転生憑依アイル君は南雲原に入学するようです 作:中谷真之
はい、牛歩マンです。本日からストック解放期間に入りますのでそこそこのペース(当社比)で更新されると思います。
いつも通りの練習日、天気は良いし体調も悪くない。しかし何故だか、練習に身が入らない。
普段なら反応できるパスを見逃すし、トラップめっちゃ浮くし、シュートはあらぬ方向へ飛んでいく始末だ。
「おいアイル、お前大丈夫か?」
やがて休憩の時間になり、俺がベンチで休んでると、心配したゲンが隣に来てくれた。
「ごめん、なんか今日ダメだ俺」
「体調悪いならマジで帰った方がいいぞ」
「体調は平気なんだけど……ちょっとね……」
「ふーん……なんか悩みとかあんなら聞くぜ?ま、無理に話さなくてもいいけど」
「……じゃあ、聞いてもらおうかな」
この不調はたぶん、昨晩見た夢に起因する。
前世の記憶が、夢に出てきたんだ。
俺の前世というと、サッカーが人生の一部分になってる割には平凡な選手だったということは周知の事実であろう。昨晩俺が見た夢は、前世でのサッカーにまつわるトラウマ、というか、俺がサッカー選手としての生命を絶つことになった出来事だった。
あれは俺が、高校生だった頃の話だ。前世の俺は部活動に勤しみ、勉強はほどほど、オフの日にはそれなりに遊んで、っていうまぁいたって普通の高校生だった。
その日のことは鮮明に覚えている。
まず、朝起きて外を見たら空が曇ってた。気温は生温く、湿度が高かった。
家を出て学校に向かう途中、車道にタヌキの死骸が転がっていた。車に撥ねられたのだろう。郊外である俺の地元じゃよくある事だった。
地学の授業中、内職してた友達が先生にバレてキレられてた。彼とは特別仲が良いわけでもなかったので、気まずい時間だった。
授業が終わった後は、部活があった。もちろんの事だが、俺はサッカー部に所属していた。その日の練習メニューは地味な基礎練が多く、みな気だるそうだった。俺は全力で取り組んだけどね。練習の最中、1年の田中が2年の奴と接触して怪我をした。軽傷だったが、痛そうだった。
部活の後は、部活の友人らと晩飯を食べた。ファミレスの角席に座って、俺は300円のドリアを頼んだ。あとドリンクバーも頼んだ。料理が来る前に、バカな友達が全部混ぜたやつを持ってきた。味は言わずもがな、飲めたモンじゃなかったので、それを処理する人間を決めるデスジャンケンが開催された。負けたのは全部混ぜを作ったバカだった。因果応報、バーカバーカ。
夕食を済ませたら、皆で帰路に着いた。思い返すと、男子高校生数人が横並びになって歩いているのは、かなり他の通行人の邪魔になっていた気がする。今になって申し訳なく思う。そんなはた迷惑な歩き方をしていたのが悪かったのだろうか、バチが当たったのかもしれない。
友人と別れてすぐの横断歩道で、俺はトラックに撥ねられた。
飲酒運転による信号無視、俺に過失はなかったと思う。強いて言うなら右左を確認したあと、もう一度右を確認するべきだった。
右半身に鋭い痛みが走ったかと思えば、俺の身体は宙に浮いていて、視界がぐわんぐわんと、回ってんのか揺れてんのかよく分からなかった。そしてよく分かんないまま、くそいてぇ!という所感を抱いたまま、俺の意識は暗転した。
そうして、目が覚めた。
「……なるほどつまり、アイルは自分が事故にあって二度とサッカーを出来なくなるっていう夢を見たわけだ」
「まぁ、そうだね」
ゲンには、俺の前世について悟られないよう内容をぼかして話したが、趣旨は伝わっているようだ。同情するような表情を見せている。
「そりゃあ気分も悪くなるわ。今日は帰って休んだ方が良いんじゃないか?」
「……とりあえず一旦のところは、ここから見学することにするよ」
「おう、そうしとけ。…監督ー!アイル体調悪そうだからベンチで休ませとくわ!いったん見学!」
「おー、分かった。アイル、キツかったらいつでも言えよー。速攻で帰宅させてやっから。あとゲンは敬語使えー」
「うぃーっす……じゃ、俺はそろそろ練習戻るわ。ゆっくり休めよ」
「うん、ありがと。……ふぅ」
コートに向かって駆け出すゲンの背中を見送ってから、一息つく。
