TSしたからバ美肉ということにして配信をしてみた 作:大崎 狂花
シオはネルの実家へ向かっていた。
目的は、まあ、お線香をあげに行くことだ。
ネルが亡くなった時、葬式には出られなかった・・・・・・というかシオには亡くなったということ自体知らされなかった。それは、あの時シオはかなり忙しくて、そもそも時間が取れなかったし、忙しい折にそんなショックなことを伝えて余計な心労をかけさせるのも申し訳ないと、ネルの家族が気を遣ってくれたためである。
そして、事が事だけに忙しい期間が終わっても、なんとなく話しにくくて、そのままずるずると・・・・・・といった感じだったらしい。
お葬式くらい出たかったけど、仕方がない。あの銀河鉄道の夜に、会って話も出来たことだし、シオはあんまり気にし過ぎないことにした。
まあでも、お線香ぐらいはあげに行こうと思って今回ネルの家に行くことにしたのだ。
(しかし、小さめのサイズにしたのにけっこうブカブカだなあ・・・・・・)
シオは今日は、男性っぽい格好をしている。せっかくだし、ネルと生前会っていた時と似たような格好で行こうと思ったのだ。もちろん、男だった時に着ていた服は超ブカブカで着れないので、それと似たような感じでそれより小さいものを買った。けど、小さいサイズでもけっこうブカブカだ。
髪の毛もポニーテールにして、今日はちょっとかっこいい感じだ。
「あら、可愛い子。お姉さんとお茶しない?」
「いやあの、今日はちょっと用事があるんで・・・・・・」
だからなのか、なんかお姉さんっぽい人たちからめちゃくちゃに逆ナン(?)された。そんなことがありつつも、シオはなんとかネルの家のある場所まで辿り着く。
「思えば、ネルの家へ行くのは初めてだったか・・・・・・?」
おそらく、初めてだったはずだ。シオとネルは、正月とかで親戚一同が集まる時にのみ会って遊ぶ感じだったので、確かお互いの家に遊びに行くみたいなことはなかったと思う。
「けっこう田舎にあるんだな」
人家よりも森やら田んぼやらが多い、けっこうな田舎にネルの家はあった。シオもこんな男性みたいな格好じゃなく、麦わら帽子被って白いワンピースでも着た方がいいんじゃないかってくらいの雰囲気がある。そんな場所だ。
「・・・・・・ここかな」
シオは教えられた通りの家に行き、インターフォンを鳴らした。
「はいはーい」
出てきたのは、ネルの母親だ。親戚一同の集まりで見覚えがある。
「えっと・・・・・・」
ネルはシオのことを見て当惑している。会ったことはあるはずだけど、この姿で会ったことはないからわからないみたいだ。
「お久しぶりです。シオです」
「あら、シオくん!? へえー、話には聞いてたけど、ほんとに可愛くなったわねぇ」
そう言って、ネルの母はニコニコしながらシオの頭を撫でてくる。
「ははは・・・・・・」
頭を撫でながら、しんみりした顔でシオに言う。
「・・・・・・ごめんなさいね。お葬式に呼んであげられなくって・・・・・・」
「・・・・・・いえ、いいんですよ。気を遣ってくださって、ありがとうございます」
「ありがとね。きっとあの子も、喜んでくれてると思うから・・・・・・」
ネル母はそう言って、シオを招き入れてくれた。
・・・・・・
仏壇には、いい笑顔のネルの写真が飾られていた。シオは、線香をあげて手を合わせてから、持参したお菓子をお供えした。
「こんなもんで良いのかどうか、わかんないけど・・・・・・」
シオがそう言ってお菓子をお供えすると
『大丈夫だよ〜! シオくんのお供えしてくれるものなら、なんでも嬉しいよ!』
シオの耳に、そんな声が届いた気がした。
『あと、出来れば可愛い服で来てほしかったけどね私は! 今度からもっと可愛いやつでお願い! チャイナ服とか!』
・・・・・・そんな声も聞こえた気がした。どうやら向こうでも元気にやっているみたいだ。
◇
さて、まあそんなこんなで目的も果たしたわけだし、今日は帰ろうかと思ったのだが・・・・・・
「あら、今日は泊まってきなさいよ〜!」
「え? いや、でも・・・・・・」
「いいからいいから! その方がネルも喜ぶと思うし!」
と、いうことで泊まることになった。そんなふうに言われたら断れない。まあ、確かにここまでけっこう遠かったし、今から帰るというのもそこそこキツかったので、この申し出はありがたい。
そう、泊まっていくことになったのだが・・・・・・
「お前、誰だ?」
「えっと・・・・・・」
シオは、小学生くらいの男の子からそんなふうに言われていた。
