転生憑依アイル君は南雲原に入学するようです   作:中谷真之

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前回のあとがき「次回の更新は今週中を目指します」

前回の更新日→ 1 2 月 1 7 日

はい。ウルトラ遅筆マンの作者です。
あけましておめでとうございます。エタらないので気長に更新待って頂けると幸いです。


サッカーしようぜ

 円堂家宿泊事件から数日、今日は他クラブチームとの交流を兼ねた練習試合の日だ。

 

「ねみー……」

 

 寝起きの身体を無理やり立ち上がらせて、洗顔と歯磨きのため洗面所へと向かう。

 

 現在時刻は朝6時、今回は俺達が相手チームのコートへお邪魔するので、早起きだ。

 

 バカデカい渡り廊下を歩いて、自室の扉から数えて4つ目の扉を開く。するとバカデカい洗面所が一面に広がる。うん、流石に慣れたけど我が家はバカデカすぎる。豪邸も豪邸、大豪邸である。親が金持ちだと自宅がバカデカくなる。これイナイレ界の法則です。

 

 洗面台の前に立ち、顔を冷水で洗い流す。

 

「冷た……」

 

 やっぱ朝は冷えるな。顔面超つめてー。

 

 さっさと歯磨きまで終わらせて、しっかりとうがいをしてから洗面所を後にする。

 

 そして再びバカデカ渡り廊下である。この廊下を渡りきったところ、一番奥にはリビングがあり、すでに朝食が用意されている筈だ。

 

 こんな朝早い時間にも関わらず、俺の起床時間に合わせて朝食を用意してくれている住み込みの家政婦さんには頭が上がらない。

 

 リビングに入るとやはり、朝食の準備は完了しており、台所には料理の後片付けをする家政婦さんが居る。朝食が並ぶテーブルには、俺より先に起きていた父が居て、人数分の食器を配置しているところであった。

 

「おはよう、アイル。」

 

「おはよ、父さん。メイさんも、おはよう」

 

「おはようございます、アイルお坊ちゃま」

 

「メイさんそれやめて……」

 

 園崎家で働く家政婦メイさん。彼女には、メイドとしての心得がルーツとしてあるらしく、俺のことをお坊ちゃま呼びしてくる。俺は貴族か何かなのか?

 

 食器の配膳を手伝ってから、父さんとテーブルを挟んで向かい合う形で席につく。

 

「「いただきます」」

 

 まずは味噌汁から口につける。あったけぇ。冷えた身体によく染みる。次に箸をつけるのは大根のぬか漬け。薄味すぎず、濃味すぎない、とても絶妙な漬かり具合だ。この漬物はメイさんのお手製なのだが、金髪翠眼のメイドさんがぬかに野菜を埋めているのがあまりも面白くて、その様子をこっそり写真に収めてスマホのロック画面に設定している。ちなみに最近それがバレてメイさんにヘッドロックされてシバかれた。メイさんフィジカルえぐいっす。

 

 和で彩られている今朝の食卓、栄養の配分がしっかりとしており、それでいてとても美味しいのは、メイさんの手腕が優れている他ない。ここまで完璧な朝食を提供してくれるのであれば、お坊ちゃま呼びの一つや二つくらい、容易く許容してしまえる。

 

「昨日はよく眠れたかい?」

 

「そりゃもう、ぐっすり」

 

「それは良かった。睡眠の質は、次の日のパフォーマンスに直結するからね」

 

「今日の練習、父さん見に来んだっけ」

 

「あぁ、もちろん。業務のほうは休みに出来たからね。今日は見学させて貰うよ」

 

 うちは両親共働きかつ、どちらもどんな仕事をしてるのかよく分からない。父さんも母さんもバカみたいに稼いでて、それなのに休みは都合よく取れるという……謎が深い。まぁ両親の稼ぎでいい生活させてもらってるし、あんま気にすることじゃないな。

 

 しかし、父さんが練習試合を見に来ること自体はかなり久しぶりな気がする。都合よく休みが取れるといえど、社会人であり、忙しいということに変わりはない。

 

 俺がこんなにも自由にサッカーをさせてもらえているのは、父さんのおかげだ。だから、父さんにはいいとこを見せたいんだ。良い父親を持ったからには、良い息子でありたい。

 

「父さん見ててよ、今日はハットトリック決めるから!」

 

「おっ、言うじゃないか。でも、アイルは出来る子だからね、期待しているよ」

 

「うん、期待してて!」

 

 

 

 練習試合にはいつも気合を入れて臨んでいるが、今日はより一層やる気が湧いてくる。

 

