貞操逆転世界に迷い込んだ男冒険者がヤンデレを次々生み出してしまう話 作:超貞操筋肉
「はぁ…もう金がねぇ…」
たった数枚の銅貨が入った頼りなさすぎる袋の重さに思わずため息を吐く数日前には金貨や銀貨がパンパンに詰まっていた筈なんだがな…
「おーい! 誰か森に魔物狩りいこうぜー。荷物持ちでも魔法使いでもヒーラーでも誰でも良い」
賑わっている冒険者ギルドのど真ん中で喧騒に負けないように大声を張り上げる。
「うわー…アデルのやつ、この前あんだけ稼いだのにもう金なくなったのかよ」
「いつものことだろ。あいつは毎日娼館いかねぇと死んじまう女狂いだ」
「最ッ低…なんであんなのを私…キモすぎるわ」「同感」
酒は付き合い以外で飲まないくせに娼館に毎日行っているせいで、金が溶けるようになくなり、ギルドの中心で大声をあげて人員募集をするアデルはこの街のギルド名物とも化していた。
またかと呆れた目線で見るもの、ニヤニヤと笑いながら茶化すもの、顔と実力だけはそこそこな彼にかつて好意を抱いていた女達が悪態を吐いていたりと反応は様々だ。
「聞こえてんだっての…事実だから仕方ねぇけど。…で誰もいないのか? せめてポーターはいないと不便で仕方ねぇんだけど」
女狂いな点だけはともかく、冒険者の中では比較的常識人でBランクと、ある程度の実力もあり、気さくで面倒見も良いアデルが臨時でパーティーを募集した際には他の冒険者と比べて、男女関係なく割とすぐ同行者が埋まるのだが珍しく今日は誰も名乗りをあげなかった。
「ははっ、アデル。残念だけどよぉ、今日は森に行かない方が良いぜ。現に誰も行こうとしないだろ? 毎度言ってるが、いい加減掲示板を見る癖をつけろってんだ」
パーティーを組んだことのあるヒゲモジャ戦士に言われて仕方なくクエストや注意事項などが日々入れ替わり書かれる掲示板に目を向ける。
「はぁ?! 今日に限って濃霧かよ…おい、飯代すら持ってねぇぞ」
数年に一度あるかないか、ごく稀に魔物の巣食う森に発生する異常気象である濃霧。濃霧発生中に森に入ったが最後、入った人間は神隠しにあったかのように死体すらも残らず姿を消してしまうという。
「仕方ねぇ…稼げねぇが平原で適当な魔物でも狩るか」
アデルが森でしか魔物狩りをしないのは他の場所よりも圧倒的に魔物の質が高く、稼ぎが良いからだ。平原など他の場所も決して稼げないわけではないが高価で上質な娼館に通っているため、毎日何時間もグレードの高い娼館に行くとなると森以外では金を稼げないからだ。しかし他の場所でも飲食と宿代を稼ぐくらいならアデルの力であれば容易なのだ。
「今日は女は無しか…おーい誰か俺と」
「しね」「くたばれ」「二度と顔を見せないで」「性欲魔人」
ギルドにいる女冒険者達にも声をかけようとしたが、関係を一度でも持った女達から浴びせられた罵声にバツの悪い顔をしてギルドをとぼとぼと出ていった。
ちなみに女冒険者達と関係が悪くなったのはアデルの性欲の強さと浮気が原因である。女冒険者達はアデルを女の敵として認識し、一種の仲間意識のようなものがあるようだ。
「ふぅ〜…女狂いのあの野郎なら濃霧中の森でも突撃しようとか言い出すかと思ってたが流石にねぇか。安心したぜ」
「ガハハ! いくらアデルでもそんなことするわけねぇ」
「バカにつける薬はないわね…」「同感」
…そんなことを言われていた男は結局森の中にいた。
「ちっ…何も見えねぇ」
深部までは入らず浅い場所にいる魔物を娼館に行ける今日の分だけササッと狩って帰ろうと思ってたんだがなぁ…霧が思った以上に濃くて視認性が悪過ぎる。
ここまで進んで魔物の一匹も出やしないのも気味が悪い。
「はぁ…しゃーねぇな。引き返すか」
あそこまで警告されて濃霧発生中の森に来た馬鹿ではあるが、腐っても中堅冒険者。
