転生憑依アイル君は南雲原に入学するようです 作:中谷真之
「俺をサッカー部に?……あー、ごめん。サッカーはもう辞めんたんだ。他を当たってくれないかな」
前世は、サッカー好きの普通な少年だったと思う。
いつしかの日本代表、彼らの画面越しの死闘に魅せられ、サッカーを始めた。俺に才能は無かった。けど、サッカーは楽しかった。
可もなく不可もない、どこにでも居るようなサッカープレイヤー、それが自分から見た自分への評価だった。チームメイトは、俺のことをなぜか買ってくれていたみたいだが、過大評価だとずっと思っていた。
サッカーが人生の全てとは言わないけど、熱に魘されようがトラックに轢かれようが、いつ、どんな状況でも常に頭の隅の方にはサッカーが居る人生だった。それは死に際でも変わらずのことで、視界が端の方から黒に染まっていく中、俺は思った。
────サッカーしてぇなぁ、と。
前世は、という冒頭から見てわかる通り、俺は転生者だ。
そして、どうやら神というものは存在するらしく、転生した俺は、正にサッカーをやるために生まれてきたと言わんばかりの才能を持っていた。
齢一桁にして、前世の自分だったら考えられないような、出来るはずのなかった動きが軽々と、今の身体だと出来てしまう。
才能とはここまで強大なものなのかと、過去の自分と比べて、絶望さえした。前世で必死になって努力していたのが、少し馬鹿らしくなった。
とは言ったものの、楽しいもんは楽しい。なんなら、すべてが思い通りに動く身体のおかげで超絶楽しい。
まず、フィジカルで負けることがない。俺はまだ小学生であることを加味しても、やや小さめな体格であるのだが、ノリ的には闘牛と一緒だと、コーチに言われた。ノリ的にはってなんだよ。
敵の動きは全部スローに見えるし、パスコースだって、全部が読める。
ここまで圧倒的に有利だと面白くないんじゃないかと、そう思われるかもしれないが、べつに全然面白い。この無双感はいくら味わっても飽きる気がしない。
「しっかし、ぶっ飛んだ世界だよなぁ……」
「どうした急に」
今はクラブでの活動時間、の、休憩時間。ベンチでボーッと、今までのことを回想していたらどうやら、気づかぬ内に口から溢れていたようだ。同じく隣で休んでいたチームメイトにつっこまれる。
「あぁ、いや。みんなサッカーする時、足から火出したり瞬間移動したりしてるけどさ……よくよく考えたらかなりぶっ飛んだことやってるよなぁって」
「? 別に普通のことじゃね?」
「あ、そう……」
先のモノローグでは語り忘れていたが、何を隠そうこの世界、『超次元』である。超次元、そう聞いてピンと来るものは多分同世代なのでグータッチ。ういー。
さて、この世界が超次元とはどういうことなのか、それはこの世界がイナズマイレブンの世界であるということだ。
イナズマイレブン、少年サッカーをテーマにLEVEL5によって企画作成されたメディアミックス作品なのだが、その世界観を簡単に表すのなら、サッカーでドラゴンボールやってるような感じだ。物理法則を無視した身体動作は当たり前、人によっては幻覚を見せてくるようなやつまでいる。倫理的に大丈夫なんか?それは。
ありえないくらいジャンプしてありえないくらい回転しながらありえないくらい炎を纏ったシュートをぶち込んでくるのがフォワード選手のデフォルト、くらいのノリで、サッカープレイヤーみな文字通り超次元な身体能力をしているこの世界だが、察しの良い人間は、ちょっと待てよと、そう思うであろう。俺が才能だの無双だの言っていた身体能力は、この世界の特性であって、この世界基準で見たら大したことないのでは無いかと。しかし心配無用である。なんと俺のサッカーの才は、この世界においても超高水準を満たしている。
「つーか、一番ぶっ飛んだことやってるのお前だしな」
「いやそれは……そうかも」
超次元サッカーといえど、所詮はスポーツ。やはりフィジカルやテクニックの個人技のパフォーマンスは、元々の身体能力やセンスに依存する。超次元的観点から見た場合でも、俺の能力はずば抜けているらしい。チームのキーパーが新しい必殺技が出来たと言うので、試しに普通のシュートを撃ってみたところ、あっさり突破してしまいギャン泣きされたことがあるのだが、それ以来チームメイトから俺への認識は、サッカーが上手な少年だったのが、ただの化け物に変わってしまった。みんな酷くない?酷いよね。
「普通に考えておかしいからな?」
「うーん、否定できない、けどさ、化け物はちょっと酷くない?」
「バケモンとしか言いようがねぇプレーばっかすんだ。妥当じゃねぇの?」
「バケモンとしか言いようがないって……例えばどんなプレーさ」
「まずあれだろ、もっちゃんの新必殺技を2秒で破ったやつ」
「ガチで気まずかったよあれ」
「俺のフリーズショットも普通に蹴り返されたし、さっつんの分身フェイントと普通に1対3してボール奪ったのとかもあるし……挙げ始めるとキリねぇぞこれ」
「もうバケモンでいいよ俺は……」
改めて今までこのチームでしでかしてきたことを列挙させられると、本当に自分が疑いのないくらい化け物であることを認めさせられる。頭おかしいよこの人(他人事)
「お前は円堂ハルにすら肩を並べるサッカーモンスターだよ、マジで」
「そらまぁ、マブですし」
円堂ハル、通称サッカーモンスター。俺と同世代の天才だ。ポジションはフォワードで、正直敵無しだと思っていた俺のジュニアサッカー歴に唯一泥を塗りかけた男で、俺の親友。それが円堂ハルだ。
円堂といえば、初代イナズマイレブンの主人公の名前は円堂守であることは言うまでもないが、俺は前世で円堂ハルなんて言う名前、一度も聞いたことが無かった。それもそのはずで、なんとこの世界は初代イナズマイレブンから二十数年後の世界だったのだ。そのことを知ったのは生まれてからすぐのことで、スマホやら最新のゲーム機やらの存在に気付き、そこから芋づる式に今の年代まで何となく分かった。円堂守はおっさんになってたし、松風天馬も今やアラサーである。何とも言えない気持ちだった。
ほんで円堂ハルは、皆なんとなく察しがついているとは思うが、円堂守の息子である。お母さんは夏未さんらしい。冬っペは何処へ……?