この子は、なんでもネルの弟らしい。けっこう歳の離れた弟みたいだ。シオが知らないということは、ひょっとしたらネルが亡くなったあとで生まれたのかもしれない。
で、まあ友達の家に遊びに行っていたらしい弟──ケンジくんが帰ってくるなり、シオは開口一番そう言われた。物怖じしない子だ。
「えっと、俺はシオだよ! ちょっと用事があってここに来て・・・・・・それで、今日はここに泊まることになったんだ! よろしくね!」
シオが目線を合わせながらにこっと笑ってそう言うと、ケンジに
「なんだ? お前男か? 男なのにポニーテールになんかして、変なやつだな!」
と言われた。令和キッズとは思えない発言だ。
「もー、ダメだよ? 今のご時世、そういう発言はNGなんだから!」
そうやってシオが注意したわけだけど
「へっ! 知るかよそんなの!」
そう言ってケンジは聞き入れようとしない。
そして、シオをジロジロと見てこんなふうに言ってきた。
「ふーん・・・・・・なんか男のくせになよなよしたヤツだけど、まあいいや。お前、俺の相棒になれ!」
「だからそういうこと言っちゃいけないって・・・・・・って、え? 相棒?」
「そう、相棒!」
「相棒って、なんの?」
「決まってんだろ! 虫捕りのだよ! 俺は今から虫捕りに行こうと思ってんだ! だから、それの相棒だ!」
「え、今から!?」
まだ日が落ちていないとはいえ、けっこう遅い時間だ。
「や、やめた方がいいんじゃない・・・・・・? 途中で暗くなっちゃったりしたら危ないよ」
「だから相棒を連れていくんだろ! 行くぞ!」
聞いてくれそうにない。まあ、仕方がないとシオは虫捕りに付き合うことにした。
「えっと、じゃあその前に虫除けスプレーしてきてもいいかな? あと、日焼け止め塗らないと・・・・・・」
「日焼け止めとか女かよ!」
「君、ひょっとして昭和とかから転生してきた・・・・・・?」
で、まあ仕方なく、シオはそれからケンジと虫捕りをした。
「きゃっ!? な、なんだヒモか・・・・・・蛇かと思った・・・・・・」
「女かよ!」
「ごめん、俺虫とか触れない・・・・・・」
「女かよ!」
「きゃっ!? ちょっ、服の中虫! 虫入っちゃったみたい! ケンジくんとってー!」
「ラブコメ的ハプニングかよ!」
まあ令和キッズからとは思えないツッコミを受けつつも、シオはケンジとともに虫捕りを無事(?)完遂して家へ帰ってきた。
家へ帰るとちょうどお風呂が沸かしてあったので
「おう相棒! 一緒に入ろうぜ!」
ケンジにそう言われて、一緒に入ることになった。
そして、脱衣所で服を脱いでいよいよ入ろうという段になったのだが・・・・・・
その時になって、なぜかケンジが狼狽し出した。
「お、お、お・・・・・・」
「ん? お?」
「お、お前、女だったのかよ!!!!???」
狼狽したケンジは、シオを指差してそう叫んだ。
ラブコメ的ハプニングかよ。
「え? あー・・・・・・まあ、女の子と言えば女の子だし、おじさんといえばおじさんってことになるかな・・・・・・」
「は? 何言ってんだよ・・・・・・」
ケンジは混乱する。そして、顔を真っ赤にして横を向いてしまった。
「い、いいからタオルで体を隠せよ・・・・・・!」
「え? いや、別に家のお風呂でそんなことしないでしょ・・・・・・テレビの温泉レポートじゃないんだからさ・・・・・・」
「隠さないなら出てけよぉ・・・・・・」
真っ赤になってそう言うケンジを見て、シオはぴーんときた。
(あ、そっか。この子照れてるんだな・・・・・・)
そして、こう思った。
(ふーん・・・・・・ちょっといじわるしてみよっかな?)
シオは、にやーっとメスガキチックで小悪魔的な笑みを浮かべた。
「えー? なんでなんで? せっかくだから、おじさんケンジくんと一緒に入りたいな!」
「おじさんってなんだよ・・・・・・! いいからとっとと──って、目の前に立つなよ!」
「一緒に洗いっこしようよー! おじさんがケンジくんを洗って、ケンジくんがおじさんを洗うの!」
「誰がやるかあ!!」
で、まあ結局真っ赤なケンジと一緒にお風呂に入って、そのあとも・・・・・・
「ねーねー、何みてるの?」
「ちょ、近寄るな! いい匂いするから! なんかいい匂いするから!」
可哀想な(?)ケンジくんはシオにいっぱい揶揄われてしまったのであった。
そして、シオの方も──
「ずるいずるーい! 私もシオくんとお風呂に入りたいんだけど!」
「ええ・・・・・・?」
夢枕に立ったネルと一緒に夢の中のお風呂に入ることになって、今度は逆にシオの方が色々いじられて意地悪されてしまいましたとさ。めでたしめでたし・・・・・・
最終回後のおまけです