アイドル候補の幼馴染   作:パッチワーカー

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 おかしい。
 こんなに重くなるなんて思わなかったです。

 親愛度23の後くらいをイメージしています。ネタバレはないので、そこまで見ていないプロデューサーの方でも大丈夫です。


紫雲清夏 夕陽千冬

 

 

 

 

 

 翼が折れる。──その言い方がいちばん正しい気がした。

 鳥の羽根が役目を失えば、二度と空へ羽ばたくことはできない。同じように、彼女の足がうまく動かなくなれば、きっと歩みを止める。僕のいる場所まで降りてくる。普通の人間の高さへ、僕の視界の届くところへ落ちてくる。いつかどこかで、バレエに縛られた彼女ではない、「ひとりの少女」としての彼女が戻ってくる──そう思っていた。

 ······けれど、僕の想像よりも彼女はずっと強かった。もう一人の幼馴染と肩を並べ、新しい場所へまた羽ばたいている。その事実が、どうしようもなく僕を しくさせた。

 

 彼女と出会った日のことは、もう覚えていない。ただ、深々と雪が降っていたということだけ。母によれば、北海道旅行のときに出会ったらしい。母同士が学生時代の友人だったとか、久しぶりの再会に浮かれていたとか──そんなことを聞かされた。そうなると、僕らの出会いは偶然ではなく必然だったのだろう。······まぁ、必然だからどうだという話でもないのだけれど。

 

 その頃の彼女は、ただの女の子だった。僕が手を伸ばせば触れられる距離にいて、隣を歩いてくれる女の子だった。

 それが、バレエを始めて変わってしまったのだと思う。いや、本来の彼女のいる位置に戻っただけなんだろうけど。

 彼女は何度も僕が住んでいる東京に来てバレエをし、僕らはその度に話をし、笑い合い、距離を縮めた。だから僕はバレエが嫌いじゃない。それに彼女は僕と母を招待し、自分の舞台を何度も見せてくれた。

 そして舞台のたびに、僕は彼女に心を奪われた。何回も、何回も。······多分、それは恋ではない。けれど、愛ではあったのかもしれない。僕は彼女の何かを、間違いなく好きだった。

 

 そんな彼女の右足が壊れた。詳しいことを聞く気はなかった。だから僕はただ「壊れた」としか知らないし、それ以上は知りたくもなかった。

 彼女のすべてと言えたかもしれない足が使えなくなった。いや、「生活に困ることはない」と彼女は言っていた。バレエをしなければ、問題はないのだという。──だから僕は思ってしまったのだ。《やっと》僕と同じ高さに降りてきた、と。リハビリを何度か手伝うなかで、本当にそう思った。

 

 ······だけど、そのささやかな安堵を嘲笑うかのように、彼女はもう一人の幼なじみと一緒にアイドルを目指し始めた。正確に言えば、たぶん彼女自身はアイドルになりたいわけではない。あの幼馴染を大切にする彼女のことだ。きっと「一緒にいたい」とか「守りたい」とか、そんな理由でアイドルの学校へ行ったのだろう。だから、僕は安心していた。あの頃の彼女はもういないんだと思っていた。自分から飛ぼうなんて考えないだろうと思っていた。

 

 ──なのに、どうしてだよ。······どうして君は、そんなに楽しそうに歌って踊れるんだ······?

 そう思っていたら、直近のライブでは昔の彼女のような雰囲気で踊ってるし······なんなんだ?本当に······?