「いやーでも、あの時は衝撃だった。まさか同世代で俺に張り合ってくる人間がいるとは……って感じで!」
「俺も衝撃だったわ。あの円堂ハルと対等以上に戦うバケモンがまさかうちのチームに居るなんてよ」
「確かに、ネームバリューのでかさで言ったら圧倒的にハルの方だもんな」
初めていい勝負が出来たっていうのは、ハルも同じだったみたいで、試合が終わった後彼とは爆速で仲良くなった。やはり無類のサッカー好き同士、話が合う。今朝もメッセージアプリのDMで、この前撮った練習試合の映像を見たハルからフィードバックが送られてきた。うん、彼は専属コーチか何かなのかな?……つっても、俺もハルに同じことをしている。個人間でフィードバックを送りあうのは実際かなり効果的で、自分じゃ気づけない改善点がたくさん出てくるもんで、練習効率が互いに爆上がりした。
やはり高めあえる存在、ライバルがいることは競技においてとても大事なことで、ハルと出会ってからまた、一段とサッカーにのめりこんでいった気がする。
「ネームバリューって点で言えば、お前も最近うなぎ上りじゃねぇか」
「ハルのおかげだよ」
「円堂ハルとお前が国民的存在になるのも、そう遠くなさそうだな」
「国民的存在て……さすがに言い過ぎじゃない?」
「いーや言い過ぎじゃないね。今の時代少年サッカーには、国を動かすほどのコンテンツ力があるんだぜ。しかもそれは今後さらに力を増していくはずだ。お前と、円堂ハルという強力なライバル関係によってな」
「はぁ」
どうやらこの世界では、少年サッカーが超巨大なコンテンツとして扱われているらしく、凄まじい人気を誇っている。円堂守率いる日本代表が世界大会で優勝してから数十年後の未来って考えると、何も不思議なことはない。
てかこいつ、本当に俺と同い年なのか?達観しているというか大人びているというか、語彙に幼さを全く感じないどころか、前世での同世代と喋ってる感覚になる。もしやこいつも俺と同じ転生者?……なわけないか。
「おーいそこ、ゲンとアイル。いつまで喋ってんだ、もう休憩終わりだぞ」
「やっべ、説教だけは勘弁だわ」
「あちょっと、置いてかないでよ」
あぁそうだ、自己紹介を忘れていた。モノローグには必要不可欠であろうに。
───園崎アイル、九歳。サッカーをやっています。
園崎アイル(原作):円堂ハル唯一のライバルにして、親友。円堂ハルに並ぶ天才サッカー少年として名をはせていたが。試合中の接触により足を負傷、その怪我により、彼のサッカー人生は幕を閉じることとなった。それから間もなくして、車との衝突事故により、命を失うこととなった。
登場時間僅か数分にして私の心に傷を負わせた罪深きキャラです。
原作では車に轢かれて亡くなってしまう彼ですが、今作の憑依アイルくんは車には轢かれずに、南雲原へぶっ飛ぶこととなります(特大ネタバレ)
主人公はイナイレ初代からGO3まで履修済み。アレオリは記憶から消し存在を無かったことにした。ヴィクロに関しては一切の情報すら知らない。円堂守伝説のプレイ時間は4桁を超えるガチ勢だったとのこと。
ハイパー衝動書き。次回投稿日は今週中。完結させる気はあります。構想もあります。完結させるとはいっていない。
作者は承認欲求モンスターのため、感想評価お気に入りに目がありません。いただけるとモチベに直結します。
この作品にヒロイン居たらどう?
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うれしい
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うれしくない
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いらない