イナズマイレブン 元帝国メンバーの記録日誌   作:帝国だと源田が好き

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第6話

 

そして翌日、北陽との試合となった。

 

「いよいよ北陽との試合ですが、前半戦は春雷の使用は禁止します」

 

「なんでだ?春雷ならあのキーパーの守りを抜ける可能性が高いだろ?」

 

桜咲の言葉に、笹波は目を逸らして答える

 

「それでもです。前半戦は春雷を使わずに行きますよ」

 

前半戦の開始前、笹波からの指示により、春雷の使用が禁止された。

 

春雷という唯一の突破手段を封じた状態のまま始まった前半戦は、真っ先にエースストライカーである空宮が南雲原サッカー部の守備を強引に突っ切り、必殺技であるサンシャインブレードを放ち、得点を取った。

 

その後、再びキックオフから攻めに転じようとした忍原から品乃がボールを奪い、カバーしようと柳生がボールを取りに行くも

品乃が目の前でボールを高く蹴り上げ、手を突き出した。

 

「【パトリオットシュート】」

 

ボールからジェット噴射する様に炎が噴き出し、ゴール目掛けて飛んで行く。

 

「なんだそりゃぁ!?」

 

柳生は咄嗟に飛んで来るボールに蹴りを入れて逆に蹴り返そうとするも

 

「無駄だ、今の状態では蹴り返す事は出来ない」

 

品乃の言う通り、蹴り返そうとしたものの、勢いに負けて吹き飛ばされる。

 

「さ、させない…!!」

 

古道飼が勇気をふり絞り、ボールの前に立ちその巨体で防ごうとするも

 

「うわぁぁっ!?」

 

吹き飛ばされ、着地をミスしたのか、足を挫いた。

 

「っ…!【氷結の舞】」

 

目の前で起きた事に一瞬だけ、四川堂の身体は古道飼の元へ行こうとするも踏み留まり、迫るボールに対して必殺技を放ち、何とか止める事に成功する。

 

「四川堂、止めました!…古道飼の身を挺したブロックが功を奏したようですね」

 

「しかし、どうやら足を負傷した様です…大丈夫でしょうか?」

 

実況では、四川堂と古道飼の活躍を讃えつつも、古道飼への負傷を心配していた。

 

「古道飼君!!」

 

「立てるかい?」

 

南雲原メンバーが集まり、身長の高い柳生と桜咲が肩を貸して古道飼を立たせる。

 

「…っ…ごめん…足を強く捻り過ぎたみたい…ちょっと立てそうにないや…」

 

「そうか…じゃあベンチに運ぶぞ」

 

「ごめん…」

 

「気にすんな、酷い怪我じゃないだけ良かったな」

 

前半終了のホイッスルが響き、南雲原、北陽それぞれがベンチに戻る

ベンチで背伸びをするリオンを、北陽の監督である下鶴は冷静に見ていた。

 

「……負傷者が出たとなれば、当然ベンチから選手が代わりに出る事になる…」

 

ベンチでは、百道から応急処置を受ける古道飼と、笹波から何かしらの説明を受けるリオンの姿があった。

 

「……ノア・リオン…『仮面道化』と呼ばれた瞬時の切り替えによるプレイ、使用する必殺技の変化……期間が短いとは言え帝国の一軍のベンチに入っていた選手だが…」

 

下鶴は集まった北陽サッカー部のメンバーへ指示を出す。

 

「プラン変更、後半からはプランαだ。タクティクスを使用し南雲原から追加点を奪う」

 

「…空宮、作戦変更だ。プランα」

 

「…了解…」

 

負傷した古道飼の代わりにフィールドに立ったリオンを見て、空宮は試合開始前の事を思い返した。

 

 

〜〜〜〜

 

「南雲原サッカー部はデータが少ない…戦術と各選手の使う必殺技が明らかになっているが、一番注意しなければならないのは、ノア・リオンだ」

 

下鶴のその言葉に、空宮は思い出す様に首を捻るも、しっかりと覚えていないのか出て来ない為、品乃を見る

 

「……元帝国の選手、元々は一軍のベンチ選手で…何かをキッカケに三軍落ちた…しかし一人で相手チームを蹂躙する程の活躍が出来る選手……でしたね」

 

品乃の言葉に、下鶴は頷き、ホワイトボードに書き込んで行く

 

「これが、現状判明しているノア・リオンの扱う必殺技だ」

 

「……【デーモンカット】、【デススピアー】、【マボロシショット】」

 

