TSしたからバ美肉ということにして配信をしてみた   作:大崎 狂花

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第6話 内気な子と仲良くなろう!①

「ネタがない!」

 

『え?』

 

『いきなりどうした‥‥‥』

 

『最近急に始まること多いよね』

 

 配信開始早々、いきなりそんなことを言い出したシオに、リスナーは困惑した。今日は特に何もない、雑談配信のはずなのだが‥‥‥。

 

「いやね、俺今ラブコメ書いてるでしょ?」

 

『ああ、書いてるね』

 

『ハーレムのやつじゃなくて、純愛のやつ?』

 

「そう、純愛のやつ」

 

 シオはちょっとえっちなハーレムラブコメも書いているわけだが、それとは別に純愛もののラブコメも並行して書いている。あまり悪い人間が出てこないような作品で、平和な気持ちになりたい時におすすめとされている、そちらもけっこう人気な作品なのだが‥‥‥。

 

「それのネタがねえ、思いつかないんだよ!」

 

『作家の悩みだね‥‥‥』

 

『もう九巻にもなるし、ネタも尽きるか‥‥‥』

 

「そう! 九巻までなんとか絞り出しながらやってきたわけなんだけど! さながら終わりかけの歯磨き粉のように絞り出しながらやってきたわけなんだけど! 流石にもうネタも尽きてきてるわけなんだよ!」

 

『う、うん‥‥‥』

 

『勢いすご』

 

「というわけで! 今日の配信はネタ出し配信です! みんなは何かヒントになるようなものを出してほしい! 俺がそれを広げていくから!」

 

『OKわかった』

 

『俺らはキョウカおじさんの頼みならなんでもする犬だからね』

 

「自認犬の人いる‥‥‥ま、でもそういうことなら遠慮なく頼もうかな。何か良さそうなヒントを頼むよ!」

 

『おじさんのホラー配信を文字起こしするというのは? 可愛くて面白いから最高だよ?』

 

「いや、それはラブコメじゃなくて俺の記録だし‥‥‥」

 

『じゃあ雑談配信は?』

 

「それもラブコメじゃないし! というか承認欲求すごい人みたいになるから!」

 

『おじさん自身の恋愛体験をネタにしてみるっていうのは?』

 

「おじさんには恋愛体験がないから‥‥‥」

 

『ああ‥‥‥』

 

『よかった。角は折れなかった‥‥‥』

 

『おじさんのユニコーンおるな』

 

「おじさんはそもそもユニコーンに乗れないでしょ‥‥‥」

 

 とりあえず、リスナーがコメントに書いていく色々なヒントを元に、シオはネタを考えていく。

 

「んー、ヒロインの可愛さがどうやったら出るかなあ‥‥‥」

 

『あのヒロインって、天然系だったよね? なら自分の失敗体験とかを元に何かエピソードを書いてみたらどうかな?』

 

「あー、確かに。それいいかもね。んー、天然系ヒロインがやりそうな失敗体験か‥‥‥何かあったかな‥‥‥」

 

『そういえば昨日間違えてえっちなASMRを爆音で流しちゃったんだよねー、電車で』

 

「おお‥‥‥天然系ヒロインが絶対にやらなそうな失敗談だね‥‥‥ご愁傷様です‥‥‥あっ、そういえば」

 

 シオは何か思い出したようである。

 

「そういえば雨の日に大声で歌を歌いながら帰ってたら、後ろから人が歩いてきてるのに気づかなくて聞かれちゃったんだよね‥‥‥」

 

『あるある』

 

『あるあるだ』

 

『あるあるだけどキョウカおじさんがそうなってるの想像するとちょっと萌えるね』

 

「萌えるかな‥‥‥? あと、雨の日に傘を剣みたいにして構えてたらまた後ろから来た人に見られてさ‥‥‥」

 

『かわいい』

 

『小学生みたいな失敗エピソードかわいいね‥‥‥』

 

「ちょ、もー! みんなも同じようなのしたことあるでしょー!?」

 

