TSしたからバ美肉ということにして配信をしてみた   作:大崎 狂花

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第14話 魔王シミュレーション/ゲーム友達と会う

「うー、花粉がすごいよー・・・・・・」

 

 シオは眉を八の字にしてぐずぐずになっていた。ここ最近のものすごい花粉のせいだ。シオは花粉症なのである。視聴者も、大体みんなぐずぐずになっているみたいだった。

 

『わかるわ。俺も鼻水止まらん』

 

『俺はちょっと熱っぽいよ』

 

「熱っぽいのは大変だねー。俺はやっぱり鼻水がもうズビズビで・・・・・・」

 

『鼻水ズビズビかわいいね・・・・・・』

 

「かわいいか・・・・・・? いやーもう目も痒くて痒くて・・・・・・」

 

『大変だ』

 

『キョウカおじさんは目薬とか自分で点せなそうだなあ』

 

「・・・・・・何そのイメージ? 普段どんなふうに思われてんの俺・・・・・・?」

 

『だって幼女だし・・・・・・』

 

「まあ、点せないけど・・・・・・自分で目薬点すのってなんか怖くて・・・・・・」

 

『解釈一致』

 

『幼女でかわいいね・・・・・・』

 

「もー、みんなだってちょっと怖いと思ってるでしょ? 自分で目薬点すのが怖いのは全人類共通の感情なはずだよ!」

 

 シオはちょっとむくれて言った。

 

『んなこたあない』

 

『目薬点したい時はどうやって点してるの?』

 

「知り合いに頼んでやってもらってるよ。最近はユキに頼んで点してもらったかな」

 

『それは尊いな・・・・・・』

 

『てぇてぇ』

 

『どうやって点してもらったんですか!? 詳しく教えてください!』

 

「え? いや、普通に膝枕してもらって・・・・・・」

 

『膝枕!?』

 

『あああ・・・・・・ありがとうございます・・・・・・!』

 

『俺はむしろおじさんに膝枕してもらいたいかな』

 

「なんなの・・・・・・?」

 

 と、まあそんな雑談から始まったわけだが、今日の配信は雑談配信ではない。今日はゲーム配信なのだ。

 

「今日やるゲームは・・・・・・『魔王シミュレーション』! 聞いたところによると、異世界に転生して魔王になれるゲームみたいだね」

 

『魔王シミュレーション』。一般魔族として異世界転生した主人公が、魔王を目指していくというゲームだ。スキルとか称号とか、どんな選択肢を選ぶかで様々な物語を作り上げる事が出来るらしい。好きなように主人公や物語を作っていけるのが面白いとけっこう評判なのだ。

 

「よーし、早速始めていくよー! さてと、まずは生まれるところからだね・・・・・・」

 

 最初にムービーが流れる。平凡なサラリーマンが帰り道、トラックに轢かれそうになっている子供を庇って亡くなって転生するまでのムービーだ。もはやお馴染みの転生パターンである。

 

 そして、このゲームは主人公の性別だけはプレイヤーが選べず、男性、女性、中性の中から完全ランダムとなる。

 

 そう、つまりは──

 

《元気な女の子ですよ!》

 

「やばい、また女の子になっちゃった・・・・・・」

 

『おじさんは女の子になる星の下に生まれているのだ・・・・・・』

 

 シオはまたゲーム内でも女の子になってしまった。主人公は転生する前には男だったのでTSである。

 

《よしよし、キョウカちゃんはかわいいねー》

 

「めちゃくちゃ可愛がられてるよ・・・・・・」

 

 ゲームの中でも女の子になったキョウカは、村のみんなにめちゃくちゃに可愛がられながら成長した。

 

 そして、成長したゲーム内キョウカに、シオは色々なスキルやら称号やらを憶えさせていく。

 

 さらに、いろいろな選択肢を選んでいった先にゲーム内キョウカは無事魔王に──

 

《みんなー! いっくよー!》

 

 なることなくアイドルになっていた。

 

「なんでだよ・・・・・・」

 

『まあ仕方ないね。おじさんかわいいからね』

 

「なんか、配信とかし出したんだけど・・・・・・」

 