俺の記憶が正しければ、俺はあの後病院に搬送され、数時間ごに目を覚ます。幸いその日の今朝に見た狸のようにはならずに済んだが、俺の脚は使い物にならなくなり、車椅子での生活を強いられるようになった。それはつまり、俺はその時から、二度とサッカーが出来ない身体になったということだ。
コンマ0.数秒。その刹那で、俺のサッカー人生は幕を閉じた。
そんなあっけない終幕、当時の俺には信じられなかったし、信じたくなかった。ただただ、絶望って感じだった。
だがしかし、俺はまだまだ老い先クソなげぇ若者だ。いつまでも落ち込んでいる訳にも行かない。入院中のベッドで色々考えまくった結果、俺は俺の持つサッカープレイヤーという一面を失ったが、生きる希望が一切なくなった訳でもないし、選手としての道が潰えただけで、選手以外としての在り方で、サッカーに携わることだって出来る、という結論に至った。というか、至らざるを得なかった。そう思い込まないと、俺の心はへし折れてしまいそうだったから。
脚が動かなくなってからも、俺はサッカー部を辞めず、マネージャーとして活動し続けた。コートの外側から、プレーに熱中するチームメイトを眺めていると、胸がきゅっと締まるような、悔しいのか悲しいのか、なんとも言いしれぬ感覚を覚えた。
3年生の最後の大会が終わるまでマネージャーとしての業務をやり遂げ、彼らの引退と共に俺の部活動も終了した。大会の結果は奮わなかったが、今となっては良い思い出だ。
その後は、普通の大学へ進学した。俺のそこそこな成績でも指定校推薦を取れるくらい普通の大学だ。家が近いからという理由で選んだ。
それから間もなくして、俺は病床に伏せることとなった。当時の流行病で日本人がこぞって感染しており、俺も例に漏れずそれに感染し、元々ひ弱だったせいか俺は病気にかかったまま、ぽっくり。全く、ことごとくついていない人生だ。特に10代後半、事故って下半身不随からの病死て、悪運が過ぎるだろう。
こうやって前世の俺を振り返ってみると、なんとも報われない人生だ。
そんな人生だったから俺には今があるのかもしれない。やっぱり神様ってのは存在して、あんまり過ぎる一生を送った俺にもう一度チャンスをくれたんだ。お前かわいそうだし助けたるわ、って感じで。
お陰様で、最高の人生を歩めている。心の底からサッカーを楽しめる、俺にとって都合が良すぎるくらいの環境があって、それに釣り合うくらい俺の身体には才能があって、何事も上手くいく、そんなリライフだ。
だからこそ、今日見た夢が恐ろしい。今まで、前世のことが夢に出るなんてこと、一度も無かった。それが突然、夢に出てきて、しかもその内容が俺が不幸になった日の記憶を呼び起こすようなものだったんだ。何か良くないことが起こる予兆なんじゃないかと、思ってしまう。
「……なんて、考えすぎか」
あの日のことは俺の前世で最も印象的な出来事だった。なら、夢に出たって別におかしくないはずだ。
ネガティブな思考はやめだ。今週末には、ハルとの練習試合だってあるんだ。今はいったん、目の前のことに集中しよう。
うん、落ち込んでた気分もちょっとマシになってきた気がする。これなら練習にも戻っても大丈夫そうだ。
「っし、監督ー!気分良くなってきたんで戻ります!」
「おー早いな、まぁ良かった。じゃ、外周行ってこい。みんな走ってるから」
「了解っす!」
週末の練習試合に向けて、気合は十分だ。さっきまでトラウマフラッシュバックして萎えてたけど。
それに、練習試合の日はハルの誕生日祝いも兼ねている。プレゼント、喜んでもらえるといいなー。あ、何を渡すかは当日までのお楽しみだぜー?
さて、アイル君特大無双(そこまで無双してない)編も残すところあと2話です。
いやー長かった、とりあえず私は自分の筆の遅さを反省します。
この作品にヒロイン居たらどう?
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うれしい
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うれしくない
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いらない