『俺らも同じようなのしたことあるけど、おじさんがやってるの想像するとかわいいんだよ‥‥‥』

 

 と、まあそんなこんなでなんとかシオは視聴者の助けもあってなんとか良さそうなアイデアをいくつか思いつくことが出来た。

 

「さてと‥‥‥みんなありがとね。なんとか形になりそうだよ」

 

『良かった良かった』

 

『困ったことがあればお呼びください。私はあなたの忠実なる犬です』

 

「犬の人もありがとね。‥‥‥よし。今日はこれで配信終わりにしようと思うけど、何か聞きたいこととかないかな?」

 

『キョウカおじさんはコラボ配信とかはしないの?』

 

「コラボ配信か‥‥‥そういえばあんまりしたことないねー。前にユキお母さんの音声を流したことはあったけど、あれはコラボじゃないしね‥‥‥」

 

『そういえばおじさんってユキお母さんとけっこう仲良いよね』

 

「そうだね。けっこう仲良いよ。親友だね」

 

『油断しないようにねキョウカおじさん。襲われないように』

 

「普通心配する方逆じゃない‥‥‥?ま、とにかく今のところはコラボをする予定はないかな‥‥‥?Vでそこまで仲良い人もいないしね。機会があったら、いつかしたいな」

 

 と、まあその日の配信はそんな感じで終わった。

 

 そして、その翌日────

 

「ちょっといい?キョウカちゃん。コラボして欲しい人がいるんだけど」

 

 朝早くに電話してきた、Vのお母さんの結城ユキからそんなことを言われた。

 

「え‥‥‥?」

 

「コラボして欲しい人がいるんだよ。紹介するから超速で私のマンションまで来て。じゃあねー」

 

 そう言ってぷつっと電話を切られた。用件だけ言って電話を切るとは‥‥‥勝手なやつである。

 

 仕方ない。とりあえず、シオは急いで着替えてユキのマンションへと向かうことにした。

 

 ‥‥‥

 

「来たよー」

 

 言われた通り超速で駆けつけたシオはそう言ってインターホンを鳴らす。

 

《どうぞー》

 

 インターホン越しにそう言われたので、遠慮なく中へ入ると、

 

「おーす。待ってたよー」

 

 部屋の真ん中に立っているユキが、そう言ってシオに手を振った。そして──

 

「‥‥‥」

 

 ひょこっと、ユキの後ろから顔を出した人物がいた。

 

「ん?」

 

 ユキの後ろから顔を出した人物。その子は水色のショートカットの髪に水色の目をして、パーカーに半ズボン、半ズボンの下に黒いタイツを穿いた非常に可愛らしいパッと見中学生くらいの人物だった。小動物みたいに可愛らしい子だな、とシオは思った。

 

「紹介するよ、キョウカちゃん。この子の名前は立原キリカ。私の絵描き友達の1人で、最近Vtuberとして配信も始めたんだよね」

 

「あっ、そうなんだ」

 

「それでね。この子はVになってからまだ一度もコラボをしたことがないんだよ」

 

「そうなんだ」

 

「キョウカちゃんもコラボとかしたことないでしょ? だから、ちょうどいいと思ってお互いの初コラボ相手になってみたらいいと思ったんだけど‥‥‥」

 

 シオとユキはキリカの方を見た。キリカは警戒の表情を浮かべながらユキの後ろに隠れている。

 

「‥‥‥見ての通り、このキリカちゃんは極度の人見知りでね」

 

「なるほど‥‥‥」

 

 今こうしてユキの後ろに隠れているのも、今までコラボ配信をしてこなかったのもそれが原因らしい。そして、当然のことながらシオとコラボ配信をしようというユキの提案にも渋い顔をしているらしいのだ。

 

「えっと‥‥‥」

 

 シオとしては、せっかくのコラボ配信をするための機会だ。できればこの機会を逃したくない。しかしどうしたものだろうか‥‥‥。

 

 シオがそんなふうに思い悩んでいると、ユキの後ろからひょこっと顔を出したキリカがシオを指差して言った。

 

