ユニゾンクエストⅡ(仮)~筋肉とサイコパスと犬と神々~ 作:ケルベロス(通称・ベロちゃん)
鐘が鳴る。
みんなが黒い服を着て、沈んだ顔をしている。
真っ黒いヴェールの向こうで表情のわからないお母さまが言った。
「あの子の父親は、我が王ではありません。王族直系ではないの……」
だからのろいにかかったのね
声が遠く響いて、気がついたらどこかの広間にいた。
みんな晴れやかな顔で、誰かを囲んでおめでとう、バンザイと言い合っている。
私は袖が長くふくらんだ薄緑色のドレスを着て、人の輪とは少し離れた場所に立っていた。
袖の中には、私には重い、聖なるナイフを忍ばせている。このために袖のあるドレスを選んだのだから。
人の輪が割れて、中心にいた男女ふたりがこちらへ向かってくる。
ふたりして困ったような、気遣うような、控えめの笑顔を私に向ける。
私も微笑みを浮かべて、男に歩み寄った。袖からナイフを取り出して振りかぶる。
「お兄ちゃんのカタキ!!」
剣なんて扱ったことのない私の一撃なんて、男には簡単にいなせた。
手刀でナイフを叩き落とされて絶望する。
こいつらのせいで、お兄ちゃんが。
私が、こいつより強ければ。
お兄ちゃんと一緒に旅に出ていたら。
また場所が変わる。ウチの部屋だ。
ママが言った。
「悪いけれど、利用させてもらいましょう。平民と親しくするなんて外聞も悪いし」
ウチに何かの呪文をかける。何なん。なんか思い出しそう……。
※
目が覚めた時、前にもおんなしような夢見たなって思った。
夢の中のウチは、クソダサドレスを普通に着ていた。
いつ見た夢? ……そう、友だちが、死んだ時だ。
だから強くなりたくて。ほんとに?
そうだあの時、夢があんまりリアルで怖くて泣きながらママに「じつはお兄はパパの子どもじゃないの? お兄は死んじゃうの?」って聞いたんだ。ママの眉毛が片方上がった。
ママはものすごく貴族だった。そこんとこのプライドがめちゃくちゃ高い。ウチが友だちと遊ぶのも鍛えるのも嫌がってたし、いらんこと他で言っちゃって変な噂がたつかもしんないのが許せなかったのかも。
夢の最後んとこは、実際ママがそう言ったんだった
。
心臓がドキドキする。そうだよ、ウチが友だち見捨てるはずない。リリは生きてる。ウチが姫だって知られた時の反応が怖くて会えなかったけど、ちゃんと助けられたはずだ。いつか会いに行きたい。
ママが、ウチになんかの魔法で暗示をかけたんだよ。もう絶対リリに会わないように。
ほんと魔法は嫌い。それなりに使えるけど、やっぱり拳で語りたい。いつか、夢の中であいつらにイッパツ決めたい。なんか最近会った誰かに似てたような気がするけど誰だっけ……。
アタマがごちゃごちゃしてちゃんと説明できないけどさ、なんかウチの中では納得できた。
旅立つ時のお兄を思い出す。
夢の話でバカみたいだけどさ、ウチが強くなりたいホントの理由は、自分でお兄を守りたいからだった。お兄の横に立ちたいからだった。怖くてもついていかなきゃ、いけなかった。
旅立ちは動きやすい服装で。
お兄のあとを追おうと決めたら、まずは服選びよね。
チュニックにショーパン合わせたら、下はいてないみたいで良くない? あー、でもお兄に会った時怒られそう。ここは無難にタイツでいこう。
前にお兄を追っかけようと思った時の服でいっか。
アクセサリーはつけずに、おろしていた髪をぎゅっとポニーテールにまとめた。あ、やっぱ控えめピアスだけつけたい。でもウチ、すぐピアス落とすんだよなー。戦ってたりしたら無くしちゃうかも。
あとオヤツでしょ。なんだっけ、あのスクワットジャンプしてお兄に怒られてた変な人。下向いて息止めて笑いこらえてたから、あん時は苦しかったよね。あの人におみやげいるかな……。
とにかく、荷物を持って、ウチは部屋を飛び出した。
護衛の兵の「姫さま!?」という情けなーい声をバックに。
途中で森に寄ってみようか。遠くからでも、リリの姿を確認するために。帰ってきて会いにくるために。ウチの決意を固くするために。