Fate/GrandOrder_RPG 格闘ビルドで《全員生存》を目指すゆっくり実況プレイ 作:クラウディ
ゲムヲのジャッジ9はよく飛ぶ(9連続投稿の意)
※追記:前話のあとがきに文章を追加。
――時間はマシュに連れられた本郷守人が到着する十数分ほど前に遡る。
「…………………………………ッ……駄目だ……
デスクに置かれたパソコンの前で、鬼気迫る様子の男性が死に物狂いで何かしらの検証を行っていた。
そこには無数の仮定や、論証、そして証明できなかった『失敗』の積み重ねにより積みあがった紙切れ同然のものが山のようになっている。
それ以外にも、普段の彼はあまり好まないようなエナジードリンクの空き缶といったモノが散乱し、お世辞にも良い状況とは思えない。
――だがそれでも、彼にはやらないといけないことがあった。
自分の罪を、過ちを、全て代わりに背負って今なお駆け抜けている『少年』を、皆で救うためには、こんなところで止まってはいられなかった。
「考えろ……考えるんだ……!! 『諦めたらそこで試合終了だ』って安○先生も、『あの子』も言ってたじゃないか……!! だから、後ろでビクビク怯えているだけの僕でもやれることを――――」
「はいストップ。医者の不養生は良くないぞ~、ロマニ・アーキマン?」
「うおわっ!!?? な、なんだレオナルドか……びっくりしたぁ……」
しかしその鬼気迫る様子だった男性――『ロマニ・アーキマン』も、仲間の一人である女性――『レオナルド・ダ・ヴィンチ』に声をかけられたことで動きを止める。
「まったく……もうすぐ「
「……でも、僕にはこれくらいしか……」
「『でも』も『だって』もないんだよ。どの道、彼と私達……
「……は、はいぃ……」
圧すら感じさせるようなレオナルドの言葉に、ロマニの先程までの様子はどこへやら。
萎びていくようにすら感じられるほどに、彼は縮こまっていた。
「……それで、私と君……そして皆の『持ち越された"記憶"』の整理と、その原因となったものは出てきたかな?」
「……『記憶の整理』はほとんど出来たよ。これがそのファイル達」
そう言って、ロマニは資料の山から、複数のファイルをレオナルドに渡す。
それらは他のファイルの数々と比較しても凄まじい厚さを持っており、一つ一つ確認するだけでも眩暈がしそうなほどだった。
『#ファイルNo.300の"回帰":この回帰において、対象「本郷守人」は魔術の才能をいかんなく発揮していた。その技量はキャスタークラスのサーヴァントと真正面からやり合えるほど。回帰の終着点は終局特異点にて「ビーストⅠ」が行使した、『
『#ファイルNo.6591の"回帰":この回帰において、対象「本郷守人」はカルデアのスタッフ達とのコミュニケーションを優先していた。その中には『オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア』、『ロマニ・アーキマン』、『マシュ・キリエライト』、『レオナルド・ダ・ヴィンチ』も含む。関係は非常に良好。時季外れではあるが「本郷守人」の誕生日パーティーも開いていた。本人の魔術素質はファイルNo.300と比較して軽微ではあるが減衰している。その代わりに肉体の強度が上昇。回帰の終着点は終局特異点にて「ビーストⅠ」との戦闘中、「藤丸立香」と「マシュ・キリエライト」の両名が戦闘時のダメージによって気絶したことで、戦闘の継続が不可能と判断したためか"回帰"を発動。回帰の詠唱内容は変わらず』
『#ファイルNo.12509の"回帰":この回帰において、対象「本郷守人」はあえてカルデアのスタッフ達と密接な関係をとることを中断。その中には『オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア』、『ロマニ・アーキマン』、『マシュ・キリエライト』、『レオナルド・ダ・ヴィンチ』、『藤丸立香』、『
『#ファイルNo.25000の"回帰":この回帰において、対象「本郷守人」は「クリプター」のメンバーを含めたカルデアスタッフ「全員」の救助に成功。全員との関係を維持しながらも、自己犠牲的行動に拍車がかかる。回帰の終着点は第6特異点攻略中、無理をしすぎたことによる「過労死」。死亡が確認された直後に彼の死体が動き出し、"回帰"が発動された。回帰の詠唱は変わらず』
『#ファイルNo.54205の"回帰":この回帰において、対象「本郷守人」は「サーヴァント」を多数召喚した。彼等とのコミュニケーションを維持しながら、カルデアスタッフとのコミュニケーションも続行。カルデア到着時とは比較にならないほどの技能を身に着け、サーヴァント以上の戦闘力すらも獲得した。回帰の終着点は終局特異点にて絶体絶命の危機に陥った『藤丸立香』と『マシュ・キリエライト』、『本郷守人』を助けるために行動した『ロマニ・アーキマン』の『
『#ファイルNo.3006458の"回帰"。この回帰において、対象「本郷守人」の精神状態がファイルNo.300進行時と比較して明確に悪化している(仮定:度重なる"回帰"による「疲労」または「摩耗」と見られる)。しかしそれでも人理修復を完遂。しかし直後の終局特異点の崩壊に巻き込まれて死亡。"回帰"が発動された。回帰の詠唱は確認できず』
『#ファイルNo.50004654の"回帰"。この回帰において、――――――』
『#ファイルNo.73095006の――――――』
膨大な記録が記されたファイルをパラパラとめくり、高速で読み切ったレオナルドはファイルを閉じ、大きくため息を吐いた。