 滾るやる気の勢いに身体を任せるように、残りの味噌汁を一気に呷って、朝食を完食する。ごちそうさまでした。

 

 よし、今日は頑張るぞー。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、がんばって」

 

「うん、いってきます」

 

 父さんの車で練習試合の会場、相手チームのホームグラウンドにまで送り届けてもらい、入り口の前で父さんとは別れ、父さんはグラウンドを囲うフェンスの外側に設置されているベンチへと移動し、俺はグラウンドの中へ入り、チームの皆と合流する。

 

「うぃ、おはようアイル」

 

「おはようゲン」

 

「今日はお父さんと一緒に来てたな。練習見ていくのか?」

 

「そ、だから気合入ってんだ。ハットトリック決めるって約束もしたしね」

 

「ほー……そんじゃ、今日はアイルにボール集めてやりますかねぇー」

 

「あいや、そーういうのはいいよ。お膳立てしてもらってハットトリック決めましたとか言っても、カッコよくない」

 

「あ、そう……まぁでも、お前ならいつも通りのプレーしてりゃハットトリックも自然と出るだろ」

 

「まぁね〜」

 

「なんかムカつくな……」

 

 グラウンドに入ってすぐに顔を合わせたゲンと雑談を交えつつ、チームの皆が集合しているグラウンドの中央へ歩き出す。

 

 このグラウンド、芝の質がすこぶる良いな。フッサフサでいくらコケてもあんま痛くなさそうだ。

 

「ここ来んの初めてだけどさ、芝めっちゃ良くね?」

 

「それ思った。いくらでもコケれそう。なんならコケたい。全身でこの芝を堪能したい」

 

「馬鹿だこいつ」

 

「今日の対戦相手が羨ましいよ。毎日この芝でサッカー出来んでしょ?いいなぁー」

 

「それは確かに……てか、今日の対戦相手のこと知ってるか?」

 

「あんま知らない。大会でも当たったこと無いし」

 

「一人めっちゃうまい女子居るらしい」

 

「ほえー、なんて名前の子?」

 

「えーっと確か、星村ナオっつったかな?俺達の一個うえらしいぜ。ポジション的にお前とマッチアップする可能性が高いと思うから、注意しといたほうがいいかもしんねぇ」

 

「有益な情報助かる」

 

 世界中が多様性を謳い続けた賜物なのだろうか、今の少年サッカーのほとんどは男女混合のチームで行われている。俺は小学生だが、これは中学に上がってからもそうで、女の子がサッカー強豪校のスタメンとして登録されてるなんてこともある。

 

 男子と女子が一緒に同じスポーツをプレーするなんて、そもそも生物としての作りが違うのだから、流石に無理があるのでは?と思っていたのだが、何故か全然対等な勝負になる。

 

 やはり超次元だからなのだろうか、男女間においてのフィジカル差があまり感じられない。まだ身体的な能力に差がつきにくい年齢、ということもあるのだろうが、それにしてもこの世界の女性は些か強か過ぎる気がする。チーム1のデカブツが小柄な女子にタックルで吹き飛ばされた時には脳がバグった。

 

 まぁ、細かいこと気にしないほうがいいのだろう。だって超次元だし!

 

「まー、負けはしないっしょ」

 

「あ、良くないぜーゲン君、慢心しちゃあ。足元掬われちゃうかもしんないよ?」

 

「ぐ……チームで一番うめぇやつがそのスタンスだと言い返せねぇな……でもよ、ぶっちゃけ実力的には格下のチームじゃね?言い方良くないけど」

 

「んまぁ、それはそうだね。俺は俺らのチームより強いチームはいないってマインドでサッカーしてるわけだし。それに最近じゃ、実績も着いてきてる」

 

 俺の所属するクラブは日本のリーグチームのいわゆる下部組織というやつで、関東圏じゃかなり上位に位置するチームだ。

 

 それもそのはず。なぜなら、俺がいるから。

 

 というのは半分冗談で……あ、半分は本当ね。やはりスポーツプレイヤーたるもの自信家でないと、務まらないこともあるだろう。

 

 そもそも、俺のチームは俺が入る前から強豪として名を馳せていた。だから俺も入ろうと思ったし、俺が入ってもっと強くなった。関東のトップは勿論のこと、今や全国すら狙えるレベルにあるだろう。

 

 そんな競技志向の高いチームだ、会費やら遠征費やらでサッカーに掛かる金額は決して安くはない。そこで俺が活動できているのは、自分の息子にやりたいことをさせてやれるくらい稼ぎに余裕がある両親のおかげだ。父さん母さんまじでありがとう。

