サッカーモンスターの片割れ   作:小松菜せろり

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やっとボールが蹴れました。
クロスオーバー要素というか
ナツの特殊能力がやっと拾えます。
クロスオーバー作品のキャラとかは
登場しないのでご注意下さいませ。


恐怖!!【才能喰らい】!!!

 

「え、ナツのサッカー実力ですか???」

 

 

「あぁ あの円堂さんの娘でハルの妹だろ? 

 どんなサッカーをするのか 少し興味があってな」

 

 

「……薄々思ってましたけど

 蓮さんて、とっちゃんのこと大好きですよね。

 あと そのとっちゃんの娘で、俺の妹だから〜ってやつ

 絶対にナツに言っちゃダメですからね」

 

 

「まあ憧れの選手だからな。

 それはわかったが……どうしてだ? 

 身内にスターがいたら

 普通ならむしろ自慢すると思うが……」

 

 

「……スターって、

 とっちゃんならともかく

 蓮さんは俺を過大評価しすぎですよ。

 

 ……普通ならそうなんでしょうね。

 ナツがサッカーを辞めた原因のひとつは俺らなんですよ」

 

 

「……なるほどそういうことか。

 周囲の過度な期待に潰された……ということか」

 

 

「まあそんなとこです。

 なんで本人にはあんまり触れないであげてください。

 

 で、ナツがどんなサッカーをするのかでしたっけ」

 

 

「……あぁ、今はやったとしてもマネージャー業務だけで、

 そもそも ほぼサッカー部に顔を出さないからな。

 

 急に南雲原に勧誘に行ったと聞いた時は俺も驚いたよ」

 

 

「まぁ……とっちゃんと俺と

 血は同じですからね。行動力はありますよ。

 

 ……また話がズレちゃいましたね。

 ナツのサッカーの話ですよね。

 

 みんなは俺のことを天才だとか

 サッカーモンスターなんて言いますけど」

 

 

 

 

 

 

 

「本当の天才は俺じゃなくてナツの方ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 桜咲先輩と忍原先輩の提案で

 円堂ナツの入部テストがはじまった。

 

 本当は北陽学園戦が近いから

 二人には連携必殺技の開発に集中してほしいんだけど……

 

 正直 円堂ナツの実力は僕も気になる。

 

 桜咲先輩が言ってたような 円堂だからじゃなくて

 単純に円堂ナツの実力が気になる。

 

 ハルとは違う何かを感じる。

 

 あと今朝 調べたあの噂が本当なのか 確かめたい。

 

 もし本当ならそれは南雲原というチームを

 更に強くするかもしれない。

 

 

 

 

 

 入部テストの形式は2チームに別れて行う。

 

 と言っても

 円堂ナツを敵視する 桜咲先輩 忍原先輩、

 面白がって参戦した 柳生先輩

 の3人の南雲原チーム

 

 に対する円堂ナツ

 という形になるんだけど、

 

 その2チームが四川堂先輩をキーパーとして3本のPKを行う。

 

 練習前に消耗させてしまうのは申し訳ないが

 本人には「こっちもいい練習になるからね」と爽やかに返された。

 

 ……四川堂先輩にはいつも頭が上がらない。

 うちは子供みたいな先輩ばっかりだから。

 

 何かを感じたのか

 

 アップをしていた桜咲先輩と忍原先輩が

 ギロリとこっちを睨む。

 

 僕は慌てて円堂ナツの方に視線を向けた。

 

 

 円堂ナツは困惑したようにキョロキョロしたり

 リフティングをしようとして緊張からか上手くできずに

 忍原先輩にからかわれたりしていた。

 

 ……大丈夫だろうか。

 

 そんな心配をよそに入部テストが始まる。

 

 

 

「じゃあ 私から行かせてもらうよ!!!」

 

 

 先行は南雲原チームのようだ。

 

 四千堂先輩がゴールにつき、

 忍原先輩がシュートのモーションに入る。

 

 ダンスの経験を取り入れた 忍原先輩だけのシュート。

 

 

 

「ぐるぐるシュート!!!!」

 

 

 

