ガノンドロフの弟は結構有能?   作:洋菓子職人II

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車の当て逃げした犯人が捕まったので何とかメンタルが回復しました。気を紛らわせるためにも書いていきますね。


竜闘虎争

 (…頭がクラクラする…ああ…また負けたか…?)

 

 気がつけばいつもの見慣れた治療施設の天井だった。どうやら俺はまた兄さんに負け…

 

 「…気がついたか」

 

 「兄上?!」

 

 な、何で兄さんも治療施設のベッドで寝てるんだ?!しかも頭に包帯巻いてなんか重症って感じがするし!何があった?!

 

 「…何を驚いている?これは貴様が付けた傷だ。誇っても構わないのだぞ」

 

 ………は……?

 

 「私が…付けた……?兄上に…?」

 

 「覚えていないのか?あの我が一瞬死を感じた攻撃を?」

 

 …覚えてない…確か俺が最初に槍で突撃したのは覚えてる…けどそれ以降の事が思い出せない…

 

 「…思い出せません…」

 

 「…そうか…」

 

 「兄上、一体何があったのか教えて頂けますか?」

 

 「構わぬ…そうだな、試合が始まってから…」

 

 ◆

 

 時は試合まで遡る

 

 「始めっ!!!」

 

 「先手必勝!一番槍!」

 

 グスタドルフは槍を掴むと勢いよく地面を蹴り、弓矢の如くガノンドロフへと突っ込んでいく。

 

 「相変わらず早い突きだ…だが…!」

 

 しかしガノンドロフは横に少し移動するだけでかわしてしまう。そして全てが遅く見える状態で無防備なグスタドルフの背中へ槍を振り下ろす

 

 「ガハッ!…チィッ…!」バッ!

 

 地面に叩きつけられるも即座に起き上がり、その場から撤退するグスタドルフ。その目はガノンドロフをしっかりと見据えている…

 

 「…やはりただ早いだけでは兄上に対抗することは叶いませんか…」

 

 「いや、我とてあの速さの攻撃を避けるにはしっかりと見なければならぬ。仮に不意打ちでもされれば我は成す術なくやられていることだろう」

 

 「…世辞にしてはお粗末ですよ、兄上」

 

 (初撃は容易に対処された…やはり兄さんでも読めない攻撃じゃないとだめか…そうだ!)

 

 「次は…こんなのはいかがですかっ!ウラァっ!

 

 グスタドルフは重さ4キロの槍を地面に平行にし、そこから両手持ちにした後その槍を勢いよく持ち上げると、持ち上がった際の風圧によりたちまち砂埃が巻き上がった

 

 「…!ぬぅ…!」

 

 (うまくいったか!よし!)

 

 巻き上がった砂埃は周囲に漂い、ガノンドロフの視界を封じる。巻き上げる際に目を閉じていたグスタドルフは片手で目を押さえるガノンドロフを視認するとすぐさま駆け出し、近づきながら一回転し遠心力を最大まで利用した横薙ぎの一撃を放つ

 

 「ぐうっ!……ふふふ…そこに居たか」

 

 ガノンドロフは一瞬苦悶の表情を浮かべるも、それはすぐさま笑みに変わる。攻撃を食らった直後、ガノンドロフは反射的にそれを掴み手元に大きく引き寄せる

 

 「なっ!しまっ…!」

 

 手放すのが遅れ、ガノンドロフの元に引き寄せられたグスタドルフは大きく焦る。そんなグスタドルフの事などお構いなく、ガノンドロフは片足でグスタドルフを大きく蹴飛ばす

 

 「カッ…!…ガハッ!オウフッ………」

 

 「今のは中々悪くなかったぞ、グスタドルフ。次の戦で奇襲に活かすことが出来そうだ」

 

 「……そう、ですか…ゴフッ…!」

 

 内臓へダメージが入り血を吐きながら起き上がるが、その目にはまだ闘志が宿りつづけ次の一手を考えている

 

 (今のは反応が遅れた俺のミスだ。しかし、視界を封じても無駄だったか…ならばどうすればいいと言うんだ?しかも槍を取られたから武器がない…どうする…考えろ…考えろ俺!)