 

 だからこそ、今日の練習試合は絶対に負けられない。そして、絶対に活躍したい。目立ちたいとか、そういうんじゃなくてただ、父さんにいいプレーを見せたいんだ。俺はあなたのおかげでこんなにも楽しいサッカーが出来ているんだって、教えてやりたい。

 

 

「ありきたりな言葉だけど、勝負事に絶対なんて無いよ。負けるわけないと思って油断してたら、痛い目見るかもしんないよ」

 

「まぁ、そうだな」

 

「てか、こういう相手が格下だからって余裕ぶっこいてる奴が対戦相手に居たらくそウゼェと思うんだよ。だからゲンにはそんなくそウゼェ奴にはなってほしくない」

 

「う……ごめん」

 

「分かれば良し。てか俺もごめん。なんか普通に説教じみたことしちゃったね」

 

「いやいいよ、これに関しては俺が悪い」

 

 ゲンの表情からは反省の色の伺える。やっぱりこいつ、小学生とは思えないくらいしっかりしてんな。

 

 ゲンといいハルといい、最近の小学生は教育がやけに行き届いている。子供たちの将来が楽しみだ……なんて、俺もガキ真っ盛りなんですけどね。

 

 ともあれ、今日の試合は公式戦と同じくらい気合入ってんだ。驕りは無しで、全力で戦う。ガチで勝つ。

 

 

 

 

 

 

 

 私の所属するサッカーチームでは、毎週末に他クラブのジュニアチームを自チームのホームへと招き、練習試合が催されている。

 

 うちのクラブは強豪とまでは行かずとも、そこそこの実力がある中堅上位くらいのチームで、練習試合で対戦する相手も私達と同じくらいの中堅、若しくは私達よりも強い、正に強豪というチームが多かった。

 

 強豪チームには大体、今後のサッカーシーンに大きな影響をもたらす可能性がある、特に将来有望なプレイヤーが一人か二人いる。優秀な選手のプレーを間近で見ることが出来る練習試合は、サッカーに対して少々オタク気質がある私にとっては至福の瞬間だった。

 

 よく晴れた日のことだった。

 

 その日の対戦相手は関東圏じゃ名の知れた強豪クラブのジュニアチームで、正直かなりの格上だと思う。私達のチームが勝つのは難しい。

 

 しかし、相手が強ければ強いほど、私にとっては喜ばしいことさった。勝てるのならば勝ちたいとは思ってるけどね。

 

 チーム同士の顔を合わせ挨拶もそこそこに、練習試合が開始される時間になった。

 

 各選手グラウンドへ出て、自分のポジションに付く。今日、注目すべき選手は私の真正面、同じポジションに立つ男の子。

 

 彼の名前は園崎アイル。年は私の一つ下で、彼はなんとあの円堂ハルのライバルらしい。

 

 円堂ハルといえば、言わずとしれた伝説的サッカー選手円堂守の息子であり、父と同じくサッカーの才に恵まれ、同世代には敵無しとまで言われていた天才だ。

 

 そんな円堂ハルに肩を並べる存在が、園崎アイル。彼はどんなプレーを見せてくれるのだろうか。胸の高鳴りが止まらなかった。

 

 間もなくして、ピーッ、と試合開始を知らせるホイッスルが鳴った。

 

 相手サイドからのキックオフ。ボールはさっそく、今日の注目選手である園崎アイルへと渡った。

 

 ボールを軽くトラップした彼は、そのままこちらに向かってボールを蹴り始めた。

 

 来る。

 

 そう思った時には、遅かった。

 

 彼はすでに私の横を過ぎ去っていて、彼と私は背を向け合うかたちになっていた。

 

「うっそでしょ…!」

 

 彼の背中を振り返り、感嘆する。

 

 無かったはずの虚を突かれた。何が起こったのかすらよく分からない。目にも留まらぬ速度、とか、そういうのじゃなくて、ただ、すれ違うだけのように、彼のドリブルによって空間から生じた風は、私の頬を優しく撫でるだけだった。

 

 後ろに構えるディフェンス陣が一人、また一人と彼に掛かっていって、軽々と突破されていく。

 

 所作に一切の無駄を感じない完璧なドリブル。そこから流動するかのように、私が気付いた頃には彼の左脚は大きく振り上げられていた。

 

 彼の放ったシュートの行く手を阻むものは一つもなく、キーパーの守るゴールへと一直線に加速していく。

 

 途轍もないパワーだ。この前見学に行った、中学校のサッカー部の人よりも威力が出てるんじゃないだろうか。私より身長小さいのに……。

 