 

 ──けど、これだけは分かる。僕が好きだった彼女の何かは······ない。死にかけの白鳥のように踊っていた彼女はもう見れない。

 

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

「清夏さんはバレエをずっと続けていましたが、どこかで辞めたいと思ったことはなかったんですか?」

 

『N.I.A』で優勝し、久しぶりのライブを終えた数日後。

 事務所兼用の教室にあるテレビでは、アスリートの挫折からの復活を特集する番組が流れていた。Pっちはそれに感化されたらしい。

 

「ん〜、あたしは別に辞めたいとは思ったことないよ」

 

「幼少期からずっと続けていて、辞めたいと思わないのはすごいですね」

 

「あ、ありがとっ?──あ、でもね。あたしがすごいっていうより、環境が良かったのかも?」

 

「環境、ですか?」

 

「うん。発表とか本番は東京でやることが多くてさ。そこに幼馴染の子が住んでてね。ずっと見にきてくれて、いつもすごい褒めてくれたんだ〜」

 

「そういう人がいたんですね」

 

「いたよ。あたしが全然踊れなかった頃から見てくれてた人。家族を除いたら、いちばんのファンかも?」

 

 ──リーリヤとは別に、もうひとりいる幼馴染。まだ上手く踊れない頃から足を運んでくれた男の子。

 いちばんのファンだからこそ、足を壊してからは顔を合わせづらくなった。せっかく同じ東京にいるのに、会いたいのに──バレエをしている自分でないと、どうしても彼に会いたくなかった。

 

「その方には、アイドル活動をしていることを伝えましたか」

「ま〜それとなく? 初星学園に入るよ〜ってくらい」

「──一番のファンには、今の清夏さんを見せるのが怖いんですね?」

「······そうかも」

 

 このPっち、鋭いのか鈍いのか、ほんと分からない。

 

「次の公演で、その方を招待してみては?」

「あ〜······考えとくね」

 

 軽く返したけれど、本当は全然軽くない。

 彼に会うには、まだ足りない。勇気も、踊りも。

 

『すみかちゃんは鳥みたいだね。()()とか······そういう感じ。ちゃんと見たことないけど、そんな気がする!まるでつばさが生えてて、空を飛んでるみたい。すみかちゃんの踊りは見てて楽しいし、引きこまれるよ!』

 

 彼はよくあたしを鳥にたとえた。あたしのことを「鳥」に喩える人は何人かいたけれど、最初に言ったのは多分彼だ。その言葉が、あたしの中のバレエの輪郭を作った。

 

 ──でも、今のあたしには、

 あの頃のような翼はない。

 自由に飛べている気がしない。

 まだ、彼に見せられる踊りじゃない。

 まだまだまだ······何もかも足りていない。

 

「──なるほど。清夏さんの踏ん切りがつかない理由が、ようやく分かりました」

 

「ふ、ふんぎり?」

 

「ええ。あなたは今までいくつもの壁を越えてきた。今回も、ライブを楽しむという課題を乗り越えるでしょう」

 

「Pっち······」

 

「ですが──その人に躍りを披露すること。いえ、バレエを見せるということが、まだ嫌なのでしょう?」

 

「······うん。怖いんだ。期待に応えたいって思うけど、今のあたしにそれができる力はない」

 

「──踊っていく限り、それは避けて通れないトラウマの一種です。けれど、今の清夏さんには、それを越えられる力がありますよ」

 

 Pっちとリーリヤの言葉。ネットのファンの反応。

 あたしの踊りに力があることは、頭では分かっている。

 ──でも、彼に見せるには足りない。まだ全然足りない。

 

「Pっちは分かってないなぁ······」

 

「分かっていないのは清夏さんの方ですよ。あなたはただ逃げている。私は、紫雲清夏の踊りはトップアイドルに届くと本気で思っていますよ」

 

 そう言ってくれるのは嬉しい。

 ──それに、あたしも本当はもう知っている。

 あたしの踊りは、これから劇的に良くなることなんてない。ここが、あたしの限界に近い。

 だから見せられるのは、今の踊りなんだ。ここから先の踊りでも今の踊りと1、2点は変わるかもしれないけど大して変わらない。···変われないんだ。

 

「──Pっち······あたし頑張るから!······でも、連絡するのはPっちがやってくれない······?」

「ええ、いいですよ」

 

 

 

 ──────

 

 

