イナズマイレブン 元帝国メンバーの記録日誌 作:帝国だと源田が好き
サッカー技術を磨き、南雲原サッカー部としての動きを完成させ、いよいよ西ノ宮中と戦う為にと準備を始めた南雲原サッカー部には重苦しい空気が漂っていた。
「…まさか、西宮中に円堂ハルと月影蓮が助っ人で来るとはね…」
「帰属校制度…試合前に雷門中と西ノ宮中が提携を結んで、選手派遣を行なった訳ですね」
「そもそも円堂ハルに月影蓮って雷門の主力ツートップだろ!?許されるのかよそれって!」
「許されますね、私が調べた限りですけど…伝説となった雷門イレブンでも選手の補強は行われています。前例がある以上は批判するのはお門違いでしょう」
木曽路の最もな叫びを、井馬里の鋭い声で反論する。
「ま、乗れる波なら乗るってモンでしょ」
「ふっ…逆に言えば敵は自らの捉えられるテリトリーの範囲が増えている…と慢心している事だろうね」
井馬里の言葉に同意する様に濱南、妖士乃が続ける。
「敵が強いなら、その分乗り越えた瞬間は気持ちいいもんだろ?ウジウジ悩むより、どうするかで考えようぜ」
「そうだね、どんなに強い相手でも弱点はある…雷門の選手をどうにかする算段は笹波君に任せて、私達で他をどう攻めるか…で考えて行った方が良いんじゃないかな?」
星美の言葉に続いて、古手打が具体的な考えを伝える。
「…確かにな、雷門の二人が強いなら二人を主軸にしたプレイをする筈だ」
「パスカット……そもそもボールを取らせない様にパス回しとか…?」
「パスカットの方が現実的だと思うな〜…そもそもハルと蓮にボールが渡ったらリオン以外に取れそうなの居ないし」
「なら俺がパスカットしてボールを維持しつつ…取られそうなら前にパスするのが現実的か…?」
桜坂、忍原、木曽路、柳生の四人はそれぞれ意見交換をする。
そんな中、笹波はどうすれば良いかを考え、フィールドプレイヤーとなるリオンを除いた残りの南雲原メンバーと百道も意見交換に参加する。
「……」
それをリオンは静かに見守っていた。
三軍とはいえ帝国メンバーであったリオンは一度だけ情報収集+交流試合として円堂ハルと月影蓮の率いる雷門中のメンバーと戦った経験がある。
しかし、その経験を話してしまえば、なら経験者に聞く方が早いと自らで考え導き出す機会を喪失してしまう。その為にリオンの出来る事はただ静かにその場に居る事だけだった。
「リオン先輩も話しましょうよ〜、西ノ宮中の試合は余程の事がない限り出て来ないんですから」
「…そうだね、それじゃあ、僕の考えられる作戦だけれど…」
木曽路の呼びかけに、リオンは薄く笑って会話の輪へと入る。
話し合いの後、笹波から暫くの間作戦を考える為に時間が欲しいと言われたメンバー達は自主練としてパスカットとボール維持、各々の必殺技の制度を上げる練習をする事にした。
そして、練習を終え下校となった頃
リオンは一人、校門から離れた木陰で休んでいた。
「……はぁ〜…」
その様子は礼儀正しい少年、というものではない。
その綺麗な髪がボサボサになるのも構わずに頭をかき、少し細い目は開かれ、若干吊り目になっている。
「…南雲原…サッカー部がないと思ってたんだけどな」
そう呟くリオンにとって、サッカーとは窮屈なモノだった。
サッカーはそもそもチームプレイが前提にある。特出して強い個人がいた所で数で押さえ込まれれば幾ら強かろうが意味がない。
野球部vs南雲原サッカー部(仮)の試合でブロックザキーマンを使われ、フィールドで孤立していた柳生先輩がいい例である。
しかし、リオンには抑え込まれようが強引に突破できる技術と強さがあった。
その為、強さだけであれば一軍にも劣らなかった。しかし帝国のサッカーとは綿密な戦略と、それに合わせて動ける洗練された集団が肝になる。
そんな帝国に置いて、集団の行動を乱す様なプレイヤーは必要ない。
故にリオンは一軍のベンチから三軍へと叩き落とされた。
三軍へと落とされる前、せめてもの情けとして帝国式のメンタルトレーニングを受け、合格出来るのならベンチに残留出来ると監督から伝えられた。
一軍のメンバー…当時まだ一年だった参募、星見沢、穂村の三人もリオンが残れる様にと本来ならダメな事だが、監督へ精神面の強化として頼み込み、一緒に受けた。
しかし、結果は三人はメンタルトレーニングをクリアし、リオンだけが不合格……それと同時に『仮面道化』と言われていた瞬時の切り替えプレイが不安定になった。
『……やはりな、お前は帝国の一軍に相応しいプレイヤーではない。三軍へ降格する』
今でも頭に残る当時の監督の声は、リオンにとってはトラウマだ。
その後、苛立ちとメンタルトレーニングの影響で普段のプレイが出来なくなったリオンは三軍の監督の采配によってエースに据えられるも、荒んだプレイにより連携等する事も無く、三軍での相手チームはリオンの敵にさえならなかった為に、一人で相手チームを蹂躙する様な試合ばかりをしていた。
そんなプレイを繰り返した結果、帝国サッカー部から退部措置を取られた。
そして、退部措置により荒んでいたリオンの心は限界を迎え、自室に引き篭もる様になった。
(あぁ…クソ…なんでこうなったんだ…!)
