TSしたからバ美肉ということにして配信をしてみた   作:大崎 狂花

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第3話 女の子っぽい服とホラーゲーム

 シオはマンションの廊下を歩く。自分が住んでいるマンションではなく、別のマンションだ。そこの廊下を歩いてとある部屋の前で立ち止まり、インターホンを鳴らした。

 

「どうぞー」

 

 許可が出たのでシオは遠慮せず部屋の中へ入っていった。

 

「来たよー!」

 

 シオがそう声をかけると、ペンタブに向かってイラストを描いていた部屋の主が振り返った。

 

「おーっすシオちゃん」

 

 彼女の名前は結城ユキ。シオのお母さんだ。と言っても、本当のお母さんではなくVの方のお母さんだ。けっこう売れっ子のイラストレーター、結城ユキだ。今はTシャツにドルフィンパンツという気の抜けた格好をしているが、普段は派手な服装をしていて、金色に染めたショートカットの髪と相まってよくギャルみたいに見られがちだが、実際は漫画も読むしアニメも見るオタクだ。実在したのか? オタクに優しいギャル‥‥‥

 

 で、シオは彼女からVtuberになる上で色々とお世話になった。お母さんになってもらうだけではなく必要な機材とか、注意事項など教えてもらった。それだけでなく女子として必要なスキンケアの方法や髪のケアの仕方などまで教えてもらった。Vの先生というだけではなく、女の子としての師匠でもあるのだ。

 

「どうせ忙しいだろうと思って、差し入れ持ってきたよ」

 

「あー、ありがと。そこおいといて」

 

 もともと、シオが女性になる前からユキとは仲が良かった。男女の関係とかではなく普通に友達という感じだ。ただ、最近はさらに仲が深まった。これも性転換の影響だろう。同じ性別になったことでさらに親密になって、友人から親友へとレベルアップした。

 

「‥‥‥よし」

 

 ユキはそう呟くと椅子から立ち上がってシオのところに行った。シオはそこら辺にあった座布団の上に座っていた。

 

「それでどう?最近の調子は」

 

「ああ、うん。いい感じだよ。なんか男だった時より人に見られるようになった気がするけど‥‥‥ここに来る間もものすごい視線を感じたし‥‥‥」

 

「あー、それは見るよねえ。わかるわかる」

 

「わかるわかるってなんだよ‥‥‥まあ、あとやっぱり体力が落ちたかな。あ、それと男子だった時より手足とかが冷えやすくなったね」

 

「あー、やっぱり?」

 

「だからまあ‥‥‥ユキちゃんにもらったあのもこもこのスリッパともこもこのパジャマも役に立ったよ。まあ、元男子の身であんな可愛らしい格好をするのはひじょーに屈辱的なんだけれども‥‥‥」

 

「あとで資料用に写真ちょうだい」

 

「お前ね‥‥‥」

 

 シオは呆れた表情で言った。

 

「ていうか、シオちゃんさあ‥‥‥」

 

「なに?」

 

「私の家までそのカッコで来たの?」

 

「そうだけど‥‥‥何か変だった?」

 

「いや、変じゃないけど‥‥‥それって男だった時とあんまり変わらなくない?」

 

 シオの今の格好はTシャツにパーカー、それにジーンズという格好だ。男物だとぶかぶかすぎて着れないので一応レディースではあるわけだが、男だった時の格好とそこまで大差ないように見える。

 

「もー、私がプレゼントしてあげた服はどうしたの?」

 

「いやだってあんな女の子女の子した服恥ずかしいし‥‥‥というか、あれは露出が多すぎなんだよ!」

 

「ふーん‥‥‥でも、せっかく女の子になったんだから、ちゃんと可愛い服も着た方がいいと思うけどなあ‥‥‥というわけでちょっとした荒療治をさせてもらうね」

 

「は?」

 

 ユキはすっと立ち上がるとシオに近づいてきた。

 

「は? ちょ‥‥‥ちょ、おい!」

 

 シオの抵抗むなしく、ユキはシオを押し倒すとポイポイポイと服を脱がし始めるのだった。

 

