少子高齢化や貧富の拡大、イデオロギーによる国家間の分断といった様々な問題を乗り越えて22世紀も四半世紀が過ぎる頃になると、サイバー技術も格段に進歩を遂げてフルダイブ型の電脳空間が構築されるようになった。
それにより、電脳空間に限って言えば肉体的な制約を受けなくなった事で体に障害を抱える人々が抱えていない人のように元気に動けるようになった、などの喜べる要素がある一方で電脳空間における犯罪がより複雑さを増す事になり、警察組織も専門のチームを編成して対処しているが手を焼いているのが現状だ。
その為、電脳空間においても犯罪者と警察の間でイタチごっこが続いている一方、多くの人は根も葉もない噂話を好む為にある噂が広まっている。
それは、電脳空間と繋がっているデジタル・ワールドの生命体であるデジモンの中でも屈指の実力を持つロイヤルナイツの他に、彼らの実力に匹敵するオリュンポス十二神や天帝八武衆と繋がりがある人物がいる、と真偽不明の噂が広がっているのだ。
そもそも、デジタル・ワールドに行く事自体がフルダイブ型の電脳空間が整備された現代においても不明な為、デジタルワールド自体を疑う人がいる中でロイヤルナイツ達と関係を深められる人間がいるとは思えないと言う考えが主流である。
もっとも、噂の大元になった衛からすれば「デジタル・ワールド中を探索しきるのに3年程、必要なぐらいには広大なのにイリアスやらシャンバラまで探索しきれなかったなぁ」との事で、否定も肯定もしないで黙る事にした。
その為、噂は噂のままだったのだがその噂を知った衛や悠馬達のクラスメイトが悠馬を誘い、悠馬が衛を誘った事でダークウェブに潜り込む事になったのだが当の本人からすれば良い迷惑だった。
「絶対絶対ぜーったい居るって!」
「私としては俄かに信じ難いけどな」
「まぁまぁ。都市伝説レベルの噂なんだし、そこまで対抗心を言い争わなくともいいんじゃないかなぁ?」
案の定、悠馬達が探索しようとした場所は電脳空間におけるダークウェブにある空間だった為、日常的に使っているVPNとは違うVPNを使って彼らを招待して一緒に潜っている。
VPNはサービス業者によって用途が変わるが、個人的にはセキュリティ機能が充実している物を使用している。公私共に危険度の高いダークウェブなんかに潜ったりするしね。
また、2つ以上のVPNを使っているのは探偵と言う職業によって個人で行動する場合が多い為、普段から使っているVPNのアカウントに他の人を招待するとその人から情報が漏れる可能性をなくす為に使っている。
その為、使用端末からVPNの暗号化を高度化する為の有料会員と言った諸経費は倍になるが、足を付かせない為には必要経費だと割り切って必要な場合に限って別口で使っている端末の電源を付けたり、VPNの有料会員になったりしている。
そんな俺の気苦労を知らず、呑気に言い争っているのは俺や悠馬のクラスメイトにして悠馬に気がある女友達であり、どこぞやの恋愛原子核レベルのモテモテっぶりですなぁとドヤしたくなるレベルでイチャついている。
これが前世の俺であれば、彼女いない歴=年齢の非モテの僻みとして“リア充は爆発しろ!”と呪っていた所だ。
「しっかし、衛が複数のデジモンを扱えるとはね」
「そーそー。そう言う話、一切しなかったじゃん?」
「まー、言う必要なかったしねぇ。それに、デジモンっつーと危ないイメージがあるから下手に言いふらしたらそれはそれで問題があるしね」
「まぁな。実際、犯罪にも使われてるって話もあるしな」
そんな俺が、悠馬達と普通に話しているのはリリスモン達がいるからに他ならないが彼らにリリスモン達 複数の女性を侍らせるクソ野郎と思われたくないので成熟期まで退化させている を引き連れている事を話したのはこれが初めてである。