「はぁ…………相変わらず、彼は気が遠くなりそうな無茶をしているね……諦めるということを知らないのかな……?」
「あははっ、だからこそ彼なんだろうけどね……皆が大好きで、それだけでも頑張れてしまう彼だからこそ……」
『ダヴィンチちゃーん!! ロマニ―! 今日も頑張ったよー!!』
そう言って2人が脳裏に思い浮かべるのは、人懐っこい笑顔を浮かべていた『彼』の姿だった。
その姿は微笑ましく、心温まるものだが……今ではそうもいかない……。
「だけれど、それももう少しで限界かもしれない……」
「あぁ。ファイルに記録して分かった通り、『彼』は少しずつ『削れている』。そしてなにより、今までの"回帰"の最中に起こり得なかった、
「…………『彼』が起こしている"回帰"にヒビが入り始めている……」
「そう、『彼』は神でも何でもない『ただの人』だ。少し前のデイビットに似た『ナニカ』を得ているとはいえ、彼はまだ『人間』だ。これ以上、"回帰"を進行させると……」
「考えたくないね……」
ヒビが入ったシステムを無理に動かせば、システム自体が壊れて全てが水の泡だ。
自分達の頑張りも、それ以上に頑張った『彼』の
――それだけは絶対に阻止しなければ。
全員の意思は同じだった。
だからこそ、この"回帰"を終わらせるための計画を立てていたのだが……
「『回帰』の発動条件は『彼』の『死亡』または『再起不能』、そしてそれを回避しても『僕達』が一人でも『死亡』ないし『再起不能』になれば発動してしまう。そうでなくても、状況が極限まで『詰み』に近づけば問答無用で発動だね」
「しかも発動基準が『彼の命』が『喪失した瞬間』に自動で発動。任意の場合は『彼が絶望的状況にやむを得なくなった瞬間』、または『過去の回帰を思い出し、その負荷に耐えられなくなった瞬間』という具合……うーん、『彼』のことだから、私達がどれだけ大丈夫だと言っても発動させてしまうだろうね……」
「……まるでいつぞやの君みたいだね? ロマニ?」
「やめてくれレオナルド!!! あれは自分でも忘れたいくらいなんだよ!!!」
「いーや忘れないね!! 私達の前であんな馬鹿な真似をしたんだから自分の罪だと思って一生擦られろ!!」
「ブラックジョークにもほどがあるだろぉ!!!???」
そんな会話を繰り広げる、ロマニとレオナルド。
しかし、観察眼に優れたロマニはあることに気づく。
「あれ、レオナルド、君少し顔色がよくなってるね? 何かいいことがあったのかい?」
「……………………………………………………………………………………ソ、ソンナコトナイヨ??」
「ダウト。さぁ潔く吐くんだ! 医者の前じゃ隠し事はできないぞぉ!!」
「キャー!! ロマニに襲われるー!!」
わー! きゃー! わー! ぎゃー!
言葉にするとそんな音をたてながら、レオナルドとロマニの小さな部屋での格闘戦が始まってしまった。
しかし、サーヴァントであるレオナルドの体力の前に凡人のロマニは歯が立たず、膝に手をついて荒い息を吐くしかなかった。
「く、くそぉ……!! 引きこもってるレオナルドの癖にぃ……!!」
「引きこもってる度なら君の方が重度だろうロマニ。いっそみんなとエクササイズをしてみれば良いんじゃないかい? ほら、『彼』も言ってただろう? 『イク○サーイズ!!!』ってやつ」
「あれ結構羞恥心が凄いんだよ!!?? って、そんなことより……実際のところはどうなのさレオナルド? 君がそんなに嬉しそうにするなんて珍し――――――待てよ……?」
「流石は"元"王様。なんだかんだ言って頭の回転は速いね」
揶揄ってくるレオナルドを問い詰めようとしたロマニであったが、ふとそこであることに気づく。
なぜレオナルドはここまで喜んでいるのか?
レオナルドが喜ぶほどのことがあったのか?
今この状況でレオナルドが喜ぶほどの状況……喜ぶほどの……
――喜ぶ――――――!?
――コンコンコン
「うひゃあっ!!?? 誰だれだれだれ!!?? ビックリするんだけど!!??」
『マシュ・キリエライトです! お客様をお連れしました!』
「ウェ!? マシュ!? ってかボクにお客さん!? 一体誰が――」
『失礼します。中央管制室より所長をお連れしました。両手がふさがっているので開けてもらえると……』
「――――――――え……――――――――!?」
「……ふふっ、行ってあげなよ、ロマン?」
「っ! ああっ!! すぐ行く!! ちょっと待っ――――あだっ!? あだだだだだだだっ!?」
聞こえてきた声は記憶の中の声と間違いない。
優しくて、やわらかくて、聞き心地がいい声。
でも今は擦り切れそうになっている『彼』の声だ。
「え、えぇっと……! 初対面の人に挨拶するときの方法は……! あぁクソ! こういう時に「君」と会話していた時のスタイルで行ければいいのに……! 僕のバカ……!! ひ、ひとまず深呼吸をして……」
本当なら今すぐにでも飛び出して、彼を抱きしめたい。
「頑張ったね」って言ってあげたい。
でも、まだ駄目だ。まだ今はできない。
打算なんか抜きにしても、まだ旅は始まっていないのだから。
「――――はじめまして、僕の名前は『ロマニ・アーキマン』。気軽に『ロマン』と呼んでくれ!!!」
「ドクター、寝ぐせと観葉植物の小枝が髪に……」
「うえっ!? ほ、本当かい!!?? か、かっこよく決めたかったんだけどなぁ……」
――「何度目かのはじめまして」は、少し締まらないながらもしっかりと出来たのである。
世界のためより、あなたのため
はじめましては何度でも