現代ダンジョン サモナーが行く   作:金林檎1

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第四話

 入学からそこそこの時間が経ち、クラスにも馴染んできた頃、当然というべきかグループが形成させている。カーストの上位にいるのは一年生の中でも有名と言える樋口吉良を中心とした女子グループでその次に戦士職で固められた男子グループに続いており先日、熱烈な活躍を見せた獅子王はどこのグループにも属さず孤高を貫いており命はというとそういったグループには全くと言って興味がないので遠巻きに眺めている。

 

「おはよ!」

 

「うん、おはよう」

 

 命の友人と言える宍戸は持ち前のコミュ力で色々なグループを渡り歩いているようでそこで仕入れた情報を惜しみなく命に教えてくれる。そのお陰で命はある程度クラスの事や他のクラスの事をある程度把握できている。

 

「でよー、そこで俺がゴブリンの首を掻っ切ってやったわけ!」

 

「やっぱスゲーは小林は!」

 

 週末にダンジョンに行ったと話しているのは戦士職の集まりでありその中心となっているのはソードマンというレア職についてクラスでも頭角を現している小林誠二で大口を言うだけの実力を持ち合わせており既にパーティーメンバーと第一階層を攻略しているよう。

 

「小林の奴、随分調子いいらしいな」

 

 話に聞けば彼の家は探索者家系でそれも随分と高いランクの探索者らしくかなりの金持ちらしく持っている装備も学校で支給されるものとは桁違いのものでその強さだけでなく経済力を目当てに彼に取り入ろうとするものも少なくない。実際、周りの人にかなり羽振り良くアイテムを配っているようで彼の取り巻きはかなりの人数がいる。

 

「おー、授業始めんぞー」

 

 担任の陣内が教室に入ってきてそれぞれ席に戻る。

 

「今日は予告してた通り戦闘訓練を行うぞー。訓練場に集合なー」

 

 探索者育成高校には当然、座学だけでなくダンジョン探索を行うための戦闘訓練が存在しておりスキルを用いない基礎訓練からスキルを用いた本格的な訓練など幅広いものがあり戦士職は戦士職と魔法職は魔法職とそれぞれ分かれて訓練を行う。

 

「私がお前たちの訓練を取り仕切る大道寺花蓮だ」

 

 訓練場に立っていたのはジャージを身に纏った燃えるような赤毛の女性で彼女こそ獄炎の名で知られる現役のA級探索者で体中に痛々しい傷跡が残されており歴戦の猛者であるということが嫌というほど伝わってくる。

 

「先ずは軽くグラウンドを十周してもらってから本格訓練を行う。ほら、駆け足!」

 

 大道寺の言葉にクラスの全員がグラウンドを走る。普通の学校とは比べ物にならない長さのグラウンドを十周とはそれだけで疲れてしまい体を動かすのがあまり得意ではない命は面倒くさがりながら走っていると体が軽く体を動かすのが苦ではないように感じる。これもレベルが上がった影響なのだろうかグラウンドを簡単に十周出来てしまった。

 

 「驚いただろう。この長さを簡単にこなせてしまう自分の体に」

 

 考えていることを見抜かれてドキッとする。

 

「レベルが上がることで探索者は肉体の強度だけでなく身体能力も向上する。モンスターと戦う為に適応すためだと言われている。やろうと思えばこんなことだってできる」

 

 大道寺は大きな石に指を触れさせると亀裂が走り真っ二つに割れる。彼女は純戦士職であるがこれだけの芸当が出来るようになるのにどれだけのレベルが必要なのか。

 

「力の使い方を間違えれば自分だけでなく周りの人間にも被害が出る。だからこそ探索者は己を律することが求められるのだ」

 

 探索者の大原則としてその力をモンスター以外に振るってはいけないというものがありもしも、人に対してその力を使えば厳しく処罰されて下手をすれば檻の中に入れられるということになり大道寺は自分の生徒にそんな目には遭ってほしくないと思っており授業の初めには必ずこのことを言うようにしている。

 