 回転をうけてボールが飛んでいく。

 ボールは四川堂先輩の手を弾いてゴールへと吸い込まれた。

 

 悔しそうにボールを見つめる四川堂先輩とは対照に

 離れたところで忍原先輩がはしゃいでるのが見える。

 

 

 

 

 

 でも僕の視線は円堂ナツに奪われる。

 

 

 

 

「じゃあ次はなっちんね!!!」

 

「……なっちんはやめてください。わかりました」

 

 

 

 それは忍原先輩が話しかけたことによって途切れた。

 

 

 

 ゴールの正面に向かっていく。

 ボールを地面に置くと

 

 

 円堂ナツは深呼吸をして

 

 

 

 

 

 

 

 長く赤い髪を耳にかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 グラウンドが静まり返る。

 

 まただ。さっきと全く同じ。何だこの集中力は。

 

 さっき忍原先輩がシュートを打った時も。

 

 円堂ナツは凄まじく集中して観察をしていた。

 まるで動作をひとつも見逃さないようにしているように。

 

 

 

 

 

 円堂ナツが放ったシュートは

 

 グローブに触れることなく

 

 ゴールに吸い込まれていった。

 

 

 

 

 四川堂先輩は動けなかった。

 それどころか誰も動けない。

 

 グラウンドは動揺につつまれている。

 

 

 いちばん動揺していたのは忍原先輩だろう。

 

 

 

 それはそうだろう。

 

 

 

 

 なぜなら円堂ナツが撃ったのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 忍原先輩しか使えないはずの

「ぐるぐるシュート」だったんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全無欠の模倣(パーフェクトコピー)???」

 

「はい。ナツは一度プレーを見さえすれば

 大抵の人の必殺技や動きを模倣できます」

 

「そんなこと……ありえるのか???」

 

「……まあ色々と条件はあるみたいですけどね。

 

 ナツはズバ抜けて目がいいんです。

 サッカーセンスや身体能力も俺と大差ありませんし。

 

 まあ流石に俺が勝ちますけどね。

 

 

 

 でもナツの目だけは別です。

 

 あれはとっちゃんも認める正真正銘の特別製です。

 

 その化け物じみた目が

 

 ナツの完全無欠の模倣(パーフェクトコピー)を成立させてるんですよ」

 

 

 

「な なんでそんな才能があるのに

 円堂ナツはサッカーをやってないんだ!?」

 

 

 それは才能の損失じゃないかと

 

 我慢できず大きな声を出し 思わず立ち上がる。

 

 離れて練習をしていた部員たちが

 何が起きたのか怪訝そうに視線をこちらに向ける。

 

 思わずハッとする。誤魔化しながらベンチに座る。

 

 

 そこでようやく気づく。

 

 

 遠くを見つめるハルの視線が冷たいことに。

 

 

 

「逆ですよ。

 

 才能があるからナツはサッカーを辞めた。

 

 サッカーを辞めさせられたんです。

 

 

 ナツの才能は【他人の才能をへし折る才能】なんです」

 

 

 

 ハルの拳を握る力が強くなる。

 

 俺の視線に気づいたのか、

 誤魔化すように ヘラっと笑ってみせる。

 

 

「まあお陰で 俺は無茶しなくて済みましたけどね。

 

 妹ができるのに兄ちゃんができないなんて

 格好がつきませんからね。必死に裏で練習してましたよ。

 

 だいぶ今に活きてるとは思いますけど」

 

 

 ハルの強さの裏側を見た気がする。

 

 でも それだけ恐ろしい才能が敵にならなくてよかった。

 同時に味方になったのならどれだけ頼もしいのだろうか。

 

 そんな呑気なことをハルと話しながら考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが【才能喰い】……」

 

 それはクラブで数試合だけした円堂ナツについた異名。

 

 その才能は敵を絶望させ 味方をも絶望させてしまった。

 周囲からの畏怖や蔑みが込められてつけられたもの。

 

 

 

 入部テストのスコアは結局 2対2で引き分けになった。

 

 士気はあがるどころか 対戦した先輩達だけじゃなく

 観戦していた選手たちもどこか意気消沈している。

 

