無限ダンジョンエンチャ掘りゲーム世界に転生した ※なお、現地住民はエンチャント?何それ?な模様   作:一宮 千歳

1 / 4
第1話

ゲームの世界に転生した。

いや、実際のところよくわかってない。

うとうとしてたら夢?でアホ毛の生えた自称女神に「あなたは死にました」って言われて、追加でアレコレ言われてこの世界にポイである。

 

異世界常識をインストールしておきますねと言われたからか、世界に何が起きてるかはわかる。

世界中に発生しているダンジョンを攻略しようとする探索者(シーカー)が、ダンジョンで倒した魔物の部位やら拾った武器防具やらをダンジョンで拾い集め、探索者(シーカー)はダンジョンとダンジョン近くにできた街を往復している。探索者(シーカー)は売却益で金持ちを目指すわけだな。

あとダンジョンで死んでもダンジョン入口で生き返ることができるが、ダンジョン内部で得たものは全て失われる、という制約がある。

また、ダンジョン内部ではHPとレベルアップ、持っているものの性能が可視化される。これにより強い装備弱い装備はすぐにわかるというわけだ。

 

この常識、世界観は、あれだ。「ジ・ダンジョン」(定冠詞の読みが間違ってるのはわざとらしい)というローグライト同人ゲーの世界だ。プレイ時間は1000時間から先は数えていない。

世界の危機なんてものはない。ただそこにダンジョンがあるから潜る。そして、強くなるのを楽しむ。そういうゲームだ。

 

その世界に生まれたならば、俺は最強武器を目指そう。

耐性パズルで無敵もいいな。夢が広がる。

常識インストールのおかげで、情報収集をする必要はない。

まずは低層を安定させるために、武器防具なしで突撃して(・・・・・・・・・・・)死にまくる(・・・・・)ことにしよう。

なあに、探索者(シーカー)の飯の種は秘伝。死にまくるのは目立つが、誰も深掘りしないだろう。

 

幸い少しのお金は持っている。腹ごなしをして、満腹状態でダンジョンへ。

腹が減っている状態でダンジョンに入ると、腹が減っている状態からさらに腹が減るまで空腹の苦痛を長く味わうことになるからな。

ゲーム「ジ・ダンジョン」では何かしら行動をすると徐々に空腹度がたまる。そして空腹度が100になると動けなくなり、死ぬ。

このシステムはこちらの世界でも同じだが違う点もあり、「空腹状態で入ると何となく腹が減ったままな感じがずっとする」らしい。たぶんこれは餓死寸前でダンジョン突入してわざと死んで腹を満たすライフハックの防止、だろう。

死ぬと空腹感がなくなる。これはダンジョンの謎のうちの一つだ。

 

とにかく、しばらくはアイテム集め周だ。身軽な状態でダンジョンに突撃し、めぼしい武器防具のみと【ダンジョン脱出】のマジックスクロールのみを探す。敵を殴ってレベルアップする必要はない、全逃げしつつ階段即降りだ。

これを最初のボスフロアである10層まで死にながら繰り返し、拾ったマジックスクロールがあれば未鑑定のまま読み散らかす。【脱出】できれば万歳、できなくてもボスに特攻だ。

 

完璧な作戦だ。

 

----

 

完璧すぎた。装備が整っていれば簡単に倒せる(倒せた)10層ボスを倒したほうが早いことを除けば。

アイテム持ち帰れる帰還ポイントとか知らないよ。何で異世界常識インストールから抜けてんだよ。

 

簡単に(はい)れて、簡単に帰還できる9階までのアイテムにほとんど価値はないそうだ。

また、ゲーム「ジ・ダンジョン」のエンチャント(追加の付与効果)にはフロアごとのテーブルがあり、低層ではロクなエンチャントが出ないことになっている。強力なエンチャントがついた装備はしばらくお預けだ。この世界の法則がゲームと同じなら、半ばヤケクソで突入し、11階で死に戻りしたこの初回探検は拾ったマジックスクロール分まるまる損した。

 

うーん、ジモティーと同じく地道に探検するしかないのか? くそっ、異世界転生ならもっと特典とかくれよ。

 

「苦戦しているな、初心者」

 

初心者じゃないもん。プレイ時間1000時間あったら序盤の記憶とか薄れてるだろ。そのせいだよ。

気軽に話しかけてきた探索者(シーカー)のおっさんに返事をする。

 