 清夏ちゃんのプロデューサーと名乗る人から電話が来たのは、いつだっただろうか。始めは詐欺かと思ったが、電話番号を見てみると初星学園のものであり、さすがに本物であった。

 そこからはとんとん拍子に話が進み、僕は今日数年ぶりに清夏ちゃんの()()を見に来ることになった。なんでか隣にプロデューサーさんもいるけど。

 

 

 

「みんなありがと〜!今日はね〜」

 

 何曲か終わり、清夏ちゃんの休憩時間というかトークをし始めた。だから今くらいしかないと思った。

 

「プロデューサーさんは清夏ちゃんのバレエを見たことありますか?」

「ええ、映像で拝見したことはありますよ」

「そうじゃなくて──生で見たことは?」

「······ないですね」

「それならよかった。もし生で見たことがあって、今の彼女を僕に見せようとしていたなら、たぶん本気で怒ってました」

 

「······と言うと?」

 

「正直、僕にはダンスの専門的なことは分からないんです。どこが上手いのか、バレエとしてどれだけ完成されているのかとかは。でも──清夏ちゃんの舞台だけは、誰よりも真剣に見てきたつもりです」

 

「清夏さんも言っていました。『あたしのいちばんのファン』だと」

 

「その自負はあります。······けど、僕がなんで好きだったのかは聞いていますか?」

 

「そういえば聞いていませんね」

 

「たぶん清夏ちゃんはこう言うと思います──『鳥みたいだから』って」

 

「鳥、ですか?」

 

「はい。初めて見た時も、最後に見た彼女も、どちらも鳥でした。······ただ、最初は白鳥とか、そういう優雅な鳥だと思ってた」

 

「最後は違ったんですか?」

 

「最後は──籠の中に囚われた鳥でした。自分が囚われていることを分かっていて、それでも逃げようともがく、憐れで痛々しい鳥でした」

 

「は?」

 

「最初は自由に飛んでいると思っていたんです。でも、だんだん清夏ちゃんの踊りから()()()()()は消えていった。その代わりに、氷みたいな空気を纏っていた。割れ物のように脆い翼で、必死に舞っていた」

 

「······その姿に、今の清夏さんが劣る、と?」

 

「はい。あなたはプロデューサーでしょう?『ここで負けたら終わる人』を見たことがあるはずです。清夏ちゃんは常にそれを背負って踊っていました。ここで飛べなかったら、檻に閉じ込められたまま死ぬのだと。······優雅さの向こう側にある死にかけの白鳥のような、そんな踊りでしたね」

 

「······」

 

「それが氷細工みたいで、ガラス細工みたいで。触れたら壊れてしまう翼でした。僕に踊りを見せるとき、彼女はずっと割れそうな翼で舞っていた。そんな清夏ちゃんが好きで恋焦がれてました」

 

「──あなたは本当に清夏さんが好きなんですか?」

 

「あなたよりは絶対好きじゃないですよ。今の彼女に好きだなんて正面から言えません。それは、昔の僕()に失礼すぎる」

 

「千冬さん、あなたはよく分かりませんね」

 

「見てない人には絶対に分からないですよ」

 

 そう言い切ると、清夏ちゃんはまた新しい曲を歌い出し、踊り出した。 

 やっぱりそこには脆い翼はなかった。代わりに頑丈な足と手があり、声があった。

 

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

 ──ライブが終わって、プロデューサーさんと控え室に向かった。そこには、清々しい顔をした清夏ちゃんがいた。いや、清々しい()()をしている、怯えた彼女がいた。

 

「······えと、ひ、久しぶり?」

「久しぶり。元気そうでよかった」

 

 本当は少しもそう思っていなかった。

 その後、何度か意味のない会話を交わした。

 ──必要な会話はひとつだけなのに。

 

 

「──プロデューサーさん、今回僕を呼んだ理由、聞いていいですか?」

 

 もう終わらせたかった。

 僕らの関係がここで終わるなら、それでいい。

 ぬるま湯の関係のままなら、壊れた方がいい。君は羽ばたけるし、僕はもう今の君を見なくて済む。

 

