「いやー参ったね。まさか、各国の諜報機関やアングラな連中もお手上げな奴だとは」
「こっちも収穫なし」
「かなり深く潜ってるぞ、これ」
調査を始めてから1週間、俺が持っているコネを総動員してかなり深い所まで情報収集に当たったのだが、犯人を特定できる情報は梨の礫でヒットするのは世界各国でのデジモンが関わる被害で比較的、大規模の事故では似た様な姿をした人物が関わっている事に加え、マフィアなどのアングラな組織が次々に潰されていると言う事が分かったぐらいだ。
お陰で以前、お世話になった複数のアングラな組織と接触しても疑心暗鬼になっているからか、世間話すらもしてくれない状態になっているので調査するのも限界にきていた。
その為、今回の調査に協力してくれているテイマーチーム・ナイトクロウのジュリア隊長とライトファングのグレア隊長の会合に参加して、情報共有をしているのだが各々がお手上げ状態だった。
両チームは本来、敵対関係にあって会合に同席させるのはかなりの苦労が必要なのだが昔、あまりの犬猿の仲に『竹○房ゥァア"ーッ!!』とどこぞやの出版社の名前を騙るハッカーグループを電脳世界で血祭りにした後、『次は君らだゾ♡』と言いながら迫ってからは情報共有に限っては矛を収めて同席してくれる様になった。
その為、俺から声を掛けて1週間で集められる範囲で集めてもらったのだが、まぁどちらも似た様な状態で目ぼしい情報がなかったのだが1つ気掛かりな情報があった。
「そう言えば最近、妙に人の出入りがある建物が複数あるわね」
「え、どこどこ」
「転々としているから断定できないけど、確認された範囲でまとめたマップを出すわ」
ジュリア隊長の発言に食い付いた俺に対し、彼女は赤い点がマップ上に表示されているホログラムを展開したのだが表示されている点に心当たりがあった。
「どこも人が少ないか、貧民層が大勢暮らしている場所っすね」
「えぇ、ここまであからさまだと逆に罠だと疑うレベルよ」
「じゃあ、なんで捕えなかったの?」
「立ち入った時にはもう誰もいないのよ。元から誰もいませんよって言わんばかりにね」
「手慣れてんなー」
赤い点の周辺は、お世辞にも日本基準ではあるが治安が良いとは言えず、赤い点で撮られた写真は雑居ビルなどの室内であり、登記上は賃借契約が結ばれている部屋なので本来から不法侵入である。
しかし、その実態はマフィアなどのアウトローな組織が特殊詐欺などで使用する為に空き部屋にしている場所が多く、表札には横文字でそれらしい社名が書かれていても伽藍堂の部屋となっていた。
しかも、こう言った空き部屋を利用した密会を炙り出そうとしても登記上の賃借契約を全て調べる必要があるので人手がいくらあっても足りないし、調査した所で世界で暗躍する犯人、或いは犯罪組織がそう簡単に尻尾を出すかと聞かれれば余程の盲目的なやつでもない限りはNOと答えるだろう。
一応、ナイトクロウとライトファングの両チームには貧民層出身のテイマーも在籍しているので、彼らの伝手も使った上でこの結果なのでこっちでも地道に調査するしかないかぁ、と思っていると京子さんから電話が来た。
『衛、今どこにいる?』
「新宿駅の近くです」
『急用が入った。至急、事務所に来てくれ』
「分かりました。すぐに向かいます」
普段なら、呼び出す際はある程度の用件内容を言ってくれるのだがそれを省いて来るように言ってくるとなれば、かなりの重要案件と言えるので彼女達に詫びを入れると笑って見送ってくれた。
「成功報酬はデジモンバトルでよろしく〜」
「期待してるわよ〜?」
「まぁ、折れない程度には扱きますよ」
学生である以上、こちらから引き出せる金銭の額がそこまで多くないので、その代わりとしてどうしても労働力を提供するしかなくなるのだが俺の場合はハッキングの他にリリスモン達がいる為、彼女達と共に出来る事を対価に依頼する事が多い。
アラタの場合、彼がオタクだと分かっていたのでオタクの気が引く物品を前々から探していたからどうにかなったが、そうじゃなかったら彼の依頼を引き受けていたしね。
その為、デジモンバトルの日時についてある程度の予定を決めた後で彼女達と別れて暮海探偵事務所へ足を運んだ。
☆☆☆☆☆
「只今参りましたー」
「来たか」
「早速で悪いが、政府の方からこんな内容の依頼書が来ている」
「拝見します」
すぐに来い、とのことだったので休日だったのも相まって私服で入ると雑談もなしに紙媒体の資料を渡されたので、受け取って内容を確認すると個人レベルでは接する機会が皆無であろう有名な組織が接触を求めていると書かれていた。
「FBIとCIA、ですか。彼らを怒らせる様な事をしでかした記憶はないんですがねぇ」
「あぁ。彼らもハッキングで調べられる範囲の情報の閲覧に関しては咎めるつもりはないらしい。寧ろ、そのハッキングスキルも含めて君が関係を持つ存在に目を付けたのだ」
「あー、“彼ら”ですか」
その為、アメリカの警察機関と諜報機関に目を付けられた事で今後の身の振り方を考えながら、広大さんに話を促すと俺が考えていた事とは真逆だったのでため息を吐きながら話を続けた。
「彼らの実力をも収集するとは侮れませんね」
「あぁ。いくらデジタル・ワールドで無類の強さを誇る彼らでも結局はプログラムだ。何をされるか、分かったものじゃない」
「彼女はそれすら織り込み済みだと思いますよ?」
「それに関しては否定しない」
そう。ロイヤルナイツの面々は、オリンポス十二神族及び天帝八武衆と並んでデジタル・ワールドに於ける最高戦力であり、人間界では未知数の存在と言っても過言ではない。
そう言った背景から世界各国は必死に諜報活動で情報収集に当たっているのだが、その過程で両組織のどちらかが俺との繋がりに勘付いたのであろう。
「まぁ、それは兎も角として可能であれば会いたくないっすね」
「仕方なかろう? 何しろ、外交的な圧力をチラつかせているのだから」
可能であれば、彼らの根幹であるイグドラシルも含めて存在を表に出したくないんだよなぁ、と思いながら話を振ると今度は国家間の話にまで発展したので深い溜息と共に肩をガックリと落としながら、会う際の服装やら何やらの話に切り替えた。
「それで服装はどうするんです? 一応、学生の身分なんで学校指定の学生服で行くつもりですが」
「その方が良いだろうな。体裁としては社会科見学の一環と言う形を取る予定だ」
「分かりました。後はやっぱり、ロイヤルナイツを始めとしたデジタル・ワールドの話は適度にはぐらかした方が良いですよね?」
「いや、それに関しては私から説明する。君はその場に居て、話を振られたら私から説明する様に話してくれれば良い」
「分かりました」
まぁ、話としては真っ当な考えだな。
何しろ、相手は警察組織の一機関と諜報機関なので誘導尋問だの何だのはお手の物だろうし、デジタル・ワールドの中でも屈指の実力を持つロイヤルナイツと関係を勘付いた連中である以上、発言1つで確度の高い情報を握らせる事になりかねないので俺からの発言は可能な限り、避けた方が良いだろうな。
その為、会議内容や相手方に失礼がない様に付け焼き刃ではあるが一通りの礼儀作法を教えてもらい、会議予定日時を聞いてから帰宅する事にした。