『おじさんはやっぱりどこの世界でも人気者なんだねー』

 

『転生してもおじさんはかわいい女の子なんだ』

 

『おい勇者がファンになってるぞ! ライブに来てる!』

 

『魔王もファンになっとる・・・・・・』

 

 こうして、魔王も勇者も魅了したキョウカが双方を和睦させるという非常にレアなエンドで終わったのであった。

 

 これはもしかしたらゲームの話ではなく、別の世界線のキョウカが実際にやっていることかもしれない・・・・・・。

 

 ◇

 

「いよし! 勝ったぞ!」

 

「ようやく勝ったね! いやー、疲れたー・・・・・・」

 

 二組の男女が、パソコンから顔を上げるとハイタッチをした。

 

 この2人はシュロとルラ。男性の方がシュロで、女性の方がルラだ。2人は双子の兄妹で、現在高校一年生だ。

 

 今、2人はとあるゲームにハマっている。『羊蹄の歌』というMMORPGだ。オンラインで、たまたま出会った人とチャットでコミュニケーションを取りながら、モンスターを倒したり何かを作ったりとかすることが出来るゲームである。

 

 で、その羊蹄の歌のめちゃくちゃ強いボスモンスターを倒すのがこの兄妹の目的だったわけなんだが、たった今無事倒せたのである。

 

「あー、ようやく倒せたよ・・・・・・」

 

「ねー、長かったね。最近はちょっとでも時間が空いたら、あいつを倒すための作戦を考えてたもんね。生活の全てがあいつを倒すためにあったと言っても過言じゃなかった・・・・・・」

 

「いや、それは過言だと思うけど・・・・・・っていけないいけない! チャット送らないと!」

 

「そうだったそうだった! ずっと手伝ってくれてたからねあのおじさん!」

 

 シュロとルラは、超速でチャットを、ずっと討伐に協力してくれていたおじさん────『キョウカおじさん』というハンドルネームのプレイヤーにチャットを送った。

 

《シュロ:お疲れ様でした! すいません、こんなに長々と協力してもらって・・・・・・》

 

《ルラ:ありがとうございます!》

 

《キョウカおじさん:いえいえ、こちらこそありがとうございました。お二人と一緒に戦えて、すっごく楽しかったですよ》

 

「いやー、やっぱりおじさんはいい人だね」

 

「初心者だったのに、上手くなるの早かったしね」

 

 と、ルラが少し考えてからこんなことを言い出した。

 

「ねえ、せっかくだしさ、オフ会とかしてみない?」

 

「・・・・・・オフ会?」

 

「そう、オフ会」

 

 オフ会というのは、ゲーム内の友達とゲーム以外の場所で会うことだ。

 

「それって大丈夫なのか?」

 

 シュロは心配そうに言う。オフ会ではけっこう危ないこともあると聞く。全部が全部そうっていうわけでもないだろうが、やっぱり心配にはなる。

 

「でもおじさん、いい人だしさ。そんなに危ないことはないんじゃない? 私オフ会一度してみたいんだけど!」

 

「い、いやそうは言ってもやっぱりゲームとリアルは違うし・・・・・・」

 

「えー!? してみたいしてみたいしてみたーい!!」

 

「ええ・・・・・・?」

 

「ね、いいでしょ? ね?」

 

「う、うーん・・・・・・」

 

 シュロは渋ったものの、結局ルラのわがままに押し切られてしまった。この兄妹のいつものパターンである。

 

《シュロ:すいません、オフ会とかしてみませんか・・・・・・?》

 

《キョウカおじさん:いいですよ、いつにしますか?》

 

《シュロ:即答ですか!?》

 

 キョウカおじさんは即答でオーケーしてくれた。キョウカがこのゲームをやり始めたのは、最近VRMMORPGモノのラノベを書こうとしているので、その取材のためでやっているのだ。オフ会に誘われた時も、何かのネタになるかもと思って即オーケーしたのである。

 

 こうして、この双子の兄妹とキョウカのオフ会が決まってしまった。

 

 ・・・・・・

 

「いやー、どんな人なんだろうね!」

 

