現代ダンジョン サモナーが行く   作:金林檎1

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第八話

 あれから二階層を探索したがボスを見つけることは出来ず仕方なくそこそこの魔石を集めてダンジョンを出た。その日は換金することなく重たくなった鞄を抱えながら電車に揺られて学校に戻った。金倉に連絡したら工房に来てくれということで行ったことのない生産職のエリアに向かい目的地の扉をノックすると金倉が出迎えてくれる。

 

「ちょっと散らかってるけど……」

 

 入ると言っていた通り少し散らかっているが許容できる範囲で命はテーブルに今日入手した魔石を広げる。

 

「凄い!これだけあったら一杯装備が作れるわ!」

 

 始めて見る学校外の魔石に興奮している様子。直ぐに職人の顔となり鋭い目で魔石を観察しており普段ののほほんとした態度とは大違いだ。

 

「柏崎くんはどんな装備が欲しい?」

 

「今の装備には満足してるからな。アインの装備が欲しいかも」

 

「アイン?」

 

 命は魔力を消費してアインを召喚する。

 

「スケルトン?随分、強そうね」

 

 かなり威圧感があるというのに金倉は怯える様子はなくジロジロとアインの装備を観察している。鉄火場に立ったことのない生産職の怯える見た目なのに物怖じしない子だなと思う。

 

「うーん。この子に相応しい武器ってなると大分ランクが高いのじゃないと駄目かも。それこそCランクとかその辺じゃないかな」

 

「Cランクか」

 

 コボルトキングの魔石を売ってしまったのが悔やまれる。あれがあればアインに相応しい装備を作れたかもしれないと考えると尚更、惜しく感じる。金倉は取り敢えずと工房から幾つか装備を持ってきてくれてテーブルに広げる。

 

 『草狼の剣』 ランクD

 攻撃力40 耐久度40

 

 『犬人のシールド』 ランクD

 防御力40 耐久度50

 

 今の命の装備よりも性能がいいものでパーティーの中心であるアインに相応しい装備で命はお金を出そうとするが金倉に止められる。今日持ってきてくれた魔石でお釣りが来るくらいだと言われて財布から手を放す。

 

「でも、今度からは払わせてくれよ」

 

「頑固だなぁ。貰えるものは遠慮なく貰っとけばいいのに」

 

「そういう訳にはいかないさ」

 

 この装備を作るのにも少なくないリソースを注ぎ込んでいるのだろうし素晴らしい装備はそれ相応の価格で手に入れたい。共存共栄の関係を保つのがベストでいい加減な対応は取りたくない。アインの他にもアヴァリスに防具を付けさせたいがアインと同じで相応しいものがない気がするので今度の機会にする。

 

「なぁ、聞いたか?樋口のパーティーが三階層のボス戦負けたんだって」

 

「聞いた!あの聖女様のパーティーがねぇ」

 

 夕食時に丁度、一緒に食う相手が欲しかったと宍戸と夕食を共にしているとそう話しているのが聞こえてきて情報が出回るのは早いなと感じる。樋口の回復スキルはとても強力でパーティーメンバーがどれだけの傷を負おうとも即座に回復してしまい聖女様と呼ばれるぐらいには活躍を見せており快進撃を続けていてそんな彼女が敗北したと言う報は衝撃だった。

 

「お前は驚いてないみたいだな」

 

「その日、見てたから」

 

「マジかよ!」

 

 二階層のボス戦が終わって偶然であったがその現場を見ていた。食事を続けていると話題が別なものに変わる。

 

「でも、小林のパーティーは三階層突破したらしいぞ」

 

「また、金に物言わせて無理矢理突破したんだろ?」

 

「それも実力の内だけどよ。何か気に入らねえんだよな」

 

 樋口が敗退した三階層のボスを無事に突破できたのかと驚く。別に彼の実力を侮っていたわけではないが見方を改めなければならない。経済力もそうだがそれだけでボス戦を突破するのは不可能であり最後に必要となっていくのはやはり自力で三階層を突破するに相応しい実力を持っているということだろう。しかし。

 

「でも獅子王は五階層だろ?ありえねー」

 

「な、ソロで五階層まで行くとか流石、獅子王誠の妹だよな」

 

 獅子王は既に五階層まで進んでおりその速さは長い探索者高校の歴史の中でも異例と言ってもいいレベルでパーティーも組まずにソロで進んでいくというのは前代未聞の事でもしも、五階層を踏破したら伝説となった獅子王誠以来の事でその偉業を達成するのではないかと注目を集めている。

 

「小林といい獅子王といいスゲーよな。俺なんて二階層で足踏みしてんのに」

 

「宍戸も頑張ってる方だよ」

 

「二階層突破してる奴に言われたかねぇよ」

 

 堅実に突き進んでおり持ち前のコミュ力からパーティーとの関係も悪くないらしい。命ではそんな上手くいかないと思い素直に凄いと思う。

 

「でも、随分ペースが速すぎないか?」

 

「うん、だから明日は完全オフにするよ」

 