「…【イリュージョンボール】、【皇帝ペンギン7】、【ダークトルネード】」

 

「…基本的に帝国由来の技を使うみたいですね」

 

「あぁ、しかもロングシュートが多く、攻めも守りも得意だ」

 

「…しかもこれでも…弱体化してる……でしたっけ?」

 

騎士部の質問に、下鶴は頷いた。

 

「そうだ、本来ならこれ以外の必殺技も使い、今自分が居る場のポジションに合わせた必殺技を瞬時に切り替え、最適な必殺技で切り抜けて来る」

 

「…相手したくねぇ…」

 

「幸いなのは、リオンが出て来る時は負傷者が現れた時に限られている事だ…恐らく南雲原側としては、極力リオンの力を借りずに試合をする事に重要視しているんだろう」

 

「…確かに、西ノ宮相手でもリオンを最初から出していたら前半戦では守りに入る事なくある程度は動く事は出来ていたはずですしね」

 

「そうだ、南雲原サッカー部というのは出来たばかり…その為に今は南雲原としての強みを活かす為に、ベンチに保険として置かれている状態なのだろう…さて、話を戻すが…もし試合の途中でノア・リオンが交代して来た場合……」

 

〜〜〜〜

 

「…リオンと接敵しない、自由に動かれない為に最低でも二人はマークする…DFに居るから中々厳しいと思うんですけど」

 

「そうだな、だが、我ら北陽にリオンを止められるという保証はない。本来のプレイが出来ないとしても、彼の強さは変わらない…今回のポジションが守備に重きを置くDFだったのは不幸中の幸いだ」

 

そう言って、品乃は空宮に続けて言った。

 

「空宮、ここからはプラン通りタクティクスで攻める」

 

「『シナノフォーム』ですね、分かりました」

 

後半開始のホイッスルと共に、北陽は必殺タクティクスであるシナノフォームを発動させた。

 

三方向に分かれ、雲を切り割く様に突き進む。

しかし…

 

(おかしい…接触する危険を回避する為とは言え、幾らなんでも分散され過ぎている…)

 

南雲原のメンバーは、守備の要であるDF陣営を除いて、全員が散る様に走って行く

 

そして、必殺タクティクスのシナノフォームが終了し、空宮がシュート体勢に入る。

それと同時に、リオンは守備の位置を変えた。

 

「…【サンシャインブレード】!!」

 

空宮渾身の必殺シュートを、井馬里と古手打が止めに入ろうと走るもボールの進むスピードの方が速く、間に合わない。

 

しかし、位置を変えたリオンはなんとか間に合った。

 

「…よっと」

 

空宮の渾身の必殺シュートを、リオンは片足を使って軌道を逸らしつつ蹴り上げ、空高くに打ち上げる。

 

「【ダークトルネード】」

 

そして、打ち上がったそのボールで、カウンターシュートを叩き込んだ。

 

「なんと!ノア・リオンが北陽エース・空宮の必殺シュートを撃ち返した!」

 

空高くから落ちて来るシュートに、フィールドの誰もが反応出来ないで居た…

 

「……来た…!」

 

「……っ!!」

 

……品乃と忍原を除いて

 

「これはカウンターシュートではない!パスだ!!!」

 

品乃のその声を聞き、北陽のDF・後方のMF陣営がそれぞれ、シュートをブロックしに向かう者、ゴール付近へ守備を固める者へと分かれる。

 

「くっ…!」

 

「止まらない…!」

 

シュートをブロックしようとするものの、勢いが落ちる程度でボールが止まる事はなかった。

 

そして、ボールは忍原の元へと辿り着く。

 

「桜咲…行くよ…!!」

 

「…おう…!」

 

空から降って来るボールを、忍原は右足で受け止める

 

「…っ…!!」

 

その足に鋭い痛みが走るが、忍原は歯を食いしばって耐え、打ち上げる。

 

その打ち上がったボールへ、桜咲が渾身の蹴りを叩き込む。

 

「…【春雷】!!」

 

蹴り出されたボールはフィールドの砂煙に隠れると、紫の紫電が一瞬だけ露わになる。

 

そして、ゴールを守ろうとするDF陣営を瞬時に抜き去り、瞬きをする間もなく、ゴールに鋭くボールが入る音が響いた。

 

「……これが南雲原の…必殺技なのか…?」

 

「…何も…見えなかった…!?」

 

「うおっ!?すごっ!雲明、これを狙ってたのか…!!」

 

北陽のメンバーの驚きに対して、笹波は冷静に忍原と桜咲を見ながら、自分の出した指示を思い返した。

 