 ルラがワクワクした表情をしながら、そんなことを言う。もうオフ会当日、待ち合わせ場所に向かうために2人は電車に乗っていた。

 

「うーん、確かに、どんな感じなんだろうな。名前にもおじさんって入ってるし、本人も自分はおじさんだって言ってたから、まずおじさんということは確実なんだろうけど、どんなおじさんなんだろう・・・・・・」

 

「ゲームではすっごいムキムキなキャラ使ってたよね」

 

 ゲーム内でのキョウカは筋骨隆々の逞しい肉体に立派なヒゲを持つ、ザ・おじさんと言った感じのキャラクターを使っていた。異世界ファンタジーモノの酒場とかで飲んだくれてそうな印象の見た目だった。

 

 ルラは目を輝かせながら言う。

 

「どんな人なんだろ〜。カッコいい人だといいな!」

 

「いやー、そりゃ夢見すぎだろ。普通のおじさんだと思うよ」

 

「あははは、まあそうだよねー。でも、ゲームの中と同じでリアルも優しい人だといいな!」

 

 楽しみな様子のルラを見て、シュロはこう考えた。

 

(もし少しでも変な素振りを見せたら、即逃げるか)

 

 2人を乗せた電車は、やがて駅に着いた。

 

「確か、この駅前の・・・・・・」

 

「胡麻団子マンの石像の前に立ってるって・・・・・・胡麻団子マンってなんだ?」

 

 胡麻団子マンはその名の通り頭が胡麻団子になっているヒーローだ。人気なのでこの駅前にはその石像がある。

 

 さて、その石像のところまで2人が行くと、なぜかその石像を取り巻くようにして人だかりが出来ていた。みんな石像の方を見ている。

 

「えっ? なに、胡麻団子マンってこんな人気なの・・・・・・?」

 

「いや違うよ! あの人が注目を集めてるっぽい!」

 

「え? うあ・・・・・・すげえ美人・・・・・・」

 

「すごい綺麗でカッコいい・・・・・・ひょっとしてモデルさんとか!? アイドルとかかも!!」

 

 シュロはそこにいる人物のあまりの綺麗さに、しばらく呆然と見惚れてしまい、ルラは興奮してはしゃいでいた。

 

 その石像の前に立っていたのは天上的な綺麗さを持つ美人だ。流れるような黒髪を惜しげなく垂らして、頭にはキャップを被っている。海よりも青く美しい瞳を、隠すようにサングラスをして、耳には穴を開けないタイプのピアスがついていた。

 

 服装はトップスがチャックのついたパーカーに無地黒いTシャツ。そして、下はジーンズというそこまで気取った感じのないシンプルなものだが、見た目がいいので、すごくおしゃれでスタイリッシュに見える。

 

 ちょっと危なげな雰囲気を醸し出す、綺麗でかっこいい人が立っていた。

 

 その人は石像の前に立っていた。待ち合わせでもしているのだろうか、さっきからスマホをちらちら見て、時間を確認しているみたいだった。

 

「っと、見惚れてる場合じゃないぞルラ! もうすぐ約束の時間になる!」

 

「え? あっ、ほんとだ! うわー、どうしよう。こんなに人がいっぱいいたら誰がキョウカおじさんかわかんないよ」

 

「そうだなあ。一応俺、目印に『羊蹄』の服着てきたから向こうから話しかけてきてくれるのを待つしかないな・・・・・・」

 

 と、2人がそんなふうな話をしていた時である。

 

 ふと、石像の前に立っている綺麗な人が2人の方を見た。その人はサングラスをちょっと傾けてじっと見ていたが、

 

「あの、ちょっとすいません」

 

 そう言って人ごみをかき分けると2人の方へ歩み寄ってきた。

 

「・・・・・・なんかあの人こっちに来てない?」

 

「い、いやそんなわけないでしょ・・・・・・あんな綺麗な人が・・・・・・」

 

 どう見ても2人の方へ向かっている。

 

 その人は2人の前へ立つと、サングラスを外してTシャツの首元にかけた。見た目がいいから様になってるけど、リアルでそんなことしてる奴とか初めて見る。

 

 キャップも取って、こう聞いてきた。

 