 そんな中学生顔負けのドライブシュートを中堅ジュニアクラブのゴールキーパーが止められるわけもなく、ボールはゴールへと突き刺さった。

 

 試合開始数十秒にして、先制点を奪われた。

 

「すごい……」

 

 思わず声が漏れた。

 

 小学生でこのレベルのプレーを出来る人間が居るなんて、それも年下に。

 

 目の前の衝撃的な光景に、私はただ呆然として、立ち尽くすことしか出来なかった。

 

 近い世代の誰かのプレーを見て、かっこいいな、とか、上手だな、とか、そう思う事は今までも少なくなかった。

 

 初めての体験だった。

 

「綺麗だ……」

 

 サッカーをプレーする人間を見て、美しいと感じたのは。

 

 

 

 

 

 

「ごめん皆!調子乗りました!」

 

 先制点を決めた後、チームの皆に向き直って謝罪する。正直、めちゃくちゃ調子に乗った。開幕一人で突っ込むとかいうリスクの高すぎる謎行為、こんなプレー普段なら絶対にやらない。

 

 やっぱ父さんが見てるって思うと、いつもより冷静さを欠いてしまう。

 

「点決めて謝る奴があるかよ!お前すげぇなぁ!」

 

「バケモンナイッシュー!その調子!」

 

 自分勝手なプレーをしたにも関わらず、チームメイトの皆は俺の得点を褒めてくれるんだ。みんないい奴すぎんよ。いやバケモンって褒め言葉か?

 

「次のプレーからはいつも通りで行くんで、チーム意識もってやるっす」

 

 バケモンって言ったやつはあとでシバくとして、ここからはいつも通りにプレーしよう。俺が父さんに見てほしいのは、ただ自分の持つ技術にもの言わせた独りよがりなプレーじゃなくて、チームとしての完成度が高いサッカー、そしてその中心にいる自分を見てもらいたいんだ。

 

 気を取り直して、相手サイドから再スタートする。

 

「ほいっ」

「ナイス、マイボ!」

 

 ホイッスルが鳴って早々に、ゲンが相手のパスをカットしてくれたのでこちらにボールを回してもらう。

 

 このチームでの俺の仕事は単純明快で、陣形の前線を上げること。パスだのドリブルだので、オレを起点にボールを前に運んでいく。

 

 オレを起点にしている理由は、監督いわく「あー、なんかアイルが一番うまいっしょ?そういうの」とのこと。あんたホントに監督かってくらい発言に具体性がないが、まぁウチの監督のチャームポイントということで。やっぱ今どきの監督には可愛らしさも求められるからな。そんなわけないだろ!(豹変)

 

「っと」

 

 前進する俺の前に立ちはだかる一人の少女。

 

 俺のドリブルを止めに入ってきたのは、試合前にゲンから教えてもらった、めっちゃ上手いらしい女の子だった。名前は確か、星村ナオ。なんか海月みたいな髪型してる。

 

 さっきは初っ端の奇襲って事もあって流れで抜けちゃったけど、今回はそうもいかなそうだ。

 

 体勢と間合いから分かる、この子ちゃんと上手い。

 

 左右に振ろうとしてもちゃんとついてくるし、フェイントも雑には引っ掛かってくれなそう。睨み合いだ。こうなると、さっさと他のメンバーにパスを回したほうがやりやすいのだが、彼女とのタイマンに決着をつけないのは、サッカープレイヤーとしてのプライドが許してくれなさそうだ。

 

「そこ…!」

「おわっ、……ぶねー」

 

 先に仕掛けてきたのは向こうだった。今動かれたらダルいなってタイミングでボールを掠め取りに来たから、普通に危なかった。脊髄反射が良くて助かった。

 

 一瞬の危機さえ去ってしまえば、体勢を崩した彼女を突破するのは簡単なことだ。

 

「なっ……くっそー!」

 

 悔しそうな声が後ろから聞こえてくる。地団駄踏んでそうでかわいい。そして俺はロリコンではない。可愛いと思っただけ。俺の初恋は吉良瞳子だ。

 

 やはり精神的な年齢が数回りも離れているせいか、男女関係なく同年代の子供はみんな可愛らしく見える。年の離れた親戚に抱く感情みたいな感じだ。だからロリコンではない。マジで。まぁ今の俺は小学生なわけだし同年代の子供のことを好きになったところでなんの問題にもならないんだけども、そもそもそういう目で見れないし見てないから。……俺は一体誰に言い訳してるんだ。

 

「ゲン!あとよろ!」

「ナイスパス!任せられた……おわっ!」

 