森に入ってから道標としてばら撒いていた石灰やアデルの獲物である大剣で傷をつけた木を頼りに引き返していく。
「おい…マジかよ」
撒いた石灰の跡が途中から不自然に途切れ、そこから先は木につけた目印もなくなっていた。
まるで空間が分断されてしまったようだ。
仕方なく途切れた石灰の先へ進んでみるが霧がますます濃くなり、やがては何も見えなくなった。どうしようかと目を瞑り、一瞬の現実逃避から帰ってくると霧が晴れていた。
「ッ?! 何だ…こりゃ」
霧がなくなっていることもだが、何よりも驚かされたのは木の色や葉の形、植生している草など明らかに自分が知っている普段の森ではないことだ。
「どうなってんだ? そこまで移動しちゃいねぇだろ…」
大剣を両手に構え、いつでも戦闘に入れるように慎重に一歩ずつゆっくりと歩を進めていく。
「こんな所で1人で何をしているんだい?」
「っ?!」
限界まで感覚を研ぎ澄ませ、気配察知も怠っていなかったというのに、背後から聞こえて来た声に動揺を隠せない。
「動かない方が良いよ。何かしてみろ、首が飛ぶよ?」
中性的な声だが、背中に当たる2つの感触…どうやら女のようだ。しかもかなりの巨乳の持主。
これは良い。首にナイフを押し当てられていなければだがもっと喜べたんだがな…
「君は何者だい? 僕は冒険者として顔が広い方だけど君みたいな人は知らないんだよ」
全く気が付かない間に背後にいたことからも相当な実力者なのだろう。
自分との実力差がわからないほど馬鹿ではない。
持っていた大剣を手放して両手を上げる。
「B級冒険者のアデルだ。金を稼ぐために森に入ってたんだが濃霧のせいで迷っちまったんだ。敵意もなんかしようなんていう意図もねぇ。なんなら道案内をしてもらいたいくらいだ」
自分との実力差が明確な相手のナイフが首元にあるので内心は気が気ではないが冷静を装って答える。
「B級のアデル…? 聞いたことがない。それに濃霧ってなんだい? 適当なことを言って誤魔化そうとしてるだろ。それにしても君、声が低いな。男みたいだ」
なんだと…男みたいだぁ!? ふざけんな! こいつは俺のことが女に見えてるのか!!
アデルは180後半と男の中でも高い身長に筋肉質な体、顔も精悍で男らしい方だ。こんなことを言われるのは初めてだった。
侮辱とも取れる女の発言に激昂しかけたが首元に突きつけられたナイフの存在を思い出し冷静さを取り戻す。
「…何を言ってるんだ。どこからどう見ても俺は男だろ。女に間違えようもない」
「は? 君は…男…なのか? 冒険者で男? え…?」
急に狼狽え始めた女に何故なのかこちらも頭が疑問で埋め尽くされる。どうやら女は皮肉や侮辱で女と言っているわけではなかったようだ。本気で俺を女と思っていたらしい。
「疑うなら確かめてみろよ。男にしかないものがしっかりついてるぜ」
「男が森の奥に単身で行ける筈ないだろう! 男装趣味で声をも変える魔法があると聞いたことがあるぞ! ボクにそんな趣味はない!…が念の為だ!」
こちらが彼女の言い分を理解する前に女はズボッとパンツの中にまで手を突っ込んできた。
彼女の指が竿に触れた瞬間に女の全身が固まりびくっと全身が震える。
「…………??」
指でつんつん、にぎにぎとまるで初めて触る見知らぬ何か、もしくは貴重なものに触れるかのように女は竿を触り続けた。
「な、なにこれ……え? えぇ?!!!! こ、こ、こ、これ?!!」
か細い声で呟くと、ようやく自分が触っているものが何なのか理解したのか、ズボンから勢いよく手を抜くと前に回って顔を凝視された。
「あ…え…本当に?! ご、ごめんなさい!!」
何故だか男ということを本気でずっと疑っていたようだが、竿を直接確認して、後は顔を見て男だとようやく認識してくれたようだ。顔を見ていなかったとはいえ女と間違われたことは不満だ。
どういうことだ…さっきからこいつ何を言って…
