2XXX年。世界中に突如としてダンジョンが出現して今までの常識が覆り人々は新たな力を手に入れることになり世界はダンジョンを中心に回ることになりダンジョンに潜りモンスターと戦い多くのアイテムを入手する者。
探索者が新たな職業として誕生しダンジョンが中心となった世界において探索者の価値は計り知れず日本では多くの探索者を育成するために初となる探索者育成高校を設立し日本中から若者が殺到し育成高校を卒業したものは業界でも人並み外れた活躍を見せており有名な者と言えば日本三大ダンジョンに数えられる富士ダンジョン前人未到の40階を制覇した獅子王誠と世界での数人しかいない六属性魔導士である新道寺桜と日本だけでなく世界にもその名を轟かせているものばかり。
「ここがあの探索者育成高校……!」
そんな探索者育成高校の門を新たに潜ったのは柏崎命(かしわざきみこと)。生まれた時からダンジョンが当たり前に存在する時代に生まれてきた人間であり幼少期から輝かしい探索者たちの活躍を見てきた彼は探索者のより詳しく言えばダンジョンに人一倍の憧れを持つようになり今日、この日を迎える為に人生の殆どを勉強に費やした。探索者育成高校は日本にたった1つしかない高校であり当然入学の為の倍率も跳ね上がっており命はその狭い門を潜る為に正に血の滲むような努力を重ねてやっとの思いで入学を勝ち取ったのだ。
「お前も新入生か?」
校門の前で最近、改装されたばかりだという校舎を見ながら感無量となっている所に話しかけられる。髪を金に染めて制服を着崩した明らかにチャラい感じの男子で見たところ命と同じ年齢位だと分かる。
「うん、そうだけど」
「俺、宍戸修人。新入生同士よろしくな!」
手を差し出されて握る。その派手そうな見た目とは裏腹に意外と好青年なのかなと思いながら鐘の音が響き二人は慌てて走り出す。初日から遅刻は流石に不味い。
入学式に何とか間に合い多くの生徒の後ろの方に立ちこの学校の校長が壇上に立ちマイクを手に取る。
「新入生の諸君、入学おめでとう」
重い巌のような人物で貫禄ある姿に雰囲気が張り詰める。彼はダンジョン黎明期にまだ、何も整っていない環境でダンジョンに潜りダンジョンに眠るアイテムを世に知らしめた伝説の男 車田繁利。その偉業は教科書にも載るほどで探索者育成高校において若き探索者を育てるものは彼ほど適任なものはいないだろう。
「知っての通り探索者とは弱肉強食の世界であり生き残れるものは限られている。我々は君たちが少しでもダンジョンで生きていくための術を教えていくつもりだ」
ダンジョン黎明期の生き字引の言葉に自然と身が引き締まる。閃光、獄炎、氷華、校長の隣に並んでいる教師陣も現役時代に名を上げたものばかりよくこんな人達を集めたものだと感心してしまう。探索者育成高校を卒業したものが活躍しているのは受けられる教育の差なのかなと命は考える。これだけの潤沢な教育を受ければ才能があるものならば天高く飛び立てるだろうとそう考えていると校長の有難い言葉を最後に入学式は終了する。
「新入生はこれから天職の儀式を行ってもらいます」
そう案内されて会場にいる全員が思わず息を飲み興奮している様子。天職の儀式とはダンジョンに入る前に探索者が自身に相応しい職業を与えられるというもので転職の儀式の重要性は計り知れず人の一生を左右する大事な者でそれが行われるのはダンジョンに入る資格を持った十五歳以上の人間で中には天に祈っているものもいる様子。
「遂にこの時が!」
この日をどれだけ待ち望んでいたか。出来れば戦闘職を引き当てることが出来れば文句はないがこればかりは神のみぞ知ることであり最悪、生産職や支援職であったとしてもダンジョンに関わることが出来るのであれば問題ない。
儀式の間は如何にもと言った雰囲気の場所であり部屋を照らすのは青い炎が照らされた蠟燭でどことなく中世を思わせるような作りであり床には複雑な魔法陣が描かれた絨毯が敷かれている。これが転職の儀式に必要なものなのかなと思いながらじっくりと観察していると肩を小突かれる。
「よ、また会ったな」
「宍戸」
振り返ると人の良い笑みを浮かべる宍戸の姿がある。
「緊張するよな!できれば剣士とかカッコいい職業がいいよな!」
目をキラキラとさせる宍戸に命も頷く。剣士や戦士は戦闘職の中でも人気の高い職業でS級探索者である獅子王は剣士から派生したソードマスターであり多くの探索者の憧れの的である。体を動かすのはあまり得意ではない命からしたら近接職よりも魔法職のような後衛の職業が望ましい。