 ゲンのほうがフリーだったのでパスを出したら、2秒で相手のディフェンスに捕まってしまった。即オチ2コマかよ。

 

「ごめーん!」

「オッケーどんまい!みんな一旦下がって!相手のターンねこれ!」

 

 さあ、練習試合はまだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 試合の終了を知らせるホイッスルが鳴った。

 

「だぁーっ、負けたー!」

「はぁ、はぁ……。園崎アイル……ヤバすぎ……」

 

 スコアは0対3。しかも、その全てが園崎アイルのゴール。完敗だ。しかし、こちらとしても全力を出し切ってのこの結果だ。結果に反して、どこか清々しくも思える。そしてそれはチームメイトの皆も同じようだ。

 

 試合後の整列を終えたあと、ミーティングが始まるまで少しの間休憩が挟まる。各自水分補給に行ったり、試合を見に来ている親と話に行ったり、グラウンド上に残って他の子と喋ったりする自由な時間だ。

 

 私は真っ先に、彼の元へと駆け寄った。

 

「ねぇ、ちょっといいかな」

 

「あ、はい。なんスカ」

 

「いやぁ、凄いねぇ君。噂には聞いていたけど、まさかここまでとは。流石ハル君のライバルだ!」

 

「えっと、ありがとうございます。ナオさん、で合ってますか?」

 

「そう!名前を知ってもらえてるなんて光栄だぁ〜」

 

 今日の注目選手だった園崎アイル君。元々彼のプレーに期待はしていたけど、まさか、あそこまで感動させられるとは思ってもいなかった。

 

 アイル君への好奇心が抑えきれず、声をかけに行ったは良いものの、いきなり話しかけられて彼は少し困惑しているようで、少し申し訳なくなった。

 

「いやはや、私何を隠そうサッカーオタクなもんでしてね……今日のアイル君のプレーに…そう、一目惚れしちゃいまして!それで、もしよければイナコード、交換しない?」

 

 先程の練習試合を経て、私は完全に園崎アイルのオタクになってしまった。いや、今なろうとしている。

 

 あれ程までの圧倒的なサッカー技術を持ち、チームの司令塔として指揮もこなせるうえ、チームメイトへのメンケアすら怠らない完璧っぷり。あとビジュがいい。

 

 これはもう、推すしかないでしょ。

 

「え、何これナンパ?」

 

 アイル君の困惑顔が更に険しくなったので、慌てて訂正する。

 

「あーっ!いや、別にやましい気持ちがあるとかじゃなくて!ただ、オタクとして推しの動向はチェックしときたいなぁ……的な?」

 

「推し……?まぁ、いいっすけど」

 

 怪訝な表情のままだが、承諾はしてくれるみたいだ。

 

「やったー!じゃあ、あとでスマホもってくるね!それじゃ!」

 

「あ、ちょっと待ってください」

 

 推しのSNSゲットが確定し、自分のスマホが置いてある更衣室の方へルンルンで走り出そうとしたところ、背中からアイル君に呼び止められた。

 

「ん?」

 

 振り向くと、アイル君が頭を掻きながら、小恥ずかしそうに口を開いた。

 

「俺も言いたいことあって……えっとその、ナオさんとの1on1、めっちゃ楽しかったです。なんでその……また、サッカーしましょう」

 

「えっ────」

 

「あれ、ナオさん?……固まっちゃった」

 

 この日、私は最推しという概念に、初めて出会った。




園崎アイル:試合後急に話しかけられてビックリ。精神的に大人だのなんだのほざいていたが、女子と話すときは緊張する。このあと仙次郎パパと一緒にご飯を食べている写真をナオちゃんに送ってあげた。

園崎仙次郎:原作だと苗字が『乙女』となっているが、多分今作では園崎のまま。息子がハットトリックを決める姿を見て思わず感涙。

星村ナオ:なんと!可愛い。アイルのサッカーに見惚れるほど感動し、無事オタク化。あ、ナオちゃんがアイルのプレーを見られるのは今日が最初で最後らしいですよ?かわいそうですね。


更新が激遅れした理由なんですが、当方学生でして、つい最近までちょっっと卒業が危ぶまれる状況だったんです。それを解決するために色々やってたらこんなに遅れちゃいました。てへ。原作キャラのセリフ書く度に作者の内なるイナイレ厨が解釈違いを起こしブチギレだしていまい、その度に書き直していたっていうのもあります。

次回の更新はいくつかストック作ってからにしようと思います。今月中には更新します。多分。

作者は承認欲求モンスターのため、感想評価お気に入りに目がありません。いただけるとモチベに直結します。

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