しかしこいつ、綺麗な女だ。街にこんな女がいたら見逃す筈ないんだがな、初めて見る顔だ。
黒髪のサラサラな髪をボブカットにしており、大きく綺麗な切れ長の赤い瞳はまるでルビーのようだ。可愛い系というよりは綺麗系で王子様のような麗人といった感じだろうか。
女にしては高身長で、裕に170以上はありそうだ。そしてプロポーションが良い。出てる所、尻や特に胸は出過ぎは程に主張しているのに腹は引っ込んでいる。
「良い女だ…」
「なっ?!!」
思わず口に出てしまったが、女の方は顔を真っ赤にして俯いているのを見る限り照れているようだ。
「と、と、とりあえず、すまなかった! ほ、本当に申し訳なかったよ! 見慣れない者が大剣を片手に森のこんな深い場所を彷徨いていたから、よ、良からぬことを考えているんじゃないかと思ったんだ」
急に吃り初め、俺の顔を見たと思ったら逸らしてを繰り返している。
なんだこいつは…さっきの良い女発言が効いたと見えるが…この外見で言われ慣れていないことなんてないだろうに。
「そ、それにしてもだよ! 何でこんな森の深部に1人でいるんだい? 冒険者っていうのもその大きな大剣を持ててることや体つきを見るに本当なんだろうけど…にしても男が1人で森に行くなんて」
ずっと感じていた違和感について確かめておこう。
「さっきからあんたが言うその男が、っていうのは何だ? どこのギルドでも冒険者は男のほうが多いだろ?」
国や街にもよるだろうが冒険者ギルドの男女比は基本7割以上が男で占める筈だ。だからこそ女冒険者に嫌われればそのギルドの女の大半が敵になってしまうということを身をもって知っている。
「男が…多い? ボクはそもそも冒険者をしている男の人なんていないと思っていたよ。自分で言うのもなんだが、私は顔が広い方だ。でも男冒険者なんて聞いたことがない。君以外知らない」
「どういう…まさか…濃霧が…あり得るのか?」
彼女の発言の一つ一つが線で繋がった。濃霧がある度に人がいなくなったように消えてしまう理由はこれか。文化も何もかもが全く違う場所に魔法か何かで飛ばされてしまったのだろうか。
しかし冒険者で男が少ない…? 体的にも性質的にも男の方が絶対に冒険者向きだ。いやもしかすると…
「なぁ、あんたが知っている有名な冒険者は誰だ? 伝記や本に載ってる伝説の人物でも良い」
「い、いきなり何だい…? 別にいいけど…あとボクの名前はアリアだ。そう呼んでくれると嬉しい」
そこからアリアから本に載っているような伝説の人物や誰もが知っている御伽話などについて少しばかり聞かせて貰った。
冒険者とはいえ本もたまに読むが、そのどれもが一度も聞いたことのないものだった。逆にこちらが話すものを彼女は何一つ知らなかった。似たようなものこそあれど固有名が違いすぎる。
「最後にもう一度聞くが男冒険者ってのは少ないんだな? 他の男は何をしてんだ?」
「少ないというか…僕が知ってる範囲では一人もいないよ。だから武装してる君を見て女だと思ったんだ。ほ、本当にさっきはごめんなさい」
女と疑ってしまったことに余程罪悪感を抱いているようで何度も謝ってくる。だからこそ、こちらの質問に律儀に答えてくれているのだろう。
未だに顔を赤くして竿に触れた左手を握って開いてを繰り返しているところを見ると相当な初心ものらしい。
「全く気にしてないからアリアも気にすんな。むしろ役得だ」
「え?! そ、それって…」
「それよりもだ。他の男は何してるんだ?」
「ほ、他? 男の人は生産職や商人になる人がほとんどだよ」
「なぜだ? 男の方が肉体的に強いだろ」
「本当に君はどこから来たんだい…魔力量は女の方が圧倒的に多いじゃないか。肉体強化が使えない以上男は冒険者は勿論、力仕事全般に向いてない。君は…使えてそうだけど」
俺の知っている常識とは真逆だ。確定だ。違う大陸に吹っ飛ばされてしまったようだ。