「今回、夕陽さんを呼んだのは、清夏さんの踏ん切りをつけてもらうためです」

 

「踏ん切り?──あぁ、そういうことですね」

 

 全ては理解できない。でも、きっと思っている方向の話なのだろう。

 目の前の彼女の顔が、僕のよく知っている好きな顔になっていたから。

 

 清夏ちゃんが一歩前に出る。

 声は震えていない。瞳だけが揺れていた。

 

「千冬。······あたしのいちばんのファンなら──今のあたしの歌は······踊りはどう映った?」

 

 僕は嘘の息を吸った。

 

「すごく綺麗になったよ。歌も踊りも全部。······昔と同じくらい好きだ」

 

 ──清夏ちゃんは笑う。

 息が止まる、吐き出した息は飲み込めない。

 

「······やっぱり。そうなんだ──千冬の好きだったあたしの《翼》は、ないよね」

 

 籠の中の鳥云々は清夏ちゃんには話していない。だから彼女は、僕がずっと、紫雲清夏を()()だと思っていると信じている。

 

「うん。僕が好きだった清夏ちゃんの翼は、もうない。······でも今の清夏ちゃんも好きだよ。昔の()()と今の()()は違うけど、好きであることは変わらない」

 

 本当でもあり、嘘でもある。

 ······今の彼女は多くを得た。

 だけど、僕が恋焦がれていた脆い翼は、死にかけの白鳥はもうどこにもない。

 

「千冬は優しいよね······けど、嘘をつくのは下手だよね〜」

「あ、バレた?──はっきり言うなら、僕は前の清夏ちゃんの方が好きだよ。比べものにならないくらいね。見てきた年月が違うし、賭けてきた思いも違う」

「前のあたしと何が······違う?」

「──清夏ちゃんはもう白鳥ではないから」

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

(あぁ、やっぱり)

 

 心臓が潰れる音がした。

 期待されて、裏切られて、愛されて、拒絶されて──

 全部混ざった泥が喉に迫る。

 

 千冬はもう、私の翼を見ていない。

 彼が見てきた鳥は、もう死んだ。右足を怪我するまでに私の鳥は死んでいたのかもしれないけど。

 

 舞台に立つ私は、感情を削ぎ落とし、形を磨いた製品だった。拍手に応える機械。世界に向けた、綺麗な笑顔。

 

(でも──)

 

 今の私は楽しく踊り歌うアイドルだ。もう鳥ではない。千冬に「白鳥」って言ってもらえたのはほんとに嬉しかった。けど、今の私は白鳥にはなれない。

 

 ──それでも、千冬に言ってほしかった。

 憐れみでもいい。

 壊れかけでもいい。いや、壊れててもいい。

 昔みたいに、翼だと。紫雲清夏は白鳥であると。

 

(君の言葉だけが、私を羽ばたかせたの)

 

 涙は落ちない。

 化粧が崩れるのが嫌だからではない。

 ここはもう、泣ける場所ではないから。

 

 

「······その代わりに足があるけどね」

 

「え······?」

 

「今の清夏ちゃんなら足があった方がいいんじゃない?」

 

 

 

 ──────

 

 

 アイドルの清夏ちゃんが嫌いなわけではない。彼女がどこででも輝いてくれるのは嬉しい。

 ただ、それがバレエではなくなったという事実だけは、どうしても受け入れられていない。······強いて言えば、バレエがなくなったのなら、僕と同じところまで落ちてきてほしかった。

 

「······アイドルで歌って──踊るあたしが──」

「僕は、どんな清夏ちゃんでも好きだよ。確かに、バレエをやっているときの清夏ちゃんがいちばん好きなのは揺るがない。でも、リハビリしているときの清夏ちゃんだって好きだった。あのときが、いちばん僕らは近くにいられた気がしてたしね」

 

