アイドル候補の幼馴染   作:パッチワーカー

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 書こうと思ってる人たちだけです。(清夏さん、篠澤さん、秦谷さん)彼女たちの始まりの部分だけ先に出して、いつか書きます。
 一応作者は、全員親愛度20にはできてる程度のプロデューサーです。(燕さんは10)


アイドルの幼馴染(清、広、秦)

 

 

 僕はあのアイドルの幼馴染だ。──それ以上でもそれいかでもないけれど。

 

 

 

紫雲清夏

 

 翼が折れる。──その言い方がいちばん正しい気がした。

 鳥の羽根が役目を失えば、二度と空へ羽ばたくことはできない。同じように、彼女の足がうまく動かなくなれば、きっと歩みを止める。僕のいる場所まで降りてくる。普通の人間の高さへ、僕の視界の届くところへ落ちてくる。いつかどこかで、バレエに縛られた彼女ではない、「ひとりの少女」としての彼女が戻ってくる──そう思っていた。

 ······けれど、僕の想像よりも彼女はずっと強かった。もう一人の幼馴染と肩を並べ、新しい場所へまた羽ばたいている。その事実が、どうしようもなく僕を しくさせた。

 

 彼女と出会った日のことは、もう覚えていない。ただ、深々と雪が降っていたということだけ。母によれば、北海道旅行のときに出会ったらしい。母同士が学生時代の友人だったとか、久しぶりの再会に浮かれていたとか──そんなことを聞かされた。そうなると、僕らの出会いは偶然ではなく必然だったのだろう。······まぁ、必然だからどうだという話でもないのだけれど。

 

 その頃の彼女は、ただの女の子だった。僕が手を伸ばせば触れられる距離にいて、隣を歩いてくれる女の子だった。

 それが、バレエを始めて変わってしまったのだと思う。いや、本来の彼女のいる位置に戻っただけなんだろうけど。彼女は何度も僕が住んでいる東京に来てバレエをし、僕らはその度に話をし、笑い合い、仲良くなれた。だから僕はバレエが嫌いじゃない。それに彼女は僕と母を招待し、自分の舞台を何度も見せてくれた。

 その舞台のたびに、僕は彼女に心を奪われた。何回も、何回も。もう数えきれないほど多く心を奪われた。けれど······多分、それは恋ではない。けれど、愛ではあったのかもしれない。僕は彼女の何かを、間違いなく好きだった。

 

 そんな彼女の右足が壊れた。詳しいことを聞く気はなかった。だから僕はただ「壊れた」としか知らないし、それ以上は知りたくもなかった。

 彼女のすべてと言えたかもしれない足が使えなくなった。いや、「生活に困ることはない」と彼女は言っていた。バレエをしなければ、問題はないのだという。──だから僕は思ってしまったのだ。《やっと》僕と同じ高さに降りてきた、と。

 

 ······だけど、そのささやかな安堵を嘲笑うかのように、彼女はもう一人の幼馴染と一緒にアイドルを目指し始めた。正確に言えば、たぶん彼女自身はアイドルになりたいわけではない。あの幼馴染を大切にする彼女のことだ。きっと「一緒にいたい」とか「守りたい」とか、そんな理由でアイドルの学校へ行ったのだろう。だから、僕は安心していた。あの頃の彼女はもういないんだと思っていた。自分から飛ぼうなんて考えないだろうと思っていた。

 

 ──なのに、どうしてだよ。······どうして君は、そんなに楽しそうに歌って踊れるんだ······?

 そう思っていたら、直近のライブでは昔の彼女のような雰囲気で踊ってるし······なんなんだ?本当に······?

 

 ──けど、これだけは分かる。僕が好きだった彼女の何かは······ない。

 

 

 

 ──────

 

 

篠澤広  

 

 彼女は天才だった。いや、だったではなく天才である。

 彼女と会ったときがいつだったかは覚えてないけど、絵画のように美しい彼女の姿は鮮明に覚えている。「この世のものではない」なんて月並みな表現しかできないけど、今もそうでしか表せない。君の儚く美しい姿は何にでもなれるって一瞬思った。けど、君は体が弱いから、頭を使う仕事に就くんだろうなぁって思った。

 それに、君は嫌なほど頭が良かった。僕なんかが隣に立てるなんて思えないほど頭が違った。──だからさ、君はあの天才のままずっと僕の見えないところで輝いてくれよ。

 ······なんで、誰でも見れてしまうアイドルなんか選んだんだよ······

 

 

 

 

「零はさ、どうして私と一緒にいてくれるの?」

「······どうしてだろうね。幼馴染だから、じゃダメ?」

「私たちって、友達じゃ、ない?」

「友達じゃないかな。僕らは最初から幼馴染なんだよ」

「ふふ······友達って難しいね」

「広が難しいなんて言うとは思わなかったよ。でも確かに、広は友達いないもんね」

「むぅ······零も······って思ったけど、人並みにいるよ、ね」

「広が幼馴染じゃなければ、もっと多かったかもね」

「それはある、かも」

「······普通に認めるんだ」

 