 それも何もおかしな話じゃない。

 

 

 忍原先輩の「ぐるぐるシュート」

 

 柳生先輩の「天空サンダー」

 

 桜咲先輩の「剛の一閃」

 

 そのすべてが円堂ナツに模倣された。

 

 技どころか 動き、柳生の先輩の動揺もそのまま。

 

 

 その結果が同点という結果を招いた。

 

 

 

 そんな動揺の中心地で

 

 円堂ナツは酷く居心地が悪そうにしていた。

 

 その表情は過去の苦い経験を思い出してるようだった。

 

 

 

 

「うわあ これが円堂の血かぁ」

 

 

 

 

 

 絞り出したように木曽路が呟く。

 

 

 赤い髪と肩がビクッと震える。

 

 キツそうな目も 自信に溢れた表情も 今は見る影がない。

 

 あぁそうか、彼女はこういう目を向けられてきたのか。

 

 

 

 それはサッカーを嫌いになるはずだ。

 

 

 

 偉大な父や兄の好きなサッカーを好きになりたくて

 ふたりみたいになりたくてサッカーを始めたのに。

 

 

 敵どころか仲間までも自分の才能を理由に辞めていく。

 

 

 周囲の大人たちは努力や才能を、

 本人を見ずに 理由を無理やり『血』に当てはめる。

 

 

 

 なんて窮屈なサッカーなんだろう。

 

 

 

 だから彼女はサッカーから離れた……のかもしれない。

 

 

 

 

「それは違うよ木曽路。

 

 彼女の、円堂さんのプレーは特別な目がありきだ。

 

 

 しかも必殺技も全部 工夫があった。

 

 

 忍原先輩のダンスの要素は柔軟性と俊敏性で

 

 柳生先輩の高さや恵まれた体格は脚力や身体能力で

 

 桜咲先輩の天性の脚力は体のバネやしなりで

 

 

 目で集めた情報に極限まで近づける。

 

 

 

 

 それはナツさんの才能であって 血は関係ないよ。

 

 だから僕はその言い方は好まない」

 

 

 

 

 

 

 多分 木曽路にはこれで伝わる。

 

 木曽路はサッカーの経験がある。

 

 それに感情に機敏で 他人の痛みに優しい。

 

 

 

 

「……そう、だな。ごめん!! 円堂さん!!! 

 

 家族がどうこうは関係なく、

 それは間違いなく本人の力だよな。

 

 分かってたはずなのにな。本当にごめん!!!」

 

 

 木曽路は思いっきり頭を下げた。

 

 周りのみんなもハッとした表情を浮かべた。

 

 

 

「……円堂、いやナツ。俺も謝る。

 

 悪かった。親がどうこうって言われるのは

 俺が一番嫌いなはずなのによ。

 

 他人に言っちまうなんて……。すまねえ」

 

 

 桜咲先輩も頭を下げた。先輩は人の気持ちが分かる人だ。

 

 最初につっかかった時にも、さっきも、

 

 円堂さんが、ナツさんが歪んだ顔をしていたのを

 思い出したんだろう。

 

 

 続くように部員のみんなが声をかける。

 

 

 

 当の本人は酷く落ち着かなそうにしている。

 

 こういう状況に慣れていないのだろう。

 

 

「しゃ、謝罪は結構です! 頭を上げてください!! 

 

 ……確かに言われて嬉しい言葉ではないですけど

 

 兄様と父様は私の誇りであることに

 変わりはないですから!! 頭を上げてください!!!」

 

 

 そんなやり取りを繰り返したあと、

 ナツさんは肩を上下にしながら 息を整えた。

 

 

 

 なんか、すごく疲れたな。

 

 

「まあとにかく。円堂さん、面倒だからナツさんにするね。

 ナツさんの入部を認めるよ。みんないいね?」

 

 

 

「おっけー。よろしくね ナツさん!!」

 

「もっちろん!! よろしくね!! なっちん!!!」

 

「僕ももちろん賛成だよ。頼むよ、ナツさん」

 

