TSしたからバ美肉ということにして配信をしてみた   作:大崎 狂花

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第16話 声優試験を受けさせられた②/子どもになっちゃった①

『第一設問! 第一設問はセリフ読みです!』

 

 司会者から、シオとアヤへプリントが配られた。

 

『その紙にはいくつかのセリフが書かれています! 2人とも初めて見るセリフたちです! 初めて見るセリフを、どれだけ上手く読めるか。演技力だけでなく、キャラの性格やそのセリフの物語的意味を瞬時に理解してそれに沿った演技をする能力も問われる設問となっております!』

 

 話を聞く限り、そこそこ難しそうな設問だ。

 

『それではプリントをめくってください!』

 

 シオはプリントをめくった。そこにはいくつかのセリフが書かれていた。一番初めのセリフはこうだ。

 

 ①『ね、もしかして君って私のこと好きなの?』

 

 一番初めのセリフはこれらしい。

 

 下に具体的なシチュエーションが書かれている。なんでも、高校生の女の子が、幼馴染の男の子にからかうような口調でそんなことを言うシーンらしい。この一言がきっかけで、2人は付き合うことになるんだとか。

 

(性格や、物語的意味か・・・・・・からかい口調ってことはけっこう元気で明るいような子で、それがきっかけで付き合うことになるんなら、物語的にもかなり重要なシーンになるよな・・・・・・)

 

 この紙は審査員にも配られているらしい。これを見て、実際にどう演じたのかという目でも見られるわけだ。

 

(どうしよう・・・・・・)

 

 そんな難しいことをいきなりやれって言われても、シオはほとんど素人なのだ。正直言ってどうやったらいいのかわからない。

 

 まずは、アヤからだ。

 

「『ね、もしかして君って私のこと好きなの?』」

 

 完璧である。からかいの感じもちょうどいい具合、幼馴染で両片思い的な関係上にある女の子の口調、まさにそのものといった感じだ。それに、すごく可愛い。自分の声を最大限魅力的に聞かせることと、演技を、ちゃんと両立出来ている。

 

 一般客も口々に誉めていた。

 

「すごいな」

 

「ああ、これは完璧だ。なんというか、模範解答って感じだな・・・・・・」

 

「俺、こんな子とこんな青春がしたかったわ・・・・・・」

 

(なんか思いっきり私情が入った感想言ってる奴がいるぞ・・・・・・)

 

 さて、次はシオの番である。

 

(うーん、じゃあこういうふうにしてみるか・・・・・・)

 

 シオには声優についての具体的なテクニックとか細かい知識とかはない。だから、とりあえず自分の思った通りにやることにした。あんまり深く考えずに思い切ってやってみようと。

 

(まあ、俺なんてズブの素人なんだから、深く考えようが考えまいが不合格になることは確定なんだ。思い切ってやってみよう! すまん、本物のキョウカさん! でも遅刻する方が悪いんだからね!)

 

 シオはもう諦めの境地でやってみた。

 

「『ね、もしかして君ってさ・・・・・・私のこと好きなの?』」

 

 シオのセリフのあと、会場は一瞬シン・・・・・・となり、そしてカッと目を見開いた観客の1人が驚いたように言った。

 

「こ、これは・・・・・・からかい口調の奥に、少しの恥じらいとためらいがある!?」

 

 そう、シオはこのセリフにからかうような調子だけでなく、ちょっと恥じらうような、ためらうような感じをこめてみたのである。

 

「! そうか! この女の子は確かに元気で明るい性格とここには書かれている! だがそんな女の子でもこんなほぼ告白みたいなことを言う時に羞恥心やためらいがないわけがない! だからこのセリフに恥じらいとためらいの感情を混ぜたのか!」

 

「確かに、そうすることによってキャラも深みが出て、物語にもさらに奥行きが出る。・・・・・・が、しかし、それは拡大解釈とも言えるんじゃないのか?」

 

「まあでも、2人ともめちゃくちゃ可愛かったけど、俺は特にキョウカちゃんが好きかな・・・・・・」

 

「わかる。俺も」

 

「俺も」

 

「俺も」

 

「俺も」

 

「キョウカちゃんめちゃくちゃ可愛いな・・・・・・声もめちゃくちゃいいし・・・・・・」

 

 なんかみんな採点とか忘れて各々の推しを語り始めた。シオは呆れたように言う。

 

「なんだこいつら・・・・・・採点に私情を挟むなよ・・・・・・」

 