「それでは本格訓練を行う。戦士職は私の元に、魔法職は眞鍋、神官職は柊の元に迎え」

 

 大道寺の助手らしきものが手を上げており年齢は自分達と大して変わらないように見えるため教師ではなく学生なのだろう。眼鏡を掛けた如何にも真面目そうな青年と今風のギャルと言った風の女性で見るからに強そうには思えないが探索者の強さというものは見た目では測れず大道寺ほどの人物が助手に選ぶということは並の探索者じゃないのだろう。

 

「魔法というものはイメージが全てだ。魔力の操作、魔法の形成、全てがイメージなしには成しえない」

 

 眼鏡をくいっと持ち上げながら探索者育成高校三年生の眞鍋学はそう力説する。

 

「状況に応じて瞬時に必要な魔法を選択し状況をひっくり返すことが魔法使いには求められる。だからこそどんな状況であろうとイメージを絶やさないことが重要なのだ」

 

 意思がなければ魔法は成立せず彼が後輩たちに教えたいのは魔法使いとして必要な頭を回すということでありそれぞれに魔力が尽きるまで魔法を打ち続けることを命令し魔法を打ちながら眞鍋の言葉を聞くというのはかなり神経がいる作業であり全員が苦しそうな表情を浮かべながらそれぞれ魔法を打っている。

 

「そこ、ただ打てばいいというものじゃない。なるだけ均等に同じものを打ち続ける感覚を意識しなさい」

 

 眞鍋は一人一人の魔法の性質を理解しているのか細かく注文を付けており流石は三年生までこの学校にいるだけある。命は冷静にアース・ボールを同じものを一定の間隔で打ち続けておりかなり神経は使うが魔力の流れが感じられて魔法に対する理解力が上がっていくのを感じる。

 

《スキルレベルがアップしました。》

 

 柏崎命

 スキル

 土魔法9→10

 

 魔法を打ち続けているだけだというのに土魔法のレベルが上がり殻を破れたような感じがする。

 

 「ほぅ。中々、筋がいいね」

 

 「眞鍋先輩のお陰です。ありがとうございます」

 

 訓練が終わり皆、へとへとになっており地面に倒れているものもかなり居り戦士職の者は随分としごかれたようでかなりの人数が倒れている汗をダラダラと流しているのに対して大道寺は汗1つ掻いていない余裕そのものでA級探索者は伊達ではないようだ。

 

「初めての訓練にしては中々の出来ではないか!この学校に入学できただけの事はある。これからもこの調子を保って見せてくれ!」

 

「大道寺先生の訓練にこれだけ付いてこれたのだから誇っていい」

 

 テンションが高い大道寺に言い返す元気がある者はこの場には居らずただただ訓練が終わるのを待ち望んでいて響く鐘の音が救いの神のように感じるほど過酷な訓練だった。

 

「あぁー!きつかったー!」

 

 何時ものように宍戸と昼飯を食べていると顔に幾つか絆創膏を貼っていて戦士職の訓練がどれだけ厳しいものだったかが伺える。

 

「お前は頑丈なんだからこれ位、屁でもないだろって容赦なく吹き飛ばすしよ!」

 

「災難だったね」

 

 重戦士は戦士職の中ではタンクのような役割を担っておりモンスターの攻撃から仲間を守ることが多くそれ故に高い防御力を持っているのだがそんな宍戸をこんなにボロボロにしてしまうとは大道寺の出鱈目振りが凄い。あの人、クラスの戦士職を纏めて相手取りながら指導もしているのだがらA級探索者というのは化物なのではないだろうか。

 

「柏崎はどうだったんだよ」

 

「厳しかったけど結構為になったかな」

 

 他の人は二度とやりたくないと言っていた作業だが命は嫌ではなくスキルのレベルがアップに繋がるのならば継続して続けようと思っておりあれのお陰で魔法に対する理解力が増したのも事実で朝の日課に加えようかなと考えている位だ。

 

「結構きつそうだっだぞ?」

 

「きつくないんじゃ訓練にはならないだろ?」

 