「あの、もし違ったら申し訳ないんですけど・・・・・・」

 

「はい! なんでしょう!?」

 

(うわー、声も良い。完璧すぎるこの人・・・・・・)

 

「ひょっとして、シュロさんとルラさんですか?」

 

「え? あ、ええ。確かに俺たちはシュロと・・・・・・」

 

「ルラですけど・・・・・・」

 

「ああやっぱり。良かったー」

 

 その人はほっとした表情をすると、にこっと笑ってこう名乗った。

 

「初めまして。キョウカおじさんです」

 

「「・・・・・・は!?」」

 

 兄妹は2人揃って目を丸くして素っ頓狂な声を上げた。それを見てキョウカおじさんことシオは、(おー、やっぱり双子だねえ。2人揃っておんなじリアクションしてる)なんて呑気なことを考えた。

 

 ちなみに、集まっていた人たちは双子のことをめちゃくちゃに羨ましそうな目で見ていた。

 

 ・・・・・・

 

「えっと・・・・・・」

 

 喫茶店にて。

 

 シュロはシオを目の前にして緊張していた。まさかこんなことになるとは思わなかった。いやだって、おじさんって言ってこんな綺麗な人が来るとは誰も思わないじゃないか。

 

 というか、本当におじさんなのかこの人は?

 

「あれ? キョウカおじさんっておじさんだって言ってなかった?」

 

 ルラはそういうところを遠慮せずにズバズバ聞いていく。

 

「うん、俺は見ての通りのおじさんですよー」

 

 ルラの言葉に、シオはにこっと笑って答えた。

 

(いや全然見えない全然見えない! 見ての通りも何も、全くおじさんには見えないって!)

 

 シュロは心の中で思わずツッコんだ。ルラも同じ感想を抱いたみたいで、こんなふうに言った。

 

「いや見ての通りって・・・・・・見た目全然おじさんには見えないよ! 私カッコいい人が来たらいいなとは思ってたけど、思ってたのとは違うタイプのかっこよさだったよ!」

 

 強いていうなら、雑誌とかで見るスタイリッシュな女性モデルと同質のカッコ良さである。明らかに男としてのカッコ良さではなかったが、シオはこの姿になってからカッコいいなんて言われることがなかったので、頬を緩めて嬉しそうにした。

 

「そ、そう? カッコいいって言われるのはあんまりないから嬉しいな・・・・・・友達にコーディネートしてもらったんだよね。たまにはちょっとカッコいい系もどうかって」

 

 これはユキにコーディネートしてもらったのである。穴を開けずにつけられるタイプのピアスもユキに教えてもらってつけてみたのだ。

 

 そんな服装に身を包んだシオは、やっぱり普段と違ってちょっと危なげな雰囲気を醸し出していて綺麗だった。そして、喫茶店の客全員の視線を集めていた。

 

「「いや、このおじさん美人すぎるな・・・・・・」」

 

 2人は思わず声をそろえて呟いた。

 

「おー、やっぱり双子だ! 揃ったねー」

 

 やっぱりシオは呑気にそんなことを言っていた。

 

 さて、3人は飲み物を飲みながら色んな話をしていく。

 

 シオが呑気にこんなふうに言った。

 

「そういえば、あの待ち合わせ場所妙に混んでたよね。何かあったのかな?」

 

「え?」

 

「マジかよ・・・・・・」

 

(自分が見られてたってことに気が付いてないのか・・・・・・)

 

「というかさ、お兄ちゃんキョウカさんのことめちゃくちゃに見てたよね」

 

「え?」

 

「ちょ、おい! い、いや見てたと言っても、別に変な意味では・・・・・・」

 

(そ、そうか! 初対面のおじさんだってことでさっきまでは俺の方が警戒してたけど、この感じだと俺の方が警戒される側になるわけか!)