 ‥‥‥

 

「ちょっと‥‥‥こんな可愛いの似合わないって‥‥‥こんな清楚乙女みたいな服‥‥‥」

 

「いいじゃんいいじゃん似合ってるよ!」

 

 シオはユキに着せ替えさせられ、白いワンピースにジャケットという格好になっていた。長く綺麗な黒髪と相まって清楚系のお姉さんに見える。さながら、夏休みに田舎で出会った美人お姉さんといった感じだ。ここにショタがいたらおねショタが始まりそうな雰囲気を感じる。

 

「いや‥‥‥似合わないって、こんな服‥‥‥」

 

「いや似合ってるって! めちゃくちゃ似合ってるよ! 似合いすぎて‥‥‥似合いすぎてなんか腹立ってきた‥‥‥」

 

「また!?」

 

「前にも言ったけど、これで胸が大きかったらコロしてるからね?」

 

「コロさないでくれ‥‥‥」

 

「よし、ムカついたから下着も女性用にしよう」

 

「は!?」

 

 シオは下着も女性用にされた。そしてここに来るまでに着ていた服を隠されたので、この夏休みのお姉さんスタイルで帰るしかなくなった。

 

 こうして、顔を赤くしてどこかもじもじとしながら、慣れないスカートでシオは街中を歩いていくことになるのであった。

 

「うう‥‥‥スカートって頼りない‥‥‥女子用のパンツもなんか頼りない‥‥‥女子はなんでこれで平然と生活できてるんだ‥‥‥」

 

 シオが女の子になってから割と日は経っている。だが、今までスカートは穿いてこなかったし、女性ものの下着とかを穿いたのも今日が初めてだ。だからその新感覚に戸惑っていた。

 

 元男として、こんな格好で街中にいるのは恥ずかしいことこの上ない。シオは美少女だ。だから道行く人からめちゃくちゃに見られているのが余計恥ずかしさに拍車をかけていた。

 

 で、自然と内股になっていたし、なんとなく内気な女の子っぽい雰囲気が出ていたのだろう。

 

「へいへい、そこの彼女、ちょっとお茶しない?」

 

 ニヤニヤした顔をしたチャラついた男たちが2、3人、シオに声をかけてきた。

 

「‥‥‥?」

 

「いや君のことだよ! お姉さん綺麗だねー。なあ、俺たちとちょっと遊んでみない?」

 

 シオは一瞬なぜこの男たちが自分に声をかけてきたのかわからなかった。だが、ちょっと考えてみて気づいた。

 

(あ? ひょっとしてこいつら、俺をナンパしてんのか?)

 

 当然ナンパなんてされたことはなかったからわからなかったが、どうやら、この男たちはシオのことをナンパしてきているらしい。

 

(今時なんてオールドタイプなナンパの仕方だよ‥‥‥こいつら俺が実は男だって知ったらどんな反応するんだろうか‥‥‥)

 

 そう思うと、なんかこの男たちが哀れにすら思えてくる。だが、この状況がけっこうマズい状況であることに変わりはない。シオは当然、この手のことに慣れておらず、ナンパの上手い躱し方など知らない。

 

(ユキにラインでもして助けに来てもらうか? いや、しかしユキのマンションからはけっこう離れてるし、それまで時間稼ぎ出来るかどうか‥‥‥)

 

 と、シオはこの場をどう切り抜けるか考えていたが、当然男たちがその間待ってくれるわけはない。

 

「ほら、絶対に後悔はさせないからさ。なっ?」

 

「ちょ────」

 

 男の1人がシオの手首を握って、無理やりどこかへと連れて行こうとする。

 

(やばい、振り払えない────!)