 訓練とはそういうものだと理解しているため命は宍戸のように騒いだりはしない。そりゃ、苦しいものであったが成長出来ているのを実感できるもので流石は大道寺が選んだ助手だと納得させられる。

 

「そういや、お前、ゴブリンロード倒したって本当なのか?」

 

「そうだけど……どうしてそれを?」

 

「話題になってたぜ。モンスターを連れた奴がボスを倒したって」

 

 そう言って宍戸は校内新聞を取り出して命に見せてくれる。そこには新入生が第一階層突破と描かれており命の後ろ姿らしき写真があり誰にも話していないというのに情報が出回るのが早いのはこれが原因かと勝手に盗撮されて腹が立つ気持ちよりも新聞の出来に感心してしまう。

 

 かなりの年月、発行されているようでよく見てみるとこの学校が設立されてから続いているようで探索者育成高校にこんな部活があったとは知らなかった。

 

「新聞部の連中が取材したがってたぞ」

 

「俺よりも獅子王さんの方を取材したいんじゃないかな」

 

「ははっ、言えてるな」

 

 入学初日でゴブリンロードを単独で撃破したという話は学校中に広まっていて獅子王を一目見ようとクラスに来る先輩もいる位でその高い実力と優れた容姿からクラスのマドンナ的な扱いとなっており言葉数が少ないのも魅力と見られている。

 

「にしてもお前、よく一人でボス討伐できたな」

 

「俺には召喚モンスターがいるからね」

 

「そっか、それならパーティーメンバーもいらないか」

 

 下手なパーティーを組むよりも主に絶対服従である召喚モンスターとパーティーを組む方が信用できる。同じ生徒を信用していない訳ではないが探索の報酬の分配など考えうるだけで幾つも揉め事がありそれならば気楽なソロ生活の方がいい。

 

 聞けば宍戸のパーティーはまだ、ボス討伐をやっておらずレベル上げに勤しんでいるようでそれが普通で小林のパーティーや命が異常な速度らしく放課後にまた、ダンジョンに入ろうと思っており早く初心ダンジョンをクリアして学校外のダンジョンにも行きたいと考えている。

 

「ごっそさん。教室戻ろうぜ」

 

 食事を食べ終えて教室へと戻る。教室では相変わらず小林が取り巻きを連れて大きな顔をしておりニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら座っている獅子王に近づく。

 

「獅子王琴乃。俺様のパーティーに入れてやる。有難く思え」

 

「嫌だ」

 

「はぁ?何断ってくれてんだ!」

 

 上から目線の提案に獅子王はきっぱりと断り小林は青筋を浮かべながら怒りを露にする。面子を潰されてかなり怒っている様子でクラスの全員がその光景を見ているため恥をかかされたと言ってもいい。

 

「小林誠二様のパーティーだぞ?最高の装備やアイテムを揃えた最高のパーティーだ。何で断るんだ!」

 

「貴方、弱いもの」

 

「何!?」

 

 小林はけして弱いわけではないがその実力の殆どが金で手に入れた身の丈に合わないランクの装備にありそれらで身を固めてパーティーメンバーにも与えておりさほど苦労することなくゴブリンロードを討伐した。探索者の力の一つとして経済力も実力の内でありけして悪いわけではないが彼の実力は下駄を履かせられているに過ぎない。

 

 一触即発の雰囲気となり小林の体はプルプルと震え出し手を振り上げるがそれを振り下ろすことなく下げる。

 

 「覚えていろよ。獅子王琴乃!」

 

 獅子王の事を睨み、自分の席に戻る。もしかしたら暴力を振るうのかと見守っていたクラスメイトはハラハラしており命も直ぐに立ち上がれるように身構えていたが小林の理性が勝ったようで彼なりに矜持があるようだ。

 

 「うーし、授業始めんぞー、って何だよこの雰囲気?」

 

 陣内が教室に入ってきて異様な雰囲気に戸惑うが詮索することなく授業を始める。分かりやすくイラついている小林と我関せずな獅子王の対比はクラスメイト達を困惑させて授業に実が入らない者も居た。

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