「くっ、私よりキョウカ推しの方が多いじゃない・・・・・・!」

 

「いや、ファン数対決じゃないから・・・・・・」

 

 で、まあその後もシオとアヤの2人は色々なセリフを読んでいった。お母さん系、ギャル系、ヤンデレ系など色々・・・・・・

 

 そして、今のところ業界有識者合わせた観客たちはシオの方が上手いという評価をしているようだった。私情を挟まなくてもそういう評価になったのである。

 

「くっ、まだよ! まだ私は負けてないわ!」

 

 悔しそうな顔をしながらも、アヤはそう言った。どうやら、まだシオに勝つことを諦めていないみたいだった。

 

「う、うん。頑張って・・・・・・」

 

「なんであんたはそんなやる気ない感じなのよ! 無気力系主人公なの!?」

 

 やる気がないのではない。なんか思ったより良い評価なので困惑しているのである。

 

 で、次のセリフ。

 

「えーっと、次のセリフは・・・・・・炭酸が苦手な幼い女の子のセリフ・・・・・・」

 

 ・・・・・・

 

「『うー、口の中がピリピリする・・・・・・』」

 

「こ、これは・・・・・・!?」

 

「す、すごい! キョウカさんが完全に幼女に見えるぞ! 完全に炭酸が苦手な可愛い幼女に見える! それにしか見えない!!」

 

「はちゃめちゃに可愛い・・・・・・」

 

 どうやら、観客の反応を見る限りシオの方が評価は高そうである。

 

「くっ・・・・・・!」

 

「なんで・・・・・・?」

 

 アヤは悔しそうな顔をし、シオは不思議そうな表情をするのであった。

 

 ・・・・・・

 

『さて、それでは次の設問・・・・・・と行きたいところですが、機材の準備等があるので少々お待ち下さーい!』

 

 どうやら、少し待つ必要があるようである。ステージの上に待機用の椅子が出てきたので、シオとアヤの2人は椅子に座った。シオは、待ちながら観客の話をなんとなく聞いた。

 

「いやそれにしても2人ともすごいよねー。アヤちゃんもキョウカちゃんも、確かまだ高校生じゃなかったっけ?」

 

「へー、そうだったんだ。アヤちゃんはともかく、キョウカちゃんの方は中学生くらいかと思ってた」

 

(また俺中学生くらいに見られてんな・・・・・・普通におじさんなのに・・・・・・)

 

「俺はキョウカちゃん小学生かと思ってた」

 

(それはさすがにおかしいだろ)

 

 と、まあそんなことをしているうちに機材の準備が終わったので第二設問だ。

 

「次は負けないからね!」

 

「はあ・・・・・・いや、ていうか今さらだけど別にこの試験は七十点とって合格すればいいんだから、無理して勝とうとする必要とかないのでは・・・・・・?」

 

「いいのよ! 別に勝たなくてもいいけど、せっかくなら勝ちたいじゃない!」

 

「はあ・・・・・・」

 

 まあいい。そもそも今の勝ち負けだって今の時点での観客の反応を見る限りはシオの方が評価が高そう、というだけでまだ実際に点数が出たわけではない。アヤはなんとなく自分が負けた気になっているが、実際に負けているかどうかは点数を見てみるまでわからないのだ。

 

 シオは、多分実際に点数をつける時になったら多分自分がボロ負けなんだろうな・・・・・・とまだ思っていた。

 

『次の設問は・・・・・・歌のテスト! 今からかわいい系からかっこいい系、様々な種類のアニメのキャラソンを歌っていただきます! 歌の巧拙だけでなく、そのキャラで歌い切れるかどうかとかも評価されますので、そのつもりでいてくださーい!!』

 

 司会者が笑顔で言った。そのキャラで歌い切れるかどうか・・・・・・というのはキャラの声を崩すことなく歌い切れるかどうかということだろう。それ見るためにわざわざ歌うものをアニメのキャラソンに限定したのだろう、おそらく。

 

(アニメのキャラソンかあ・・・・・・知ってるやつ出るといいなあ・・・・・・)

 

 幸いにも、全部シオの知っているアニメのキャラソンだった。良かった、とホッと安心してとりあえずシオは全力を出し切って歌った・・・・・・。

 

「あれ? キョウカちゃんめっちゃ上手くね!?」

 

「いや上手いな・・・・・・いや上手いな!?」

 

「かっこいい系もかわいい系もめちゃくちゃ上手い・・・・・・しかも全部そのキャラの声で歌ってるぞ!? どうなってるんだ・・・・・・」

 