個人差はあるが女の方が魔力量も筋肉量も少ないことの方が多く、だからこそ冒険者は男の方が多かったのだ。
しかし魔法の基本でもある肉体強化が使えないとなると魔力が無いに等しいということだ…そりゃこの大陸には男冒険者がいないわけだ。
にしたって大陸が違うだけでこんなにありようが変わるのか…? 植生しているものも見たことのあるものが何一つない…
アデルは実の所、別大陸ではなく別世界に飛ばされているのだが異世界転移何てもの事態を知らない彼がそんな事実を知る由もない。元の世界では発見されていない未大陸が確認されていたからこその勘違いであった。
「ど、どうしたんだい?」
少し考え込んでしまい無言になった俺に、不安気な顔でこちらの様子をうかがっている。
「アリア、街まで連れて行ってくれ」
♦︎
お互いの身の上話をしながら森の中を抜けて街へ。
どうやらアリアはAランク冒険者だったようで改めて対峙しなくて良かった安堵した。俺はBでそこそこの実力はあるがAからは別次元だ。対抗しようとした一瞬で首が飛ぶ。
他にもこの大陸について色々と話をしたり逆にこちらの話をしてアリアが驚いたりと街に着くまで有意義な時間になった。浮気がバレて女冒険者達に嫌われて以来、女とは風俗嬢としかまともに話せていなかったのもあって中々楽しい時間を過ごせた。
「あ、アリアさん!…と大剣を持った--男?!!」
街の門に着くと予めアリアに言われていた通り門番の兵士達全員にとても驚かれた。大剣の中でも一際重い特大剣を獲物としているから、身体強化が使えないはずの男が軽々と持っていて余計に驚かれるのだろう。
しかし兵士も全員女とは…聞かされてはいたが違和感しかない光景だ
門に併設された兵士の休憩部屋らしき場所からワラワラと出てくる全員が女だ。しかも美形が多い。これは夜の店にも期待ができる。
「あぁ…ちょっと遠くの方から来た僕の友人なんだ。世にも珍しい男冒険者さ」
アリアは別大陸の話について半信半疑だったようだが、話は合わせてくれるらしい。遠くから来た友人として紹介と案内をしてくれるようだ。見た目だけではなく本当に良い女だ。
Aランク冒険者なだけあって門兵達は低姿勢でアリアとついでに俺のことも出迎えてくれた。
余程珍しいのだろう。Aランクという本来であれば尊敬の眼差しで溢れかえるであろうアリアよりもこちらを凝視している兵士達が多い…というか9割以上が俺のことを見ていた気がする。
女にあそこまで熱い視線を向けられると気分が良い。
「やっと街に着いたね。ようこそ、ピイナへ!」
「本当に助かった! それにしても賑わってんなー!」
話に聞いていた通りここ『ピイナ』は大都市で人が多くあちこちに商店や大きな建物が並んでいる。
男も女もどちらもいるが、冒険者と思わしき武装している女が多いのに比べて男には一人もそんなのがいない。本当に俺だけだ。
男の中でもデカい方ではあったが、元の大陸じゃ高身長の男冒険者は多くいたので異常に目立つことはなかったが、この街では1番の巨人になった気分だ。
「アデルが目立つからいつもより通りやすいね。ははっ、君なかなかに便利だね」
「だろ? 案内してくれた礼だと思ってくれ」
街に着くまでずっと話していたからかアリアとはもう打ち解けており、竿を触ったからか最初のガチガチに緊張したアリアではなくもう軽口を言い合えるほどになっていた。
「しかし本当に男冒険者はいないんだな。それに細いやつばっかりだ」
「筋肉質なのは君ぐらいだよ。見えたよ。あれがピイナの冒険者ギルドだ」
冒険者ギルドは俺のいたところと変わらない大きな建物で素材回収の場所や剥取場、カウンターなど作りも変わらなさそうだったが一つだけ変わっているものがあった。
「受付嬢が…嬢じゃねぇ!」
「え? 何を言って…あぁ君のいたところだと女の人が多いのか」
