広大 side
「 まさか、貴方がやってきてあの少年の身元引受人を引き受けるとはね」
「バイトではあるが、彼は私の探偵事務所に所属する立派な探偵助手だ。その彼が身元引受人に私を指名したのだから来るのは当然だ」
「彼の両親は何の仕事を?」
「両親共に自動車会社に勤めていて、今は海外出張との事だ」
警視庁が管轄する方面本部*1において、私は公務執行妨害の容疑で捕まった衛君について方面本部の幹部と話し込んでいた。
普通の家庭であれば、彼の身元は彼の両親や親族が引き取るのが普通ではあるものの当の本人達は海外出張で不在な上、近場に親族が暮らしていないのも相まって彼自身から私に連絡が来たのでこうやって足を運んで話をしている。
「元公安の貴方がやって来るという事はそれだけ、彼が重要な存在だと?」
「少なくとも私の従業員である事には変わりない。それで充分でしょう?」
とは言え、後が詰まっているので早めに彼を引き取りたいのだが相対する幹部から根掘り葉掘り聞かれたが、適当に交わしながら引き取りの手続きを済ませると衛君がいる部屋に向かった。
「手続きが済んだぞ」
「あぁ、ありがとうございます。来てくれて助かりましたよ」
「お前の両親が海外出張中だからな。下手に面倒は掛けられないだろう?」
「えぇ」
部屋に入ると、棒付きキャンディをタバコみたいに咥えながらボケっと椅子に座っていた為、声を掛けると我に返って立ち上がったので彼と共に建物の出口に向かいながらこれからの予定の打ち合わせをした。
本来なら方面本部の建物ではなく、警視庁本部の建物で彼との対話が行われているのだが組織としては宿命とも言える派閥間での争いで、方面本部に勾留される事になったのでそこそこの遠回りになった。
これも電脳科と言う発足してから日が浅く、派閥としては弱小とも言える立場からすればやむを得ない事情とは言え、彼には損な立ち回りをさせてしまったのでいずれは何か奢ろうと思う。
「それで、これから警視庁本部の電脳科のメンバーと顔合わせしてもらう。いずれ、彼らと同じ作戦を行なってもらうかもしれんからな」
「1つ確認なんですが、今回の戦闘で戦ったメンバーの実力ってどの程度なんでしょう? 外れ値の自分が言うのは差し出がましいのですが、かなり頼りなく見えたものでして」
「………電脳科の中では上位とだけは言っておく」
「………さいですか」
そして今後、電脳科のメンバーと鉢合わせる場合があるから顔合わせする為に警視庁本部へ行く事になったのだが、その際に彼から質問を受けたので取り繕った回答をするとかなり渋い顔をされた。
それも当然で、電脳科のメンバーが従えるデジモンは成熟期までが大半で完全体に進化させたのが少数に留まっている事を踏まえると、複数の究極体を従えている彼からすればかなり心許ないと言える。
「そんな顔をするな。これでも彼らは頑張っている方さ」
「進化させるスピードは人それぞれですから、それに関してはとやかく言いませんが可能な限り、早急に究極体まで進化させた方がいいっすねぇ。そうすれば余程、相性なんかで悪い状況でもない限りはスペックでゴリ押せますから」
「後で伝えておこう」
衛君の言う通り、デジモンは世代を経る毎にスペックが大幅に変わる生物であり、成長期よりも成熟期の方が強くなるので、究極体を複数従える彼からすれば心許なく思えるのは仕方のない事ではある。
その為、彼に電脳科のメンバーに紹介するのと同時に進化させる為の方針とかを聞き出せたら良いな、と思いながら彼と話しながら車に乗って警察庁本部へ向かった。
衛 side
「 チェンジで」
「そう言いたい気持ちも分からんでもないが、それを曲げて頼むよ」
広大さんの頼みから、警視庁本部の電脳科に割り当てられた部屋にてメンバーと顔合わせしたのだが、彼らと話した結果として他の人に変えるように広大さんに言ってしまった。
いやまぁ、公安に所属している以上は警察としての仕事が優先するのは仕方のない部分はあるけど、仮にもデジモンに対する公的機関の対抗組織である以上は手持ちのデジモンとの関係性は重要なのだが、彼らの間の関係性は決して良くはない。
仲が悪くて碌に戦えない、と言うレベルなら電脳科から外されているとの事でデジモンとの関係性が致命的に悪い人は居ないのだが、デジモンと凄く仲が良いと言う人は少数派と言った感じだろうか。
言ってしまえば、ビジネスパートナーとして可もなく不可もない感じなので、3年もあって一体何してたの?と聞きたくなるレベルだ。
「いや、戦闘時の戦力から期待してませんでしたがここまで来ると失礼ながら本気でやる気ありますか?って聞きたくなるんですが」
「さっきから黙って聞いていれば失礼な事を次々に 」
「それだけ弱いって事ですよ? 自覚ないんですか?」
俺の言葉に、電脳科のメンバーの1人が声を上げたのだがそれを遮って答えるとその人は黙ってしまったのである提案をした。
「とは言え、10代半ばの若造に言われても納得できないでしょうから電脳世界で直に模擬戦でもしましょうか」
「良いのか?」
「別に構いませんよ。見せるにしても完全体までですしね」
実際、デジモンとの戦闘で敵対するデジモンの調子についてしっかりと確認できる余裕はそう多くないから、今の内に完全体としても高い実力を持つリリスモン達*2と模擬戦をすれば指標の1つぐらいにはなるだろう。
勿論、相手に合わせて世代を調整するから究極体で戦う事はないし、完全体までの彼女達には相手の精神を叩き折るぐらいには全力で戦えと言っておくので舐められなくなるだろう。
いくら、学生とは言っても現時点においてデジモンテイマーの頂点に立つぐらいには強いしね。
そんな訳で、俺に反論してきた人を筆頭に電脳科のメンバーに対してボコボコにすると、彼らも何も言えなくなったようなので広大さんに断りを入れて警視庁本部を後にした。
はい。結局、リクエストに応えられなかった作者が通りますよっと。