 ザワザワする観客。

 

(おー。いつも一人カラオケで色んな歌い方試してたのが役に立ったみたいだね)

 

 元々シオはけっこう歌うのが好きなのだ。ユキとかと一緒にカラオケに行ったりすることもあるが、1人でカラオケに行くこともけっこうある。特に、女子になってからは今までに歌えなかった音域の高い曲やかわいい系の曲などを歌えるようになったのが楽しくて、けっこう1人でカラオケに行っていたのだ。それこそ、声を変えて歌う、みたいなことも試したりしていたのである。

 

 で、その結果ただ歌が上手いだけではなくそのキャラの声で歌い切るという芸当が出来るようになったのだが、シオはそれがけっこうすごいことだということに気づいていない。

 

 まあその後も第三設問の朗読や、第四設問のダンスなどあったものの、いずれもシオの方が評価が良く・・・・・・私情抜きでも私情ありでも、シオの方が観客の評価が高くて、結果・・・・・・。

 

『鴇井アヤさん、八十五点で合格! そして間門キョウカさん・・・・・・なんと百点で合格!』

 

 そうなった。・・・・・・いや、なんでこうなった?

 

 こうして、なぜかシオはこの声優養成学校初の昇級試験百点合格者となったのだった。

 

「なんでよー!」

 

「まあまあ、八十五点でも十分すごいじゃん」

 

「あんたが言うとイヤミにしか聞こえないのよ!」

 

「お、おお・・・・・・」

 

 これ以上ないくらい圧倒的に合格してしまったが、そのまま間門キョウカでいるわけにもいかないのでちゃんと自分が別人だということを養成学校の人に知らせた。

 

 で、結局シオの合格は取り消しとなり、あとで間門の方のキョウカさん本人がちゃんと試験を受け、八十五点で合格したらしい。

 

 ただ、シオは今回百点を叩き出したことで

 

「あの、声優とか興味ありませんか?」

 

 なんて養成学校の人にめちゃくちゃ勧誘されたし、

 

「絶対あいつに勝てるくらいになってみせる!」

 

 アヤはリベンジを決意していた。なんかライバルみたいな子が出来てしまった。

 

 まあ、シオはそんなことに全く無頓着で

 

「うーん今回は珍しい経験が出来てよかったなー」

 

 などと呑気なことを言っていたのだった。

 

 ◇

 

 朝、目を覚ますと体に違和感があることに気づいた。

 

「またか・・・・・・」

 

 朝起きて体がどこか変なことに気づく。生きててまず無いような体験だが、シオはもう三度目だ。稀有な人間と言える。

 

「今度はなんなんだ・・・・・・?」

 

 性転換に巨乳化と来て、今度はなんだろう。シオは冷静に自分の体をよく観察し出した。

 

「あれ? 俺の手ってこんなに小さかったっけ・・・・・・?」

 

 ます気づいたのは、自分の手がなんか一回り小さくなっているような気がする、ということだ。確かに、シオは性転換して男の時よりも体が小さくなった。でも、それにしても小さいような・・・・・・?

 

 というか、なんか服がぶかぶかになってるぞ?

 

 嫌な予感がする。シオは急いでベッドから降りて洗面所の鏡を見に行った。

 

「・・・・・・は?」

 

 自分の姿を鏡で見る。小さくなっていた。シオは、小さくなっていた。

 

 女子になったシオは、中学生とか高校生とかに見られることが多い。時には小学生に見る人もいるけれども、大体中学生高校生、そんな感じの見た目なのである。

 

 しかし、鏡に映った今のシオの姿はどう見ても小学生だった。小学校三、四年ぐらいの女の子、今のシオはそんな見た目になっていた。

 

「マジかよ・・・・・・」

 

 視聴者からはもう幼女じゃん、とか幼女みたいでかわいいとか散々言われてたシオだが・・・・・・今日、この日シオは本当に幼女になってしまったのであった。

 

 ・・・・・・

 

「幼女化症候群て・・・・・・まーたそんなカオス系ギャグ漫画みたいな病気になるとはね・・・・・・」

 

 病院に行ったらそう診断された。また性転換症や巨乳化症と同じく原因不明の謎ファンタジー病気である。ひょっとしたらそういうのにかかりやすい体質なのかもしれないねー、とかなんとか言って医者は笑っていたが、シオとしてはたまったものではない。

 

「はあ・・・・・・」

 