 随分とハイペースでダンジョンに潜っている自覚はあるので久しぶりのオフを取ることにする。丁度、学校も休みの日なので惰眠を謳歌するのも悪くはない。入学式からまともに休みを取ったことがなかったので何をしようかと今から楽しみである。

 

 久しぶりにゆっくり寝られて時計を確認すると気づけば昼近くになっており昼食を簡単に済ませると机に座り支給されているパソコンを立ち上げる。入学前に日課となっていた探索者の情報収集でサイトの見出しにはドラゴンスレイヤー達成と大きく書かれている。

 

「アイザック・スミルノフがレッドドラゴンを撃破。へぇ、ロシアのA級探索者が」

 

 名前だけならば何度か聞いたことがありサイトにはドラゴン討伐の映像が流れており今の自分では到底足物にも及ばないステージで灼熱地獄の中、巨大な大剣を持った男がドラゴンの首を落とした部分が強く強調されている。ドラゴンというのはたった一体でも災害級の実力を持っている強力なモンスターでそれを打倒したもにはドラゴンスレイヤーという名誉を与えられその魔石から作られる装備は凄まじく剣王 獅子王誠の装備もドラゴンウェポンであったと記憶している。

 

「でも、この人獅子王誠を凄いライバル視してた人じゃなかったっけ」

 

 サイトを見てみると『獅子王誠が出来たことが私にできない筈はない』とデカデカとインタビュー記事が書かれており呆れてしまう。その他にも黄金の錬金術師 フラン・デュマが新たなポーションの開発に成功したなど探索者学校に入ってから一度も見ていなかったため知らないことが山積みで情報収集が捗る。

 

 命はこうやって探索者の情報を集めてきてどんな細かい情報も見逃すことなく時には海外のサイトを見たりとその情熱は凄まじく探索者になってからその情報に救われたことは少なくなくやってきて良かったと思っている。

 

「取り敢えず改めて東京のダンジョンを調べておくか」

 

 東京には幾つかダンジョンが存在しており代表的なのが渋谷ダンジョン、世田谷ダンジョン、千代田ダンジョンの3つで渋谷と世田谷のダンジョンは階層型のダンジョンなのだが千代田ダンジョンは珍しい墳墓型のダンジョンで大量のアンデットが出現するという話であり命的にはこれから世田谷ダンジョンを中心に探索していこうと思っている。

 

 強力な光魔法の使い手である樋口が千代田ダンジョンに潜ったら無双しそうなものだが命の実力では大量のアンデットを相手取れる気がしないのでまずは世田谷ダンジョンを踏破してその次に渋谷ダンジョン、千代田ダンジョンの順に行ってみようと思う。

 

「獅子王誠はエジプトのピラミッドか。凄いな」

 

 海外の中でも屈指の難易度を誇るというエジプトのピラミッドに潜っているという話であり彼と彼が率いるパーティーは世界屈指の実力を誇るとはいえピラミッドは一筋縄ではいかない場所であり何度もアタックしたが生きて帰れるものがほとんどいないという話であり今度こそ獅子王誠の不敗伝説が破られるかと噂されている。

 

 パソコンを閉じてベットに寝転がる。まさに雲の上の人の話であり現実味がないが命もあれだけ憧れた探索者になれたのだからいずれその場所に辿り着いて見せる。

 

 そう決意しても直ぐに強くはなれず天井ばかり見上げていて足元が疎かになるのは避けたいので自分のペースでほどほどに頑張っていくことにする。

 

「そういや五月は体育祭だったな」

 

 探索者高校の一大イベントの1つである体育祭が近づいている。体育祭は一般公開されて外部の人間が入ることができスカウトの人間が来たりと在校生にとっては将来の為のアピールの場であり生徒たちの気合の入りようが違う。

 

 体育祭も普通の高校とはまるでちがう探索者ならではものもであり優勝者には学校から特別な賞品が与えられてその豪華さは凄まじいという噂で命も気合を入れて準備しなくてはならない。

 

 例年通りならば職業毎に競技が分かれており魔法職ならば魔法の精度を競うもので純粋な魔法職ではない命にとっては厳しいものがあるが体育祭恒例のダンジョン探索がありそれが優勝の為の鍵であり体育祭までにダンジョンを把握しておかなければならない。

 

「柏崎~、入ってもいいか?」

 

「宍戸?いいけど」

 

 一体何の用なのか扉を開けると紙袋を持っており中に入れる。

 

「お前、次から三階層に行くって言ってたよな。伝手で多めに貰ったから貰ってくれよ」

 

『解毒ポーション』 ランクD

 

 取り出されたのは解毒ポーションでかなりの数が並んでおり品質もよく命が買おうとしていたものよりも高価な品で貰うわけにはいかないと断ろうとするが制止される。

 

「受け取らないってのは無しだぜ。俺も友達が心配だからな」

 

 ニコリと歯を見せて笑顔を見せており自分の周りにはお人好ししかいないのかと呆れながらも胸が温かくなるのを感じる。

 

「なら、有難く受け取っておくよ」

 

「おう!遠慮すんな」

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