引き篭もったリオンは一人考えた、何故こうなったのかを
そして、原因は自らのその性格にあると決め付けたリオンは元の性格とはかけ離れた新しい『仮面』を付ける事にした。
そして、そんなリオンを心配した両親の計らいで転校する事となり、帝国学園で二年生に上がる前に、父の実家があり、サッカー部が存在しない南雲原中へ転校する事になった。
そして南雲原に転校し、二年に上がった頃に笹波からスカウトを受けた。
自らの仮面をしっかりと付けれていたリオンは、新しい視点とまだ自らに足りない何かを見つける為に、必死にリオンの過去プレイスタイルや経験をサッカー未経験者の多い南雲原サッカー部へ生かしたい、サッカー部に所属するとしても練習の時にアドバイスをして貰い、試合中のリオンは基本的にベンチな為に嫌いになったサッカーをする事は少ないと話す笹波へ、リオンは二つ返事で了承した。
「…ホント、どんな巡り合わせしてるんだか」
そんな過去を思い出して、リオンは木陰で笑う
「あら、珍しい人がこんな所にいるわね」
そんなリオンへ話しかける生徒が居た。
「あぁ…こんにちは、鞘先輩」
「ええ、こんにちは…もう下校時間なのに、リオン君はこんな所で何しているのかしら」
「やっと南雲原中に慣れた所にサッカー部にスカウトされて、経験者だから色々とアドバイスしたりで疲れたんで、休憩してたんですよ」
リオンの言葉に、鞘はジッと見つめ小さく呟いた
「…やっぱり強引にでも剣道部に入れるべきだったわね」
「……何か?」
「…リオン君、剣道部に体験に来ていた時があったでしょ?あの時に強引にでも剣道部に入れていたら良かったかも…って、少し後悔しているだけよ」
そう言って、鞘先輩はニコリと笑う
「…そうですか」
「…ええ、筋もよかったけれど、南雲原中に慣れていないと思って強引なスカウトはしなかったの……二年生になって、南雲原中に慣れたら正式にスカウトする予定だったけど……今の貴方は、南雲原中に転校して来た時よりも、表情も雰囲気も良くなっていると思うわ」
そう言うと鞘先輩はリオンとの距離を詰め、そのボサボサなままの髪を両手を使って整え始めた。
「…それと、このボサボサの髪は何?せっかくの綺麗な髪が台無しよ」
「…ストレス溜まった時って頭を掻きむしりたくなる時ってありませんかね?」
「…ないわね、竹刀を振っていればストレスは何処かへ消えて行くから」
「鞘先輩は強いですねぇ…」
「ええ、大会にどれだけの結果を残しているか…リオン君も知っているでしょう?」
「…いや、剣道の強さじゃなくて精神面の強さの事を言ってるんですよ」
「あら、そうだったの」
そのまま、リオンは髪を鞘先輩のされるがままにし、数分もしない間にボサボサだった髪は綺麗に整えられた。
「これでいいわね」
「お手を煩わせてすいません」
「いいのよ、好きでしている事だから」
そう言って鞘先輩は立ち上がり、リオンに背を向けて校門へと歩いて行く
「…もし機会があったら、貴方とサッカーをしてみたいわね」
「…機会が有れば誘いますよ、約束します」
「ええ、楽しみにしているわ」
そう言って、鞘先輩は一人歩いて行った。
「…まぁ流石にそんな機会、ないと思うけど」
そんな言葉を、リオンは小さく呟いた。