何しろ、誰もがフルダイブ型の電脳空間を使えるようになった事に加えて、理由が明確にできないものの電脳空間とデジタルワールドが繋がった事によって幅広い人間がデジモン達を使役するようになった。
それこそ、警察や軍隊と言った官庁の人間からハッカーなどのアウトローな輩まで彼らを扱うようになり、犯罪に彼らが使われた事がセンセーショナルに取り扱われる事が多くなってしまった。
勿論、ハッキング対策や公演なんかで活用を続けるデジモンも居るのでそこまで悪印象ではないが、近寄り難い存在と言うのが一般的な印象な為に俺は率先してリリスモン達の事を話したりはしなかった。
「それで、どこまで行くんだっけ?」
「このエリアを一通り、見て回る感じだな。何もなければそれで良いんだが………」
「まー、何かあると思っといた方が良いよ? ただでさえ、ヤベー場所に潜ってんだからよ」
「だよなぁ」
そんな事を悠馬と話す一方、俺らのクラスメイトは観光気分で来ている事が彼女達の話し声から察する事ができる為、リリスモン達は周囲を警戒する為に押し黙っている状態だ。
こりゃ、リリスモン達の姿を見せずに合流した方が良かったかなと思いながら悠馬達が探索しようとしたエリアに同行して一通り、見て回ったが梨の
「結局、なーんにもなかったねー」
「まぁ、都市伝説レベルの噂だったしね」
「寧ろ、ある方が不思議」
今回の探索で、何の成果も得られなかった事に悠馬以外のクラスメイトが思い思いに感想を言ってきたので、君ら何もしてなくない?と思ったもののそれを口に出さず、適当に返事をしながら現実世界に戻るように進めると次々にダークウェブから離脱していった。
後日、悠馬に理由を聞いてみると天然ボケでアホっぽい言動をする円香辺りの発案で参加したせいで、そこまでやる気が出なかった事らしい。
「ありがとうございました。遠くから見張ってくれて」
「礼は不要。偶々、通りがかっただけだ」
悠馬達が電脳空間内のダークウェブから
普段であれば、決して人前に姿を見せないであろうデジモン、ロイヤルナイツの一員であるドゥフトモンの姿を見かけた際には吹き出しそうになったが、彼は遠くから見てくるだけだったので何とか堪えて平常心を保つ事ができた。
そして、そんな彼が近付いてきたともなればこちらに用があるのは確実だろう。
「それにしても、力無き者にこき使われるとは随分と情けない姿だったぞ」
「人間社会と言うのは色々と面倒でしてね。イグドラシルを救ったあの頃の様には行きませんよ」
「くだらんな。番外席次の名が泣くぞ」
「返す言葉もないです」
ドゥフトモンの言葉に、ぐうの音も出ないのだが決して嫌味ではなく、人の身でありながらイグドラシルを修復し、デジタル・ワールドそのものを救った人間が人間社会に揉まれて生きていると知った事によるショックによるものだ。
確かに、あの頃は夢見がちで向こう見ずな生き方をしていたが、それはあくまでデジタル・ワールドと言う現実世界とは別の世界で問題を解決する為に命懸けで動いたからに過ぎない。
そして、それは人間からすれば一晩の夢の様な時間だったが故に、現実世界に戻れば1人の人間として生きていくしかなくなるのだ。
「まぁ良い。それより、ここ最近は退屈で仕方ないのだ。戦いに付き合え」
「そこまで時間は掛けられませんが、喜んで!」
そんな俺を見かねて、ドゥフトモンはデジタル・ワールドで修行を付けて貰っていた時の様に、直に手合わせをしてくれた。
とある方からメッセージにて、本作の世界観を含めた話を投げかけられたのでそういや本作でそれらについて言及してねぇやと思って書きました。
世界観等の設定をまとめた物をプロローグ前に投稿するつもりですが。
それはそうと、主人公達が電脳空間で窮地に陥って颯爽と現れたロイヤルナイツに助けられるって言う展開も考えましたが、時期尚早と言う事でお流れに。