 

 そういえば、このオフ会を提案したのはルラだが、実際に誘ったのはシュロだった。その時は深く考えずに誘ったのだが、今考えてみるとこの人をオフ会に誘ったということになるのだ。

 

「あはは、わかってますよ。男同士ですからね」

 

「お、男同士・・・・・・」

 

 そうだ。男が男にオフ会でもどうですかと誘っただけなのだ。別に何もマズいことはないはずだが・・・・・・なんかヤバいことをしてしまったような気分になる。というか、今更ながら恥ずかしくなってきた。

 

 シュロは慌てて話題を転じた。

 

「そ、そういえばさ! ルラ行きたいところあるって言ってなかったか!?」

 

「え? ああ、そうだね」

 

「そうなんですか?」

 

 3人は、とりあえずルラが行きたいと思っていたところへ行くことになった。

 

 ルラが行きたいと思っていたところ、そこは──

 

「コスプレショップ・・・・・・ですか」

 

「そう! ここのコスプレショップはねー・・・・・・」

 

「確か、『羊蹄』のキャラの衣装がたくさん置いてある店、なんだったか」

 

「そう! お兄ちゃんよく知ってたねー」

 

 そこはコスプレショップ、しかも3人がやっている『羊蹄』のキャラの衣装が豊富に置いてある店らしい。

 

 3人は店の中に入った。すぐに羊蹄コーナーがあるのを見つけた。

 

「あっ、本当だ。かなり品揃えが豊富ですねー」

 

「でしょー?」

 

 ルラがドヤ顔で言う。

 

「うーんほんとは、キョウカおじさんにはこれを着てもらおうかなって思ってたんだけど・・・・・・」

 

「なんだ? あー、これか」

 

 シュロはルラの指差した衣装を見る。ルラがシオに着せようと思っていたのはとある男キャラが着ている革鎧だ。普通のおじさんならそこそこ似合いそうな衣装だが・・・・・・。

 

「サイズが合いませんね・・・・・・」

 

 シオにはサイズが合わない。

 

「だよねー。そもそも似合わないだろうし・・・・・・」

 

「そうだな・・・・・・」

 

「じゃあ、これはお兄ちゃんに着せるとして」

 

「俺に選択権は無しかよ」

 

「じゃあ・・・・・・これはどうかな!?」

 

 ルラが指差したのは、とある女性キャラが着ている、黒いゴスロリ風のドレス衣装である。

 

「い、いやこれギラが着てる奴じゃないですか・・・・・・」

 

 ギラというのはこの衣装を着て、常にクマのぬいぐるみを持っている幼女のキャラだ。

 

「幼女が着てるような衣装が、おじさんに似合うわけないじゃないですか・・・・・・」

 

「いや似合うでしょ。ね? お兄ちゃん」

 

「うん、似合う。ね? 店員さん」

 

「めちゃくちゃ似合うと思います」

 

「ええー・・・・・・?」

 

 シオは結局押し切られてその衣装を着ることになった。

 

「え、えっと・・・・・・どうでしょう・・・・・・?」

 

 しばらくして。

 

 試着室から出てきたシオは、黒いゴスロリ風のドレス衣装に身を包んでいた。ウィッグはつけていない。幸いにも、そのキャラはシオと同じく黒髪だったので。ただ、そのキャラに合わせて髪の毛はツインテールに結んでいた。

 

「「・・・・・・めちゃくちゃに似合ってる!!!!」」

 

「おお!?」

 

 びっくりした。2人揃って大声で叫ぶから。

 

「いやめちゃくちゃに似合ってる! めちゃくちゃに似合ってるよ! ギラにそっくりだし、それ以前にめちゃくちゃかわいい! ね、お兄ちゃん!」

 

「おう、そうだな妹よ! 似合うだろうなーとは思ってたけど、まさかここまで似合ってしまうとは・・・・・・ギラにそっくりだしな!」

 

「そ、そんなに? へー・・・・・・」

 

 シオには自分がそこまで似合っててキャラにそっくりだという自覚はなかったものの、そう言われてちょっと思いついた。それでイタズラっぽい笑みを浮かべて2人の袖を掴むと、ゲームで頻繁に聞いたギラの声色を真似して、上目遣いで言った。

 

「『・・・・・・ね、2人は私を1人にしないで、ずっとそばにいてくれる?』」

 

「「・・・・・・つ!!!?」」

 

「なーんて! あはは! ・・・・・・ってあれ? どうしたの?」 

 

