サッカーモンスターの片割れ   作:小松菜せろり

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私の全ては愛しいあなたの為に(意訳)


難産かつだいぶコネコネしました。
かなり人を選ぶような内容になっているかもしれません。
ご注意下さいませ。


All for you, my love

 幼少期から両親から厳しい教育を受けてきた。

 

 両親のことは大好きだ。

 サッカーをしている時以外は普通の親子でいられる。

 

 父は元プロのサッカープレイヤーで

 自国では期待をされていた選手だった。

 父も己のサッカーに誇りと自信を持っていた。

 

 しかしその誇りと自信は

 東の小さな島国からやって来たポッと出の余所者の

 輝かしい才能によって粉々に砕かれてしまった。

 

 父はそれでも諦めきれず

 その輝かしい才能に追いつこうとした。

 練習量を増やし サッカーに全てを費やした。

 

 しかし父はその半端にあってしまった

 才能ゆえに気づいてしまった。

 

 

 どうやってもあの余所者には勝てない。

 

 

 焦燥が怪我を生み父は選手を引退した。

 

 選手を引退した父は同じく元選手だった母と結婚して

 サッカーと離れた安寧の生活を送った。

 

 そうしてしばらくして私は生まれた。

 

 生まれてしまった。

 

 

 父の不幸は二つ。

 

 あの円堂守と同世代に生まれてしまったこと。

 私がその円堂の子供たちと同じ世代に生まれてしまったこと。

 

 その事実は父の燃え尽きたはずの焔を

 滾らせるに足るものだったらしい。

 

 それは優しい筈の父を妬き尽くしてしまった。

 

 皮肉にも父の半端な才能は私にも遺伝した。

 

 

 朝から晩までサッカーをした。

 

 すべてはまだ見ぬ小さな島国に住む円堂守の子供の為に。

 

 私は 繧オ繝? き繝シ縺悟ォ後>縺? (サッカーが◼◼◼だ) 

 このボールひとつに私たちは壊された。

 

 それ以上に円堂が大嫌いだ。

 その血のせいで私の人生までめちゃくちゃにされた。

 

 分かっている。これはただの言い掛かりだ。

 それは分かっている。

 

 だが私はそうでもしなければ父が哀れで仕方ないのだ。

 

 

 

 才能に恵まれ サッカーを心から愛した。

 

 そしてその才能に

 サッカーに愛されたのは己ではないと突きつけられた。

 

 それでも諦めきれず縋った。

 

 泥臭く絶望をしながらも。

 周囲や自分の期待を裏切り続けながらも。

 

 待っていたのはさらなる絶望だった。

 

 努力をすればするほど。全てを賭ければ賭けるほど。

 

 

 

「お前ではない。お前ではないのだ」

 

 

 

 そう無情に何度も突きつけられた。

 

 それでも父は愚かにもサッカーを嫌いになれなかった。

 

 だから全てを捨てた。

 築いた地位も輝かしい過去も。

 

 ようやく全てを 愛するサッカーを忘れた頃に

 私は生まれた。生まれてしまった。

 

 あの円堂の子供と同世代に。

 

 それは父にとって最後のチャンスだった。

 

 あんなにも苦労をして離れたサッカーを。

 目の前に垂らされた細い細い蜘蛛の糸を父は迷わず掴んだ。

 

 

 父は酔うと必ず私に謝る。

 

 

 本当にすまない。愛しているんだ。本当にすまない。

 

 

 きっと無意識なんだろう。

 父は必ず 何を 愛しているのか言わない。

 

 ああなんて哀れなんだろう。なんて愚かなんだろう。

 

 なぜそれでもまだ愛おしく思えてしまうのだろう。

 

 幸せな記憶が。父が教えてくれたサッカーが。

 この哀れで愚かな血がその感情を否定する。

 

 

 

 遘√? 繧オ繝? き繝シ縺悟ォ後>縺? (私は◼◼◼ーが◼いだ) 

 | 遘√? 蜩? 繧後〒諢壹°縺ェ辷カ繧呈? 縺励※? k《私は◼れで◼かな父を◼◼し◼いる》

 

 

 

 ならば私は父の為にサッカーをしよう。

 どれだけの苦労も厭わないと誓おう。

 

 遠い小さな島国の中学に通ってみせよう。

 

 幼い頃からの将来を語り合った友人も

 慣れ親しんだ環境も

 大事なものも全部捨てて。

 

 すべてはまだ見ぬ輝かしい才能に妬かれた

 哀れで愚かでそれでもまだ愛おしい父のために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直に言うと油断をしていた。

 

 雲明くんの作戦や戦術は見事なものだったし

 練習を重ねた南雲原の皆は

 北陽戦の時よりも格段に動きが良くなっていた。

 

 東風異国館はメンバーのほとんどが

 留学生で構成されていて

 そのずば抜けたフィジカルが特徴的だ。

 

 それでも今の南雲原ならば

 差をつけて勝てるだろうと心のどこかで思っていた。

 

 

 しかし試合が終わってみればスコアは2-3。

 辛勝と言っても差支えのない結果だった。

 

 

 これは明らかな異常だった。

 

 確かに南雲原は前半守備に徹していた。

 それでもカイ吉崎を中心とした

 東風異国館の火力に押され2点を許してしまった。

 

 だが攻撃力なら南雲原も負けていない。

 

 桜咲先輩と忍原先輩の【春雷】に

 認めたくはないけど あの空宮征が加われば

 全国でも強豪にも負けない火力を持つ。

 