「‥‥‥女の人だ!」

 

「ん?」

 

「ちょっとユキさんどういうことですか! 女の人ですよ! キョウカさんは男の人じゃなかったんですか!?」

 

「お?」

 

 シオの今の格好はもこもことしたセーターにジーンズ。確かに女子に見える。まあ、シオの今の体は女子なわけだし、基本格好に関係なく男には見られないのだが‥‥‥。

 

「いやー、キリカは特に女の人が苦手らしくてね。緊張するみたいなんだよ。私は絵描き友達だし、慣れてるから平気みたいなんだけどね」

 

 ユキはそう言った。そしてこう続けた。

 

「まあこう見えてもキリカちゃんは男の子だしね」

 

「えっ、そうなの?」

 

 キリカはかなり可愛らしい容姿をしている。一見しても二見しても三見しても、女の子にしか見えない。ちょっと喉仏が出ているので、辛うじて確かに男だと判断できたものの、言われなければ普通に女子だと思っていただろう。

 

「ちなみに中学生くらいに見られがちだけど、ちゃんと大学も出てる大人だからね。お酒も飲めるし確定申告もしてるよ」

 

「嘘お」

 

「ほんとほんと」

 

 キリカは人見知りだし、引っ込み思案なので男子は当然のことながら女子とは全く話をしてこなかったらしい。だから女子を目の前にすると特に緊張してしまうらしいのだ。

 

「あっ、一応言っとくとキョウカちゃんみたいな事情(性転換病)があるわけじゃないからね」

 

 どうやら純粋培養の男の娘らしい。

 

 ユキはとりあえず、後ろに隠れるキリカのことを宥めにかかった。

 

「ほら、キリカちゃん怖くない、怖くないからねー‥‥‥この人は女子っぽく見えるけど、女子じゃないから。れっきとしたおじさんだからねー‥‥‥」

 

 ユキは宥めながらシオに向かって言う。

 

「ちょ、シオちゃん! 何かおじさんっぽいこと言って!」

 

「は!? え、えーっと‥‥‥ふ、ふとんがふっとんだ?」

 

「あ、ちょっとおじさんっぽいかも‥‥‥」

 

「お、ちょっと出てきた! もうちょっと! もっとおじさんっぽいこと言って! はい!」

 

「え!? えーっと‥‥‥アルミ缶の上にあるみかん!」

 

「あれ? おじさんかも‥‥‥」

 

 キリカは身を乗り出してきた。シオはにっこりと笑いながら、それを迎え入れるように両手を広げた。

 

「うんうん、おじさんだよー、おじさんだからね‥‥‥。ほら、安心しておじさんの胸に飛び込んでおいで」

 

 キリカはさらに身を乗り出してきたのだが、しかしすぐにまたひゅっと引っ込んでしまった。

 

「いや手が綺麗すぎる! こんなスベスベした綺麗な手のおじさんなんているわけない!」

 

「それ、そっくりそのまま君に返すよ‥‥‥」

 

「大体、全然おじさんになんて見えないんですよ! どう見ても美人お姉さんなんですから!」

 

「いやだからそれはこっちのセリフなんだけど!?」

 

 そして、再び隠れるキリカ。それをどうしていいかわからず見つめるシオ。

 

「‥‥‥」

 

「‥‥‥」

 

 なんかけっこう難しそうな感じである。

 

 で、そんな2人を見るに見かねてか、ユキがこんなことを言い出した。

 

「もー埒が明かない! このままじゃ埓が明かないから!」

 

 ユキはパンパンと手を叩いて、

 

「キョウカちゃんとキリカちゃん、2人だけでお出かけしてきて! そうすればちょっとは仲が良くなるだろうし!」

 

 そう提案した。

 

「は?」

 

「い、いやちょっと待ってくださいよ! そんなの──」

 

「あーあー、意見も文句も聞かないから! これはもう決定事項だから! いいね!?」

 

「「ええー‥‥‥」」

 

 こうして、強引な流れでシオは内気な子と仲良くなるために2人でお出かけをすることになったのだった。

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