「もう反対なんてしねえよ、よろしく頼むぜ ナツ」

 

「あんなプレイされたらな。俺も頼む、ナツ!!」

 

「僕もよろしくお願いしますね!! ナツさん!!!」

 

 

 

「ッ!?!? ま まぁこちらからもお願いするわ。

 なっちん呼びは気になるけど 許してあげまひゅ!!!」

 

 

 

 

 あっ 最初 すごく嬉しそうにしたな。

 

 あっ 噛んだ。恥ずかしいよね。わかる。

 

 というかナツさん 結構ツンデレなのかな。

 猫を見てるみたいだ。少し失礼か。

 

 

 

 

 

 

 みんなが新しい仲間ができた! と嬉しそうに騒いでる中

 

 ナツさんがコソコソとこっちにやってきて袖を引く。

 

 

 

「う、雲明くん。

 さっき言ってくれたこと感謝するわ。

 

 マネージャーとして出来ることはするつもりだから。

 何かやってほしいことがあったら声をかけてちょうだい。

 

 そ、それとなんだけど……私のことはナ、ナツでいいわ」

 

 

 

「いや、でもみんなは さん付けだし……」

 

 

 

「そ そんなの、先輩たちは呼び捨てだし

 忍原先輩に至ってはなっちん呼びだし、

 

 私は気にしないわ!!! ナツって呼びなさい!!

 

 マネージャー命令です!!!」

 

 

「えぇと 、

 一応 僕が監督兼キャプテンなんだけど……

 

 分かったよ、ナツ。これからよろしくね」

 

 

「ッ!! それでいいのよ!! よろしくお願いするわ!!」

 

 

 

 こうして 僕らに新しい仲間ができた。

 

 

 正直 心強い。北陽学園や強豪を倒すには、

 

 僕らを強くするためにはナツの力はとても役に立つ。

 

 

 

 すごく視線を感じて 振り返ると

 

 さっきのやり取りをこっそり見ていたであろう

 みんながニヤニヤしている。

 

 

 なんだろう、なんかすごく恥ずかしい。

 

 そこまで変なやり取りはしてないはずだ。

 

 隣を見るとナツは顔を 髪と同じくらい真っ赤にしている。

 

 

 

 

「ところで、連携必殺技を作るって言ってたけど。

 

 それはどうするつもりなんだい?? 笹波くん」

 

 

 

 四川堂先輩が場を仕切り直すように話を振ってくれる。

 

 正直 助かった。凄い居た堪れなかったから。

 

 

 息を整えてこれからの予定を話していく。

 

 みんなは切り替えて

 真剣な表情でこちらに耳を傾けてくれている。

 

 

 

「最初に言ったけど、

 忍原先輩と桜咲先輩には連携必殺技を編み出してもらう」

 

「おう、任せとけ」「やってみせるよー!!」

 

 

 

 ナツのプレーを見せつけられた時と打って変わって

 自信に溢れた表情を見せる二人。

 

 この二人なら大丈夫だ。もっと強くなれる。

 

 

 

「その他のメンバーも強化のため、

 特訓を重ねてもらいます」

 

「まかせとけ!!」「おう!!」「がんばります!!」

 

 

 

 

「じゃあ北陽学園戦に向けて頑張っていきましょう!!」

 

「「「おう!!!」」」 「「「はい!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 みんなが雲明くんの指示を受けて

 それぞれの練習に移っていく。

 

 やっぱり彼には特別な才能がある。

 人を魅了して、導いていく、そんな才能が。

 

 私もマネージャーとしてできることをしよう。

 

 千乃会長と百道先輩の元に行こうとして、

 雲明くんに止められる。なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナツには北陽学園戦まで選手として協力して欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え??? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 完全無欠の模倣(パーフェクトコピー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 声に出さなかった私を誰か褒めて欲しい。

 |完全無欠の模倣(パーフェクトコピー)《》




ここまで読んでくださりありがとうございます。
拙い文で 結構グダリがちなのに
お気に入りとかして頂けてるのを見て
ずっとひとりでニコニコしてます。
誤字報告の方も大変有難いです。
本当にありがとうございます。
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