 雲明くんの策が功を奏し体力切れで

 ほぼ動くことが出来なくなった

 東風異国館の選手からボールを奪い続け

 後半だけで10本近くのシュートが打たれた。

 

 

 だがその悉くが止められた。

 東風異国館のGK マルティノ・レオーネによって。

 

 

 事前情報から彼とカイ吉崎は

 要注意人物として雲明くんから挙げられていた。

 だからこそ警戒はしていたが

 それでもまだ過小評価だったようだ。

 

 

 印象的だったのは

 

 彼の私を見つめる憎悪の入り混じった視線と

 終盤に見せた謎の影だ。

 

 南雲原のシュートを10本も受け止めることは

 GKであっても体力的に不可能に近い。

 

 体力がおそらく限界に近づいた時、彼は私を見たのだ。

 

 私は何故か彼に強い同情と哀れみを抱いた。

 

 彼のやるサッカーは苦しそうで

 どこか懐かしみを感じてしまったから。

 誰かの期待に応えようと必死に耐えているような。

 抑えきれない何かが溢れようとしているような。

 

 とにかくその瞬間 彼は異常な執着を見せた。

 

 それは私に向けられたものだったのか

 ゴールを守るために向けられたものだったか。

 サッカー自体に対するものだったのか。

 

 それは私にはわからなかった。

 

 

 だけどその時 彼の体から謎の影が浮かんだ。

 きっと憎悪や執着といった感情を

 形にすればこうなるんだろうと思わせるような

 そんな剥き出しのなにかだった。

 私はそれを知らなかった。

 でもそれに近しいものは知っていた。

 私の知っているものはもっと醜かった。

 

 人の形になり損なったようなその影は

 強化されたはずのあの春雷まで止めてみせ

 その影が収まるまで東風異国館のゴールは割られなかった。

 

 あんなにヒヤヒヤして

 サッカーを見るのは初めてだった。

 

 勝っているはずなのに

 背筋には冷たい何かが迫り続けるような

 そんな不気味な試合だった。

 

 ようやく試合終了を告げるホイッスルが鳴る。

 

 何はともあれ勝利を収め

 喜びを分かちあっている私たちの前に

 

 彼、マルティノ・レオーネはやってきた。

 

 

 

 彼は警戒する南雲原の皆の横を通り過ぎて

 

 私の目の前に立った。

 

 桜咲先輩と柳生先輩が間に立とうとするが

 私が手を使い制止する。

 

 彼は憎悪のような複雑な感情が入り交じった表情で

 カタコトな日本語を使いながら私に聞いてきた。

 

 

 

「円堂、アナタはサッカーがスキですカ?」

 

「嫌いよ。少なくとも好きではないわ」

 

 

 

 考える間もなく口から零れた。

 周りからは困惑と驚きの声が上がる。

 わかっている。この場においては私が場違いだ。

 

 南雲原に来てから少しずつ私も変わった。

 でもまだこれは変わらない。いや変われない。

 

 私はまだ醜いままだ。

 

 

 彼は少し鳩が豆鉄砲を喰らったように呆然とした後

 

 

 

「ワタシもデス。オナジですネ」

 

 

 

 憑き物が少しだけ落ちたように。

 なにかから解き放たれたみたいに。

 心の底から可笑しそうに笑った。

 

 それがひどく印象的だった。

 

 

 彼は満足したように振り返り、

 もうこちらを見ることはなかった。

 

 私はその後ろ姿が何故か羨ましかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が復讐しようと思っていた

 憎くて憎くて堪らないはずの少女は

 

 伝説のサッカープレイヤー円堂守の娘(かいぶつ)でなく

 サッカーモンスターの双子の妹(ばけもの)でもなく

 

 

 ごく普通のただの女の子だった。

 

 それはつまり私で。父でもあった。

 

 

 思わず笑ってしまった。

 そんなくだらないオチがあるのかと。

 

 だが、そうと知ってしまえばもう恨めない。

 

 ただ彼女の幸せを祈る。

 彼女もまた呪われているのだろう。

 

 私の復讐のためのサッカーは終わったのかもしれない。

 

 

 それでも私のサッカーは終わらない。

 

 皮肉なことに私は

 自分の才能に絶望しながらも

 それでもサッカーを嫌いになれなかった

 哀れで愚かで、それでもまだ大好きな父の血を引いている。

 

 

 私はサッカーが嫌いだ。

 このボールひとつに人生を壊された。

 

 だけどサッカーを辞めようとは思えなかった。

 

 これは同時に父との思い出でもあったから。

 

 最近やっと少しだけ ほんの少しだけ

 東洋たちとやるサッカーが楽しくなってきたから。

 

 誰かのためにサッカーをするのは辞める。

 

 これからは自分の為にサッカーをする。

 

 

 それできっといつか いつか

 皺くちゃになった父の手で撫でられながら言われるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりお前は自慢の息子だ」と。





まず初めに読んでくださりありがとうございました。

お恥ずかしながらスランプと言いますか
本当に展開を上手く作れず苦戦していました。
もしかしたらいつもより深堀りできておらず
拙い文になっているかもしれません。
重ねてお詫び申し上げます。

前書きでも書きましたが捏造がございます。

捏造におきましては
作者の独自解釈と
なるべく本編の刷り直しにならないように
という点に重きを置いています。

マルティノ・レオーネは
何かの折で選手の説明文を読んだ時から
ずっと忘れられず書かせていただきました。

これからも何卒よろしくお願いします。
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