 

〜〜〜

 

「後半戦、逆転の芽を潰したい北陽は攻めの一手に出るはずです。そこで、北陽が攻めに入ったその時は、DF陣営以外は全員前線に上がってください」

 

「お、おいおい、それ良いのかよ!?」

 

笹波の発言に、木曽路が声を上げる。

 

「大丈夫です。DFの位置も変えます。左側から井馬里さん、リオンさん、古手打さんにします」

 

「オッケー、任せて!」

 

「分かりました」

 

古手打はそう言って胸を叩き、井馬里は頷いた。

 

「そして、リオンさんには北陽のシュートを蹴り返して貰います」

 

「問題ないですよ。事前の指示通り(・・・・・・・)にやりますから、任せて下さい」

 

リオンはそう言って微笑んだ。

 

「ただし、リオンさんがゴールを決める訳ではありません。ゴールを決めるのは…」

 

笹波は、桜咲を見た後に、忍原を見つめた。

 

「…やっぱり、気付いてたんだね…私の足の事…」

 

「……あー…はい…気付いてはいました」

 

「…前半戦、痛めてる足を気遣って、春雷を使うなって言ってるんでしょ…

でも、私やってみたい!多少の痛みくらい、我慢出来る!だからお願い!春雷を使わせて!!」

 

「…!そうだったのか」

 

「だから春雷の使用を禁止したって訳か…」

 

桜咲がハッとした顔で、柳生も感心した様に笹波を見るも、当の本人は頬を掻いて答えた

 

「…えっと…違いますよ…今の忍原先輩の足でも春雷は打てます」

 

『え??』

 

笹波のその言葉に、リオンを除く全員の声がハモる。

 

「その足の状態なら…何とか二回…いや、三回…痛みを堪えてでも打って貰うつもりでした」

 

「ええっ!?だったらなんで!?」

 

「問題はそこではなく、別の問題で春雷が使えないだけです……その問題も…後半開始から少し経てば……解消されます。

 

合図は、リオンさんがボールを忍原先輩へパスした時です」

 

〜〜〜

 

 

「…午前中の雨で、フィールドが濡れていた…春雷の真骨頂は、乾いたフィールドの砂を巻き上げ、粉塵で覆い、ボールを視界に捉えられない様にする事で春雷という必殺シュートの解析を遅らせる事…」

 

「……なるほどね、幾ら分析に長けた北陽でも、いきなり放たれた全貌の分からない連携シュートを即座に解析して対応する…なんて事は不可能ね」

 

笹波の呟きを、千乃会長は即座に理解した。

 

そして、春雷によってペースを乱された北陽は、これ以上点を取られない様にしつつも反撃に出るものの

 

逆に春雷によって調子の出て来た南雲原サッカー部は、前半とは打って変わって北陽からボールを奪取し

 

「…【春雷】!!!」

 

「…これ以上取らせるか…!!【グラビティデザート】!!」

 

続け様に放たれた春雷を陣内がグラビティデザートで防ごうとするも

 

「……なにっ!?」

 

春雷は砂塵の檻を容易く貫き、ゴールへと突き刺さった。

 

そして、このゴールが決定打となり、南雲原は2-1で北陽学園に勝利した。

 

「よっしゃぁぁ!!」

 

「勝ったぜ!!」

 

「勝った!!勝てたよ!!!…っ…!」

 

喜びを分かち合うものの、忍原は右足の鋭い痛みに、思わずしゃがみ込み、足を抑える。

 

「忍原先輩…!!」

 

「…っ、大丈夫…、少し痛いだけ…」

 

「……すいません、もう少し威力調整をするべきでした」

 

足を抑える忍原へ、リオンは氷嚢を差し出す。

 

「…勝利したのは良いですが、同時に南雲原サッカー部の課題も見えて来ましたね…」

 

そう言って、顎に手を当てて悩む笹波は、その直ぐ後に空宮にジャンピングハグをされ、衝撃の事実を明かされる事になる。

 

「オレと雲明は……同じチームになるんだ!!」

 

「「「「えぇぇぇぇ!?」」」」

 

「サープーラーイーズっ!!」

 

驚く南雲原サッカー部のメンバー達に対して、リオンは冷静にここから先を考えた。

 

(南雲原サッカー部に北陽学園のサッカー部が合流する形になる訳か……それならこっちもお役御免になるかもな…)

 

リオンはそう思いながら、青く澄んだ空を見上げた。

 

 

 

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