サッカーモンスターの片割れ   作:小松菜せろり

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やっぱ台詞とか書きたい演出がしっくり来てなくて
今回はいつもより読みにくいと感じるかもしれません。
大変申し訳ないです。よろしくお願いします。



起こされた眠れる獅子!!!

 

 

「ナツには北陽学園戦まで選手として協力して欲しい」

 

 予想していなかった提案に

 驚きを何とか飲み込み、言葉を紡ぐ。

 

 

「それはどういうことかしら。

 

 勘違いをさせたのなら悪いのだけれど

 私は選手として試合に出るつもりはないわ。

 

 あくまで私の目的は雲明くん、貴方だから」

 

 

 協力はする。その言葉に嘘はない。

 

 でも選手として試合に出る。そうなると話は変わる。

 

 私はあくまで雷門の人間だ。南雲原には籍を置くだけ。

 

 

 それに、まだ他人の前でサッカーをするのは抵抗がある。

 

 

 

 ……忍原先輩、告白じゃないですから!! 

 からかわないでください!! 聞こえてますからね!!! 

 

 

 

 

「勿論 試合に出ろなんて言わないよ。

 ただその目を選手目線で使わせて欲しいんだ」

 

 

 

 なるほど 何となく意図が掴めてきた。

 

 私のこの目は選手の動きがよく見える。

 

 それを選手目線で観察することで

 より情報をプレイヤー視点で落とすことができる。

 

 それを先輩たちに伝達することで

 いわゆるアップデートをするつもりなんだろう。

 

 

 

 

「それくらいなら構わないわ。

 

 でも悪いけれど連携必殺技の開発には携われないわ」

 

 

 

「いいじゃん!! なっちんのけちー!!!」

 

 

 

 ……忍原先輩から野次が飛ぶ。

 

 雷門にはここまで距離感を

 縮めてくる人がいなかったから戸惑う。

 

 でも愛嬌のせいか 憎めない。

 近い。でも拒みきれない。

 

 にやにやしないでください! 撫でないで!! 

 

 忍原先輩の手を何とか剥がしながら説明する。

 私の目の弱点を。……少しだけ。

 

 

 

「……あのですね、

 

 さっきの雲明くんの言うように

 目を使えば確かに1を2にすることが可能です。

 下手すると10にすることもできるかもしれません。

 

 

 でもその性質上、0を1にすることは出来ないんです」

 

 

 忍原先輩と桜咲先輩は

 いまいちしっくり来ていないのか首を傾げる。

 

 雲明くんが私の説明を補足する。

 

 

 

「……なるほど。

 

 ナツの力はあくまで他人の軌跡をなぞるもの。

 だから技の強化はできても 新しく作ることはできない。

 

 完成していないものは模倣ができないから。

 

 ……その認識で合ってる???」

 

 

「……ええ、そうよ。……期待してくれたのに悪いわね」

 

 

 無意識に口から出た言葉に驚く。

 

 他人の期待や嫉妬から逃げたくてサッカーを辞めたのに。

 この人達の期待は裏切りたくない。

 

 そう思えてしまっていたから。

 

 

 

 ……会ったばかりなのに絆されすぎでしょ私、

 

 思わず頭を抱える。

 

 

 

 でも不思議なことに悪い気はしない。

 

 この人達は円堂ではなく私を見てくれると言った。

 

 だからきっと私はそんな彼らに期待をしたくなった。

 

 

 

「いや全然大丈夫だよ。

 連携必殺技の構想自体はできてるから。

 ナツには客観的な視点からのアドバイスを頼みたい」

 

 

「それなら協力できそうね。早速取り掛かりましょうか」

 

 

 雲明くんの携帯が鳴る。

 

 

 いつも飄々としている表情が崩れる。

 なにかあったんだろうか。

 

 電話を切った雲明くんが

 こちらを申し訳なさそうに見つめる。

 

 その顔に余裕はない。

 

 

 

 

「ごめん、病院に行かなきゃ。母さんが倒れたらしい」

 

 

 

 

 血が少し引く。意識が遠くなる。

 

 母様が倒れる。

 自分の事じゃないのに考えるだけで足が震える。

 

 動揺して何も言えずに立ち尽くしてる間に

 

 桜咲先輩がすぐに病院に向かうように促し、

 忍原先輩がそれに続く。

 

 私は首を縦に振ることしか出来ない。

 

 雲明くんは申し訳なさそうにしながら

 荷物をまとめて校門へと向かっていった。

 

 あまり運動ができない彼の足はそれでも小走りだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雲明くんがいない今、連携必殺技の練習はできない。

 

 

 私はやることがなくなり、呆然としていた。

 

 まだ少し動揺が収まらない。母様が倒れる……。

 想像したくないのにしてしまい血の気が引く。

 

 

 宙に浮かびっぱなしの意識は

 柳生先輩と誰かの言い争う声に引き戻された。

 

 視線を向けた先にいたのは疑いの目を向ける柳生先輩と

 空見征を中心する北陽学園の選手たちだった。

 

 やりとりを聞いてなんとなく事情を把握した。

 