 

 「次は我の方から仕掛けさせてもらうぞ?グスタドルフ」

 

 「…せめて槍は返してほしいのですが…」

 

 「戦場で敵将が奪った武器を返してくれるとでも?返して欲しくば奪い返すがよい」

 

 「…チィ…承知しました…」

 

 「ふふふ…ではゆくぞ!グスタドルフ!」

 

 ◆

 

 「と、ここまでは例の如く試合をしていた」

 

 「ふむ…」

 

 (話を聞いた感じ、いつも通りに俺がボコされているだけだな…)

 

 「兄上が私の槍を奪った後はどうなりましたか?」

 

 「我の一方的な蹂躙だ」

 

 「……………」

 

 「だがあの時、眠れる獅子が目を覚ますが如く貴様が覚醒をしたのだ…」

 

 「眠れる獅子?」

 

 「…やはり覚えておらぬのか。仕方ない、説明をしてやろう」

 

 ◆

 

 唯一の武器である槍を奪われ、丸腰のグスタドルフは徒手空拳での抵抗を試みるも、それは叶わず体から傷が次々と増えていった

 

 「はぁ…はぁ……!」

 

 (防戦一方…いや守ることすら出来てない…槍と徒手空拳じゃリーチに差がありすぎるから何とか奪いたいのだが…!)

 

 「…チェアァァァァ!!!」

 

 彼は幾度も槍を奪い返そうと掴みかかるが、掴む前に叩き潰され、薙ぎ払われ、挙句の果てには2本の槍で滅多打ちにされるなど上手くはいかなかった。辛うじて掴む事が出来たとして…

 

 「…!ふん…ぬぅああ!!!」

 

 「ふっ…弱った貴様の力では奪える訳が無かろう?」

 

 体力を激しく消耗した状態では槍を奪うことは出来ないのであった。もはや打つ手はないも同然である…

 

 (…もはやこれまでか…)

 

 「…そろそろ終いにするとしよう。…歯を食いしばれ!いくぞグスタドルフ!」

 

 「……っ……!…かっ……!」

 

 ガノンドロフは姿勢を低くし、力を溜め渾身の一突きを繰り出した。凄まじい速度から繰り出された突きはグスタドルフの心臓を捉え、彼は気を失った…

 

 「…グスタドルフ戦闘不能!勝者ガノンドロフさm」

 

……むくり……

 

 はずだった…

 

 「…コタケ、グスタドルフはまだ舞えるそうだぞ?」

 

 「し、失礼しました!グスタドルフ戦闘継続可能により試合再開!」

 

 「……………」フラッ

 

 起き上がった彼の姿は血だらけで何故立ち上がれるのか誰もが疑問に思うほどに痛ましかった…

 

 「それ程の傷を負いながらまだ立ち上がれるとはな、大したものだ。流石は我がおとう…!」

 

 ガノンドロフでさえ、痛ましい姿になりながらも立ち上がる姿に僅かに感心していたが…次の瞬間、気がつけば顔を鷲掴みにされていた

 

 「……………」

 

 「…んむう!!んんん!!!」

 

 「ガノンドロフ様っ!!」

 

 鷲掴みしたグスタドルフはそのまま壁に向かって走り出し、ガノンドロフを叩きつけた。何度も…何度も…まるで万力で握られているような圧倒的な力により、ガノンドロフは抵抗虚しく壁に叩きつけられ続ける…

 

 「……っっ!!!んぐぅ!!!」

 

 「………………」

 

 「そこまでにしろグスタドルフ!ガノンドロフ様!今お助け致します!はあっ!」

 

 「…………!」バタッ

 

 余りにも一方的であったからか思わず試合を観戦していたコウメ隊長がグスタドルフの背後から襲いかかり、今度こそグスタドルフは気を失ってしまった…

 

 「ご無事ですかガノンドロフ様!ああ、お顔に大きな傷が!おい!救護班を連れてこい!大至急だ!急げ!」

 

