現代ダンジョン サモナーが行く   作:金林檎1

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第五十一話

 ウェンディゴ。時計塔ダンジョンの第二階層に現れるモンスターであり探索者の間では雪の悪魔と呼ばれて大変恐れられているモンスターでウェンディゴが持つ、ユニークスキルである銀世界は周囲を彼の主戦場である雪原へと変えるという凶悪なもので第二階層でウェンディゴを見つけたらその場から逃げろと言うのが時計塔ダンジョンを挑む探索者のお決まりだった。

 

 ウェンディゴ

 スキル

 氷河魔法、銀世界、金剛力

 

「フィールド発生のスキルとはな……もう少し、ちゃんと準備してから来ればよかった」

 

 吹き荒ぶ吹雪から暖を取る為にエンチャントを施して雪原でこちらを獲物としか見ていない嫌な瞳に不快感を覚えながら召喚モンスター達にノクトビジョンとエンチャントを施していざ戦闘だと言う状態となった途端、ウェンディゴが動き出す。

 

 まるでスキーの様に雪原を滑り、脅威的な速さで移動しアインやアヴァリスは雪原に足を取られており思うように動けておらず向かってくるウェンディゴをフォボスが向かい撃つ。マナガルムという種族の特性なのか雪原の中でも普段と同じように移動できており向かってくるウェンディゴにブレスを放つ。

 

「ちっ。あまり効いてないな。あの様子だと氷耐性があるか」

 

 フォボスの氷河のブレスはあまりダメージを与えられていないようでウェンディゴは足を取られて移動速度が遅いアインに向かって拳を放ち、雪原でふんばりがあまり効かないのかアインの体が衝撃で浮き、追撃の蹴りによって弾き飛ばされる。

 

 アインのあんな姿は始めて見る。雪原は完全にウェンディゴ有利のフィールドでどうにかしてこの環境から逃れなければならないが逃げだすのは性に合わない。

 

「フレイム・ストーム」

 

 炎の渦を広範囲に広げて雪を解かそうとするが溶かした先から復活していきフィールド生成スキルはとても強力なものであり簡単には覆すことは出来ず、魔法ではないので解呪魔法も効かない。

 

 手詰まりでありこの環境のまま戦わなければならない。かなり不味い状況であるが探索者を続けていれば不利な状況で戦わなければいけないので悲観的にはならずこの状況下でも召喚モンスターを導くのがサモナーの役割だろう。

 

「フレイム・ランス」

 

 アインに追撃しようとするウェンディゴに向かって炎の槍を放ち、ウェンディゴは雪原を自在に移動して華麗に避けるが背後からアヴァリスが迫りウェンディゴに拳を放つ。

 

 ウェンディゴの体は吹き飛んで口から血を吐いている所からかなりのダメージを負っている。追撃とばかりに吹き飛んだウェンディゴに向かってバジレウスとフラウが攻撃を放っておりウェンディゴは即座に体勢を立て直してその攻撃を回避する。

 

「ダークネス・チェーン」

 

 かなりのダメージを受けながらも雪原を高速で移動するウェンディゴに漆黒の鎖が四方から伸びてウェンディゴはそれから逃れようとするのだが執拗に追い立てられて最後には拘束されてしまう。

 

 ダメ押しと言わんばかりにフラウが重力魔法で地面に叩き伏せる。雪原を自在に移動するのならば移動できないようにすればいい。

 

「ガァァ!」

 

 後はアインに首を斬らせればいいと思っていたがウェンディゴはフィールドを解除して重力魔法から逃れ、筋力で自分を縛っていた鎖を引きちぎるという離れ業をやってのけて窮地を脱出する。

 

「しぶといな。だが、フィールドを解除したのならばこちらが有利だ」

 

 数の利はこちらにあり、あれだけのスキルは短時間で何度も使用できるものではない。戦況はこちらが有利じっくり詰めていこう。

 

 ウェンディゴは周囲に氷の球を展開しており今度はダークネス・チェーンに捕まらないという意思表示で片腕を動かせないからか慎重になっている。しかし、こちらがじりじりと距離を詰めていくとウェンディゴは近寄ってこさせまいと氷河魔法を放ってくる。

 

「フリィー」

 

 しかし、それをフラウの嵐魔法が打ち砕き、雷光と共にアヴァリスがウェンディゴの背後に移動し拳を放ち、胸を貫通する。流石のウェンディゴも致命傷で力なく倒れていく。

 

≪スキルレベルがアップしました。召喚モンスターのレベルがアップしました≫

 

 柏崎命

 スキル

 炎魔法10→11、暗黒魔法10→11、無言詠唱8→9、詠唱破棄8→9

 ブラン

 フォレストオウル

 レベル3→4

 バジレウス

 ファイヤードレイク

 レベル17→19

 

「一時はどうなる事かと思ったが何とかなったな」

 

 自身に有利な環境を作り出すフィールド生成スキルはかなりのレアスキルでAランクと言っても持っているモンスターは限られており運悪く遭遇してしまったと思おう。一階層のアークマジシャンと言い時計塔ダンジョンに潜ってから強敵ばかりと遭遇しているような気がする。

 

 あれだけ苦戦させられたと言うのにレアドロップはなく魔石のみであり少し残念に思いながらもこればっかりは運だからなと納得する。

 

『あのボーイ、ウェンディゴを倒しやがったぜ……』

 

『モンスターを連れてるぞ?』

 