「い、いやちょっと・・・・・・」

 

「致死量の可愛さを喰らってしまって・・・・・・」

 

「・・・・・・? なんだかわからないけど、2人は本当に仲がいいねー」

 

 さて、この店の他にも色んなところへ行って、オフ会は無事楽しく終わった。

 

 そして、これがきっかけでルラとキョウカの距離はさらに近くなり、シュロはキョウカと話す時緊張してしまうようになったという。

 

 

 

 

 

 おまけ もしシオがTS異世界転生していたら

 

「みんなー! ありがとー!」

 

 この世界で一番大きな会場を埋め尽くす観客が、『うわあああああー!!!』と一斉に歓声を出す。観客の視線は一点に、舞台の上の1人の魔族へ注がれていた。

 

 魔族の名前はシオ。アイドルネームはキョウカ。この世界で一番人気のアイドルである。

 

 今日もシオはライブをし、客はそれに魅了されていく。そして、このライブから明日への活力や生き抜くための希望、勇気なんかをもらって前へ前へと進んでいくのである。

 

 ちなみに、このライブは空間魔法を応用することで全世界へ配信されている。シオはみんなの心を潤すオアシスなのだ。

 

 そして、そんなオアシスは今──

 

「もーやだー! アイドルなんてー!」

 

 楽屋の机に突っ伏してうだっていた。ライブ終わりの楽屋である。

 

「しょうがないでしょ。こんなに人気になったらやめるにやめられないじゃん」

 

 マネージャーのユキが淡々とした口調で言う。

 

「いや、それはそうだけどさあ・・・・・・」

 

「なに? 不満なの?」

 

「いや、不満はないよ? ファンのみんなが応援してくれてここまで来れたわけだし、みんなの役に立てるのならいいんだけどさ・・・・・・」

 

 シオは勢いよくガバッと顔を上げて叫んだ。

 

「俺はやっぱり冒険者になりたかったんだよおおおおー!!!」

 

 そう、シオは冒険者になるのが夢だったのだ。

 

 異世界転生出来るとなって、転生担当の女神様と話をしている時は良かった。まだ見ぬ異世界で冒険が出来る! ということへのワクワク感があった。しかし──

 

「まさかTS転生とは・・・・・・」

 

 女の子の体になってもちろん戸惑ったが、それ以上に戸惑ったのは転生して女の子になった自分の人気具合である。なぜか老若男女を問わずめちゃくちゃな人気を集めてしまって、気がついたら大人気アイドルになってしまった。なんでだよ。

 

「俺は冒険者になりたかったのにい・・・・・・」

 

「いや、そりゃ無理って相談だよ。牛肉がにんじんになりたいって言ってるようなもんだからね」

 

「そこまで無理なの!?」

 

「当たり前だよ。シオちゃんが冒険者になんかなったら、取り合って殺し合いが起きるよ」

 

「それは・・・・・・」

 

 ないとは言い切れないのが怖いところである。本当にどうしてこうなったんだ。

 

 と、シオは楽屋の外が騒がしいことに気がついた。

 

「なんだ?」

 

「また勇者と魔王が喧嘩でもしてんじゃない?」

 

「またか・・・・・・」

 

 シオが呆れたような表情をしながら楽屋の外へ出ると、そこでは2人の人物が喧嘩していた。

 

「シオさんは私のものです! 誰にも渡しません!」

 

 そう言って睨みつけるのは、キュウ。勇者と呼ばれる存在で、人間だ。

 

「何を言うか。あの麗しの声を持つシオは、私のお姫様だ。誰にも渡さん」

 

 そう言って傲慢にキュウを見下ろすのは、アオ。魔王と呼ばれる存在で、魔族の頂点に立つ存在だ。

 

 シオはその2人の間に割って入った。

 

「はいはい2人とも、いい加減にしてくださいねー」

 

「あっ、シオさん! この魔王が──」

 

「おおシオ。この勇者がな──」

 

 シオは、そんな2人へ叫んだ。

 

「いいからとっとと和睦しろ──!!!」

 

 これは、こことは違った世界線でのお話・・・・・・。

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