 南雲原中に転入するにあたって

 聞いていた噂は本当だったと確信する。

 

 ちらりと理事長でもある千乃会長に視線を向ける。

 

 会長は私の視線に気づき、

 居心地が悪そうに目線を逸らした。

 

 やはり南雲原中と北陽学園が

 合併するという噂は本当らしい。

 

 

 

 まあそれはいい。それはいいんだけれど。

 

 

 

 

 ……気に入らない。

 

 謙虚に振舞っているようで

 南雲原を格下と侮っているのが。

 

 会話からそれが滲み出ている。

 

 

 それがなぜか酷く気に入らないのだ。

 

 

 

 

 

 

 私はどこか うずうずしている忍原先輩に

 北陽の選手に気づかれないよう こっそりと耳打ちをする。

 

 

 

「できるだけ煽って勝負を持ちかけてください。

 

 

 それと思う存分に必殺技を使って大丈夫なので

 向こうの必殺技をなるべく多く引き出してください」

 

 

 

 忍原先輩は突然の耳打ちに色っぽい声を出したあと

 少し恥ずかしそうに、意外そうにたずねる。

 

 

 

 

「……それ本気? なっちんなら止めるかと思ったんだけど。

 

 まぁ 本当にシュートが通じないのか

 試したかったから丁度いいんだけどね!! 

 

 いくよ!! 桜咲!!!」

 

 

「はぁ、

 

 ま、俺も雲明の言い方には

 気に食わないところがあったんだ。

 

 それに可愛い後輩の頼みだ やってやるよ」

 

 

 

 今日一日でわかったことだけど

 二人は負けず嫌いだ。

 

 チームのために納得したように見えても

 やっぱり自分の必殺技には自信とプライドがあるのだろう。

 

 忍原先輩の挑発が成功したのか

 話はトントン拍子で進み 勝負が始まる。

 

 

 先輩たちには悪いけど ほぼ勝ち目は無いだろう。

 

 雲明くんの言う通りの結果になる。

 

 ……今のままではだけど。

 

 

 

 私には私のやれることをやろうと。

 

 

 

 

 

 

 赤い髪を耳にかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勝負の結果は一方的だった。

 

 スコアは引き分けだったけど、実力差は一目瞭然。

 

 北陽学園の選手達はもう蔑みを隠さない。

 

 

「正直がっかりだよ。過大評価しすぎだったかな」

 

 

 挑発を込めてか侮辱的な発言を繰り返す。

 

 

 一つ気になったのは

 雲明くんの名前を聞いた空宮征の反応だ。

 

 明らかに普通じゃない。

 

 興奮を隠すことができないといった様子だ。

 

 彼の話す雲明くんは今の彼とは全くの別人で、

 どれだけ彼にとってサッカーが大事なものだったのか。

 

 サッカーから逃げた私には全く想像がつかなかった。

 

 

 表情に冷めやまない興奮を残したまま

 空宮征は品野雅士に連れられ南雲原を去った。

 

 北陽の選手が居なくなったグラウンドには

 

 私の入部テストの時ほどではないものの

 どんよりとした閉塞感が漂っていた。

 

 流石の忍原先輩と桜咲先輩も

 必殺技が全くと言ってもいいほど

 通用しなかったことがかなり堪えたようだった。

 

 

 

 

 でもそんなことは正直どうでもよかった。

 今はこの感情を抑えることに必死だった。

 

 

 

 忍原先輩は何も言わない私の様子に異変を感じたのか

 

 視線を向けてぎょっとした表情を浮かべた。

 

 桜咲先輩も驚いた顔をしている。

 

 

 今の私はそんなに酷い顔をしているんだろうか。

 

 雲明くんがいなくて良かったな なんて現実逃避をする。

 

 

 私が抱いているのは南雲原への落胆ではなく

 

 北陽学園への強い怒りだった。

 

 

 さっきの試合で北陽の選手は本気を出さなかった。

 

 下手に情報は出さないように、

 

 だけど実力の差を見せつけ 戦意を削ぐように。

 

 最小限のコストで敵を減らす。

 

 北陽らしくとても効率的な手法だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気に入らない。気に入らない。気に入らない。

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 そっちがその気ならやってやる。

 

 南雲原というチームを舐めた罰だ。

 本当の実力差を見せてあげよう。

 

 

 私は微笑みを浮かべながら指で三を数える。

 

 

 みんなは顔を引き攣らせながら

 不思議そうに私の指の数字を見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……予言します。次の試合のスコアは3-0」

 

 

 

 

 

「北陽は南雲原のゴールを絶対に割れません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女神のように美しく冷たい微笑みを浮かべたまま

 

 かつて【才能喰い】と呼ばれた少女は

 

 彼女の逆鱗に触れた北陽の死の宣告を告げた。

 





『次回!!北陽学園 死す!!!』デュエルスタンバイ!!!


読んでいただきありがとうございます。

多分 次話なのですが
本来の展開とかなり違います。
かなり一方的です。ご注意下さいませ。

もしかすると
投稿の間隔が急に空くかもしれません。
こちらも宜しければご了承くださいませ。
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