 「…コウメ…貴様ぁ…!!!」

 

 「ガノンドロフ、只今救護班がこちらに参りますから安静にお願いしま「よくも我とグスタドルフの試合の邪魔をしたな!」なっ!いえ私は!」

 

 「コウメを捕らえよ!我の許可が下りるまで牢に繋げる!これは族長命令だ!」

 

 「そんな!ガノンドロフ様!私は…!」

 

 「戦士の戦いに割って入ったのです。族長がお怒りになるのも致し方ないかと。コウメ隊長、こちらへ」

 

 「ええい!離せ!ガノンドロフ様!どうかお許しを!ガノンドロフ様!ガノンドロフ様ぁぁ!!!」

 

 コウメ隊長の行動はガノンドロフの怒りに触れ、牢へ連れ去られてしまう。この場に残ったのは満身創痍のグスタドルフとガノンドロフ、審判のコタケ隊長と数人の戦士のみとなった…

 

 「ガノンドロフ様…その…試合の方はいかがなさいますか…?」

 

 「…興が覚めた…だが…グスタドルフの最後のあの力は…凄まじいものであったな…」

 

 「ええ…ですが掟に則ればグスタドルフ様は気を失い、ガノンドロフ様は立ち上がり続けていることからガノンドロフ様の勝利と言うことになりますが…」

 

 「…いや、最後はコウメの邪魔がなければ我はあのまま叩きつけられ続けていただろう。よって…」

 

 「我の敗北とする」

 

 ガノンドロフが負けを認めた…あのガノンドロフがである…

 

 「…よろしいのですか?」

 

 「…何がだ?」

 

 コタケ隊長がガノンドロフに問う

 

 「ガノンドロフ様の戦績に黒星が付くことになりますが…」

 

 「構わぬ」

 

 ガノンドロフは迷うことなくはっきりと答えた。コタケ隊長は仮面越しだが何処か不服そうに感じる…

 

 「負けを認めず、戦った相手を称えもしないなど族長、いや戦士に相応しくあるまい。寧ろ負けを知るからこそその者は戦士としても人としても大きく成長する、グスタドルフには感謝しなければなるまい」

 

 「…左様ですか」

 

 「うむ…それで…救護班はまだか?」

 

 ◆

 

 「ということがあったのだ。どうだ、思い出したか?」

 

 「…思い出せません…」

 

 「…そうか…」

 

 (なんか兄さん妙に寂しそうな顔をしてんだよな…そんなに凄かったのか?その時の俺は?しかし思い出せねぇな…)

 

 「思い出せぬのなら仕方あるまい。それにいつか思い出せるかもしれぬのだからな。気長に待つとしよう」

 

 「申し訳ありません…兄上…」

 

 「それで、だ。我が何故ここにいるのかを話そう。我の怪我は貴様のに比べれば軽傷だからな、本来ならば既に街を出ていけるのだがこの用事を済ますまでいることにしたのだ」

 

 「私に用事…ですか?」

 

 (一体何の話をするつもりだ?兄さんのことだ面倒なことでも押し付けに、いや負けた腹いせも…)

 

 「そう警戒しなくてもいいぞ。寧ろ喜ぶがいい、我に勝った記念に褒美を取らせようと思っただけだからな」

 

 「…褒……美…?兄上が…?」

 

 「そうだ、遠慮はいらぬ。好きに申すがいい」

 

 (褒美…兄さんがそんなものを渡す筈がない…だが何かを言わなければここを去らないだろう…どうすれば…ピコーン!)

 

 「兄上、でしたら…」

 

 ◆

 

 「構わぬ。但しそれをするのならば条件がある」

 

 (ちっ!やっぱりそう簡単には行かないか…さてと…どんな無茶振りをするつもりだ?)

 

 「兄上、条件とは何でしょうか?」

 

 「なにそんな難しいものではない、たった一つだけだ。グスタドルフ、貴様…」

 

 (…ゴクッ…)

 

 「女になれ」

 

 「…………は………????」




今月末に修理した車が帰ってくるそうです。早く戻ってきてほしいですね。
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