ラウル様のキャラ崩壊してます。
トントントントンッ!
何処かの厨房で包丁を振る音がする…
「高火力で手早く、炒飯を作るときはこれを意識して忠実に守ること、だよな。…味付けは…そうだな、シンプルに塩だけにしよう。みじん切りにしたネギとガッツニンジン、それとベーコンに火が通ったら…」
その厨房では1人の男がキッチンに向かい、ブツブツと独り言を言いながら高い集中の中で料理をしていた。見た所、プロの料理人という訳ではなさそうだが…刃物の扱いは慣れているのか包丁の音は軽やかにキッチンに響き渡る。
「鉄板の上に油を引いて過熱する。熱しすぎと思うくらいで丁度良い。米がパラパラにならないとベットリするからな。しっかりと加熱しないと…」
反対に火の扱いには慣れていないようだが…
「
んあ?この男、今とんでもないこと言わなかったか?
「卵を割って鍋の上に落とすと同時にヘラでかき混ぜる。そして卵が半熟になったと同時にごま油を混ぜた冷や飯を鍋の上に落とすと同時にヘラで切るように混ぜ合わせる…」
「グスタフ、料理はまだかな?」
「ラウル、まだ調理を始めて5分もたっていませんよ。そう急かすものではありません」
「むぅ…しかし姉上、グスタフの料理は絶品なのです。彼の料理を空腹の状態で待つなど…拷問に近しい…!」
「そんな大袈裟な…」
「ラウル様、申し訳ありませんがもう少々お待ちください。その代わり絶品に作り上げることはお約束いたします」
「…クゥ~…出来るだけ早めに頼む…」
「承知しました」
本物じゃねぇか。本物のラウル王とその姉君ではないか。なんでこのお二人が来ているんだ…しかも目的はこの男の料理みたいだし…何者?こいつ…
「切るように混ぜ合わせる訳だが、この時半熟卵が米全体に絡むように全体を良く見ながら混ぜ合わせる。米が卵でコーティングされれば具材を入れても絡まることはない。鍋の火力に気を付けて焦げないようにし、ネギとにんじんに火が通ったら塩を振り…香り付けの醤油、と言いたいところだが生憎此処に醤油はないので少しの水に溶かしたゴロンの香辛粉をほんの少しだけ入れる…」
香辛料によって発生した香りが
「…!…グスタフ…まだ…かな…?」
「…ラウル…涎を垂らしてはしたないですよ…しかし、いい匂いですね。私も楽しみになってきました」
「もう少しで完成です。お待ちください。米の周りにほんの少しだけたらし、焦げた香りを炒飯の中に混ぜ合わせる、量を入れすぎると味が強くなってしまうのと、色が付いてしまい、折角の黄金炒飯が
周りに衛兵が見当たらないせいかラウル王はハイラルを統べる王とは思えない様相でソワソワと落ち着きなく、涎を垂らしてしまうなど少々はしたない様子を見せてしまう。それ程までにこの男の料理が食べたいのだろう。
「最後に酒を加えて全体を混ぜ合わせる、この酒は香り付けと米と卵をふっくらさせる効果がある。そして具材と米に火が入り過ぎないタイミングで皿に盛り付ければ…!」
「おお!待っていたよ!」バッ!
