小学生に異世界は荷が重い!!   作:創作好き

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タイトルとあらすじが全てです。


親方、空からワイバーンが!

 

 今年で10歳になる僕は、森の中で怪物から逃げ回っていた。ランドセルは既に投げ捨て、走り続けて足が痛くなっても止まれない。後ろにはトラックくらい大きな、オオカミみたいな怪物がいるから。怪物は走らない。僕が泣きながら走る様を愉しむように、歩いてついてくる。

 

学校の帰り道。ひとりで帰っていたら急に周りが光って眩しくなって、目を開けたらこの森にいた。人を探そうと歩き回っていたら、怪物に見つかってしまった。

 

木の枝で頬を切っても、転んで膝を擦り剝いても、走り続けた。

 

怖い、痛い、お腹すいた、寂しい、お兄ちゃん。泣いても誰も来ない。怪物の足音だけが聞こえる。

 

また転んだ。もう一度立ち上がろうとして、あまりの痛さに立ち上がれなかった。前に先生が言っていた「足をひねる」とはこのことだと、すっと思い出せた。

 

もう僕が逃げられないと分かった怪物が、涎を垂らしながら近づいてくる。

 

「お兄ちゃん・・・」

 

お兄ちゃんは助けに来てくれない。去年、突然いなくなってしまったから。それでも、呼ばずにはいられなかった。

 

どれだけ会いたいと願っても、お兄ちゃんは来なかった。目の前で、怪物が大きな口をがばっと開けた。

 

「お兄ちゃん、助けて・・・」

 

あと少しで口の中に入る瞬間、怪物は潰れた。今僕の目の前に広がっているのは、先ほどまで怪物であったであろう紫色の血の海と、散らばっている肉片や骨、目玉。そして、左腕がまるで機械のような銀髪のお姉さんだった。

 

「怪我はないか、少年」

 

これが、僕の人生を大きく変える最初の出会いだった。

 

 

 

 

 背中の赤いマントを翻し、あの頃と比べれば長くなった手足を懸命に動かして街中を走り回る。逃げ回っていたあの時とは違い、僕の体はとても大きくなっている。大体17歳くらいの体格だ。馬力が違うとはこのことだろう。そして今追いかけているのは一匹の猫。軽やかにあちこち逃げ回るが、もう逃がさない。猫が塀を飛び越えようと力をためた瞬間、その軌道を読んでその先に僕も跳んだ。

 

「やっと捕まえた!!」

 

にゃーと鳴いて暴れるが問題ない。何せ僕はもう大人だ。猫一匹抑えるなんて簡単・・・

 

「痛い痛い痛い!?」

 

右手を引っかかれ、滅茶苦茶痛かった。

 

「にゃんごろ!」

 

この猫飼い主の男の子が駆け寄ってくる。今回の依頼主だ。

 

「兄ちゃんありがとう!にゃんごろ、全然帰ってこなくて心配したんだぞ」

 

「どういたしまして」

 

そして少年は猫を抱きかかえて帰っていった。それを見送って僕も立ち上がる。

 

「・・・よっし。今日の依頼も終わったし、今度こそモンスター討伐させてもらえるよう直談判しに行こう!」

 

僕は走り出した。一人前の冒険者になるために!

 

 

 

 

「ダメです」

 

「何でですか!!」

 

ギルドの受付にて、受付嬢に直談判しているが一向にモンスター討伐の依頼を受けさせてもらえていなかった。

 

「何度も言うように、これはギルド長直々の指示です。アユムさんには当分モンスター討伐には行かせないと言われているでしょう?」

 

「そうですけど、どう考えてもおかしいでしょ!俺、もう二か月も街中の依頼しか受けさせてもらえてないんですよ!?ほとんどの人は一か月もしないうちに町の外でゴブリンとか倒してるのに!」

 

そう、僕は今、お金を貯めるためにモンスター討伐の依頼を受けたいのだが、ギルド長直々に依頼を受けさせてもらえていないのである。ギルド長に理由を聞いても全く教えてもらえない。ほんとになんで・・・

 

「ようアユム。また受けさせて貰えないのか?」

 

「ザックさん、討伐依頼ご苦労様です」

 

「あ、ザックさん」

 

同じギルドに所属している先輩、ザックさんが声をかけてくれた。この人は時々ご飯をおごってくれるいい人だ。

 

「ほい、ハイオークのコア」

 

「・・・はい、確認しました。お疲れ様です」

 

「んで、どうしてこいつに討伐依頼だしてやらないんだ?実力不足ってんなら、まずはうちのパーティーの荷物運びってことで入れてもいいぜ?何事も経験だしな」

 

「ザックさん・・・!」

 

ありがとうザックさん。兄ちゃんがいなかったらあなたを兄と呼んでいました。

 

「・・・正直なことを言うと、私にも理由は分かりません。実力試験を見る分には私も問題ないように思いますが、偶然見ていたギルド長が最低でも後数年は下働きさせるとしか言わなくて」

 

「えぇ・・・お前ギルド長に何したんだよ」

 

「俺何もしてないですよぉ」

 

その後も粘り続けたが、後から他の冒険者が来てしまって、受付嬢が僕に討伐依頼を出してくれることはなかった。

 