受付カウンター8つの内、6つは男が受付をしていた…ここまでありようが真逆の場所だとは…
驚き固まっている俺を凝視する他の女冒険を他所に俺は一人の受付へ。勿論受付嬢の方だ。
「冒険者登録をしたい」
「……」
ふわっとした金髪セミロングで受付嬢というだけあって勿論美形の青目の彼女はこちらを見て固まっている。
「おーい、聞いてるかー!」
「は、はい! すみません。男性で冒険者は珍しいもので放心してしまいました」
アリアが隣にいるからか、そこからはスムーズに冒険者登録が進み最低のEランク冒険証を渡される。
最低ランクからの登録なのは気になるが仕方ない。
元のBランクから出来ないものかと森の中で俺の冒険証を見せたところ、アリアからやはり元の冒険証は使えないと予め言われていたからだ。
残念ではあるが、冒険者は実力さえあればすぐにランクは上げられる。そこまで悲観することでもない。
「男性で冒険者なんて初めて聞きました! これから頑張ってください!」
小さな手で包み込むように両手を握られた。こちらも両手で握り返すと更に握りが強くなった。ならば更にこちらも--
「こほん!」
「あっ! し、失礼しました!」
アリアが咳払いをすると顔を赤くした受付嬢は慌てたように両手を引っ込めてしまった。アリアの視線が痛い。別に受付嬢と仲良くするくらいいいじゃないか。
「それで、アデルはこれからどうするんだい? もう暗くなってきたし、どうせならボクと夕食でもどうだい? ボクは稼いでるからね。たくさん奢ってあげるよ!」
良い女が過ぎるだろ。気前も良くて見た目も良くて何より身体が良い! だが我慢しなくては…女冒険者に迂闊に手を出せば後が面倒なことを俺は知っている。それにここは前よりも、いや前なんかとは比べ物にならないほど女の集団だからな。
「アリア!! 何から何まで悪い! ありがとう。だが、少し離れて待っててくれ」
「? 受付を変えるのかい?」
「男にしか話せないこともあんだよ」
普段なら男冒険者に聞くのだが一人もいないので、仕方なく空いていた3つ隣の男の受付へと足を運ぶ。
「男性の冒険者…同じ男として応援します! でも、あれ、先程あちらの受付で…」
「男にしか話せないことだ」
「あっ! はい! なんでもお応えします!」
わざわざ違う受付から自分のところに来たので受付君は少し戸惑っていたが、男にしかと言って伝わったのだろう。急に姿勢を正している。指でクイっと耳打ちのジェスチャーを取るとすぐに応えてくれた。話のわかるやつだ。
「娼館はどこにあるんだ? オススメがあれば教えてくれ。最高級とは言わないが性病にはかかりたくないから最低でもあり程度のグレードのだ」
「…………は?」
しばらくの沈黙の後、受付君が固まってしまった。
男同士の会話なんてこんな話題しかないだろうに、聞かれることがわかっているのかと思ったが彼は予想外だったようで受付君は固まって動かない。
「……おーい、行ったことがなかったか?」
「…え、えーと、娼館に行かれるんですか? 失礼ですけど…ぼ、僕と同じ、お、男ですよね?」
再起動した受付君は信じられないような、冷ややかな表情でこちらを見ている。
「何を言ってんだ、正真正銘俺はおと…」
「アデル」
ガシッと力強く肩が掴まれた。
「聞こえちゃったんだけど、どういうことかな?」
顔と息を荒くさせた猛獣が後ろに立っていた。
Tips 濃霧(未公開情報)
森に数十年に一度現れるかどうかの異常気象。
森全体を覆い尽くす濃い霧は侵入者の視界を全て霧で埋め尽くす。濃霧は包み込んだ人間を異界に飛ばすが、同じ異界に飛ばされることはない。それが何故かは誰にもわからない
次話 貪り喰われた
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