「黄金とは大きく出ましたね、確かにお米の一粒一粒に完全に卵が絡み炒飯全体が黄金色、そしてそこににんじんの赤、ネギの緑が彩りに実に素晴らしい料理です」
「お褒めにあずかり光栄です。ですが大事なのは味です。ミネル様も冷めてしまう前にご賞味下さいませ、その間にわたしは副菜とデザートの用意をして参ります」
「あら?全部を同時に作っていたわけではなかったの?」
「申し訳ないのですがわたしはプロの料理人という訳ではありませんので同時に複数品作るのは難しいのです。それに…」
「それに?」
「ラウル様が参られた際は一品目を早めにお出ししなければテーブルに体を倒して伸びてしまうのです。以前その姿を様子を見に来た衛兵に見られた際は大騒ぎになってしまいまして…」
「…ラウル?」
「…モグモグ…む?姉上、何故そのような顔で私をみるのです?」
「…帰ったらソニアと一緒に説教の時間です。全く…」
「まあまあ、あまり厳しくなさらないで下さいませ」
「なりません。ラウルは王であると同時に誇り高いゾナウ族の末裔です。常にだれかの模範とならなければ」
「姉上、早く食べなければ冷めてしまうぞ」
「…はぁ…言いたいことはまだありますがひとまず今はここまでにしておきます。それに、せっかくの料理が冷めてしまったらグスタフに失礼ですからね」
そう言って姉君は黄金炒飯に手を伸ばし、一口頬張った
「…!これは…!」
「グスタフの料理は絶品だと言ったでしょう?姉上」
「ええ、確かに絶品です。お米に絡んだ濃厚な卵の味と野菜の甘み、そしてほんのり香るお酒の匂いが実に合っていてとても美味しいです。見事な腕前です」
「そうでしょうそうでしょう!」
「何故あなたが誇らしそうなのです?ラウル」
「友を褒められて嬉しくない者はいないでしょう」
「それもそうですね」
「友と呼んでいただけるのはとても嬉しいのですが…ラウル様?一応わたしは人質として此処にいるのですが?…あ、餃子と杏仁豆腐です。どうぞ」
「うむ、ありがとう」
「いえ、ありがとうじゃなくて…わたしは人質なんですが?」
「うん、よくわかってるよ?それの何が問題なのかな?パク…うん!この餃子と言うのも絶品だ!」
「いや、問題も何も…何で人質のわたしがラウル様達の専属料理人や小隊の隊長やゼルダ様の教師やら色々なことを任されているのです?それとお褒めいただき光栄です」
「何故も何も、私は友であるそなたを信頼しているからだし、そなたも私に任せられた任を果たそうしてくれている、何もおかしい所はあるまい」
「…信頼とは言いますがラウル様、ゲルド族の男児でありあのガノンドロフの弟であるわたしを信用するのは…」
「そなたとガノンドロフは違う」
ラウル王は食事の手を止めゲルド族の男、グスタドルフの目をみて話し始める
「ガノンドロフは野心の塊のような男だ。まるで昼のゲルド砂漠のように他者を容赦なく傷付ける、それでいて力押しだけでなく策を用いての戦も出来る」
「…」
「それでいて、卑怯な手も使うのに躊躇いはないだろうな。此度の投降、もとい幕下に加わった理由である王国に弓引く者どもの始末というのはソニアに聞かせてもらったアルディ殿達協調派を始末したということなのだろう。アルディ殿はゲルド族の誇りを守る御仁であることは戰場で刃を交えた私にはわかる」
「アルディ…」
「そう心配せずとも、アルディ殿は生きていると私は思ってるよ」
「…!なぜ…ですか?」
「ガノンドロフのことだ、念には念をということで今どき誰もやらない首領の首を持参しての投降をするかと思ったが…来たのは始末してきたの報告のみ、ガノンドロフらしくない。恐らく何者かに妨害を受け、アルディ殿を始末出来なかったのだろう。それでアルディ殿の首の代わりに私の力に屈したということも追加して幕下に加わった、という所だろうね」
「そうですか、生きていてくれると嬉しいのですが…」
「最後に…弟であるそなたを人質として差し出した。自分たちが裏切ったらそなたをいつでも始末して構わない、と添えて」
「まぁ…兄上に好かれていないどころか、邪魔者だと思われていたことはわかっていましたが…」
「そなたの言う通り、人質はあくまで体のいい追放だろう。ゲルド族の男児であること、協調派からは族長としての推薦をされていたこと、そして…自分たちが謀反を起こしたときにそなたを殺させる為に人質に出したのだろう。実際には寧ろ殺させるのが目的というわけだ」
「…薄々わかってはいましたが、悲しいものですね…身内に死を願われているというのは…」
「…やはりそなたは信用出来る。ガノンドロフと違い、冷徹ではあるが決して無情ではないそなたは…」
「ラウル様…」
「…空気を変えるとしようか」
「ラウル様…?」
「グスタフ…」
「…ラウル、あなた食事の手を止めないで話していたのね…」
主人公※イラストはAI生成です
【挿絵表示】
名前・グスタドルフ
ハイラル王国にゲルド族からの人質として差し出されたゲルド族の族長ガノンドロフの弟。性格はとても穏やかで協調派のゲルド族からは族長として推薦されていた。
ハイラル王国に人質として送られて数日、信頼されている人達からはグスタフ、グスタフさんと呼ばれるようになっている。また、人質でありながら小隊の隊長を務めるなどラウル王からの信頼がバグっている。もちろん腕は確かである。
実は人質としてハイラル王国に来る前にラウル王と交流があるがとある事情によりラウル王は気づいていない。