「いやー、シオも大変だねー」

 

「全く、他人事だと思って・・・・・・ていうか、何やってんだよユキ」

 

 シオは子供の状態になったことをとりあえずユキに知らせたのだ。ユキはその知らせを聞いて超速で駆けつけてきたのである。

 

 で、ユキは今シオの頭にでっかいリボンを結んでいた。

 

「何やってんの?」

 

「いいじゃーん、似合ってるよ! めちゃくちゃかわいい!」

 

「お前、さてはこれをやりたくて駆けつけてきたな?」

 

「ね、これ終わったらアリス風エプロンドレスとか着てみない?」

 

「本当に他人事だと思ってさあ・・・・・・」

 

 まあ、予想通りである。シオが本当の幼女になんかなったら、こんなふうになることは予想の範疇だ。

 

「って、そうじゃないんだよ! ユキにわざわざ電話したのはこんなことをさせるためじゃないんだから!」

 

「あれ? 明確な用事があって電話したんだ」

 

「そうなんだよ。その、ちょっとこの体になったことで不便なことがあってさ。手伝って欲しいと思ってユキを呼んだんだ」

 

「へー、そうなんだ。手伝ってほしいことってなに?」

 

「それは、その・・・・・・」

 

 シオはやや顔を赤らめ、遠慮がちにこう言った。

 

「あのさ・・・・・・ペットボトルの蓋開けてくんない?」

 

「え?」

 

 意外なこの言葉に、ユキは目をぱちぱちさせた。

 

「い、いやこの体になって力も弱まっちゃったみたいでさ・・・・・・」

 

 シオはそばに置いてあったペットボトルを手に取って開けようとした。「んー!」と顔をぎゅっとさせて精一杯力を込めているみたいなのだが、ペットボトルの蓋は微動だにしていない。

 

「こんな感じで、全然開かないんだけど・・・・・・」

 

「あー、非力すぎてかわいいねえ・・・・・・」

 

「は?」

 

「もう小動物じゃん。ほぼ小動物でしょ」

 

「いや違うが? あ、あと高い所の物も取れないから取ってほしいんだけど・・・・・・」

 

「やっぱり小動物だよ。守護すべき小さきものだよ」

 

「何言ってんだ・・・・・・」

 

 まあそれはともかく。

 

 シオはとりあえずユキに手伝ってもらってペットボトルの蓋を開けてもらって高い所の物を取った。

 

「ほーら高いたかーい!」

 

「いやそういうのしなくていいから・・・・・・普通にユキが取ってくれ・・・・・・」

 

 それらは簡単に片付いた。問題はその後だ。

 

「まあこれらは特に重要な問題じゃないんだ・・・・・・もっと重大な問題が別にあるんだよ」

 

「重大な問題?」

 

「そう。実はさ・・・・・・俺、今日配信しようと思ってたんだよね」

 

「あー」

 

 シオは今、幼女になっている。もちろん、声も普段より高くて幼女っぽい声になっているのだ。普段の声とは違う。どうしたのかと思われてしまうだろう。

 

「じゃあ今日はお休みにすればいいんじゃない?」

 

「いや、最近全然配信出来てなかったし、今日は是非ともしておきたいんだよね。これがいつ治るかわからないし・・・・・・」

 

 前回の巨乳化症は割とすぐに治ったが、今回のこれもすぐ治るという保証はない。まあこれもすぐ治るような気もするが・・・・・・確証はないので、長引いてもいいように対策を考えておきたいのである。今日を切り抜けられるだけでなく、もし長引いても大丈夫な対策だ。

 

「うーん、けっこう難しいね・・・・・・」

 

「だよねえ。そんな一石二鳥的な対策なんて・・・・・・」

 

「うーん・・・・・・あっ、じゃあこういうのはどうかな!?」

 

 ユキはしばらく考えていたが、突然目をきらめかせて身を乗り出した。

 

「な、なに?」

 

「幼女デーを作るの!」

 

「よ、幼女デー?」

 

「そ。よくエイプリールフールとかで幼児化する配信とかしてる人いるじゃない? あんな感じで幼女になっちゃったってことにするの! 名付けて幼女デー!」

 

「なるほど・・・・・・確かに、それは良さそうだな」

 

「こんなこともあろうかと・・・・・・ちゃんとキョウカちゃんの幼女の体も作ってあるからね!」

 

「どんなことがあると思ってたわけ?」

 

 と、いうことで唐突に幼女配信をすることが決定したのであった。

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