 

 男の時ならともかく、性転換して力も女の子並みになったシオには振り払えない。マズい、と焦るシオの前に────

 

「やめなよ、その子嫌がってるじゃんか」

 

「あ?」

 

 助けが現れた。

 

 ジャージのようなズボンを穿いて、パーカーにTシャツ、キャップを被ったショートカットの人物が助けに入ってくれた。一見すると男子のように見えるが体つきで女子だとわかる。そしてイケメンだった。

 

 そこから先は手早かった。そのナンパ男たちはなおも食い下がってきてその助けてくれた女の子ごとどうにかしようとしたのだが、その子が「これ以上しつこくするようなら警察を呼ぶ」と言ってスマホを取り出したためすごすごと引き下がっていった。こうして、シオはこのイケメン少女の助けのおかげで無事ナンパから生還することができたのである。

 

「あ、あの!助けていただいてありがとうございます‥‥‥」

 

 シオが少女にお礼を言うと、少女はパーカーのポケットに手を突っ込みながら

 

「今度からはもっと気をつけた方がいいよ」

 

 と言ってシオの顔を覗き込んで

 

「あんた、すっごく可愛いんだからさ」

 

 何気ない感じでそう言った。

 

「‥‥‥はえ!?」

 

 シオの顔が一気に紅潮していく。

 

「じゃあな。気をつけてまっすぐ家に帰れよ」

 

 ひらひらと手を振り、颯爽と去っていくその少女を。

 

「イケメン女子‥‥‥!」

 

 シオはぽーっと恋する清楚乙女みたいな表情で見送るのだった。

 

 ◇

 

「ってことがあったんだよ〜!!!」

 

 そしてその夜。

 

 きゃあきゃあ言いながらそのイケメン女子のことを視聴者に話すシオの姿があった。ナンパされたというのは変なので、壺を売りつけられそうになっていたところを助けられたということにした。

 

「生でイケメン女子見ちゃったよ〜!!! というか生でイケメン波動浴びちゃった!!」

 

『イケメン波動ってなんだよ』

 

『まーたキョウカおじさんがイケメン女子にメロついてるよ‥‥‥』

 

『声が高くなってるな。乙女の声してる』

 

『乙女おじさん可愛いねえ』

 

「すっごいかっこよかった〜!! 顔が良かった!」

 

『顔かよ』

 

 しばらくきゃーきゃー言いながらイケメン女子について話していたわけだが、やがて話を終えるとゲームを起動した。今日は雑談配信ではなくゲーム配信だからだ。もっとも、もう30分以上イケメン女子について話していたわけなんだが‥‥‥。

 

 まあとにかく、ようやくゲームが始まった。今日のゲームはホラーゲームだ。

 

「あの‥‥‥時間稼ぎしてたことからも薄々察してると思うんだけど‥‥‥実は俺、ホラー苦手なんだよね」

 

『そうでしょうね』

 

『おっしゃる通り、大体察してました』

 

『普通のゲームのそこまででもないホラーシーンとかでも、けっこうびくびくしてるもんね』

 

「そうなんだよ〜! だから、もしかしたらチビってしまうかもしれない‥‥‥」

 

『おじさんがチビるか‥‥‥興奮すべきかどうか、判断に迷うな』

 

『ホラーよわよわでかわいいねえ』

 

 で、まあ覚悟を決めて始めたわけなのだが‥‥‥

 

「きゃああああああ!?」

 

『めっちゃ綺麗な女の子の悲鳴出たな』

 

『やっぱりおじさんは女の子なのでは?』

 

『てかこれまだ序盤なんですけど‥‥‥大丈夫かな‥‥‥』

 

「ひゃっ!? な、なんだ猫か‥‥‥」

 

「わああああ!? なんか血だらけの女の子いるよ!?」

 

「ひいっ!」

 

「きゃああああああ!! にんじんのお化けだああああああ!!」

 

『にんじんのお化け? なにい?』

 

『なんかギャグ漫画みたいなの出てきたな‥‥‥』

 

『これでも怖がるのか』

 

『もうなんでも怖くなっててかわいいねえ』

 

 こんな状態だったため、次第にコメント欄がシオのことをよしよしし始め、それはさながらホラーに怯える幼女をあやすようだったという。

 

 そして、これにより無門キョウカおじさん女の子説を唱える人間がまた増えていくのであった‥‥‥。

 

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