「それでは天職の儀式を行う」
「おぉ、きたきた!」
ローブを着た魔法職と思われる教師が杖を翳すと絨毯に描かれている魔法陣が浮かび上がり輝く。神秘的な光景であり思わず目を奪われていると魔法陣から溢れた光が粒子となって生徒達に降り注ぎ職業が与えられたのだと直感しステータスを映し出す。
柏崎命
職業 サモナー
レベル 1
ステータス
筋力 E
体力 C
敏捷 C
精神 A
スキル
召喚魔法1、土魔法1、鑑定1
「サモナー?」
あまり聞いたことのない職業であり思わず頭を傾げてしまう。確かそんな職業があったような気がするが知っているのは名前だけでありどういった職業なのかは分からずステータス画面を押して詳細を確認する。
【召喚魔法】
魔力を消費してモンスターを召喚し使役することが出来る。召喚可能数一体。
詳細を見ると召喚できるモンスターの一覧が書かれている。スライム、ゴブリン、スケルトン、ゴーレムとかなりの種類があるようでこれはちゃんと確認しておかなくてはならない。
「よっしゃ!重戦士引き当てたぜ!」
嬉しそうに拳を握っている宍戸の姿に微笑ましく思う。重戦士とは数ある戦闘職の中でもかなり当たりの部類で重装というスキルで高い防御と戦士職の中でも高い攻撃力を備えたバランスのいい職業であり人気の職業と言える。
「お前はどうだったんだ?」
「サモナーだったよ」
「聞いたことねぇな」
人よりもダンジョンについて詳しいと自負している命でも知らないのだから宍戸が知らないのも無理はない。他人のステータス画面は鑑定魔法を使わなければ見ることは出来ず命の鑑定スキルでは他人のステータスまでは見れない者らしい。
スキルにはレベルが存在しモンスターを倒したり使用し続けることで経験値を得ることが出来て転職したばかりでは当然、レベル1でありレベルが上がっていけばステータスを見ることが出来るのだろうか。
入学式が終了してクラスが割り振られる。人数は30人ほどでこのクラス以外にもいくつかクラスがあり完全にランダムに振り分けられているという話であり能力順のような格差はないらしい。
「あー、今日からお前らの担任の陣内智和だ。テキトーにやっていくんでそこんとこよろしくな」
ヨレヨレの白衣にスーツと整えられていない無精ひげの中年で明らかにやる気がなさそうな人物であるが彼を侮る者はこの場にはいない。彼は閃光の異名で知られる元A級探索者であり剣王として知られる獅子王誠とパーティーを組んでいた人物で右足を負傷し現役を退いたという話だがまさかこの学校で教鞭を執っていたとは思わなかった。
「自己紹介とかは各自でやっとけ。ここはそんな甘いことをやってるほど優しいとこじゃないからな」
黒板ではなく巨大なディスプレイが起動しこれからの予定が示される。普通ならばオリエンテーリングと言った早く学校に慣れてもらうための授業がされていくのだがここは日本で唯一、探索者の育成を目的に組まれた学校である。
「お前たちには早速、ダンジョンに潜ってもらう」
「ダンジョンにですか?」
「あぁ、そこで一定の成果を上げられなかったものには退学してもらう」
その言葉にクラスの全員が凍り付く。探索者育成学校を卒業したものには栄光が約束されていると言われているがそれは卒業できたらの話であり入学早々にダンジョンに潜らされるとは全く予想できずましては成果を上げられない者は退学とはかなり理不尽だ。
「そんなのあんまりです!僕たちは転職したばかりなんですよ!?」
「校長も言ってただろ?探索者は弱肉強食だと。俺らはお前らに成長に機会を与えてやってるんだ。ほら、準備を始めろ」
有無を言わせぬ眼光に反論した真面目そうな男は気圧される。一筋縄ではではいかないと思っていたがいきなりダンジョンに潜らされるとは思っていなかった。生徒はディスプレイに映し出されたダンジョンの場所へと渋々向かっていく。
「柏崎!一緒にパーティー組もうぜ!」
「すまん、ソロでやってみるつもりなんだ」
召喚魔法がどんなものか試したいので初回はソロでやってみて召喚魔法の検証をしてからパーティーを組んでみたい。命の予想が確かならばサモナーはあまりパーティー向けはしないと思うから。
「お前、魔法職だろ?頼れる前衛がいた方がいいと思うけどなー」
「悪い悪い。今度、飯奢るから」
「絶対だぞ!」