 ウェンディゴを倒してことで周りに探索者が戻ってきておりひそひそと話している。あまり注目されるのは面倒なので人気の少ないとことへと向かって結界を張り、休憩する。

 

 エンチャントで暖を取っていたとはいえ体が冷えてしまっておりバトラーに珈琲を淹れてもらう。コッヘルに水を入れてバトラーに火を熾してもらう。火の側に行き冷めた体を温める。

 

 フォボスが命を温めようと体を押し付けてきて銀の体毛がとても柔らかくて仄かに温かい。戦闘になると毛に魔力を流して鋼鉄よりも固くなるのにふわふわのモフモフで触っていて飽きが来ない。

 

「ありがとう。はー、温まる……」

 

 バトラーから珈琲を手渡されて一口飲む。そんなに珈琲に拘ってこなかったがこれだけ美味しい珈琲が淹れられるのなら豆にも拘ってみてもいいかもしれない。それ位の金はあることだし帰ったら雅にどんな豆があるのか効いてみよう。

 

 体が温まり消耗した魔力も召喚王の指輪に貯蔵された魔力は魔力は装着者である命だけでなく召喚モンスターに対しても供給出来る様で先程の戦闘で多く魔力を消耗したフラウやバジレウスを中心に魔力を供給する。

 

「また、ウェンディゴと戦うのは骨が折れるから勘弁してほしいけど……」

 

 そう、軽口を呟きながら結界を解除して先へと進んでいく。道中に現れたのはネクロマンサーや一階層でも現れたマジシャン系が中心でありネクロマンサーが二体も現れて十体以上ものアンデットに襲い掛かられたが難なく突破しボス部屋前までたどり着く。

 

≪スキルレベルがアップしました。召喚モンスターのレベルがアップしました≫

 

 柏崎命

 スキル

 召喚魔法37→38、炎魔法11→12、暗黒魔法11→12、氷魔法1→5、無言詠唱9→10、詠唱破棄9→10

 ブラン

 フォレストオウル

 レベル4→5

 バジレウス

 ファイヤードレイク

 レベル19→20

 ブレス→ハイブレスNew!

 《クラスチェンジ条件が満たされました。クラスチェンジ先を選択してください》

 

「お、クラスチェンジか。どれどれ?」

 

 ボス部屋前には一階層と同様、多くの人だかりが出来ているので少し、人混み外れたところに移動してステータス画面を表示する。

 

 ドラゴンNew!

 ステータス

 筋力A

 体力B

 敏捷B

 魔力A+

 スキル

 灼熱→紅蓮、炎属性→灼熱属性

 

 ステータスは圧巻の数字で単純なステータスだけならば召喚モンスターの中でも随一でありクラスチェンジの操作を行うと蜥蜴を思わせる姿から見事なドラゴンへと姿を変える。体格もかなりのものでアヴァリスも大きく小さな一軒家程で場所を選びそうだ。

 

「グルァ」

 

 命の顔を大きな舌で舐めてきて機嫌が良さそうだ。大きくなっても性格は変わらないようで人懐っこく尻尾を振っており獰猛さを感じさせる顔立ちをしているのに命には甘えたがりのようにしか見えない。

 

『おい、あれドラゴンだぞ?』

 

『見事に使役してるな……余程の実力者らしい』

 

 ドラゴンはモンスターの最強種。ドラゴンはとても気位が高いことで知られておりそれを使役できるのはかなりの実力者でなければ成しえない。命の様にエレメントからドラゴンへと昇華させるなんて芸当は例外中の例外である。

 

 番号札を貰って自分の番まで待機する。生憎とお腹は空いていないので適当に水筒に入れていた水を飲んで端末で時計塔ダンジョンの情報を纏めたファイルに目を通して暇を潰す。二階層のボスは一階層の様にマジシャン系のモンスターではなくオルトロスと呼ばれる二頭の首を持ったモンスターらしい。

 

 動物型モンスターらしく凄まじい敏捷力に暗黒魔法を自在に扱えるだけの知能も有しており一筋縄ではいかない相手だ。フォボスや無人島で戦ったインペリアルタイガーの経験から動物型モンスターの恐ろしさは重々承知している。

 

「早いと言うのはそれだけで厄介だからな。それに加えて……」

 

 情報ではかなりの大柄な体躯らしく速さに加えてタフネスもあるという事であり長期戦が予想される。暗黒魔法は他の魔法と比べて多くのデバフやバットステータスを与えるものであり状態異常を解除できるシャインをパーティーに加えてブランを外す。

 

 命の番となりボス部屋に入る。前回の様な特殊な状況ではないようで一先ず安心する。

 

 中央にはかなりの大きさの狼の姿があり二頭の首を揺らし、口からはよだれを出し獲物を見定めるような狩人の如き目をしている。

 

「面倒な……」

 

 その瞳は確かな知性を感じさせるものであり今までの様な脳みそが溶けたモンスターとは一線画しており並の攻撃は通用しない見ていい。オルトロスは大きく吠えて足元に毒々しい霧が発生しており暗黒魔法の一種であるベノムミストだろう。

 

 かなり広範囲に散らされておりあれでは自分にも害があるだろうに何も異常はない所を見ると状態異常耐性か毒無効でも持っているのか。幸いなことに命は真白蛇のアンクレットを装備しており状態異常は無効で同じく状態異常無効を有しているアインを中心に戦いを進める。

 

「フリィー」

 

 しかし、何もせずに毒を受けてやるつもりはないので毒の霧をフラウの散らさせて開戦する。

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