 あの頃の僕らは、確かに同じ高さにいた。

 けど、もう君は僕よりずっと上にいる。手を伸ばせば届く位置には、もういない。

 ──それが悲しくて、どうしようもなく嬉しい。

 

「······そっか〜」

「そう。だから今のままでいいと思うよ。僕はアイドルって職業が元々好きじゃないし興味もない。でも、清夏ちゃんなら応援できるし、好きになれる」

「あ〜、昔から可愛くてキラキラしてる子嫌いだもんね〜」

「そうそう。だけど、清夏ちゃんはそうじゃない」

「あたしのこと可愛くないって言った?」

「可愛いというより、綺麗でしょ? プロデューサーさんもそう思いますよね?」

「──私は、どちらもあると思いますね」

「ほら! Pっちもそう言ってるよ〜?」

 

 

 ······驚いた。あの清夏ちゃんが、男性に真正面から褒められても、顔を赤くしたり照れたりしないなんて。それだけ彼を信じてるということなんだろう。

 あぁ、本当に──いっしょの場所にいてほしかったなぁ。

 

 

「──―ふふ、仲が良さそうでよかった。清夏ちゃん、プロデューサーさんのこと、すごく好きなんだね」

「──うん、大好き」

 

 そう言って、清夏ちゃんはプロデューサーの目をまっすぐ見つめ、はっきりと言い切った。プロデューサーさんが照れているのがなんだか可笑しい。

 

「そっか。なら気長に()()待っとくね」

「······色々?」

「うん、色々」

 

 熱愛報道が出てアイドルを辞めそうだとか、すぐ子どもができそうだとか、そんなことはさすがに言わない。

 

「──じゃあ、僕から清夏ちゃんに言えることはもうないし、プロデューサーさんにひとつだけ言っておきますね」

「はい、なんですか?」

「清夏ちゃんを裏切ったら──恨みます」

 

 清夏ちゃんが言いそうなことを、代わりに言ってやった。僕なりの、ささやかな抵抗。

 それを聞いてプロデューサーさんは笑い、清夏ちゃんは少し顔を赤くした。きっと、同じようなことを彼に言っていたのだろう。

 

 

 

 

 ⸻

 

 

 

 そうして僕らは別れ、それぞれのいるべき場所へ戻り、いつも通りの生活になった。

 ······まあ戻るついでに、景品は貰ってきたけれど。

 

「千冬くんがアイドルのライブ見てるの珍しいね。その人、今人気のアイドルだよね〜」

「え?あのアイドル嫌いの千冬が?明日は雪が降るな」

「雪で済んだらいいね。私は槍が降ってくると思うな〜」

「そんなに嫌いだったんだ。初めて知ったかも?」

 

 いつも通り学校に行き、いつも通りのメンバーで話す。

 けど、一つだけ、いつも通りではないことがある。

 

「こういうカッコいい系のアイドルは好きだよ。ダンス上手いしね。──あ、2週間後くらいにライブ行くんだ。みんなも行かない? 僕の分入れてチケット4枚あるし」

「ほんとに!? 行く行く!」

「······お前ほんとに千冬か?」

「いいね、私もアイドルはあんまり興味ないけど、みんなが行くなら行ってみたいな」

 

 

 アイドルの清夏ちゃんは、バレエの清夏ちゃんではないし、僕の好きだった清夏ちゃんでもない。

 

 けど、大切な幼馴染であることは、何一つ変わらない。

 

 

 






 昔、いとこと友達がバレエをしていて、その舞台を観に行ったり、ビデオで見たりすることが何度かありました。
 その頃の僕には、何が上手いのか、どこが綺麗なのかなんてまったく分かりませんでした。というか、今でも分からない自信があります。
 けど、死ぬ気で踊っている人、追い詰められている人は、なんとなく分かりました。
 そういう人たちの踊りは、見ていて怖さがありました。でも同時に、目を逸らせない何かに引き込まれました。

 たぶん、そのせいです。
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