 

 

 

「はあ、これじゃあいつまでたってもお金が貯まらないよ・・・」

 

「元気出せって。飯奢ってやるからさ」

 

「ありがとうザックさん!俺、オムライスがいいです!」

 

「現金な奴」

 

うちのギルドには食堂がある。そこの料理はどれも絶品だが、今日はオムライスの気分である。

 

「そういやアユムは何でそんなに金が欲しいんだ?」

 

「ほへ?」

 

「いったん飲み込め」

 

「んぐ・・・兄を探しているんです」

 

「ほう?」

 

「以前も言ったように、俺は転移者です。どこにいるかも分からず、死にかけていた俺を助けてくれた恩人のお陰で、今も生きています」

 

「そう言っていたな」

 

ザックさんの反応からわかるように、この世界では転移者は特別ではない。実はポコポコこの世界にやってくる。だが、特別な力を持っている転移者は本当に僅か一握りで、ほとんどはモンスターがいる場所に転移し、亡くなっているらしい。

 

「その恩人から聞いたんです。ごく一部の人間は魂が特別で、この世界に来ると全てを圧倒する力を手にするギフトと呼ばれる存在になるって。だから、元の世界で行方不明になった兄もこの世界にいるって思ったんです。だから会うために、あちこち回るためのお金を貯めないと・・・」

 

「・・・なあ、アユム。お前の兄貴がギフトとは限らないぞ」

 

再び持ち上げようとしたスプーンを持つ手が止まる。ザックさんはきっと、あまり期待するべきではない、最悪の事態を考えるべきだと、そう言っているのだ。でも、正直それはないと断言できる。

 

「いえ、兄は間違いなくギフトです。だって兄は特別ですから」

 

断言した僕を見て、ザックさんはそれ以上いうつもりは無くなったらしい。手元の水に手を伸ばした。

 

「そうか。見つかるといいな、お前の兄貴」

 

「はい!」

 

そして食器の音と周りの雑談の音だけになる。しばらくして、ザックさんが他の話題を切り出した。

 

「あのさ、お前今の勇者について知ってるか?」

 

「あー、確か、今代勇者パーティ唯一の生き残り、でしたっけ?」

 

僕がこの町にくる一年前まで、この世界は人類の敵、魔王の恐怖に脅かされていた。その魔王は見事勇者パーティに打倒され、人類はあっという間に復興した。そのおかげで、僕はこうしておいしいご飯を食べられているらしい。

 

「そう、その勇者本人がこの町に来るらしいぞ」

 

「へえ、どんな人なんですかね。会ってみたいなあ」

 

やっぱり、ヒーローみたいなかっこいい人かな?

 

「何でも、炎のように赤い髪にドラゴンの赤い血が染みついた服をきたナイスバディの美人らしいぜ」

 

「え、女の人なんですか!?てっきりムキムキの男性かと・・・」

 

「いやー楽しみだな!ぜひ一度は拝んでみたいぜ!」

 

ザックさんはかっこいいものより美人の女の人の方が好きらしい。元の世界にあったアニメ、プリティ戦士シリーズとか気に入るかな?

 

 

 

 

食事を終えた後、僕はザックさんと別れて町を歩いていた。外観はアニメでよく見ていた西洋風の街並み。僕はいつもここで、困っている人がいないか歩き回りながら探していた。

 

「見ろよあれ」

 

「いつもの中途半端コスプレ野郎だな」

 

「悪い奴じゃねえけど、見てていてーよ」

 

僕の恰好を見て、色々言う人たちの声が聞こえる。でもそんなものは無視して歩き続ける。別に痛くないし。

 

僕の恰好はこの町で売っている一般的な緑色の服に赤いマント、左手に丸い木の盾、腰に剣を刺していた。

 

どうやら、この恰好は有名なおとぎ話に出てくる勇者の恰好に似ているらしい。特にマントと盾。正直目立ってる。でも恰好を変えるつもりはない。お金があんまりなから装備はあまり買いたくない。何より、これは恩人から譲ってもらったものだ。だから、僕はこの恰好でお兄ちゃんを探すと、あの家を出た時から決めているのだ。

 

「早くお兄ちゃんに会いたいなあ」

 

そんな時だった。町に危険が迫った際に鳴らされるという鐘の音が響いたのは。

 

「ワイバーンの群れだ!!」

 

「魔物の群れが来てんのか!?魔王はもういなくなったのになんで・・・!」

 

「無駄口叩いてないで早く教会に行くぞ!あそこなら安全だ!」

 

周りの人は突然の事態にパニックになっていた。でも、僕は不思議と冷静だった。

 

もし、もしもここでワイバーンを沢山倒したら、ギルド長は僕を認めてくれるかもしれない。それに、ワイバーンの討伐額は高いって聞いたことがある。このチャンスを掴めば、お兄ちゃんを探しに行ける!!

 

「よし、やるぞお!」

 

僕はワイバーンが来ているという方角の城壁へと駆け出した。

 





アユム・サクラギ
主人公。すごいブラコン。自分を強く見せるために一人称を僕から俺に意識的に変えようとしている。
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