2人を見つけて声をかける

周りの笑い声に混じって、そのやり取りがひときわ響いていた

 

「また、何やらかしたの?」

 

「善逸のやつが煩いんです」

 

「ちょっと禰豆子ちゃんの話しただけなのに…」

 

殴られた頭を抑えながらもブツブツと文句を言っている

怒っているはずなのに、どこか楽しそうだ

 

「あはは、元気なのはいいことだよ。善逸は、炭治郎たちと一緒に行くって聞いたけど」

 

「はい、禰豆子ちゃんに着いて行きます!」

 

迷いのない声に思わず苦笑してしまう。ブレないなぁ

 

「俺は、先生の元でお世話になろうかと。1人だと色々、大変でしょうし」

 

その言葉には、以前よりも大人びた落ち着きがあった

 

「うんうん、きっと桑島さんも喜ぶよ」

 

「桃が生ったら、送りますね」

 

「えー!俺も食べたい!」

 

「お前は自分で取りに来い」

 

言い合いの向こうで、時間だけが静かに進んでいく

 

「ふふっ、楽しみにしてるよ」

 

二人のやり取りは相変わらず騒がしくて、言い合いは途切れない。それなのに、不思議と耳に刺さらなかった

 

少し前まで、この声の向こうには、常に鬼の気配があった。今はただ、春の庭に笑い声が混ざっているだけだ

善逸の大きな声に、少し離れている炭治郎が苦笑していた

 

…………………………………

 

「うまい!うまい!」

 

「本当に美味しいですね!煉獄さん」

 

蜜璃ちゃんと杏寿郎が山のような料理を高速で食べている。皿が次々と空になっていくのに、笑顔だけは減らない

その隣で小芭内が微笑みながらも見守っていた

 

「相変わらず、いい食べっぷりだね」

 

「海斗もどうだ?」

 

「見てるだけでお腹いっぱいだから大丈夫…」

 

「そうか…うまい!」

 

小芭内の隣に座り、美味しそうに食べる2人を眺める

 

「お前にも伝えておこう」

 

声の調子が少しだけ変わったのに気づいた

 

「ん?どうしたの?」

 

「甘露寺と祝言をあげようと話してな…今度、甘露寺の両親に会うつもりだ」

 

その言葉に、飲んでいたお茶を吹き出した

 

「ごめん…いつの間に…」

 

「お前のせいだぞ…。あれ以降、みんなから祝言はいつだ?と顔を見る度に声を掛けられるんだ。特に女性陣」

 

困ったようにでも蜜璃ちゃんを見る目がとても優しかった

 

「えっと、ご迷惑をお掛けしました。僕も楽しみに待ってるね」

 

「あぁ、必ず幸せにする」

 

その一言が、何よりの約束に聞こえた

蜜璃ちゃんに呼ばれ、小芭内が向かうと代わりに杏寿郎がやってきた

 

「もう、食べなくていいの?」

 

「うむ!少し休憩だ!海斗、俺の家に来るがいい。父上も千寿郎も会いたがっている!」

 

屈託のない声に、思わず笑みがこぼれる

 

「うん、わかった。近いうちにお邪魔するね」

 

「痣の寿命についてもみんなで調べている。諦めるな」

 

その言葉だけが、まっすぐ胸に届いた

 

「…うん。ありがとう」

 

短く答えると、杏寿郎は大きく頷いて、また元の席へと戻っていった。背中を見送りながら、胸の奥に残った言葉が響く

 

諦めるな

 

それは励ましというより、約束に近い響きだった

 




みんな生き残ってたらそんなお話です
残りはまた明日!
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