「思ったより難しいもんですね、ダンジョン探索」

「そのアホヅラ、初死に戻りってところと見たぞ。どうだった、ダンジョンは」

「いやあ、10階までは行けたんですけど、11階はなかなかですね」

「そうだろうそうだろう、初回でも10階までを気分よくクリアさせたところに11階が牙を向く。せっかく得たものがパーになる気分はどうだ?」

「控えめに言って最悪ですね」

「だろう、地道に鍛えるしかないんだ。このダンジョンに慣れたものでも、15階までしか到達していないぞ」

 

それはインストールされた異世界常識の中にもあった。

1〜9階と10階のボス、ウルフの群れをなんとか倒して経験値を稼ぐ。レベルが十分に上がったら11階に挑戦する、というのがセオリーである。

知識ありの異世界転生者だからセオリーなんて無視できるぜなんて甘えた結果がこれだよ。

 

おっさんの装備はハーフレザーアーマーとショートソード。まあ、動きやすさ重視のいかにもな格好だ。

 

「15階ですか……」

 

俺はゲーム世界ではそれこそ無限に探索してたけどな、というのは言わないでおく。ここは現実だからだ。

 

「悪いことは言わん、死なないように、じっくりと進めることだな。俺だって12層にようやく辿り着いたところだ」

「ありがとうございます。参考にします」

 

おっさんと別れ、死に戻りしたことによって失った装備を取り返すべく市場へ向かう。流石に情報収集と売れ線の装備は抑えとかないといけないと考えを改めた。

 

「がらくた市」。ゲームにはこんなものはなかったが、ここなら装備が二束三文で山ほど手に入る。まあ、「なんか切れ味が悪い剣」とか「自分を守れる気がしなくなる盾」とか、推定マイナスエンチャ付きがほとんどだが。

すると、とある店で《鉄の指輪》が一個、他のものに紛れて売っている。いや、こんなところでこんな捨て値で売っていていいもんじゃないはずなんだが。

 

ツイてる。俺は平静を装って店主に話しかけた。

 

「なあ、これいくらだ?」

「あん? あー、この鉄の指輪か。なーんの効果もないハズレだが、これでもダンジョン産だ。銀貨五枚(約500円)

「……おっちゃん、何の効果もないのに銀貨5は詐欺だよ。銀貨1でどう?」

「まあそりゃそうなんだがな、おれが銀貨1で買い取ってやった品なんだ、儲けは出なきゃ困る。銀貨3」

「銀貨2」

「……チッ、銀貨2と銅5(約250円)でどうだ」

「しょーがねえなあ、買うよ」

 

全然しょうがなくはないし「ぱっと見効果がない」《鉄の指輪》で銀貨2と銅5は破格なのだが黙っている。やった、中身が気になる!

 

早速ダンジョンに入る。指輪を装着して、呪文を唱える。

 

「【帰還】!」

 

うんともすんとも言わない。まあそうか。

 

「【見通し】!【鑑定】!【壁通過】!」

 

やはり反応がない。《鉄の指輪》、ゲームでは十五階までだと十階のボスドロップでしか手に入らない。で、装備しただけで効果がある《能力値アップ》系や《ダメージボーナス》である場合と、装備した上で対応する呪文の名前を唱えないと意味がない【呪文付き】の二通りのパターンがある。

 

「身につけても効果がない」とおっさんが言っていたので、これのエンチャント効果はほぼ【呪文付き】か【運アップ】のはずだ。

なので、当たってたら嬉しい呪文を片っ端から唱えているが、正解ではないようだ。

 

「んー、探索補助系じゃないか……じゃあ攻撃か?」

 

一番嬉しいのは、あれだ。

 

「【爆発ファイアボール】!」

 

ぼっ、ひゅるるる、どかん。

俺の声に合わせて現れた火の玉。それは直進し壁にぶつかると、壁は抉れて崩落する。

 

「マジかよ、大当たりじゃん」

 

《爆発ファイアボール》。

唱えると直進し、ぶつかった敵とその周りを巻き込む【火炎】と【爆発】属性をもつ魔法。ゲームでは固定ダメージで、一階から十階の敵はワンパンだ。ボスであるウルフの群れも、うまく誘導すれば群れ全体を一撃で撃破できる。

また、壁にぶつかると壁を破壊する。「ジ・ダンジョン」は壁に埋まった財宝などもありえるので、無制限に壁を掘れる【爆発ファイアボール】付きの《鉄の指輪》は、序盤にしては大当たりアイテムとして認知されている。

 

これは……レベリングが捗る!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。