 いつかの記憶だ。彼女が海外へ飛び立つ前、僕らはこんな会話を交わした。僕は彼女の「友達」であることを拒んだ。うまく躱せた、と今でも思う。

 彼女と友達だなんて、とても言えなかった。僕はただ偶然、彼女の近くに生きていただけだ。生まれが違えば、出会わなければ、美しくなければ、天才でなければ──たとえ出会っていたとしても、僕は彼女と友達になろうなんて思わない。

 そんな僕が、彼女の「初めての友達」になっていいはずがない。彼女には僕よりもっとふさわしい誰かと出会い、笑い合ってほしい。

 だから僕は、彼女が口にする「友達」という言葉を、何度も「幼馴染」で置き換えた。今でも、それが正しかったと思える。

 ──だって、彼女に僕みたいな友達がいたら、多くの人が解釈違いで怒り出しそうだから。

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

秦谷美鈴

 

 彼女は天才で、そして問題児だった。──いや、「だった」じゃない。今どうなっているのか僕は知らないけれど、多分今も問題児だ。だから断言できる。

 

 出会った頃から、すでにあののんびりした空気をまとっていた。隣にいるだけで、僕まで何もかもサボりたくなるほどだった。けれど、彼女は不思議な人間で、やると決めたことは必ずやり遂げ、気づけばすべて終わらせている。

 そういうところは心から尊敬している。彼女が本気になったときは、誰でも歯が立たないほど圧倒的だ。陽よりも月よりも、彼女こそが一番に輝きを持っている──僕はそう信じている。

 ただ、彼女たち三人が揃っていたときは、誰が一番なんて関係なかった。あの三人は、それぞれの輝きで互いを照らし合っていた。眩しさが三つ揃った瞬間だけは、彼女も他のふたりも同じ強さで輝いていた。今でもそう思っている。

 ──そのグループが見られなくなった。それなのに、君はひとりで前へ進んでいる。······それが、どうしようもなく胸の奥をざわつかせた。

 

 

 

 

 

 

「美鈴も初星学園に進むん?」

 

「ええ。まりちゃんとりんちゃんと一緒に優勝すると決めましたので」

 

「そうなんや。······なんか寂しくなるなぁ」

 

「まあっ、私のお世話から逃げていたあなたがそんなこと言うなんて」

 

「逃げてはないし。僕が逃げても、普通に捕まえてたやん······まぁ確かに初めは恥ずかしくて逃げてたけど」

 

「もちろん。あおくんのお世話は楽しかったですし、逃がすつもりもありませんでした」

 

「そういうところ怖いわぁ。中学じゃ手毬と燐羽くらいにしときや。······お世話ついでに、あの2人のことよろしくね。放っといたら問題しか起こさんやろし」

 

「ふふ······その中に、私は入っていないのですか?」

 

「え、うん。美鈴は迷惑のライン分かってるやん。手毬は悪気なく人に迷惑かけるし、燐羽は分かってても止まらんし」

 

「······あなたの私の評価が思っていた以上に高くて、驚きました」

 

「そう?僕の美鈴への評価は高いよ。どれだけ一緒にいると思てるん?」

 

「······確かに。あなたとは長い付き合いですね」

 

「そうそう。君のことは長く付き合わんと分からんやろけど、その分、僕は分かってるつもりよ」

 

 

 小学校から中学校へ上がるとき、僕は母親みたいな人を失った。──と言っても勝手に僕の人生に生え、勝手にいなくなったような存在やから、プラマイゼロではあるんやけど。

 

 普通に産まれ育ってきた僕を捕まえたのが、秦谷美鈴という名のわがままの女王だった。強欲で嫉妬深くて、そういう性格が刺さる人にはたまらなく魅力的な、恐ろしい女の子。その付き合いは幼稚園にまで遡る。そして気づけば、僕の生活には彼女がいた。意味がわからないが何故かいた。──僕の思春期の原点は多分あの子やね。

 

 恥ずかしさと理不尽さで逃げ出そうとしても、いつの間にか彼女は追いつき、僕を捕まえる。普段はのんびりしているくせに、あの脚力はどこから湧いてくるんだろう。本当に理解不能やね。

 

 そうこうしているうちに、彼女は手毬を連れてきて、「トップアイドルを目指す」と言い出した。普段から考えていることが見えない彼女だけど、そのときだけは本当に意味が分からなかった。なんでも、手毬とアイドルのライブを鑑賞したのがきっかけと言っていたけど、それだけで彼女が動くなんて思えなかった。本当に意味が分からなかった。

 いや、もしかすると、彼女に関して「意味が分かった」瞬間なんて、最初からひとつもなかったのかもしれない。──僕って彼女に踊らされてばっかりやない?

 

 ──まぁもう彼女は京都にはいんし、僕は自由にいられてるからいいんやけどね。でも、さすがにちょっと、ほんのちょっとやけど退屈やなぁ······

 

 

 

 

 





 
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